ネイチャーポジティブとは?経済的影響や自治体や企業の取り組み事例を解説

ネイチャーポジティブとは、生物多様性を回復し、自然環境を豊かにすることを目指す考え方です。気候変動や環境破壊が進む中、企業や自治体もこの理念を取り入れ、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化しています。本記事では、ネイチャーポジティブの概要やそれによってもたらされる経済への影響、国内外の自治体・企業による実践事例を紹介し、私たちができるアクションについても考察します。自然と共生する未来に向けたヒントを見つけてみましょう。
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ネイチャーポジティブについて
環境への取り組みを行うにあたって、ネイチャーポジティブの重要性を理解しておくことは重要です。
ネイチャーポジティブとは?
ネイチャーポジティブ(Nature Positive)という概念は、自然環境の保護と回復を中心にした新たな取り組みとして注目を集めています。
この言葉は、従来の「環境負荷を減らす」というアプローチから一歩進んで、自然を単に守るのではなく、積極的に回復し、強化していくことを意味します。
ネイチャーポジティブは、自然環境へのポジティブな影響を与え、持続可能な社会の実現に向けて企業や自治体、そして個人が積極的に行動することを促しています。
生物多様性については以下の記事で詳しく解説しています。
>>>「生物多様性とは?減少の原因から私たちの暮らしへの影響まで徹底解説」
ネイチャーポジティブの重要性
私たちの生活は、豊かな自然環境に支えられています。食料、木材、水、そして空気など、自然から得られる資源は私たちの生活の基盤です。
しかし、これまでの経済活動がもたらした環境破壊や生物多様性の損失は深刻な問題となっており、自然資源の枯渇や生態系の崩壊が進んでいます。このままでは、将来の世代に持続可能な環境を引き継ぐことが難しくなるでしょう。
そのため、ネイチャーポジティブの概念は、ただ自然を守るだけでなく、積極的にその回復を目指すものであり、社会全体でその重要性が認識され始めています。特に、生物多様性の保全は、地球規模での生態系の安定に不可欠です。
人間活動が自然に与える影響をポジティブな方向に導くことこそが、私たちの未来を守るために必要な行動だと言えるのです。
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ネイチャーポジティブの基本概念と背景
ネイチャーポジティブの基本的な考え方は、自然の回復を目指すことです。
これまでの「カーボンニュートラル」や「ゼロエミッション」といった環境保護のアプローチは、環境に与える影響を減らすことに重点を置いていましたが、ネイチャーポジティブはその一歩先を行きます。
具体的には、企業や自治体、個人が行う活動が自然環境に対して積極的なポジティブな影響を与え、その結果として自然が回復していくことを目的としています。
背景となっているのが、地球温暖化や森林破壊、土壌の劣化、海洋汚染など、さまざまな環境問題が深刻化している問題です。これらの問題は、人間の活動によって引き起こされ、同時に私たちの生活にも大きな影響を及ぼしています。
例えば、農業の拡大に伴う森林の伐採は、温暖化ガスの排出を加速させ、また生物多様性を脅かしています。そのため、これらの環境問題を解決するためには、ただ単に害を減らすだけでなく、自然そのものを回復させる取り組みが必要です。
ネイチャーポジティブの背景:環境問題と生物多様性の危機
環境問題の一つとして挙げられるのが気候変動です。化石燃料の使用や無計画な開発などが原因で、大気中の温暖化ガスの濃度が上昇し、地球の平均気温が上昇しています。これにより、極端な気象や海面上昇、農作物の生産性低下などが懸念されています。
さらに、生物多様性の喪失も深刻な問題です。生物多様性が失われると、生態系のバランスが崩れ、種の絶滅や食物連鎖の崩壊を招きます。
これらは全て、私たちの生活に直結する問題であり、放置するとその影響は未来の世代にまで及ぶことになるでしょう。
そのため、ネイチャーポジティブは、単なる環境保護にとどまらず、自然の回復と再生を目指す新しい視点を提供しています。
