「脱炭素経営をサプライチェーン全体でどう進めればよいか」 「サーキュラーエコノミーを、実際のビジネスモデルにどう落とし込むか」
多くの企業がGX(グリーントランスフォーメーション)の具体策に頭を悩ませています。 2025年12月、持続可能な調達の普及を目指すグリーン購入ネットワーク(GPN)により、「第26回グリーン購入大賞」の受賞団体が発表されました。
今年は、大企業から中小企業、自治体まで計13団体が受賞 。そのラインナップからは、単なる「環境配慮製品の購入」を超え、「顧客を巻き込むストーリー設計」や「地域資源の循環モデル」といった、一歩進んだ環境経営のトレンドが浮き彫りになりました。
本記事では、当日の表彰式の大臣賞をはじめとする注目企業の事例を深掘りし、成果を上げている組織に共通する「戦略」と、それを支える「人材・知識」の重要性について、実際に現地で得た情報も交えながら解説します。
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第26回グリーン購入大賞の審査傾向:求められる「共感」と「連携」
グリーン購入大賞は、消費と生産を通じてSDGsの目標達成や脱炭素社会の実現に寄与する取り組みを表彰する制度です 。 第26回となる今回は、特に以下の要素を持った取り組みが高く評価されました。
- 脱炭素と資源循環の高度化: カーボンニュートラルへの発展や、プラスチック資源循環の高度化。
- ストーリーデザイン: 顧客やステークホルダーへの情報発信において、共感を得やすくする工夫。
- サプライチェーン: 原材料調達における自然環境や人権への配慮。
審査委員長の梅田靖氏(東京大学大学院教授)は、受賞した13事例を「Think Globally, Act Locallyの手本であり、私たちの道標」と評しています。
では、具体的にどのような企業が「道標」として選ばれたのか、大臣賞を受賞した3つの事例から見ていきましょう。
【大賞・大臣賞】3事例に学ぶ「GXの突破口」
①【大賞・環境大臣賞】株式会社スーパーホテル
~顧客と共に取り組む「CO2実質ゼロ泊」~
ビジネスホテル大手のスーパーホテルは、顧客参加型の脱炭素アクションを見事にビジネスモデルに組み込みました。
- 課題と背景: ホテル運営において避けて通れない電力・ガス・水道によるCO2排出。企業努力だけでなく、宿泊客への啓発も課題でした。
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取り組み内容: 同社は2024年10月より、全ての宿泊を対象とした「CO2実質ゼロ泊」サービスを開始しました。
- Scope1・2相当のオフセット: 宿泊時のガス・水道使用によるCO2排出量を100%カーボン・オフセット。
- 再エネ活用: 電力消費に関しては、非化石証書等を活用し、全店舗で実質再エネ化を実現。
- コミュニケーション: チェックイン時に案内カードを渡し、「あなたの宿泊が環境貢献につながっている」と伝えることで、顧客の環境意識を醸成。
- 成果: これまでのカーボン・オフセットによる累計削減量は約15万トンに達しています。
<編集部の視点:ここがGXのポイント>
特筆すべきは「顧客への伝え方」です。単に裏側で再エネを買うだけでなく、顧客にカードを渡し「利用者参加型の脱炭素アクション」へと昇華させています 。GX推進には、こうした「ステークホルダーを巻き込むコミュニケーション能力」が不可欠です。
参考:株式会社スーパーホテル
②【大賞・経済産業大臣賞】amu株式会社
~廃漁具を「資源」に変える!完全循環型モデルの構築~
宮城県を拠点とするamu株式会社は、海洋プラスチックごみの原因ともなる「使用済み漁具」のアップサイクルで受賞しました。
- 課題と背景: 耐用年数を終えた漁具の処分は、漁業者にとって経済的な負担であり、環境負荷の原因でもありました。
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取り組み内容: 「いらないものはない世界」をビジョンに掲げ、漁具の回収から製品開発、販売まで一貫したサプライチェーンを構築しました。
- 現場主義: 30以上の漁港を巡り、漁業者と直接関係を構築して約100トンの回収見込みを確保。
- 技術革新: 回収したナイロン製漁具をケミカルリサイクルし、高品質な繊維・生地へ再生。大阪・関西万博の関連商品にも採用されています。
- 多様な展開: リサイクル困難な混合素材も、デザイン性の高いタイルにするなど用途を工夫。
- 成果: 廃棄コストに苦しむ漁業者を支援しつつ、地域に新たな経済価値を生み出す「サーキュラーエコノミー」の理想形を実現しました。
<編集部の視点:ここがGXのポイント>
この事例の鍵は「トレーサビリティ(追跡可能性)の確保」です 。回収から製品化までを自社で把握することで、グリーンウォッシュ(見せかけの環境対応)を防ぎ、真正面から資源循環に取り組んでいます。
参考:amu株式会社
③【大賞・農林水産大臣賞】一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会
~シェフの「選ぶ力」を育てるレシピコンテスト~
食の分野からは、外食産業全体のサステナビリティ底上げを目指す団体が選ばれました。
