「サプライチェーン全体での排出量算定を求められても、既存業務で手一杯だ」 「脱炭素電源への移行と言われても、それを担える専門家が社内のどこにもいない」
2024年末に公表された「GX2040ビジョン」や「第7次エネルギー基本計画」 。国の方針として大きな方向性が示されるたび、エネルギー業界の現場マネジメント層は重いため息をついているのではないでしょうか。
「脱炭素電源へ移行せよ」という大号令の一方で、足元には「安定供給」という絶対的な使命があり、既存インフラの維持・効率化も手放せません 。さらに水素・アンモニア、CCSといった新技術の実装が求められますが、それを牽引できる人材は枯渇しています。
本記事では、こうした「総論はわかるが各論で詰む」状況を打破するために、エネルギー業界特有の事情に即した「人材定義のフレームワーク」と、それを支える「予算(補助金)活用」のヒントを、スキルアップGreenのホワイトペーパー「エネルギー業界に必要なGX人材育成の全体像とは?」を基に詳しく解説します。
>>「エネルギー業界に必要なGX人材育成の全体像の資料をダウンロードする」
政策加速が生む「構造的な人材枯渇」と企業リスク
政府の「成長志向型カーボンプライシング構想」により、今後10年で150兆円規模という巨額のGX投資が動こうとしています。しかし、ハード(設備)への投資計画に対し、ソフト(人材)の供給は圧倒的に追いついていません。
たとえば、脱炭素電源として重要視される原子力分野。技術継承が叫ばれていますが、原子力関連学科の入学者数は減少傾向にあります。
また、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札である洋上風力発電も同様です。政府は2040年までに30〜45GWという野心的な導入目標を掲げていますが、その建設・運用を担う施工や調査の専門職は不足しています。
※詳細はホワイトペーパー p.13(原子力)、p.16(洋上風力)を参照
ここで「人がいないから」と対応を先送りすることは、エネルギー供給事業者として致命傷になりかねません。単なるビジネス機会の損失にとどまらず、以下のような複合的なリスクを招くからです。
- 化石燃料市場の縮小による事業基盤の揺らぎ: 2028年から導入予定の「化石燃料賦課金」などにより、既存事業の競争力が相対的に低下します。
- 市場評価・採用競争力の低下: 「脱炭素に取り組まない企業」というレッテルは、投資家からの評価を下げるだけでなく、優秀な人材の獲得も困難にします。
つまり、GXへの対応は「環境貢献」ではなく、企業としての「生存戦略」そのものです。
曖昧な「GX人材」を分解する。「攻め」と「守り」の4象限ポートフォリオ
では、限られたリソースでどのように人材を育成すればよいのでしょうか。
エネルギー業界の業務は幅広く、「全社員一律のGX研修」を実施しても、現場の実務には直結しません。まずは漠然とした「GX人材」という言葉を解像度高く分解し、自社に必要な人材要件を構造化する必要があります。
有効なのが、縦軸に「脱炭素知識 ⇔ 自社事業知識」、横軸に「攻め ⇔ 守り」を取った「4象限マトリクス」での定義です。
1. 【守り×脱炭素】専門知識を持つプロフェッショナル
非財務情報の開示や、Scope1,2,3 の算定を担う実務部隊です。複雑化する国際ルールや規制に対応し、正確なデータを経営層やステークホルダーに提示する役割を担います。
2. 【守り×自社事業】組織運営の高度化人材
既存のマネジメントプロセスに脱炭素の視点を組み込む層です。現場のオペレーションを熟知した上で、脱炭素に関するマネジメントシステムの設計・運用を行います。
3. 【攻め×脱炭素】新規事業開発人材
再エネ、新燃料(水素・アンモニアなど)、CCSといった未知の領域を事業化する「切り込み隊長」です。脱炭素の知見を武器に、新たな収益源を創出します。
4. 【攻め×自社事業】既存事業の高度化人材
既存の火力発電所やインフラの現場を知り尽くしたエンジニア層です。現在の設備や技術に低炭素技術を実装し、既存事業の脱炭素化を技術面から推進します。
※4象限の図解はホワイトペーパー p.20を参照
重要なのは、外部からすべてのスキルを持った人材を採用することではありません。既存社員が今いる位置(自社事業知識)を起点に、どの象限へリスキリングするかを設計し、現実的な配置転換を行うことです。
現場の「リソース不足」を補う、具体的アクション
「4つのタイプ」という方向性は見えても、実務担当者が次にぶつかる壁は「具体的なカリキュラム(教材)がない」「育成にかける予算がない」というリソースの問題でしょう。
今回紹介したホワイトペーパーには、その壁を越えるためのGX人材育成の現状と全体像を収録しています。
- 詳細タスク定義と育成ロードマップ:設計の初期段階から、製造・廃棄までの環境負荷を精緻に計算し、開発部門にフィードバックを行う役割です。
- 令和7年度(2025年度)GX関連補助金一覧:炭素税や排出量取引制度(GX-ETS等)の導入を見据え、財務へのインパクトを最小化するための戦略を立案・実行します。
自社の人材戦略を経営層に提案し、必要な予算を確保するための「根拠資料」として、ぜひご活用ください。