自然が回復することによって、気候変動の緩和や生態系の回復、持続可能な食料供給など、さまざまな社会的利益が得られることが期待されています。
ネイチャーポジティブと従来の環境アプローチの違い
従来の環境保護のアプローチは、主に「環境への負荷を減らす」という視点に基づいています。例えば、温暖化ガスの排出削減やリサイクルの推進などは、いずれも環境に対するネガティブな影響を減らすことが目標です。
しかし、これらの取り組みは、あくまで環境への負担を減らすことにとどまり、自然の回復には繋がりません。
一方、ネイチャーポジティブは、「回復」を重視します。自然環境の改善や生物多様性の再生に焦点を当てることで、環境問題に対してより積極的なアプローチを取ります。
例えば、企業が森林を再生するためのプロジェクトに投資したり、農業において持続可能な方法を採用して土壌の質を改善したりすることが含まれます。
このように、環境への影響を最小限に抑えるだけでなく、自然を回復し、未来の世代にとってより良い環境を残すことが目的です。
国際的な枠組みとネイチャーポジティブ
ネイチャーポジティブの考え方は、国際的な枠組みにおいても重要な位置を占めています。特に、2022年に開催されたCOP15(生物多様性条約締約国会議)では、世界中の国々が生物多様性の保護に向けて強力な取り組みを行うことを誓いました。
この会議では、ネイチャーポジティブが一つの重要な柱として位置付けられ、今後の国際的な環境保護の方針に大きな影響を与えるとされています。
また、企業や自治体においても、ネイチャーポジティブのアプローチを採用する動きが広がっています。具体的な取り組みとして挙げられるのが、自社のサプライチェーンにおける環境負荷の低減、環境保全活動を行う団体への積極的な支援などです。
自治体も、地域の生態系を守りながら、経済活動を発展させるための方策を講じています。これらの取り組みが世界全体で拡大することによって、より大きな効果が期待されています。
COPについては以下の記事で詳しく解説しています。
>>>「COP(Conference of the Parties)とは|COP29・COP30の最新動向と日本の取り組みを解説」
ネイチャーポジティブはカーボンニュートラルに並ぶ重要な柱
ネイチャーポジティブは、カーボンニュートラルに並ぶ地球環境の課題解決の重要な柱として位置づけられています。
気候変動対策の一環として進められているカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標)は、気温上昇を抑制するために不可欠ですが、自然環境の回復なくしてはその効果も十分に発揮されません。
つまり、温暖化の緩和と自然回復は、相互に補完し合う重要な取り組みです。
ネイチャーポジティブは、地球規模での気候変動対策と生物多様性の保全を同時に実現するための戦略として、これからの社会に欠かせない概念となっていくでしょう。
参考:https://www.more-trees.org/news/column_naturepositive/
ネイチャーポジティブの経済的影響
経済活動と自然環境は切っても切り離せない密接な関係にあり、ネイチャーポジティブは自然環境や経済活動に大きな影響を与えます。
経済と自然環境の関係
私たちの経済活動は、自然から得られる資源に依存しており、同時に自然環境に影響を与えています。農業、林業、漁業、製造業など、あらゆる産業が自然の資源を利用し、それによって生み出される製品やサービスが経済の成長を支えています。
しかし、その一方で、過剰な資源の消費や環境破壊は、長期的には経済に対しても悪影響を及ぼすことも考えなければなりません。
例えば、土壌の劣化、森林の減少、生物多様性の喪失などは、生産性の低下や新たなコストを引き起こし、経済活動を制限する可能性があります。このため、経済と自然環境の関係を理解し、両者のバランスを取ることが、持続可能な経済成長には不可欠です。
近年、ネイチャーポジティブという考え方が登場し、経済と自然環境の共生を目指す新たなアプローチとして注目されています。
ネイチャーポジティブは、自然環境の回復と強化を目指し、経済活動が自然環境にポジティブな影響を与えることを重視しています。このアプローチは、環境を守りながら経済成長を実現する道を模索していると言えるでしょう。
生態系サービスと経済効果
