IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは?報告書と影響を解説

地球温暖化や気候変動といった環境問題を理解するには、IPCCという組織の知識が不可欠です。
そこで今回は、気候変動に関する国際的な影響力を持つIPCCとはどのような組織なのか、その役割や目的について、そしてIPCCの具体的な活動内容を解説します。IPCCを詳しく理解するために、この記事が参考になれば幸いです。
IPCCが定期的に公開する報告書の内容についても詳しく説明しますので、参考にしてください。
<目次>
- IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは
- IPCC(気候変動政府間パネル)の目的
- IPCC(気候変動政府間パネル)の組織構成
- IPCC(気候変動政府間パネル)の活動内容
- IPCC(気候変動政府間パネル)の報告書が作成されるプロセス
- IPCC(気候変動政府間パネル)が提供する報告書の種類
- IPCC(気候変動政府間パネル)第1次評価報告書(FAR)1990年の要点
- IPCC(気候変動政府間パネル)第2次評価報告書(SAR)1995年の主要ポイント
- IPCC(気候変動政府間パネル)の第3次報告書(TAR)2001年の概要
- IPCC(気候変動政府間パネル)の第4次報告書(AR4)2007年の主要論点
- IPCC(気候変動政府間パネル)第5次評価報告書(AR5)2013〜2014の主要論点
- IPCC(気候変動政府間パネル)第6次評価報告書(AR6)2021年の重要ポイント
- IPCC(気候変動政府間パネル)報告書と気候変動への政策影響
- まとめ
>>「EUの規制動向から読み解くGXとの向き合い方の資料ダウンロードする」
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは
出典:環境省|ecojin
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された機関で、気候変動の評価を行う主要組織です。IPCCの正式名称は「Intergovernmental Panel on Climate Change」です。
IPCCは気候変動の現状やその社会への影響について、専門家や科学者による明確な科学的根拠を提供します。ただし、独自の研究は行わず、既存の科学知見を総合的に評価し、政策交渉の基盤となる報告書を作成する役割を担っています。
すなわち、IPCCは気候変動の科学的知見を評価し、政策決定者に情報を提供する国際機関として機能します。
そして、こうして発表された評価報告書は、国際交渉や政策立案の基盤となり、科学的合意形成に寄与しています。
IPCCの事務局はスイスのジュネーブにあるWMO本部内に設置され、少人数のスタッフが業務を行っており、2024年11月時点で195の国や地域が参加しています。
IPCCは、政策的に中立で科学的中立性を重視し、特定の政策提言を行わない機関として、科学知見に基づく政策決定を支援しており、この活動が認められ、2007年にノーベル平和賞を受賞しました。
参考:IPCC — Intergovernmental Panel on Climate Change
参考:気候変動の科学的知見 | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
IPCC(気候変動政府間パネル)の目的
IPCCの主な目的は「気候変動に関する政策に科学的基盤を提供すること」です。
しかし、IPCCで研究を行うわけではありません。世界中の科学者が協力し、科学誌に掲載された論文などを基に、定期的な報告書を作成し公表することで、国際交渉や政策立案の基盤となる科学的意見を提供しています。
IPCCが発表する報告書には、定期報告書と特定のテーマに特化した「特別報告書」があり、現在は第6次評価報告書(AR6)は2023年3月に統合報告書が発表され、完了しました。。そして、2023年7月にIPCCのビューロー(議長団)メンバーが選出され、第7次評価報告書(AR7)の準備が始まりました。
このように、IPCCは最新の科学知見を評価し、世界の政策決定者に科学的基盤を提供する組織であり、報告書を通じて各国政府や人々に気候変動対策の科学的根拠を提供することを目的としています。
IPCC(気候変動政府間パネル)の組織構成
IPCCは、3つの作業部会とインベントリー・タスクフォースによって構成されています。
IPCCのビューロー(議長団)は、報告書作成を指導し、科学的な助言を与えますが、執筆者の推薦と選定は各国政府や関連機関によって行われます。
それぞれの役割は以下の通りです。
「3つの作業部会+インベントリー・タスクフォース」で編成
・第1作業部会(WG1) (科学的根拠) |
気候システムと気候変動に関する自然科学的根拠の評価を行います。 |
・第2作業部会(WG2) (影響、適応、脆弱性) |
生態系や社会、経済などに対する影響とその適応策の評価を担当します。 |
・第3作業部会(WG3 ) (緩和策) |
温室効果ガス削減など気候変動対策の評価に取り組みます。 |
・インベントリー・タスクフォース(TFI) (国別温室効果ガス目録) |
各国の温室効果ガス排出と吸収の目録作成ための手法開発を行う。 |
