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CO2排出量の計算方法を徹底解説:基礎知識から削減ステップまで

地球温暖化の原因とされるCO2排出量削減のため様々な取り組みが行われています。

CO2排出量を把握して削減を目指すことは、地球温暖化を防ぐための重要なテーマとされており、日本でもCO2削減に向けた積極的な取り組みが求められています。

そこでこの記事では、CO2排出量の計算方法(算定方法)を詳しく解説するのはもちろん、CO2排出量の計算に役立つ基礎知識、さらにはなぜCO2排出量の計算が求められるのかその理由に至るまで詳しく解説していきます。

※日本政府は2030年までに2013年度比でCO2を46%削減、2020年10月には2050年までに温室効果ガスをゼロにすると宣言しており、今後ますます脱炭素社会に向けた行動が求められていくと予想されています。

本記事を読み進め、環境問題について取り組みを進める際の参考にしてください。

>>>「炭素排出権についてのお役立ち資料をダウンロードする」

CO2排出量とは

CO2(二酸化炭素)は、地球温暖化を引き起こす主要な要因であると考えられており、化石燃料の燃焼や森林伐採によって大気中のCO2濃度が増加している傾向にあると言われています。

こうした温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素など)の増加は、地球の気温を上昇させ、異常気象や海面上昇などの気候変動を引き起こす要因となっています。

以上のような背景から、CO2排出量を抑制することは、地球温暖化の進行を止めるための重要なステップとなると考えられています。

※CO2排出量については、「二酸化炭素(CO2)排出量とは|増加の原因や日本・世界の排出量を紹介」でも詳しく解説していますので一度ご覧ください。

CO2排出量の計算が求められる理由


CO2排出量の計算が求められる理由や背景は主に下記の3点です。

1:国際的な脱炭素に向けた排出量削減の取り組みのため
2:省エネ法によるエネルギー使用状況報告の義務化
3:温対法による排出量報告の義務化

それぞれの理由や背景について解説していきます。

1:国際的な脱炭素に向けた排出量削減の取り組みのため

脱炭素(だつたんそ)とは二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、最終的に温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目指す取り組みのことを言います。

地球温暖化の原因とされるCO2排出量の削減に向けて世界中で様々な議論がなされ、取り組みが行われていますが、日本では2015年の気候変動枠組条約締約国会議(COP)で採択されたパリ協定での合意により、2030年度までに2013年度比で26%削減すると発表しました(その後2021年4月に「地球温暖化対策推進本部」の閣僚会議において菅義偉前首相により温室効果ガスの削減目標が46%に引き上げられています)。

参考:日経ESG|どう挑む温室効果ガス46%削減

また目標を掲げるだけではなく目的達成のための進捗状況を定期的に共有し専門家のレビューを受けることもパリ協定によって定められており、目標達成に向けた実効性も求められています。

このようにCO2排出量の削減は温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする脱炭素化に向けた重要な取り組みの重要なステップになると位置付けられており、国を挙げての取り組みが必要とされています。

温室効果ガス:CO₂、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素の7種類

出典:日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」

2:省エネ法によるエネルギー使用状況報告の義務化

省エネ法(正式名称:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)により、一定規模以上の(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用する)事業者のエネルギー使用状況が義務化されています。

省エネ法の対象となるエネルギーは燃料、熱、電気の3つですが、令和5年4月より新たに非化石エネルギーが報告対象に加わるなど温室効果ガス削減に向けて対象が広がりを見せています。


出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ法の概要」

3:温対法(地球温暖化対策推進法)による排出量報告の義務化

改正された地球温暖化対策推進法(正式名称: 地球温暖化対策の推進に関する法律)により、平成18年4月1日より温室効果ガスを多量に排出する特定排出者には温室効果ガス排出量の報告が義務付けられることとなりました。

