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SBTとは|取り組むメリットや企業事例、認定を受ける方法を紹介

近年SBTの認証を受ける企業が増えています。一体、SBTとは何なのでしょうか?

この記事では、SBT(Science Based Targets)の概要や取り組むメリット、企業事例、認定を受ける方法を解説します。これからSBTへの参加を検討している企業の皆さんは、ぜひ参考にしてください。

SBT(Science Based Targets)とは?

SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定で求められている水準と整合した、企業の温室効果ガスの排出削減⽬標です。

パリ協定とは、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で合意された枠組みです。パリ協定で定められた内容として、主に以下の2つが挙げられます。

  • 地球の気温上昇を産業革命前の水準に比べて2℃より十分低く抑えることを目標とし、さらに1.5℃に抑えるように努力すること(1.5度目標)
  • すべての国が5年ごとに削減目標を提出・更新すること

つまり、SBTはパリ協定で定められた1.5度目標と整合した内容であることが求められます。また、5年以上先の長期目標の設定が必要です。

さらに、SBTではサプライチェーン排出量の削減も求められます。サプライチェーンとは、具体的に以下の3つに分けられ、全て合算した上で目標を達成しなければなりません。

  • Scope1:事業者⾃らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、⼯業プロセス)
  • Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使⽤に伴う間接排出
  • Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)


引用:SBT(Science Based Targets)について|環境省

RE100との違い

RE100とは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする企業が加盟する国際的なイニシアチブです。一方で、SBTは温室効果ガスの排出削減が目標であることから、RE100と比べてより広範囲の目標であるといえます。

また、参加条件にも違いがあります。RE100の参加条件は、日本の場合は年間消費電⼒量が50GWh以上の企業です。つまり、ある程度の規模がある企業でないと参加できません。対して、SBTはあらゆる企業が参加可能です。

実際に参加している企業数をみてみましょう。RE100に82社(2023年9月時点)、SBTに350社(2023年1月時点)認定されており、SBTの方が参加企業数が多いことがわかります。

引用:RE100参加日本企業|日本気候リーダーズ・パートナーシップ
SBT参加企業|環境省

SBTへの取り組み状況

SBTへの取り組み状況を、以下2つの観点から紹介します。

  • 世界の取り組み状況
  • 日本のSBT認定企業一覧

世界の取り組み状況

SBTに参加する企業は、世界中で増加しています。環境省の資料によると、2023年1⽉10⽇までに認定企業は2,140社、コミット企業は2,237社と、合計4,377社まで拡大しました。コミット企業とは、2年以内にSBT認定の取得を宣⾔している企業です。


引用:SBT参加企業|環境省

国別で見ると、2023年時点の認定企業数は、イギリスと日本がもっとも多いです。次いで、アメリカとドイツが並んでいます。


引用:SBT参加企業|環境省

認定を受けている企業の業種は、専⾨サービス業や⾷料品製造業、不動産業が多い傾向にあります。代表的な企業として、MicrosoftやApple、Amazonなどが参加しています。

日本のSBT認定企業一覧

日本のSBT認定企業は、2023年1月時点で認定企業が350社、コミット企業が67社と、合計417社まで拡⼤しました。業種としては電気機器や建設業が多いのが特徴です。

ここでは、業界別に代表的な企業をいくつか紹介していきます。

建設業 清水建設、積水ハウス
食料品 サントリーホールディングス、日清食品ホールディングス
繊維製品 帝人、東洋紡
化学 花王、コーセー
医薬品 アステラス製薬、大塚製薬
電気機器 パナソニックホールディングス、シャープ
精密機器 島津製作所、ニコン
印刷 大日本印刷、凸版印刷
空運業 ANAホールディングス
情報・通信業 SCSK、NTTドコモ
小売 イオン、ファーストリテイリング
不動産業 東急不動産ホールディングス
サービス業 セコム、ベネッセコーポレーション

SBT認定を目指して活動に取り組む3つのメリット

SBT認定を目指して活動に取り組むメリットを3つ紹介していきます。

1.地球温暖化の抑制に貢献できる

SBT認定を目指して活動を行う最大のメリットは、地球温暖化の抑制に貢献できる点です。

SBT認定は、企業が温室効果ガスの排出目標を設定し、パリ協定の目標である2℃以下の気温上昇を達成することを目指しています。企業はそれぞれの目標を達成するために、事業活動で活用する電力を再生可能エネルギーに切り替えたり、あらゆる情報を紙からデータへ移行させたり、具体的な取り組みを行っています。

このような具体的な取り組みが多くの企業で行われることによって、温室効果ガスの大幅な削減につながることは間違いありません。一社一社が尽力することで、地球温暖化の抑止に貢献できるのです。

2.投資家・消費者へのイメージアップになる

SBT認定を目指して取り組むことは、投資家・消費者へのイメージアップにもなります。

環境問題は、現代のビジネスにおいて重要な課題です。企業が温室効果ガスの排出目標を設定して具体的な取り組みを行い、SBT認定を受けることは、社外に向けた重要なアピールとなります。

