GXリーグとは|具体的な取り組みや参加方法、企業が参画するメリットを解説
企業のGX担当者であれば、一度は「GXリーグ」という言葉を聞いたことがあると思います。しかし、「そもそもGXリーグって何?」「具体的にはどんな活動をするの?」という疑問がある方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、GXリーグとは何なのかという基礎知識から、具体的な取り組みや参加方法、企業が参画するメリットまで分かりやすく解説します。GXリーグついて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
GXリーグとは?
GXリーグとは、2050年カーボンニュートラル達成のための取り組みを経済社会システム全体の変革につなげ、新たな市場を創出するための議論と実践の場です。
GXリーグは、企業や政府、学術機関などが連携して創設されました。事務局は経済産業省のほか、野村総合研究所と博報堂が務めています。
GXリーグの具体的な取り組みは、2022年2月に経済産業省が公表した「GX リーグ基本構想 」で初めて明確に示されました。
その後、2022年4月1日時点で440社の企業がGXリーグへの賛同を表明。2023年2月には、679社とさらに賛同社数を増やしました。そして2023年4月からは、参画企業による正式な活動がスタートしています。
【参考URL】
440社の「GXリーグ賛同企業」と共に、カーボンニュートラルに向けた社会変革と新たな市場創造の取組を進めます!
GXリーグ参加、700社規模 排出量取引4月スタート – 日本経済新聞
そもそもGXとは?
GXとは、「Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)」の略で、温室効果ガスの排出削減を目指す取り組みを経済成長の機会と考え、産業競争力の向上や社会全体の変革につなげようとする活動です。
ビジネスの分野でも大きな課題となっている環境問題への取り組みと、経済成長を結びつける活動として、世界中で大きな注目を集めています。
GXについてより詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは|意味やメリット、取り組み事例などをわかりやすく解説
GXが注目されている背景
GXが注目されている背景として、第一に地球温暖化による気候変動の深刻化が挙げられます。地球温暖化の原因は、CO2を含む温室効果ガスです。気候変動や地球温暖化を解決するためには、温室効果ガスの排出を減らさなければなりません。
GXは、温室効果ガスの排出削減を目指す取り組みを、社会全体の変革につなげようとする試みです。より多くの企業がGXリーグに参画・活動することで、気候変動や地球温暖化の改善が見込めます。
地球環境を守り持続可能な社会を実現するため、日本をはじめ世界各国がGXの取り組みに本格的に乗り出そうとしているのです。
GXリーグの3つの取り組み
GXリーグでは、以下3つの取り組みを行う場を参画企業に提供する予定です。
- 未来社会像対話の場
- 市場ルール形成の場
- 自主的な排出量取引の場
それぞれの取り組みについて解説していきます。
【参考URL】
440社の「GXリーグ賛同企業」と共に、カーボンニュートラルに向けた社会変革と新たな市場創造の取組を進めます!
未来社会像対話の場
1つ目の取り組みは、未来社会像の対話です。ここでいう「未来社会」とは、2050年のカーボンニュートラルが実現した社会です。
ここでは、カーボンニュートラルが実現した未来の形や、経済社会システムについてどんな姿が考えられるか、どうなっていると良いかを議論します。具体的には、民間企業を中心に官公庁や学術機関などの構成員でワーキンググループを形成し、新規事業や研究開発につながる以下のようなテーマについて議論します。
【テーマ例】
- 企業の担うべき役割
- 経済社会システムはどうあるべきか
- 生活者の価値観や行動はどう変化するか
- サステナブルなくらしを実現するアイデア
市場ルール形成の場
2つ目の取り組みは、市場ルールの形成です。
まず、1つ目に解説した「未来社会像対話の場」で提示された2050年カーボンニュートラル後の未来像を元に、そこから生まれる市場やビジネスモデルを検討します。
次に、新たに創出された市場やビジネスに必要なルールの形成を行います。具体的には、民間企業や官公庁が連携して、テーマ別にルール形成のためのワーキンググループを形成し、以下のようなテーマについて議論を行います。
【テーマ例】
- CO2ゼロ製品の認証制度