各作業部会の内容は以下で詳述します。
第1作業部会(WG1)- 自然科学的根拠の評価
第1作業部会は、科学的証拠に基づいて、気候システムと気候変動の現在と将来の予測に関する評価を行います。
過去の観測データを基に、地球温暖化や温室効果ガスの影響と人間の活動の関連性を報告します。
科学に基づく客観的データを用いて現状の分析と将来予測を行う第1作業部会は、例えば気温上昇や海面上昇などの予測データを提供します。
・第1作業部会の目的:気候システムと気候変動の自然科学的根拠を評価。
第2作業部会(WG2)- 影響・適応・脆弱性の評価
第2作業部会では、気候変動が自然環境や人間に与える影響、及び潜在的なリスクを総合的に評価します。
水資源への影響、生物の生息地の変化、農作物への影響、海面上昇、異常気象や熱波といったリスクも含まれ、これらが生態系や人間活動に及ぼす好影響と悪影響を分析します。
つまり、生活に密接に関連する影響の報告書をまとめるのが第2作業部会の焦点です。
・第2作業部会の目的:気候変動が社会経済と自然システムに与える脆弱性、影響、そして適応策を評価。
第3作業部会(WG3)- 気候変動の緩和策の評価
第3作業部会は、地球温暖化と気候変動の緩和を目指し、温室効果ガスの排出削減量や削減方法についての評価を主に行います。
温室効果ガスを削減することで、どの程度地球の温暖化が防止できるか、また必要なコストなどを報告書で評価します。
・第3作業部会の目的:温室効果ガス削減など、気候変動対策のための緩和策を評価。
インベントリー・タスクフォース
インベントリー・タスクフォースは、IPCC国別温室効果ガスインベントリープログラムに関連する業務に取り組み、温室効果ガス排出量の計算法を収録したガイドラインを提供します。
また各国がその排出量と吸収量を測定し報告するための国際基準の確立と適用促進、関連ソフトウェアの開発を行っています。
・インベントリー・タスクフォース:各国が温室効果ガスの排出量を評価し、国際的な整合性を保つためのガイドライン策定を支援する。
IPCC(気候変動政府間パネル)の活動内容
IPCCの主な活動は、気候変動に関する最新の科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、報告書にまとめることです。
各国の政府から推薦された専門家や科学者が作成し、数年ごとに気候変動に関する報告書が作成されます。
1990年の第1次報告書から始まり、2023年までに第6次報告書の公表が終わり、現在では第7次報告書の作成プロセスに移行しています。
世界中の科学論文などをIPCCのメンバーが評価し、国際交渉や政策立案の基準となる報告書を5〜6年おきに発表しており、報告書にまとめることがIPCCの主な活動内容になっています。
IPCC(気候変動政府間パネル)の活動が与える影響
IPCCの活動が与える影響は幅広く、各国の地球温暖化対策の取り組みに影響するなど、気候変動対策に関して国際的に強い影響力を持っています。
ここではIPCCの活動が具体的にどのような影響を与えてきたのかについて解説していきます。
・ノーベル平和賞の受賞
IPCCは2007年にアル・ゴア元アメリカ副大統領と共にノーベル平和賞を受賞しています。
気候変動の科学的理解を深め、地球温暖化が引き起こすリスクについて、世界に警鐘を鳴らす努力が評価された結果であり、人為的に引き起こされる地球温暖化の認知を高めたことに対する評価として、ノーベル平和賞を受賞しています。
・UNFCCC(気候変動枠組み条約)
IPCCの報告書は、世界中の政策決定者から引用され、「気候変動枠組条約(UNFCCC)」などの国際交渉や国内政策のための基礎情報となっており、例えばIPCCによって公表された第1次評価報告書(FAR)は、1992年に採択されたUNFCCCの重要な科学的根拠とされています。
・京都議定書
1995年に発表された第2次報告書は、1997年のCOP3で採択された温室効果ガス排出量削減に関する国際合意の場でもその国際的な決め事「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」に対し影響力を持ちました。
・パリ協定
IPCCが作成する報告書は多くの専門家や世界中の科学者の意見、科学論文が採用された科学的根拠に基づいた報告書のため信頼性が高く、COP21で採択されたパリ協定では「世界の平均気温を1.5度に抑えること」など、報告書の内容にIPCCの報告書の内容が盛り込まれています。
・COP=気候変動枠組み条約締約国会議
COP(コップ)は1995年から毎年開催されている気候変動対策を話し合う国際的な会議のことですが、2021年に開かれたCOP26(気候変動枠組条約締約会議)では、気候変動対策の議論の指針になるほど重視され強い影響力を持っています。
このように、IPCCが作成した報告書は、科学的な根拠に基づくことからCOPの議論の指針になるほど重視されています。
COPについては以下でも詳しく解説しています。
>>>「COP(Conference of the Parties)とは|COP29・COP30の最新動向と日本の取り組みを解説」
IPCC(気候変動政府間パネル)の報告書が作成されるプロセス
出典:経済産業省資源エネルギー庁|気候変動対策を科学的に!「IPCC」ってどんな組織?
