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【セミナーレポート】 Scope 3算定のポイントとは?第三者検証機関が教える実務の要諦と5つの原則

 

2026年1月22日、株式会社スキルアップNextは、SGSジャパン株式会社のビジネスアシュアランス テクニカルエキスパート/ESGアドバイザーである都倉氏を講師に迎え、「第三者検証機関から見たScope 3排出量算定のポイント」と題したオンラインセミナーを開催しました。
脱炭素経営が加速する中、サプライチェーン全体での排出量(Scope 3)の把握は企業の喫緊の課題となっています。「算定の精度をどう高めるか」「第三者検証にどう備えるか」といった実務担当者の悩みを解決するエッセンスを凝縮してお伝えします。

 

この記事でわかること:

  • Scope 3算定の重要性と背景: なぜ今、サプライチェーン全体の排出量把握が「義務」へとシフトしているのか。
  • Scope 3算定の実務における「5つの原則」: 信頼性を担保するために不可欠な、国際基準(ISO/GHGプロトコル)に基づく考え方。
  • 検証機関の視点によるQ&A: 「推計データでも検証は可能か?」「一次データの正確性をどう担保するか?」といった実務上の悩みへの回答。

セミナー概要

  • テーマ:第三者検証機関から見たScope 3排出量算定のポイント
  • 登壇者
    • 都倉 知宏 氏
      SGSジャパン株式会社
      ビジネスアシュアランス テクニカルエキスパート/ESGアドバイザー
    • 石橋 和幸
      株式会社スキルアップNext 執行役員 GX組織開発ディビジョン 事業責任者
      ※モデレーター

SGSジャパン株式会社について(https://sgsjapan-portal.jp/

  • 世界最大級の検査、検証、試験、認証機関
  • 1878年フランスにて設立、1915年に本部をスイスに移転、1919年に現社名(SGS/Société Générale de Surveillance)を採用
  • 世界約115ヵ国で2,500ヶ所にオフィス・ラボを有している
  • 世界で約99,500人の従業員が従事

 

>>「アーカイブセミナーを視聴する」

なぜ今「Scope 3」の算定が重要なのか

セミナー冒頭、都倉氏は2050年ネットゼロに向けた世界的な潮流と、Scope 3が企業活動に与える影響について解説しました。

サプライチェーン排出量のインパクト

  • 圧倒的な割合:多くの企業において、Scope 1・2(自社排出)は全体の5〜30%程度に過ぎず、残りの70%〜95%程度がScope 3に集中しています。
  • 投資家・規制の要請:CSRD(企業持続可能性報告指令)やISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の基準により、Scope 3を含む情報開示は「義務」へとシフトしています。
  • リスク管理:サプライチェーン全体を把握しなければ、真の気候変動リスク(移行リスク)を管理することは不可能です。

Scope 3算定の実務における「5つの原則」

第三者検証を受けるにあたって、算定の信頼性を担保するための「5つの原則」が紹介されました。これはISO 14064シリーズやGHGプロトコルに基づいた非常に重要な考え方です。

  1. 関連性(Relevance):事業活動に関連する排出源を選定・収集・算定しているか。
  2. 完全性(Completeness):関連するGHG排出/除去量を全て含めているか。
  3. 一貫性(Consistency):意味ある比較の為、一貫した方法を採用しているか。
  4. 正確性(Accuracy):データの不確実性を最小限に抑えているか。
  5. 透明性(Transparency):算定の根拠や仮定が第三者に説明可能な状態か。

【第三者検証のための準備】

都倉氏は、第三者検証をスムーズに進めるための具体的な準備ステップを以下のように解説しました。

算定範囲の設定と網羅的把握

都倉氏:
Scope 3算定の準備として、まずは組織のバウンダリ(算定範囲)を決める必要があります 。財務諸表のバウンダリに合わせるのが本来の姿ですが、検証前に合意を得た特定の範囲のみで保証を受けることも可能です。
その際、除外理由を開示するか、意見書に保証範囲を明示することになります。次に、カテゴリー1から15の中から自社に関連するものを網羅的に初期算定し、どこにGHGのインパクトがあるか(マテリアリティ)を把握します。初期の算定は財務データに排出原単位をかける金額ベースで行うことが多いです。マテリアリティが高いカテゴリーについては、より正確性の高い物量算定などに切り替え、使用したデータの出典や推計の妥当性を説明できるように準備してください。Scope 1・2とScope 3の間、あるいはScope 3のカテゴリー間で重複算定がないように注意が必要です。