- カーボンクレジットのガイドライン
- 投資家への理解促進
- 金融市場における制度設計
【参考URL】
GXリーグについて
自主的な排出量取引の場
3つ目の取り組みは、自主的な排出量取引です。排出量取引とは、国や個々の企業に割り振られた「温室効果ガスの排出枠」の不足分を買ったり剰余分を売ったりして、売買する仕組みです。
「自社の排出目標設定と達成」でも紹介する通り、GXリーグの参画企業は自ら温室効果ガスの排出量削減目標を掲げ、達成を目指した取り組みを行います。目標を達成するための一手段として設けられているのが、自主的な排出量取引の場です。
後ほど「カーボンクレジット市場で取引できる」でも解説しますが、GXリーグの参画企業は、カーボンクレジット市場という排出量の取引所で、排出量取引を行えます。
GXリーグへの参加条件
GXリーグに参加した場合、主に以下3つの活動に取り組むことを求められます。
- 自社の排出目標設定と達成
- サプライチェーン全体での排出削減
- グリーン市場の創造
3つの取り組みについて1つずつ解説していきます。
自社の排出目標設定と達成
GXリーグの参画企業は、自ら温室効果ガスの排出削減目標を掲げ、毎年の取り組み状況の報告と、別途設定した中間地点の達成状況の評価を行わなければなりません。
具体的には、必須項目が3点、任意項目が1点あります。必須項目は、以下3点です。
- 直接排出と間接排出それぞれに、以下3つの目標を設定する
- 2030年度目標
- 2025年度(中間目標)
- 2023〜2025年度の排出削減量総計の目標
なお、トランジション戦略には以下の4つの要素を含める必要があります。
- 2050年までにカーボンニュートラルを達成するための長期目標
- 国内削減目標か、自社で設ける、2030年度における中間目標
- 期限(2025年や2030年までなど)を定めて策定した、具体的な施策
- 戦略の実⾏を管理・評価するための、ガバナンス体制
実際の排出量が「③2023〜2025年度の排出削減量総計の目標」を、達成しなかった場合、未達理由を説明するか、過削減枠や適格カーボン・クレジットを調達しなければなりません。
任意項目は以下1点です。
- 国の削減目標(46%)を、より野心的な目標水準に引き上げる
国の削減目標(46%)を超過した場合、他社に売却可能な「超過削減枠」を得られます。
【参考URL】
GX-ETSの概要
GXリーグ参画企業に求める取組 に関するガイダンス (事業会社向け)
サプライチェーン全体での排出削減
GXリーグの参画企業は、サプライチェーン全体の排出削減にも貢献するよう求められます。
サプライチェーンとは、原材料の調達から商品が消費者に届くまでの一連の流れです。サプライチェーンに携わる企業や組織、消費者に働きかけることで、排出削減により大きな効果が生まれます。
具体的には、必須項目が2点、任意項目が1点あります。必須項目は、以下2点です。
- サプライチェーン上流の事業者に対して、排出量削減の実施支援や計画策定を行う
- 自社製品にCO2排出量を示したCFP表示をするなどし、サプライチェーン下流の消費者などに対して、カーボンニュートラルの意識醸成を促進、または計画策定を行う
任意項目は以下1点です。
- サプライチェーン排出に関しても、自社の排出目標と同様に、2030年度排出削減目標を策定し、その達成に向けたトランジション戦略を策定・公表する
【参考URL】
GXリーグ参画企業に求める取組 に関するガイダンス (事業会社向け)
グリーン市場の創造
GXリーグの参画企業は、自社の製品やサービスを通じてグリーン市場を創造することも求められます。
具体的には、必須項目が2点、任意項目が1点あります。必須項目は、以下2点です。
- 消費者や教育機関、NGOなどの市民社会と、気候変動の取り組みについて対話の機会を設定するか、計画を策定する
- イノベーションの創出や、製品・サービスを通じた削減貢献、クレジットなどによるカーボンオフセット製品の市場投⼊により、グリーン市場の拡⼤を実施するか、計画を策定する
任意項目は以下1点です。
- 消費市場のグリーン化を目指して、⾃ら環境負荷の低いグリーン製品を購入・調達するか、計画を策定する
【参考URL】
GXリーグ参画企業に求める取組 に関するガイダンス (事業会社向け)
GXリーグに企業が参画するメリット
GXリーグに企業が参画する主なメリットは、以下の3点です。
- 企業の認知度向上につながる
- 他社と意見交換することでアイデアを得られる
- カーボンクレジット市場で取引できる
ここからは、3つのメリットについて1つずつ解説していきます。
企業の認知度向上につながる