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取り組み内容: 若手料理人を対象とした「未来のレシピコンテスト」を開催。料理の味だけでなく、「何を選ぶか(調達)」を問う点がユニークです。
- テーマ設定: 「サステナブル・シーフード」や「プラントベース」など、環境負荷の低い食材をテーマに設定。
- 数値化: ファイナリストのレシピに対し、カーボンフットプリント(CO2排出量)による環境影響評価を実施。
- 成果: 4年間で約130人の料理人が参加。数値に基づいた環境配慮への理解を促し、食の変革を担う人材を育成しています。
<編集部の視点:ここがGXのポイント>
特筆すべきは、感性が重視される料理の世界に「カーボンフットプリント」という科学的なモノサシを持ち込んだ点です。 「なんとなく環境に良さそう」ではなく、数値に基づいて食材を選ぶスキルを養うことは、まさに実効性のあるGX人材育成です。シェフの意識が変われば、調達を通じて農業・漁業といった一次産業のGXをも牽引する大きな力となります。
参考:一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会
【優秀賞・部門別】明日から真似したいGXの「打ち手」
先ほど紹介した事例以外にも、特定の課題解決に役立つ優れたノウハウが多数表彰されています。
▼中小企業こそチャンス!「本業×サステナビリティ」
中小企業部門では、自社の強みを生かしたニッチトップな取り組みが光りました。
- 雪ヶ谷化学工業(大賞): 化粧用スポンジなどを製造する同社は、「日本国内で流通する天然ゴム100%フェアトレード」など野心的な目標を設定 。中小企業ながら再生可能原材料比率50%を目指し、製品開発と社内改革を両輪で進めています。
- 三和石産(大賞): 生コンクリート製造の過程で廃棄される「戻りコン」を再利用し、再生セメントを使用した「SRコンクリート」を製造。CO2排出量を最大26.1%削減できる製品として普及させています。
- ウッドプラスチックテクノロジー(優秀賞): 梱包用PPバンドの水平リサイクルを推進。バージン材から再生材へ転換することで、製品1kgあたり約4.28kgのCO2削減を実現しました。
▼テクノロジーで解決する「資源循環と可視化」
- セイコーエプソン(優秀賞): 使用済みの紙から新たな紙を生み出す乾式オフィス製紙機「Paper Lab」を開発。水を使わず、オフィス内で紙資源を循環させる画期的な技術です。
- 国際航業(大賞): 衛星画像を活用した「診ま森(みまもり) GLOBAL」を提供。パーム油やカカオなどの調達先における森林破壊リスクを可視化し、企業のScope3管理を支援しています。
▼地域全体を巻き込む「連携モデル」
- 株式会社カインズ(大賞): 店舗をハブにした「園芸用土の水平リサイクル」を構築。自治体・市民・メーカーと連携し、不要な土を回収して再生販売する仕組みを作り上げました。「関連部署を巻きこみ、チームで動く楽しさがある」と担当者が高い熱量で語っていたことが印象的でした。
- 八千代エンジニヤリング(優秀賞): 自治体のごみ焼却施設で作られた電力の「環境価値」を証書化し、地元企業へ販売。エネルギーの地産地消モデルを確立しました。
受賞企業に共通するのは「GXリテラシー」の高さ
これら13団体の事例を見ていくと、業種は違えど、成功には共通する「3つの要因」があることが分かります。
- トップのコミットメントと現場の熱量: 経営層の方針だけでなく、雪ヶ谷化学工業やカインズのように、現場が主体となってプロジェクトを推進している点。
- 「数値化」への執着: 三和石産や日本サステイナブル・レストラン協会のように、CO2削減効果を具体的な数字で算出・可視化している点。
- 正しい専門知識(リテラシー): これが最も重要です。
なぜ「知識」が成果に直結するのか?
審査講評でも、「成果に至るプロセスや関係者との連携のエッセンスを掴み取ってほしいと述べられています 。 形だけのSDGsやグリーンウォッシュに陥らず、実際のビジネスで成果を出すためには、担当者が「GX(脱炭素・循環経済)の体系的な知識」を持っていることが大前提なのです。
まずは社内の「共通言語」を作ることから始めよう
「うちの会社には、専門知識を持った担当者がいない」 「何から手をつければいいか分からない」
そうお悩みの方も多いのではないでしょうか。今回受賞した企業の多くも、最初から完璧だったわけではありません。社内で勉強会を開き、外部の知見を取り入れ、地道にリテラシーを高めてきた結果が、今回の受賞につながっています。
自社のGXを加速させる第一歩は、「社員の知識レベルを底上げすること」です。
「GX検定」で確かな知識を武器にする
GX推進に必要な基礎知識から、最新の国内外の動向、実践的なスキルまでを体系的に学べるのが「GX検定」です。
- 体系的なカリキュラム: 環境省認定制度「脱炭素アドバイザー」に対応しており、信頼性の高い知識が身につきます。
- 共通言語の形成: 社員が検定を受けることで、GXに関連する共通言語が生まれ、プロジェクトのスピードが格段に上がります。
- 全社的な意識改革: 一部の担当者だけでなく、営業や製造現場の社員も学ぶことで、ボトムアップの提案が生まれやすくなります。
今回のグリーン購入大賞で評価されたような「選ばれる企業」になるために。 まずは、あなた自身とチームの「GXリテラシー」を高めることから始めませんか?