生態系サービスとは、自然が提供するさまざまな利益や機能のことを指します。これには、空気や水の浄化、気候調節、土壌の肥沃化、作物の受粉など、私たちの生活に欠かせない重要なサービスが含まれています。
これらのサービスは、私たちが日常的に享受しているものですが、しばしばその価値が見過ごされがちです。しかし、生態系サービスは、経済活動の基盤を支えるものであり、これらを保全することが経済的に重要であることが次第に認識されつつあります。
例えば、森林は木材や紙の供給源であるだけでなく、二酸化炭素の吸収や水源の保護など、気候変動対策にも大きな役割を果たしています。
これらのサービスが失われることによって、代替策にかかるコストは非常に高く、経済的な損失の発生を考慮しなければなりません。逆に言えば、生態系の回復や保護に投資することは、長期的に見て経済的利益をもたらすことになります。
例えば、森林再生プロジェクトが進めば、木材の供給だけでなく、観光資源としての価値が高まり、地域経済の活性化にも繋がります。
また、都市部での緑地や公園も、生態系サービスの一部です。これらの空間は、都市の気温を調整し、住民の健康を促進するなど、経済的な利益を生み出しています。
例えば、都市の緑地が増えれば冷房にかかるエネルギー消費が削減されるといった効果が期待できるでしょう。
このように、生態系サービスは、直接的な経済活動にとどまらず、私たちの生活全般に深い影響を与えています。
自然資本を経済に組み込む
自然資本とは、地球の自然環境が提供する資源やサービスを総称したものです。これには、森林、河川、海洋、土壌など、自然のすべての資産が含まれます。
従来、経済は自然資本を外部的な存在として扱い、自然の価値は価格に反映されることはほとんどありませんでした。しかし、近年では、自然資本を経済システムに組み込む必要性が高まっています。
その自然資本を経済に組み込むための方法が「自然資本会計」です。これは、企業や政府が自然資本の価値を財務諸表に反映させ、環境への影響や自然資源の消費を数値化することです。
これにより、企業は環境への影響を管理し、持続可能な経済活動を実現するための基準を持つことができます。また、政府は政策立案において、自然資本の損失を最小限に抑えるための施策を導入しやすくなります。
自然資本を経済に組み込めば、企業や自治体が自然環境への投資を積極的に行うようになり、結果的に経済成長と環境保護を両立させることが可能です。例えば、再生可能エネルギーや持続可能な農業など、環境に優しい産業の成長を促すための政策が重要となります。
ネイチャーポジティブの事例紹介
オランダでは、気候変動による洪水リスクの増加に対応するため、「ルーム・フォー・ザ・リバー(Room for the River)」計画を実施しました。
このプロジェクトは、単に堤防を強化するのではなく、川の自然な流れを回復させることで水害を防ぎ、生態系を豊かにする「ネイチャーポジティブ」の考え方を取り入れています。
具体的には、河川の周辺に湿地や遊水地を設け、洪水時に水が広がるスペースを確保。また、自然環境の回復により、多様な動植物が生息できる環境を整えました。
さらに、景観の向上により観光やレクリエーションの場としても活用されています。この取り組みは、自然と共生しながら安全性を確保する持続可能なモデルとして世界的に注目されています。
自治体におけるネイチャーポジティブの取り組み事例
ネイチャーポジティブとは、自然環境の回復と生物多様性の向上を目指す考え方であり、持続可能な社会の実現には欠かせません。
特に自治体レベルでの取り組みは、地域の特性を活かした独自の施策が展開され、住民とともに環境を守る動きが進んでいます。本章では、日本国内および海外の自治体によるネイチャーポジティブの実践事例を紹介します。
自治体におけるネイチャーポジティブの実践
国内ではさまざまな自治体がネイチャーポジティブの取り組みを行っています。
国内事例
ここでは観光地としても注目される北海道、沖縄、京都におけるネイチャーポジティブの取り組みを紹介します。
北海道の取り組み
北海道では、広大な自然環境を活かしながら、エコツーリズムを推進することで、自然保護と経済発展を両立させる取り組みが行われています。例えば、知床半島では、観光客が増える一方で、自然環境への影響が懸念されてきました。
これに対応するため、自治体と地元事業者が協力し、持続可能な観光モデルを導入。遊歩道の整備や入山規制を行いながら、ガイドツアーを通じて生態系保全の意識向上を図っています。