これにより、温室効果ガスの種類に応じて、事業者自らが温室効果ガスの排出量を計算し報告する義務が課せられています。

※詳細については環境省の「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」のページをご覧ください。

主に以上のような理由からCO2排出量の計算が求められています。

>>>「炭素排出権についてのお役立ち資料をダウンロードする」

CO2排出量計算の対象範囲

CO2排出量の計算は大きく2つのアプローチによる算定方法があります。

1.サプライチェーン排出量

サプライチェーン排出量では、自社からの排出量だけではなく、事業活動に必要となるサプライチェーン全体での排出量を計算していきます。

排出源により「Scope1」「Scope2」「Scope3」に分類され「サプライチェーン排出量 = Scope1 + Scope2 + Scope3」といった形でCO2排出量を計算していきます。

詳細な計算方法などについては後ほど詳しく解説していきます。

2.LCA(Life Cycle Assessment)/ カーボンフットプリント

LCA(Life Cycle Assessment)とは、製品やサービスのライフサイクル全体(原料調達・購買、生産、物流、使用、リサイクル)またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する方法です。

LCA算定により製品単位での温室効果ガスの排出量を把握することができるため、プロセスごとに製品や部材ひとつの環境影響の大きい項目(ホットスポット)が見えるようになります。

これにより温室効果ガスの削減に何が必要であるのかを検討しやすくなります。

このうち環境負荷を「CO2排出量に限定」したものを「カーボンフットプリント」と言います。

カーボンフットプリントについて詳しくは「カーボンフットプリント(CFP)とは|計算方法や商品例、企業の取り組み事例を紹介」をご覧ください。

CO2排出量の計算に役立つ基礎知識

CO2排出量は「活動量」に「排出係数(排出原単位)」を掛け合わす式により簡易的に求めることができます。

「活動量」と「排出係数(排出原単位)」は、CO2排出量の計算式を記すにあたって、重要な概念になりますので、まずは基礎的な知識を解説していきます。

1:活動量

CO2排出量を計算するための基礎データとなるもので、「活動量」は特定の活動やプロセスによってどれくらいのエネルギーや資源が消費されたのか、どれだけ生産が行われたのかを示す量のことを指します。

活動量には「燃料消費量」や「電力使用量」「生産量」「輸送量」「廃棄物の処理量」が含まれます。

・燃料消費量

燃料消費量は、工場や車両、機器などが使用するガソリン、ディーゼル、天然ガスなどの化石燃料の量を指し、燃料の種類と燃料消費量(活動量)に基づいて計算されます。

・電力使用量

電力使用量は、企業や工場が使用する電気の総量を示し、その電力が生成される際に排出されたCO2の量(火力発電、水力発電、原子力発電など)に基づいて、排出量を算出します。

・生産量

生産量は、工場や製造施設で作られた製品やサービスの量を指します。企業の環境負荷を測るための重要な指標で、製造プロセス全体におけるエネルギー消費やCO2排出量を相対的に評価し算出します。

・輸送量

輸送量は、輸送に伴うCO2排出量のことで、製品や材料を輸送するために使用された車両や船舶などの交通手段が移動した距離や輸送された重量に基づいて計算されます。

・廃棄物の処理量

廃棄物の処理量は、製造過程や事業活動から発生する廃棄物の量を示し、廃棄物の焼却や埋立処理時に発生するCO2排出量のことです。焼却、埋め立て、リサイクルなどがあり処理方法によってそれぞれ算出されます。

2:排出係数

原料やエネルギーごとに規定された「単位当たりのCO2排出量」のことです。温室効果ガスの排出量を正確に把握し、削減目標を設定するために必要な数値になります。

排出係数は、ある特定の活動やプロセスに伴って排出される温室効果ガスの量を示す数値で、例えば化石燃料を燃焼させた際にどれくらいのCO2が排出されるのかなど、主にCO2排出量を計算する際に使われます。

排出係数は国際的な基準に「GHGプロトコル」があり、日本のCO2排出係数も国際的な基準のガイドラインに基づいて算定されています。

使用されるエネルギーの違いで排出係数が決められており、算定方法と排出係数の一覧については「環境省のホームページ」で確認することができます。

CO2排出量の計算方法

CO2排出量の簡易的な計算方法は下記の通りです。

CO2排出量 = 活動量(生産量・使用量・焼却量など) × 排出係数(排出原単位)

