ブルーカーボンとは|種類や課題、政府・自治体・企業の取り組みを紹介

近年注目されているブルーカーボンをご存知でしょうか?ブルーカーボンとは、海草や海藻などの海洋生態系によって吸収・貯蓄された炭素です。海洋生態系を増やす、つまりブルーカーボンを増やすことで、CO2の吸収量が高まります。
この記事では、ブルーカーボンの特徴や仕組みを解説した上で、ブルーカーボンの種類や課題、具体的な取り組み事例を紹介していきます。ブルーカーボンについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
ブルーカーボンの特徴や仕組みとは?
ブルーカーボンとは、海洋生態系(海草・海藻など)によって吸収・貯蓄された炭素です。
植物は、大気中のCO2を吸収する光合成を行います。これは地上の植物だけでなく、水中や水辺の植物も同様です。海草・海藻などの海洋生態系が吸収する炭素を、ブルーカーボンと呼びます。
ブルーカーボンは、カーボンニュートラル(CO2排出量を実質ゼロにすること)を実現する上で大きな注目を集めています。なぜなら海洋生態系には、CO2の吸収力が高いという特徴があるからです。地上の植物によるCO2の吸収率は約12%なのに対し、海洋生態系のCO2の吸収率は約40%を誇ります。つまり、海洋生物を増やしていけば、CO2の吸収量を効率的に高められるのです。
ブルーカーボンの仕組みは、下記の通りです。
- 大気中のCO2が水中に取り込まれ、溶解CO2・重炭酸イオン・炭酸イオンとなる
- 海洋生物が光合成をしてCO2を吸収し、ブルーカーボンを生成する
国土交通省の資料を参照すると、人間活動によるCO2の排出量は年間約94億tです。それに対し、地上の植物は約19億t、海洋生物は約29億t吸収しています。この数字からも、海洋生物のCO2吸収量が多いことがわかります。そして、 残りの48億tを抑制・吸収して、カーボンニュートラルを実現しなければなりません。
引用元:海の森 ブルーカーボン CO2の新たな吸収源丨国土交通省
グリーンカーボンとの違い
グリーンカーボンとは、地上の植物によって吸収・貯蓄された炭素です。具体的には、森林や公園、都市の緑地などが該当します。一方ブルーカーボンとは、海洋および沿岸の生態系によって吸収・貯蓄された炭素です。
つまり、グリーンカーボンとブルーカーボンの違いは、CO2を吸収・貯蓄する生物の生息地に基づいています。ただし、どちらも地球温暖化の抑止において重要な役割を果たしていることは間違いありません。
ブルーカーボン生態系の種類
ブルーカーボンの生態系は、主に以下の4種類です。
- 海草(うみくさ)藻場
- 海藻(うみも)藻場
- 湿地・干潟
- マングローブ林
海草(うみくさ)藻場
海草藻場は、日本では「アマモ」が主要種です。アマモの藻場は、北海道から九州まで広く分布しています。アマモは、海中で花を咲かせて、種子を飛ばすことで繁殖します。また、海底に根と地下茎を張りめぐらせ、株を増やすことも可能です。
海藻(うみも)藻場
海藻(うみも)とは、海で生育する藻類です。日本では、ガラモやコンブ、カジメなどの種類が有名です。海草と異なり、胞子によって繁殖します。また、海藻藻場は多くの生物の生息場所としての機能も果たしています。
湿地・干潟
湿地や干潟は、沿岸部の浅い水域や塩分を含む土地に形成されます。これらの地域は、有機物の分解が遅く、それにより大量のブルーカーボンが長期間蓄積されます。水鳥や魚、甲殻類など多様な生物の生息場所としても欠かせません。
マングローブ林
マングローブ林は、熱帯や亜熱帯の沿岸部で、海水が侵入するような場所にできる森林地域です。マングローブ林は、海水と淡水が混じることで独特の生態系を形成し、多くの生物が生息しています。また、マングローブ林は炭酸ガスを大量に吸収し、泥や土の中に長期間ブルーカーボンを蓄積します。
ブルーカーボンを活用するメリット
ブルーカーボンを活用するメリットは、グリーンカーボンよりも吸収力が高いため、ブルーカーボンを増加させれば効率的にCO2の吸収量増加を図れる点です。CO2の吸収量が増えることで、カーボンニュートラルの実現につながります。
日本では、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。そのために、再生可能エネルギーの導入や森林保全活動などが注目されていますが、ブルーカーボンも重要な取り組みです。ブルーカーボンを活用することで、カーボンニュートラル実現の可能性がより高まるでしょう。
ブルーカーボンの課題・デメリット
ブルーカーボンの活用が注目される中で、マングローブ林や海藻の減少が大きな課題となっています。2020年に行われたUNEPの調査結果によると、海藻に関しては毎年7%ずつ面積を失っている状況です。
この問題は、マングローブ林や海藻が減少することで、単にCO2の吸収量が減少するということではありません。実は、伐採されることでこれまで貯蓄していたCO2が放出されてしまうのです。従来はこの問題があまり重要視されていなかったため、保全が十分ではありませんでした。
しかし、ブルーカーボンの重要性が理解されるようになった現在では、2030年までに世界の海の30%を保護区に指定するという目標が掲げられています。
ブルーカーボンに関する取り組み事例
ここでは、ブルーカーボンに関する政府・自治体・企業の取り組み事例を紹介していきます。これからブルーカーボンに取り組んでいきたい企業・自治体の方は、ぜひ参考にしてください。
政府の取り組み
政府の取り組みとして挙げられるのは、ブルーカーボン・オフセット・クレジット制度(Jブルークレジット)です。
そもそもカーボンオフセット制度とは、削減努力をした上で削減できなった分のCO2がある場合、CO2排出削減につながる活動に投資することなどで埋め合わせる制度です。ブルーカーボンに特化した本制度を、ブルーカーボン・オフセット・クレジット制度(Jブルークレジット)といいます。
2023年8月現在、JBE(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合)が主体となってJブルークレジットの発行・管理を行っています。
自治体の取り組み
ここでは福岡市の取り組みを紹介します。福岡市は、「福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」を導入し、ブルーカーボンの普及を目指しています。
本制度では、博多湾の藻場が吸収・貯蓄したCO2の量をクレジット化し、「博多湾ブルーカーボン・クレジット」として販売しています。これにより、福岡市は海洋環境の維持に努めています。
企業の取り組み
企業においても、ブルーカーボンに関するさまざまな取り組みが行われています。例えばセブンイレブンは、2021年に横浜港が発行したJブルークレジットを購入し、藻場作りの活性化を担っています。
また、アップルも2018年に環境保護団体と共同でコロンビアのマングローブ再生プロジェクトを開始しました。
引用元:プレスリリース|Apple、プレスリリース|株式会社セブン&アイ・ホールディングス
まとめ
当記事では、ブルーカーボンの種類や課題、具体的な取り組み事例などを紹介しました。ブルーカーボンを活用することで、カーボンニュートラルの実現に近づきます。
ブルーカーボンに取り組む場合、ブルーカーボン・オフセット・クレジット制度(Jブルークレジット)への参加が現時点では効果的な方法でしょう。本記事を参考にして、ブルーカーボンやカーボンニュートラルに関する理解が深まれば幸いです。
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