算定方法の改善サイクル

都倉氏:
基本となる算定方法は、活動量(金額、物量、エネルギー量など)に排出原単位(排出係数)をかけることです。全体像を把握した上で、インパクトの大きい領域については、一次データの取得やTier1サプライヤーとの連携など、実態に即した算定方法へ見直すサイクルを継続してください。 検証時によくある指摘として、使用燃料の上流排出(カテゴリー3)の算入漏れや混同、サプライヤーデータの無検証な使用、出荷輸送のカテゴリー誤り、二重算定などが挙げられます。

検証機関が見る「よくある課題と改善点」

セミナー内では多くの企業が直面する具体的な課題が議論されました。
その一部を紹介します。

Q.直接的なデータ取得が難しく2次データ(推計)中心の算定となりそうだが、第三者保証の取得は可能なのか?

A.都倉氏:可能です。 Scope 3は2次データ推計が中心になるのが実態であり、それに基づいて検証を行っています。 ただし、想定外のデータが使われていた場合は保証に記載することもありますので、推計の妥当性をしっかり担保し、客観的証拠をもって説明できるようにしてください。

Q.使用した一次データの正確性をどのように管理・担保すればよいか

A.都倉氏:非常に難しい部分ですが、基本的には一次データを入手した側(企業側)がその正確性をどう担保しているかを検証します。 一番信頼性が高いのは、サプライヤー側ですでに第三者検証を受けているデータです。 しかしその場合でも、バウンダリ(範囲)が正しく含まれているかは確認します。 まだ検証を受けていない一次データを使用する場合は、過去の2次データ算定結果と比較して大きな乖離がないかを確認したり、品質監査などのサプライチェーン管理の中にGHG算定の確認プロセスを組み込むといった工夫が必要です。

Q.気候変動関連の第三者保証の規格として、ISO系とISSA5000等がありますが、どちらを取得した方が良いか

A.都倉氏:サステナビリティ関連財務情報の開示(SSBJ対応など)が求められるプライム市場上場の大企業(例:時価総額3兆円超が目安とされる企業等)であれば、財務情報と連動する会計系の規格であるISSA5000で保証を受けるのが本来の姿だと考えています。 そうした要件に該当しない段階であれば、ISO(14064-3など)の規格で受けていただいても問題ありません。

日本企業の現状とこれからのステップ

セミナーに参加された方だけでなく、現場からは「どのカテゴリーを算定すべきか分からない」「バウンダリの設定に自信がない」といった声が多く寄せられています。

今後、企業が取り組むべきステップとして推奨されるのは以下の通りです:

  • 信頼性の高いデータ収集:請求書や監査済みデータなど、可能な限り証拠能力の高い活動量データを収集する。
  • 妥当性の説明:採用した排出原単位DB(環境省DB等)や、推計に用いたシナリオの妥当性を論理的に説明できるようにしておく。
  • 教育と外部活用の併用:社内担当者のリテラシーを向上させると同時に、検証前のGAP分析サービスなどを活用して、基準との差分を早期に把握することが推奨されます。

まとめ

Scope 3の算定は単なる情報開示のためだけでなく、自社のサプライチェーンの強靭性を高め、脱炭素社会での競争優位性を築くための戦略的な活動です。
モデレーターの石橋は、「排出量を正確に把握し、開示することは、脱炭素需要を取り込み、新たなビジネスや競争優位性を創出するための『攻め』の土台になります」と締めくくりました。
スキルアップNextでは、環境省認定制度 脱炭素アドバイザー シニアアドバイザー認定の「GX検定スペシャリスト」に対応し、Scope 3算定の実務スキルが学べる、カーボンニュートラル実践講座(上級編)の提供などを通じ、企業のGX推進を支援しています。
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SGSジャパンでは算定状況のGAP分析や第三者検証サービスを通じて、企業の透明性と信頼性向上をサポートしています。
SGSジャパン株式会社へのご相談はこちらから

GXメディア編集部
GXメディア編集部
GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。