サプライチェーン排出量の計算方法

サプライチェーン排出量とは原料の調達や製造、物流や販売に至るまで、自社内における直接的な排出だけではなく、事業活動に伴う一連の流れから発生するCO2までを含んだ排出量のことです。


サプライチェーン排出量の算定方法は下記の通りとなります。

サプライチェーン排出量  =  Scope1  +  Scope2  +  Scope3

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

Scope1、Scope2、Scope3それぞれを求めるための算定式(計算方法)は下記の通りです。

Scope1の計算方法

Scope1排出量 = 燃料の消費量 × 燃料ごとの排出係数

Scope2の計算方法

Scope2排出量 = 電気使用量(kWh) × 電力会社ごとの排出係数

Scope3の計算方法

Scope3排出量 = 活動量 × 排出原単位

Scope3の温室効果ガスを算定し削減に取り組むことで、サプライチェーンの流れを棚卸しし、CO2削減のためにどこから着手すべきなのかがわかり、それによりグループ会社や各取引先へ現状を説明し、協力を要請しやすくなります。

scope3は、15のカテゴリーによって定義され、カテゴリーごとに「排出量の計算方法」についてのガイドラインが示されています。

scope3の15のカテゴリ分類


画像引用:経済産業省 資源エネルギー庁

参考:Scope3排出量とは | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省

サプライチェーン排出量

以上Scope1.2.3の算定を行えば「企業単位」としての温室効果ガス排出量(GHG排出量)を把握することができます。

サプライチェーン排出量 = Scope1排出量 + Scope2排出量 + Scope3排出量

参考:サプライチェーン排出量全般 | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省

CO2排出量計算の流れ

CO2排出量における計算の流れは次のとおりです。

1.目的および調査範囲の設定

事前準備として目的と調査範囲を設定していきます。

例えば、サプライチェーンであれば、規定のscope3の15カテゴリーに基づき調査範囲を設定していきます。

LCAであればライフサイクルフローに基づき「製品の環境負荷を評価して改善点を見つけたい」や「異なる製品やプロセスを比較したい」など、目的とそれによって得たい成果を明確にしていきます。

2.インベントリ分析

インベントリ分析ではデータ収集項目を整理してライフサイクルの各段階やScope3のカテゴリー別にインプット(投入される資源やエネルギー)やアウトプット(排出されるCO2や廃棄物)などのデータを収集し、データ一覧を作成、CO2排出量を計算していきます。


インプット:原材料・電力・燃料など投入する資源やエネルギーのこと
アウトプット:廃棄物やCO2の排出量のこと

3.結果の分析と評価

ここでは、インベントリ分析をもとに、ホットスポットを特定し、CO2排出量の傾向や、削減可能な領域などを評価していきます。

LCAでは、地球温暖化や大気汚染など環境にどのような影響を及ぼすのかも評価していきます。

4.結論・改善策の策定

インベントリ分析と影響評価の結果から、調査の目的を踏まえて結論づけし、具体的な削減に向けた行動や施策を検討したり、今後の改善策をまとめていきます。

CO2排出量計算後の具体的な削減に向けた次のアクション

CO2排出量の計算(算定)を実施し具体的な数値として可視化されたら、次にCO2排出量の具体的な削減に向けた行動や施策を検討していきます。

CO2排出量を削減するための施策としては次のような方法があります。

1:CO2削減の優先順位の設定

まず、事業におけるどの活動やプロセスが最も多くのCO2を排出しているのかを分析し、大きな排出源に焦点を当て、削減に強い影響がある分野から優先的に対策を講じていくようにします。

CO2削減のインパクトの大きいものから取り組むことで、CO2削減に向けた行動が取りやすくなります。

2:エネルギー効率を向上させる

オフィスや工場にLED照明や、インバーター制御のモーター、エネルギー効率が高いHVACシステムなどの省エネ技術の導入をしたり、工場内のヒートロスを減らすなど、設備の稼働時間を最適化するなど製造プロセスや運用プロセスを見直していきます。