1つ目のメリットは、企業の認知度を高められる点です。
GXリーグに参画していることで、対外的に「地球環境やサステナビリティに高い意識を持つ企業」だというアピールができます。
取引先や一般消費者に対するイメージアップにつながり、ブランディングを実現できるでしょう。
企業自体の認知度そのものの向上により、ESG投資の対象候補となったり、優秀な人材を確保できたりと、さまざまな効果が期待できます。
他社と意見交換することでアイデアを得られる
2つ目のメリットは、他社との意見や情報交換ができ、アイデアを得られる点です。
GXの取り組みで成果を上げるには、多角的な視点や多様なアイデアが必要です。しかし、企業内の担当者だけでGXを推し進めるのには限界があります。
GXリーグに参画すると、業界の企業のみならず官公庁や学術機関など、普段はなかなか交流できない組織の人々と意見交換する機会が得られます。
他社はどのようにGXを推進しようとしているのか、実際にどのような効果が出ているかなど情報の共有によってアイデアが得られ、自社のGXをより良い形で実現できるのではないでしょうか。
カーボンクレジット市場で取引できる
3つ目のメリットは、カーボンクレジット市場で排出量取引ができる点です。
経済産業省では、2022年度よりカーボンクレジット市場の実証を開始しており、2025年頃にはGXリーグにおける企業の排出量取引を本格化させる見込みです。
さらに、2026年には業種ごとに排出削減目標が設けられ、将来的には排出量に応じた金銭負担が求められるようになります。そのため、カーボンクレジット市場での排出量取引は、企業としての大きなアドバンテージになります。
GXリーグに参加している企業は、カーボンクレジット市場において自主的な排出量取引が可能です。
特に排出量の多い業界や企業にとって、カーボンクレジット市場での排出量取引ができる点は大きなメリットとなるでしょう。
【参考URL】
GXリーグの取組について
GXリーグについてよくある質問
最後に、GXリーグについて、よくある疑問をQ&A形式で解説します。
Q. GXリーグとはどういう意味ですか?
2050年カーボンニュートラル達成のための取り組みを経済社会システム全体の変革につなげ、新たな市場を創出するための議論と実践の場です。
企業や政府、学術機関などが連携して創設しました。
Q. GXリーグの排出量取引とは?
排出量取引とは、国や個々の企業に割り振られた「温室効果ガスの排出枠」の不足分を買ったり、剰余分を売ったりして、売買する仕組みです。
GXリーグでは、カーボンニュートラルに向けた目標達成のための一手段として、自主的な排出量取引の場が設けられています。
Q. GXリーグの参画企業数と代表企業は?
Xリーグには、2023年2月時点で679社の企業が参画しています。
特に製造業には参画企業が多く、温室効果ガスの排出と深い関わりを持つトヨタ自動車や本田技研工業、ENEOS、日立製作所、出光興産などが参画しています。
ほかにも各業界で、以下のような企業が参画しており、全企業の温室効果ガス排出量を合わせると、日本全体の4割以上を占める計算です。
- 小売業:セブン&アイ・ホールディングス
- 金融業:三菱UFJフィナンシャル・グループ
- 電気業:東京電力
- サービス業:日本郵政
- 情報通信業:ソフトバンク
【参考URL】
GXリーグ参加、700社規模 排出量取引4月スタート – 日本経済新聞
まとめ
GXリーグとは、2050年カーボンニュートラル達成のための取り組みを経済社会システム全体の変革につなげ、新たな市場を創出するための議論と実践の場です。
2023年2月までに679社の賛同社数を得て、2023年4月からは、参画企業による正式な活動をスタートさせています。
GXリーグでは、以下3つの場を参画企業に提供しています。
- 未来社会像対話の場
- 市場ルール形成の場
- 自主的な排出量取引の場
これらの場を通して、参画企業は以下のようなメリットを享受できます。
- 企業の認知度向上につながる
- 他社と意見交換することでアイデアを得られる
- カーボンクレジット市場で取引できる
GXリーグに参加した場合には、以下のような活動に取り組まなければなりません。
- 自社の排出目標設定と達成
- サプライチェーン全体での排出削減
- グリーン市場の創造
なお、GXリーグへの賛同企業の募集は2023年4月で締め切られ、現在(2023年7月時点)は行われていません。もし興味があるのであれば、今後の動向を注視しましょう。
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