投資家から評価を受けると、投資先に選ばれやすくなります。また、消費者から評価を受けると、他社との差別化になり、商品・サービスを手に取ってもらいやすくなるでしょう。

3.電気代・燃料代などのコスト削減につながる

SBT認定を受けるために再生可能エネルギーを導入すれば、電気代や燃料代のコスト削減につながります。

例えば、自社で太陽光発電を導入して自社電力を賄った場合、電力会社から電力を購入する必要がなくなります。また、社内外でやりとりをする際に紙からデータに置き換えることで、紙代や印刷代などのコスト削減が可能です。

ちなみに、アナログからデジタルに移行することで、コストを削減するだけでなく、業務の効率化も期待できます。このように、環境に配慮しながら業務の効率化や生産性を高める取り組みをGXといいます。

SBT認定企業の取り組み事例

環境省で紹介されている事例を参照して、SBT認定企業の取り組み事例を3つ紹介していきます。

日清食品ホールディングス

日清食品ホールディングスは、​​2022年4月にSBT認定を受けました。現在掲げている削減目標は、次の通りです。

  • グループ全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに30%削減(2018年度比)
  • バリューチェーンでの温室効果ガス排出量を2030年度までに15%削減(2018年度比)

この目標を達成するために、製造工場では省エネ診断と再生可能エネルギーによる電力調達を推進しています。また、バイオマス発電などの新技術を活用したCO2削減も検討中です。

参考:業種別取組事例一覧|環境省
サステナビリティの取り組み|日清食品ホールディングス株式会社

積水ハウス

積水ハウスは、2018年に国内の住宅業界で初めてSBT認定を取得しました。現在では、さらに高い以下の目標を掲げて、達成に向けて取り組んでいます。

  • Scope1(直接排出)とScope2(間接排出)を2030年までに75%削減(2013年度比)
  • 製品使用時のCO2排出量を2030年までに55%削減(2013年度比)
  • 2027年までにサプライヤーの65.8%がSBTを取得

これまでの取り組みとしては、CO2排出ゼロの電力の大規模な調達やZEB基準を満たす事務所への入居の促進、業務用車両の電動化などがあります。

参考:業種別取組事例一覧|環境省温室効果ガス削減で「SBTイニシアチブ」1.5℃目標の認定を取得|積水ハウス株式会社

ベネッセホールディングス

ベネッセホールディングスは、2021年にSBT認証を取得しました。現在では、2030年までに温室効果ガス排出量を52.8%、2041年までに100%削減することを掲げています(2018年度比)。

これまでは紙の教材を使用していたベネッセ。しかし現在では、紙教材以外にデジタル技術を用いた教材を利用しており、紙使用量の大幅な削減に成功しています。また、子どもたちに環境問題に関する理解を深めてもらおうと、環境問題に関するコンクールやワークショップを実施しています。

参考:業種別取組事例一覧|環境省
イニシアティブへの参加|株式会社ベネッセホールディングス

企業がSBT認定を受ける方法

最後に、企業がSBT認定を受ける方法を解説していきます。

認定条件

SBTの認定条件は、下記の基準を元に目標を設定することです。

<SBT認定の基準>

  • 企業全体(⼦会社含む)のScope1及び2をカバーするすべての温室効果ガスが対象である
  • ⽬標年は申請時から最短5年、最⻑10年以内とする
  • 最低でも、世界の気温上昇を産業⾰命前と⽐べて1.5℃以内に抑える削減⽬標を設定しなければならない
  • 他者のクレジットの取得による削減もしくは削減貢献量は、SBT達成のための削減に算⼊できない
  • スコープ3排出量がスコープ1,2,3排出量合計の40%以上の場合、スコープ3目標の設定が必須である
  • スコープ3では、世界の気温上昇を産業革命前と比べて2℃を下回るよう抑える水準(毎年2.5%の削減)を設定する

引用:SBTの認定基準|環境省

申請手順

SBTの申請手順は、以下の通りです。

  1. Commitment LetterをSBT事務局に提出する
  2. SBT認定の申請書をSBT事務局に提出する
  3. SBT事務局が⽬標の妥当性を確認・回答する
  4. SBTのWebサイトで公表される

認証を受けた後は、5年に1回の進捗報告と、最低でも5年ごとの見直しが必要になります。

まとめ

この記事では、SBTの概要やメリット、企業事例などを紹介しました。SBTとは、パリ協定で求められている水準と整合した、企業の温室効果ガスの排出削減⽬標です。多くの企業がSBT取得に向けて取り組むことで、温室効果ガスの排出量を大幅に減らすことが可能です。

SBT認定されることで、投資家や消費者へのアピールとなったり、電気代などのコストを削減できるメリットがあります。温室効果ガスの排出削減が難しい業界・企業もあるかと思いますが、他社の事例を参考にして、できることを見つけてみましょう。

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