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の主要な業務は、世界中の科学論文を評価し、国際交渉や政策立案の基準となる報告書を作成することです。
IPCCの報告書は、3つのワーキンググループがそれぞれ作成した報告書で構成されています。
そして、これらの報告書は、さまざまな手続きに従って作成されています。
・2018年10月:1.5℃特別報告書
・2018年8月:土地利用特別報告書
・2019年9月:海洋・雪氷圏特別報告書
・2021年8月:第1作業部会報告書:自然科学的側面
・2022年2月:第2作業部会報告書:影響、適応および脆弱性
・2022年4月:第3作業部会報告書:気候変動の緩和策
・2023年3月:統合報告書の公開
2023年3月、第6次報告書の統合報告書が公開され、第7次報告書の準備作業が開始されています。
執筆時点では、「気候変動と都市に関する特別報告書」が進行中です。
参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第7次評価報告書(AR7)サイクル | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
参考:気候変動対策を科学的に!「IPCC」ってどんな組織?|エネこれ|資源エネルギー庁
ここから、IPCC報告書が作成される具体的な手順について見ていきましょう。
1:スコーピング、概要設定、執筆者の選定
最初に、各国の政府や関係団体から専門家が推薦されます。
推薦された専門家が集まり、報告書の大まかな構成案を作成します。これが承認されると、議長団が推薦した専門家の中から執筆者を選びます。
2:下書き作成【第1次、第2次、最終】
選定された執筆者が最初のドラフトを作成し、専門家によるレビューが行われます。その後、第2次ドラフト(改訂版)と、政策決定者向けの要約(SPM)が作成されました。
SPMは、政策決定者向けの要約を意味します。
3:報告書の承認・受諾・公開
各国の政府と専門家が第2次ドラフトとSPMの初稿をレビューし、最終版の内容を決定します。最終ドラフトは各国の政府が評価を行い、承認された報告書とSPMは公開されます。
報告書には可能性や信頼性の表現に関する詳細な基準が設けられており、曖昧さを避けるために工夫されています。
また、「可能性」は統計データや専門家の判断に基づき、特定の用語として用いられ、斜体で表記されることがあります。IPCCの報告書は公式サイトで公開され、環境省のホームページではSPMの和訳が提供されています。
参考:IPCC — Intergovernmental Panel on Climate Change
参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
IPCC(気候変動政府間パネル)が提供する報告書の種類
IPCCは、定期的に更新される報告書と、特定のトピックに焦点を当てた「特別報告書(技術報告書や方法論報告書を含む)」の2つのタイプの報告書を発行しています。
以下、それぞれの報告書にどのような内容が含まれているのかを詳しく見ていきましょう。
1:評価報告書(Assessment Report)
評価報告書は、気候変動の全体像を最新の科学に基づいて総合的にまとめたものです。
これには、「WG1:自然科学的根拠」、「WG2:影響・適応・脆弱性」、「WG3:気候変動の緩和」の3つの作業部会が、それぞれの専門領域に基づく報告書を作成し、最終的に統合した形で提供されます。
このシリーズは、IPCCの中心となる活動で、約5年から7年間のサイクルでまとめられ、政策決定者に科学的な基礎を提供する最も重視される報告書です。
評価報告書は、国際協定などの気候変動対策に大きな影響を与えてきました。例えば、京都議定書やパリ協定、COP26での議論にも重要な指針を提供しています。
2:特別報告書(Special Report)
特別報告書は、評価報告書とは別に「特定のテーマ」に絞って作成されます。
気候変動枠組条約の補助機関や関連の国際機関からの要請に応じて、IPCC総会で承認された後に特別報告書の作成が開始されます。
具体的な例として、2015年のパリ協定では平均気温の上昇を1.5度未満に抑えることが目標として掲げられ、このための特別報告書が2018年に公表されました。報告書では、「1.5°Cの地球温暖化の解釈」、「予測される影響」、「排出経路」といった各分野にわたって詳細な分析が行われています。
参考:1.5°C特別報告書
3:方法論報告書(Methodology Report)と技術報告書(Technical Paper)
これらの報告書も特定のテーマを掘り下げた内容になっており、特別報告書に類似しています。
方法論報告書は、温室効果ガスの排出や吸収の測定方法を提供し、必要に応じてIPCCが策定します。技術報告書も、機会があるときに作成され、気候変動枠組条約の締約国が科学技術的な知見を必要とする際に参考にされます。この場合、既に発表されている評価報告書や特別報告書の内容が包含されます。
IPCC(気候変動政府間パネル)報告書の過去の内容の概要
これまでのIPCCの報告書を要約すると次の通りになります。
報告書 | 公表年 | 内容 |
---|---|---|
第1次報告書(FAR) | 1990年 | 気温上昇の予測 |
第2次報告書(SAR) | 1995年 | 地球全体の気候への影響 |