また、湿地帯の再生プロジェクトも進められ、失われた生態系を取り戻すための植生回復が行われています。
参考:https://shiretokodata-center.env.go.jp/data/management/tekisei/eco_ActionPlan.pdf
沖縄の取り組み
沖縄県は、美しい海とサンゴ礁に囲まれた観光地ですが、気候変動や観光の影響により、サンゴの白化現象が深刻化しています。
これを受け、自治体はサンゴ礁保全活動を積極的に展開しています。地域のダイビング業者と連携し、観光客がサンゴの植え付け体験を行うプログラムを提供。この取り組みにより、観光業を通じてサンゴの再生を促進し、住民や観光客の環境意識も向上しています。
また、海洋ゴミの回収活動や、持続可能な漁業の推進にも力を入れており、海洋環境と地域経済のバランスを取る努力が続けられています。
参考:https://sea-growth-okinawa.com/
京都府の取り組み
京都府では、都市部でもネイチャーポジティブの考え方を取り入れた政策が進められています。具体的には、「京都市生物多様性戦略」を策定し、都市の緑地や水辺環境の保全に努めています。例えば、市街地にビオトープを設置し、希少な動植物の生息地を確保。
また、市民参加型の「まちの自然再生プロジェクト」を実施し、地域住民と協力して街路樹の植樹や河川の清掃活動を行っています。こうした取り組みは、都市生活と自然の調和を目指し、住みやすい環境づくりに貢献しています。
参考:https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000282470.html
https://www.necta.jp/library/pdf/NECTA10th/NECTA10th_05.pdf
海外事例
海外ではフィンランドとコロンビアの事例が注目されています。
フィンランドでの取り組み
フィンランドは、国土の約67%が森林に覆われており、森林資源の持続可能な活用が重要な課題です。自治体レベルでは、伐採と再植林のバランスを考慮しながら、地域の森林管理を行っています。
特に、カレリア地方では、地元住民が主体となり、伝統的な森林利用と生態系保全を両立させる取り組みが盛んです。
また、自然教育プログラムを通じて、次世代に森林保全の重要性を伝える活動も活発に行われています。これにより、森林資源を適切に管理しながら、地域経済を持続可能な形で発展させるモデルが確立されています。
参考:https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/jouhou/attach/pdf/results-147.pdf
コロンビアでの取り組み
コロンビアでは、アマゾンの熱帯雨林の保全を目的とした「アマゾン・ビジョン」プロジェクトが進行中です。この取り組みは、自治体が先住民コミュニティと協力し、森林破壊を防ぎながら持続可能な生活を支援することを目的としています。
例えば、違法伐採や森林火災の監視システムを導入し、先住民が森林保全の管理者として役割を果たす体制を構築。
また、伝統的な農法を活かした持続可能な農業の普及にも努めています。このように、地域社会と連携することで、環境保全と経済発展の両立を実現しています。
参考:https://gggi.org/press-release/amazon-vision-launched-in-colombia/
企業におけるネイチャーポジティブの取り組み事例
日本国内でもさまざまな企業がネイチャーポジティブの取り組みを推進しています。
企業の役割とネイチャーポジティブの重要性
持続可能な資源の活用や生物多様性の保全に積極的に取り組むことで、環境負荷を削減しながら企業が成長を維持することが可能です。
また、消費者や投資家の環境意識の高まりに対応するためにも、企業がネイチャーポジティブな取り組みを行うことは競争力の向上につながります。
以下では、日本および外資系企業のネイチャーポジティブな取り組み事例を紹介します。
日本の企業事例