設備を見直す際は「最もCO2を排出しているもの」や「エネルギー効率上無駄が多いもの」に目を向けエネルギー効率の高い設備導入を積極的に推進していきます。

既存の設備を見直しランニングコストを下げることができればエネルギー効率が向上し、結果として継続的なCO2排出量の削減につながっていきます。

環境省では毎年様々な交付金や支援事業を行なっていますので、活用するといいでしょう。

>>>令和6年度予算 及び 令和5年度補正予算 脱炭素化事業一覧 – エネ特ポータル|環境省

3:再生可能エネルギーの利用

太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの地球資源を再生可能エネルギーと言いますが、再生可能エネルギーを利用すると石油や石炭、天然ガスエネルギーよりもCO2の排出量を抑えることができます。

従来の化石エネルギーから、こうした再生可能エネルギーへと転換をはかるのもCO2排出量の削減に向けた次のアクションや具体的な施策としては有効的です。

再生可能エネルギーの活用は脱炭素化に向けた取り組みやサステナブルな取り組みとしても大きなポイントになる上に、対外的にもわかりやすいというメリットもあります。

4:電動化の推進

車両を電気自動車(EV)やハイブリッド車に切り替えることでもCO2排出量を削減することができます。

またボイラーやヒーターなどの機器を電動化することでもCO2排出量の削減に寄与します。

5:カーボンオフセット

カーボンオフセットは、CO2排出量を削減できない部分について、カーボンクレジット(他の場所でのCO2削減分を購入する仕組み)を活用することで実質的に温室効果ガスの排出量の埋め合わせをする考え方です。

カーボンニュートラル(脱炭素化)に向けて企業の温室効果ガス排出量削減戦略の一環として活用され、クレジットや環境証書を購入し、事業活動で出す温室効果ガスを相殺していく取り組みです。

CO2排出量を削減するために再生可能エネルギーや省エネルギー化を推進したうえで「事業活動において削減が難しい排出」については、CO2吸収源となる森林保護や再植林プロジェクトなどに投資するなどカーボンクレジットを活用して事業活動における温室効果ガスの排出量を埋め合わせていきます。

カーボンオフセットについて詳しくは「カーボンオフセットとは|カーボンニュートラルとの違いや問題点、取り組み事例をわかりやすく解説」をご覧ください。

6:従業員への意識啓発・社員教育

社員や従業員に、企業文化としてCO2排出削減の重要性を教育し日常業務や生活の中でできるCO2排出量の削減策を実践するように促していくことも次のアクションとしては有効的です。

可能であれば取引先やサプライヤーとも協力しながらサプライチェーン全体でのCO2排出量を削減していくと良いでしょう。

弊社でも脱炭素化に向けて環境省認定制度の脱炭素アドバイザーベーシック認定資格「GX検定 ベーシック」をとりおこなっておりますので、積極的に活用していただき、脱炭素化に向けた意識啓発や社員教育の一環に取り入れてみてください。

>>>GX検定 ベーシック

7:定期的なモニタリングと継続的な改善

取り組みの効果を評価するためにはCO2排出量を定期的に測定し、進捗を確認していくといいでしょう。

このとき必ずPDCAサイクルを導入し、CO2排出削減策を継続的に行うようにします。取り組みの効果を定期的かつ継続的にモニタリングし、CO2排出量の削減策の改善を重ねていくことが重要です。

まとめ

CO2排出量の計算方法(算定方法)について詳しく解説してきました。

自社が排出するCO2排出量を把握することは温室効果ガス削減の取り組みに向けた第一歩です。

政府や国際社会が目指す脱炭素社会を実現するためには自社のCO2排出量を把握しておくことが重要で、2030年のCO2排出量46%の削減に向けて、今後より一層、企業のCO2排出量削減へ向けた取り組みは注目されていくことでしょう。

今回の記事ではCO2算定後の具体的な施策についても紹介しましたので、ぜひ本記事で紹介した計算式を参考にして自社のCO2排出量を計算し、脱炭素化に向けた具体的なアクションプランを策定してみてください。

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GXメディア編集部
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GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。