第3次報告書(TAR) | 2001年 | 可能性が高い(66%以上) |
第4次報告書(AR4) | 2007年 | 非常に高い可能性(90%) |
第5次報告書(AR5) | 2013〜2014年 | きわめて高い可能性(95%) |
第6次報告書(AR6) | 2021年 | 疑う余地がない |
これらの報告書は、地球温暖化に対する人間活動の影響をどのように位置付けてきたかを明らかにしていますが、最新の報告書では「疑う余地がない」と表現しています。
参考:気候変動の科学的知見 | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
ここからは、1990年の第1次報告書(FAR)から現在の第6次報告書(AR6)2021年に至るまで、IPCCの評価がどのように進化してきたのかを古いものから順を追って、より詳しく解説します。
IPCC(気候変動政府間パネル)第1次評価報告書(FAR)1990年の要点
1988年にスイス・ジュネーブで開催された「IPCC第1回総会」で、IPCC第1次評価報告書の作成が決まりました。
そして、地球温暖化に関する世界中の研究者による成果を評価し、それをまとめたIPCC第1次評価報告書が1990年に公開されました。
IPCC第1次評価報告書は1990年6月の第3回総会で承認され、温室効果ガスに関する研究がその主題となっています。
この報告書では、「人間活動に由来する温室効果ガスが大気中に持続的に放出されると、生態系や人類に深刻な影響を及ぼす気候変化を引き起こす可能性がある」と警告し、この言及は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択と1994年の発効に大きな力となりました。この報告書は、地球温暖化防止策を推進するうえで極めて影響力があるとされています。
さらに、1992年には、第1次評価報告書を基にした「補足報告書」が完成され、1990年以降の新たな科学的発見が追加されています。
第1次評価報告書(1990年)の主要なポイント
・人的活動によって排出された温室効果ガス(CO2、メタン、フロン、一酸化二窒素)が大気中で着実に増加(産業革命以前より二酸化炭素換算で50%増)しており、このため地球の温暖化が進行している。
・モデル研究、観測及び感度解析によれば、CO2が倍増した際の全球平均気温の上昇幅は1.5〜4.5℃の間と予測されている。
・長期間残留する温室効果ガスについては、排出を削減しても大気中での濃度変化がゆっくりとしか現れない。
・過去100年間において、全球平均地上気温は0.3〜0.6℃上昇し、海面も10〜20cm上昇した。
・(何も対策をとらなければ)、21世紀末までに、全球平均地上気温は約1〜3℃上昇すると予測される[10年で約0.3℃(0.2〜0.5℃)、2025年までに約1℃、21世紀末までに3℃]。
・(対策を講じなければ)、21世紀末までに、全球平均海面水位は35〜65cm上昇する見込み[10年で約6cm(3〜10cm)上昇、2030年までに約20cm、21世紀末に65cm(最大1m)上昇]。
(注意事項)
・IPCCの知見はまだ完全ではなく、気候変化に関する予測、特にその発生時期、規模、地域的なパターンには多くの不確定要素がある。
・温室効果の強さを観測で明確に証明することは、今後10年程度では困難と考えられる。
参考:第1次評価報告書(FAR)概要 (1990年) | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
IPCC(気候変動政府間パネル)第2次評価報告書(SAR)1995年の主要ポイント
IPCCの第2次評価報告書(SAR: Second Assessment Report: Climate Change 1995)は、1995年にローマで開催された第11回IPCC会合において承認され、発表されました。
この報告書は、第1次評価報告書を大幅に改訂し、1990年以降に得られた科学的知見を基に地球温暖化に関する情報をまとめたものです。この報告書では、
「全球の平均気温と海面の上昇に関する予測から、人類の活動が地球の気候を歴史上類を見ないほど変化させる可能性があることが示されている」
「温室効果ガスの蓄積に対する気候の反応は非常に長い時間がかかるため、気候変動の一部はすでに取り返しがつかない状況となっている」
とされ、第1次報告書よりも分析がより進み、経済学的側面に重点が置かれた内容になっています。
第2次評価報告書(1995年)の主要な内容
・人為的な活動が地球温暖化を引き起こしていることが確認された。これにより、第1次報告書では曖昧だった人為的影響についてより明確な表現が用いられ、水資源、農業、生態系、健康、生活環境に関する詳細な予測が示されることになった。
・過去100年間において、全球の平均地上気温は0.3~0.6℃上昇し、海面は10~25cm上昇したことが示された。これらの数値は第1次報告書とほぼ一致している。
・適切な対策が講じられなければ、21世紀末までに全球の平均地上気温は0.9~3.5℃上昇することが予測されている。第1次報告書では約1~3℃の上昇が見込まれていた。
・同様に、全球の平均海面水位は15~95cmの上昇が予測されている。第1次報告書では35~65cmの上昇が見込まれていた。
・温室効果ガスの大気中濃度を安定させ、地球温暖化を抑制するためには、将来的に1990年の排出量を下回る水準まで削減する必要がある。