トヨタやサントリーをはじめとした企業がCO2削減と生物多様性保全に取り組んでおり、環境負荷の少ないモビリティの実現を目指しています。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、環境負荷を低減するために「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、CO2排出量の削減や生態系保全に向けた取り組みを進めています。特に、工場の敷地内に自然環境を再生する「生物多様性保全活動」を実施し、地域の生態系との共生を図っています。
また、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の開発を通じて、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献しています。
参考:https://global.toyota/jp/detail/9886860
サントリー
サントリーは「水と生きる」企業理念のもと、水資源保全を中心にしたネイチャーポジティブな活動を展開。同社の「天然水の森」プロジェクトでは、全国の森林を保全・育成し、水源涵養機能の向上を目指しています。
また、生物多様性の保護にも注力し、持続可能な水利用を促進するために、取引先とも協力しながら環境負荷の少ない生産体制を構築しています。
参考:https://www.suntory.co.jp/eco/forest/
キリン
キリンは、生物多様性を意識した農業原料の調達や、持続可能な森林保全活動を推進しています。「キリングループ環境ビジョン2050」のもと、ビールの原料であるホップや大麦の生産過程で環境負荷を低減する取り組みを実施。
また、森林の保全活動として、国内外の生産地で植林活動を行い、二酸化炭素の吸収を促進することで気候変動対策に貢献しています。
参考:https://www.kirinholdings.com/jp/impact/env/mission/
積水ハウス
積水ハウスは、環境負荷の少ない住宅の開発を進めるとともに、都市部の生態系保全に貢献する「5本の樹」計画を実施しています。これは、住宅の庭や緑地に在来種の木を植えることで、地域の生物多様性を守る取り組みです。
また、ゼロエネルギーハウス(ZEH)の普及にも力を入れ、持続可能な住環境の実現を推進しています。
参考:https://www.sekisuihouse.co.jp/gohon_sp/
日本航空
JALは、航空業界のカーボンニュートラル化に向けた取り組みを加速しています。具体的には、持続可能な航空燃料(SAF)の導入や、省エネルギー型の航空機の導入などです。
また、生物多様性保全の一環として、空港周辺の環境保全活動を行い、地域の自然との共生を目指しています。
参考:https://www.jal.com/ja/sustainability/environment/climate-action/
無印良品
無印良品を展開する良品計画は、持続可能な素材の活用を推進し、森林保全活動やリサイクルの取り組みを強化。同社は「感じ良い暮らしと社会の実現」を掲げ、衣料品や家具の生産において環境負荷を軽減することを目指しています。
具体的には、オーガニックコットンの使用や、資源循環型の製品開発を積極的に進めています。
参考:https://www.ryohin-keikaku.jp/corporate/philosophy/
外資系企業の事例
外資系企業ではダノングループやパタゴニアの取り組みが知られています。
ダノングループ
フランスに本社を置くダノングループは、持続可能な農業の推進や水資源保全に積極的に取り組んでいます。乳製品の原料となる牛乳の生産においては、環境負荷を低減する酪農技術の導入を推進。
また、水ブランド「エビアン」では、100%リサイクル可能なボトルの開発や、水源の保全活動を展開し、持続可能な水利用を実現しています。
参考:https://www.danone.co.jp/company/history/page2/
パタゴニア
アウトドアブランドのパタゴニアは、環境保護活動を企業理念の中心に据えています。オーガニックコットンやリサイクル素材の使用を推進するほか、売上の一部を環境保護団体に寄付する「1% for the Planet」プログラムを実施。
さらに、自社の製品を長く使用できるよう修理サービスを提供し、過剰消費を抑える取り組みも行っています。
参考:https://www.patagonia.jp/one-percent-for-the-planet.html