・省エネルギーなどにより経済的な利益を享受しつつ、大幅な温室効果ガス排出削減が可能である技術が存在している。
参考:引用:環境省『IPCC第2次評価報告書(SAR)の概要』
IPCCの第2次評価報告書(SAR)では、温室効果ガスの排出源や温暖化の影響に焦点が当てられ、大気汚染物質のモニタリングの重要性が確認されました。これを受け、観測と影響の分析が進められるようになっています。
IPCC(気候変動政府間パネル)の第3次報告書(TAR)2001年の概要
2001年に発表されたIPCC第3次報告書(TAR:第三次評価報告書:気候変動2001)は、従来の評価結果を基に、地球温暖化に関する最新の科学的洞察を結集し、UNFCCCのCOP7で提出されました。
この報告書では、地域ごとの詳しい評価や発展途上国・産業界からの意見が特に重視されました。これまでの3つの作業部会の報告書に加え、主要テーマをまとめた「統合報告書(SYR:統合報告書)」が新たに作成され、政策決定者向けの内容に焦点が当たっています。
報告書では、「過去50年間の温暖化の大部分が人間の活動によるものである」という新しい、より強力な証拠が示され、第2次報告書が示した「人間活動の影響による地球温暖化の進行確認」から一歩踏み込んだ内容となり、多様な分野に影響が現れていることが言及されています。
将来予測においても「報告書で示された気温上昇率は、過去1万年で見られたことがない大きさになる可能性が高い」とされ、温暖化防止技術の進展も報告しています。これにより、緩和策の重要性が一層強調されました。
第3次報告書(2001年)の主要な内容と概要
・過去50年の温暖化の大多数は人間の活動によるものであるという新しい証拠が得られた。
・過去100年で、世界の平均地上気温が0.6±0.2℃(0.4~0.8℃)上昇し、海面は0.1~0.2m上昇したと報告された。
・21世紀末までに、地上気温は約1.4~5.8℃上昇すると予測される。(35のSRESシナリオによる予測レンジで、第2次報告書の0.9~3.5℃上昇予測を上方修正)
・21世紀末までに、海面水位は0.09~0.88m上昇すると予測。(35のSRESシナリオによる予測幅で、第2次報告書では15~95cmの上昇を予測)
・多くの証拠が、最近の地域的気温変化が多くの物理・生物システムに影響を及ぼしていることを高い確信をもって示している。
・技術的対策が大きく進展しており、緩和策には多くの可能性があることが明らかになった。
・緩和策を成功させるには技術や社会経済的な障害を越える必要があり、総合的な対策の推進が効果的である。
参考:第3次評価報告書(TAR)概要 (2001年) | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
IPCC(気候変動政府間パネル)の第4次報告書(AR4)2007年の主要論点
2007年11月にスペインのバレンシアで開かれた第27回IPCC総会にて、第4次評価報告書(AR4: Fourth Assessment Report: Climate Change)が承認されました。
この報告書は、「気候変動とその影響の観測データ」、「変動の主因」、「将来予測される気候変動とその影響」、「適応と緩和策」、「長期的視点」といったセクションに分かれ、以下の内容を報告しています。
1. 気候変動とその影響に関する観測データ
・気候の温暖化は疑う余地がなく、これは大気や海の平均温度上昇、雪や氷の溶解、海面水位の上昇などを観測することで明白に示された。
・すべての大陸や多くの海域での観測データは、多くの自然システムが地域的な気候変化、特に気温上昇に影響されていることを示唆。
・適応や気候によらない要因が影響し、特定が難しいケースもありますが、地域的な気候変動が自然環境や人間の活動に与える影響が見られるとの確信度は中程度。
2.変動の主因
・産業革命以降、人間活動により温室効果ガスの排出が増加しており、1970年から2004年の間に70%増加した。
・人間活動の影響で、CO2、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)などの濃度が1750年以降大きく上昇し、工業化以前の何千年もの濃度を大きく上回るようになった。
・20世紀半ば以降の気温上昇の大部分は、人為的な温室効果ガス濃度の増加が原因である可能性が高い。50年以上にわたって、多くの大陸で人為的温暖化が発生した可能性がある。
・第3次評価報告書以降の新たな研究により、人為的な影響が気温以外の気候の側面へも広がっていることが示された。
・過去30年にわたる人為的温暖化は、地球規模で物理的・生物的システムに観測可能な影響をもたらしている可能性が高い。
3.将来予測される気候変動とその影響
・現在の気候政策と持続可能な開発戦略において、今後数十年間は温室効果ガス排出量が増加を続けるとの見解が多数派。
・温室効果ガスの排出がさらに拡大すると、21世紀中に多くの気候変動が起こり、20世紀に観測された変化を超える可能性がある。
・気候モデルによる、温暖化の分布や地域ごとの変化(風、降水、極端な気象現象)に関する予測の信頼性が第3次評価報告書以降で向上した。
・最新の研究により、気候変動の規模や速度の違いによって影響の発生のタイミングや程度への理解が深まった。
・極端な気象イベントや海面上昇は、自然環境や人間の生活に悪影響を及ぼすと予想。
・温室効果ガス濃度が安定しても、気温や海面の上昇は数世紀続く。
・気候変動の速さと規模によっては、人間の活動が急激な影響を引き起こす可能性がある。
4.適応と緩和策
・様々な適応策が利用可能だが、将来の気候変動の脆弱性を減らすためには、現在以上の幅広い適応が求められ、障害やコストについての理解は不充分。
・適応能力は社会や経済の成長と密接に結びついているものの、間で均一ではない。
・多くの研究は、今後数十年間にわたり温室効果ガス排出を抑制し、削減する大きな経済的可能性があると示しているものの、部門により違いがある。
・各国政府は、緩和行動を促進するための様々な政策を考慮できるものの、それらは国ごとの差異やそれぞれのセクターにより変わる。
・国際協力により温室効果ガスの排出を削減する多くのオプションがあることが確認されており、気候変動枠組条約と京都議定書は国際的な対応を樹立し、炭素市場を形成。
・一部のセクターでは、持続可能な発展の他の側面と協調して気候対応策を実施することが可能。政策決定が排出量や適応能力に大きく影響。
5.長期的視点
・「気候システムへの危険な人為的干渉」の判断には価値観が影響するものの、科学は情報に基づく意思決定をサポートする基準を提供できる。
・第3次評価報告書で挙げられた5つの「懸念する理由」は、引き続き有効な評価枠組みで、これらの理由は以前よりも強調されている。リスクは高い確信度で特定され、低い気温上昇でも影響が顕在化する可能性がある。
・適応と緩和策は相互補完的で、気候変動リスク低減のために両方が必要である。
・多くの影響は、緩和によって削減、遅延、防止することが可能。今後20~30年の緩和努力が安定化の機会に大きく影響する。排出削減を遅らせることはリスクを増加させる。
・評価されたすべての安定化レベルは、現行技術や今後商業化される技術で達成可能である。技術の発展や普及を促すための効果的なインセンティブが必要。
・緩和のコストは、厳しい目標ほど増加するものの、特定の国やセクターでばらつきがある。
・気候変動対策には被害、協働利益、持続可能性などを包括する反復型のリスク管理プロセスが必要。
参考:IPCC第4次評価報告書について | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
IPCC(気候変動政府間パネル)第5次評価報告書(AR5)2013〜2014の主要論点
IPCCの第5次評価報告書(AR5:Fifth Assessment Report: Climate Change)は、2014年11月1日にデンマークのコペンハーゲンで開催された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第40回会合で正式に承認されました。
2015年末にはパリでの気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が控えており、このCOP21で合意されたパリ協定における重要な資料となりました。
この報告書は第4次から科学的知見や環境意識が大きく進展し、気候変動に対する理解が一段と深まりました。世界規模での気候観察や、過去数百年から百万年に遡る気候の復元が進んだことにより、大気、海洋、氷、陸地の変動や長期的な変化の展望がより明確になり、重要な分岐点となりました。
【IPCC(気候変動政府間パネル)第5次評価報告書の中核となる概念図】
出典:気候変動2014 影響、適応及び脆弱性政策決定者向け要約 技術要約
IPCC第5次評価報告書は、気候システムと社会経済プロセスの相互作用が災害や脆弱性の根本的要因であるという考え方に基づいて作成されています。
また、報告書内の「ガバナンス」とは、「組織や社会のメンバーが主体的に公共の役割を担い、意思決定や合意形成を行う仕組み」であると説明されています。
・観測された変化とその要因
人間が気候システムに与える影響は明らかであり、最近の人為的な温室効果ガスの排出量は過去最高を記録。気候変動は人間と自然に幅広い影響を与えてきた。
・気候システムで見られた変化
気候システムの温暖化は疑う余地がなく、1950年代以降の多くの変化は過去数十年から数千年で前例のないものである。大気と海洋が温暖化し、氷の量が減少し、海面が上昇している。
・気候変動の要因
工業化以前から人為的な温室効果ガスの排出は増加し、主に経済成長と人口増加が原因である。
これにより、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の濃度は過去80万年で前例のない水準に達し、気候システムの全要素における変化の主因。
・気候変動の影響
ここ数十年、気候変動は全ての大陸と海洋で自然と人間システムに影響を及ぼしている。これらの影響は、気候変動そのものの影響と無関係に、気候に対する自然および人間システムの感受性を示している。
・極端な気象現象
1950年代以降、多くの極端な気象や気候現象が変化している。
これには、人為的影響が関連するものもあり、極端な低温の減少、高温の増加、潮位の上昇、強い降水の頻度増加が含まれる。
・将来の気候変動、リスク、および影響
温室効果ガスの排出が続くと、さらなる温暖化と気候システム全体の変化を引き起こし、これにより人々と生態系に深刻で不可逆的な影響を与える可能性が高まりうる。
これを抑制するには、温室効果ガスの排出を大幅に削減し、適応と合わせて実施する必要がある。
・将来の気候の主な推進因
二酸化炭素の累積排出量が、21世紀後半以降の地表温暖化の主な要因。