ネイチャーポジティブ推進のための課題と解決策
ネイチャーポジティブ推進にあたっては課題もあり、解決していくための施策が求められます。
ネイチャーポジティブ推進の課題
ネイチャーポジティブの推進には多くの課題が伴います。
まず、経済成長と環境保護のバランスを取ることが難しい点が挙げられます。企業活動やインフラ整備に伴う環境への影響を最小限に抑えつつ、持続可能な発展を実現するには、適切な規制やインセンティブの導入が必要です。
しかし、多くの企業は短期的な利益を優先する傾向にあり、長期的な環境投資を後回しにしがちです。
また、ネイチャーポジティブを推進するためのデータや科学的根拠が不足していることも問題です。自然資本の評価や生態系サービスの測定方法が確立されていない場合、企業や自治体が具体的な行動を取るのが難しくなります。
そのため、適切なモニタリング手法の確立とデータの透明性向上が求められます。
さらに、国民や企業の意識改革も大きな課題です。環境問題への関心が高まっているとはいえ、多くの人々にとってネイチャーポジティブの概念はまだ十分に浸透していません。教育や啓発活動を通じて、その重要性を広く伝えることが必要です。
ネイチャーポジティブに関する日本の動向
環境省は、「生物多様性国家戦略」や「自然共生サイト」の推進を通じて、企業や自治体と連携しながら具体的なアクションを推進しています。これにより、開発と保全の両立を図るための指針が示されつつあります。
また、日本企業の間で注目されているのが「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」です。これにより、企業は自社の事業活動が自然環境に与える影響を把握し、持続可能な経営戦略を策定することが求められています。
さらに、地方自治体でも、森林再生や生物多様性の保全活動を通じて、地域経済の活性化と環境保全を両立させるモデルが生まれつつあります。
参考:https://www.bluedotgreen.co.jp/column/tnfd/np/
https://www.env.go.jp/content/000168974.pdf
解決策と推進方法
ネイチャーポジティブを推進するためには、まず政策の強化が必要です。政府は企業に対し、生物多様性に配慮した経営を行うよう具体的なガイドラインを示し、環境に配慮した事業への税制優遇や補助金制度の拡充などが求められます。
また、企業の環境負荷を透明化するため、TNFDなどの枠組みを活用し、自然資本に関する情報開示を義務化することも有効です。
一方で、民間レベルでの理解と参加を促進することも欠かせません。教育機関においてネイチャーポジティブの概念を取り入れ、次世代の環境意識を高めることが重要です。
さらに、地域レベルでの取り組みを支援し、住民が主体となって森林再生や都市の緑化プロジェクトに関わる機会を増やすことで、身近な環境保全活動を推進できます。
成功に向けたステップ
ネイチャーポジティブを実現するためには、短期・中期・長期の視点で戦略を立てることが重要です。短期的には、企業や自治体の意識改革を促し、環境負荷の低減に向けた取り組みの強化が必要です。
中期的には、科学的根拠に基づいたモニタリング体制を確立し、生物多様性の回復状況を定量的に評価できる仕組みを整えます。長期的には、経済活動そのものが自然と調和する形へとシフトし、持続可能な社会を実現することを目指します。
また、国際的な動向を踏まえながら、日本独自の強みを活かした取り組みを進めることも重要です。例えば、里山や伝統的な農林業の知恵を活用しながら、地域に根ざした生物多様性の保全を推進することができます。
>>「EUの規制動向から読み解くGXとの向き合い方の資料ダウンロードする」
まとめ:持続可能な未来への道筋
ネイチャーポジティブとは、単なる環境負荷の軽減にとどまらず、自然環境を積極的に回復・強化する取り組みを指します。気候変動や生物多様性の喪失が深刻化する中、持続可能な社会の実現には不可欠な概念です。
企業や自治体、個人が一体となり、森林再生やエコツーリズム、自然資本の活用を推進することで、経済活動と環境保護を両立できます。
国際的にも注目されるこのアプローチは、持続可能な未来への重要な道筋となるでしょう。
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