温室効果ガス排出の予測は、多様な社会経済的発展と気候政策に依存している。
・予想される気候システムの変化
地上気温は21世紀中に全ての排出シナリオで上昇すると予測される。
熱波は多くの地域でさらに頻繁に長く続き、極端な降水もより強く頻繁になる。
海洋では引き続き温暖化と酸性化、そして平均海面水位の上昇が観測される。
・気候変動による将来のリスクと影響
気候変動は既存のリスクを拡大し、新たなリスクを生じさせる。
リスクは偏在しており、発展途上国を含む多くの社会に影響を及ぼすうえに、特に脆弱な集団が大きなリスクに直面する。
・2100年以降の気候変動、不逆性、急激な変化
温室効果ガスの人為的排出が停止しても、気候変動の多くの影響は何世紀にもわたり続く。
急激かつ不逆な変化のリスクは、温暖化が進むと増大する。
・適応、緩和、持続可能な開発への道筋
適応と緩和は、気候変動リスクの管理を補完する戦略である。大幅な排出削減は21世紀とそれ以降の気候リスクを低減し、適応策の可能性を高め、持続可能な開発に貢献する。
・気候変動に関する意思決定の基礎
気候変動とその影響を抑制するための効果的な意思決定は、ガバナンス、倫理、公平性、価値判断、経済的評価、リスクに対する理解が求められ、幅広い分析アプローチによって明らかにされる。
・緩和や適応が軽減する気候変動リスク
追加の緩和努力がなければ、21世紀末までの温暖化によるリスクは、非常に高いレベルに達する。
緩和には利益とリスクが伴うが、これらは深刻な影響と比較して小さいため、早期の緩和努力が求められる。
・適応策の特徴
適応は特に気候変動の進度が速い場合には、有効性に限界がある。
長期的には持続可能な開発の文脈で多くの即時的な適応行動が将来の選択肢を拡大する。
・緩和経路の特徴
温暖化を2℃未満に抑える緩和経路は多数あり、これらは大幅な温室ガス削減を必要とする。
これには技術的、経済的、社会的課題が伴い、特に緩和の遅延や技術の欠如があれば一層難しくなる。
・適応と緩和
単一の選択肢で十分に対応することは困難で、効果的な政策と協力が必要である。他の社会的目標と連動する統合的なアプローチにより強化される。
・適応と緩和の共通要因と制約
適応と緩和は効果的な制度、ガバナンス、技術革新、持続可能な生計、行動と生活選択に支えられている。
・適応策の選択肢
適応策は多方面にわたるが、地域や分野で異なる効果をもたらす。そして、気候変動の進行で課題が増加する。
・緩和策の選択肢
緩和の選択肢はエネルギー使用、温室ガスの低減、土地利用の改善、炭素吸収力を強化する多面的アプローチが効果的である。
・対応に関する政策アプローチ
効果的な適応と緩和は多層的政策に依存し、技術開発や資金支援がその実効性を向上させる。
・持続可能な開発との関係
気候変動は持続可能な開発への挑戦だが、統合対応により緩和や適応と他の目標追求の機会が得られる。
成功は適切な手段とガバナンスおよび対応能力にかかっている。
参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)サイクル | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
IPCC(気候変動政府間パネル)第6次評価報告書(AR6)2021年の重要ポイント
2023年3月、スイスのインターラーケンでIPCCの第6次評価報告書(AR6:気候変動に関する評価)が発表されました。
IPCC第41回総会によると、2024年時点でこの報告書は最新の情報源となる予定ですが、前回の2014年の第5次統合報告書以来、約9年ぶりの更新となります。
この報告書では、「2040年までに世界の平均気温が1.5℃上昇する可能性が50%以上ある」という新しい予測を示し、国連のグテーレス事務総長は「報告書は人類に差し迫った危険の警告だ。温室効果ガスの排出が地球と何十億もの命を危うくしている」と強調し、即座に温室効果ガス対策を講じる必要性を訴えました。
最も重要な点としては、温室効果ガスの排出を2035年までに60%削減(CO2については65%削減)し、2040年までには69%削減(CO2は80%削減)することの必要性が指摘されています(2019年比)。
IPCC第6次報告書の詳細な内容は「政策決定者向け要約」で確認可能ですが、ここではその主要ポイントを整理して簡潔に解説します。
参考:気象庁 Japan Meteorological Agency
参考:IPCC報告書AR6発表「2035年までに世界全体で60%削減必要」 |WWFジャパン
参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル | 地球環境・国際環境協力 | 環境省
1:地球温暖化の原因は「人間活動」—疑う余地なし
第6次報告書は、地球温暖化の原因が人間活動であることについて「疑いの余地がない」と結論付けています。
以前の報告書では地球温暖化原因としての人間活動の可能性を「高い」としていましたが、今回は初めて「疑いの余地がない」と明白に示されています。
・温室効果ガスの排出が地球温暖化を引き起こしていることは疑いようがなく、1850〜1900年を基準とした場合、2011〜2020年の間に平均気温は1.1°C上昇している。温室効果ガスの排出は増加を続け、持続不可能なエネルギー、土地利用、消費と生産のパターンが地域、国家、国内、個人間で不均衡に影響を与えている(確信度が高い)。
言い換えれば、第6次報告書によって「人間活動が地球温暖化の主な要因である」という評価が確定し、科学的根拠を持って温室効果ガスの増加が地球温暖化を引き起こしていることが明確になりました。
2:極端気象の増加は人間活動が原因
日本でも猛暑や大雨が頻発していますが、第6次報告書は、これらの異常気象も人間活動の影響を示すものだと結論づけています。
・気候変動による大規模な影響が大気、海洋、氷雪圏、生物圏に広がっている。人為的気候変動は世界中で多くの極端な気象現象を引き起こし、自然環境や人々に広範な被害を与えている(確信度が高い)。影響は特に脆弱なコミュニティに不均衡に現れる(確信度が高い)。
気温上昇により水蒸気が増え、大雨の頻度が上がっています。これから進む温暖化により、さらに極端な気象現象が増加することが予想され、干ばつの深刻化なども予見されています。
3:平均気温1.5℃の到達可能性は半数程度
第6次報告書は、地球温暖化の将来予測をいくつかのシナリオで評価し、現行の「中間レベル」の対策では、2050年までに平均気温が2℃を超えると予測しています。
また、1.5℃に抑える「非常に低い」シナリオでは、2050年までに人為的CO2排出を実質ゼロにする必要があります。しかし、この場合でも2021〜2040年の平均気温が1.5℃に達する可能性は約50%とされています。
・地球温暖化を1.5°Cや2°Cに抑えるには、正味ゼロのCO2排出が必要である。温暖化を抑える可否は正味ゼロ排出の達成時期と、今後10年の温暖化ガス削減次第である(確信度が高い)。化石燃料インフラからのCO2排出が1.5°Cの残余カーボンバジェットを上回る見通し(確信度が高い)。
・温室効果ガスの継続的排出はさらなる温暖化をもたらし、1.5°Cに到達すると予測されている。同時多発的な危険増大が進行し、急速かつ持続的なガス排出の削減が約20年内に温暖化の減速、数年以内に大気組成の変化をもたらすことになる(確信度が高い)。
4:南極氷床で海面がさらに上昇する可能性
第6次報告書には、リスクとして南極氷床の不安定化が挙げられ、世界の海水面が産業革命前から約20cm上昇し、「非常に低い」シナリオでも今世紀末にさらに50cmの上昇が予測されています。
・平均気温抑制では長時間スパンの気候変化を止められない。海洋深層の温暖化や氷床の融解が進むため、海面上昇も避けられず、数世紀から数千年に及ぶ上昇が続く(確信度が高い)。ただし、急速な温室効果ガス排出の削減は、海面上昇の加速を抑え、長期的に避けられない上昇を抑える。SSP1-1.9排出シナリオでは2050年までに0.15〜0.23m、2100年までに0.28〜0.55m、対してSSP5-8.5では2050年までに0.20〜0.29m、2100年までに0.23〜1.01mの上昇が見込まれる(確信度が中程度)。温暖化が1.5℃抑制された場合、2000年にわたり2〜3mの上昇、2度なら2〜6mとされる(確信度が低い)。
参考:IPCC第6次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約
IPCC(気候変動政府間パネル)報告書と気候変動への政策影響
IPCCが発表する報告書は、非常に多くの国々で政策を策定する際の重要な参考資料となっており、国際的な取り組みや国内方針の土台となっています。
2015年に採択されたパリ協定では、IPCCの報告書が掲げるビジョンの影響の下、平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃未満に抑える目標、さらに1.5℃未満に抑える努力が定められました。しかし当時の科学的な情報は不十分であったため、IPCCに依頼があり、2018年には「1.5℃特別報告書」が発表されています。
この特別報告書では、「気温上昇を2℃ではなく1.5℃にとどめることで、明確な利益が得られる」「1.5℃を下回るには、2030年までに2010年比較で45%のCO2削減が必要であり、さらに2050年ごろのネットゼロを目指さなければならない」と指摘されています。この主張は、2021年に日本で開催されたG7サミットやイギリスで行われたCOP26で、2℃と1.5℃の目標が再確認される形で議論されました。
IPCCの報告書は政策への中立性を強調しており、特別な政策提案は行わず、科学的な観点から政策立案者が気候変動対策を検討する際の参考となる情報を提供しています。
まとめ
「気候変動に関する政府間パネル」として知られるIPCCは、国際的な気候問題に取り組む組織です。
主な目的は、気候変動がもたらす影響や危険性、さらにはそれに対する対策を科学的かつ技術的観点から評価し、各国政府が政策を立案する際の科学的根拠を提供することです。
この組織は自ら研究を行うわけではありませんが、世界中の専門家が共同で、科学的公平性を保ちながら、既存の学術論文を基に定期的に更新される報告書を作成しています。
IPCCの報告書は、国際的な政策交渉や政策立案において科学的な知見を提供するため、非常に大きな影響力を持っています。
事実、IPCCの存在はほとんどの国際気候協定において重要な役割を果たしており、2021年のCOP26会議でも報告書が気候対策の議論を進める際の基準とされました。
これらの報告書には、ショッキングな事実が含まれることもありますが、すべて厳密な科学的根拠に基づいており、国際的に高い評価と影響力を獲得しています。
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