CCSとは|仕組みやメリット、課題、日本の取り組み状況を解説
CCSとは何かご存知でしょうか?CCSとは、CO2を回収して地下深くに貯留する技術です。この技術によって、大幅にCO2を削減できるかもしれないのです。
この記事では、CCSの概要やメリット・デメリット、世界や日本での取り組み状況などを解説していきます。CCSについて知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
CCSとは?
CCSとは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略称で、CO2を回収・貯留する技術のことです。産業活動において発生するCO2を他の気体から分離して回収し、地下深くに貯留します。
CCSによって、産業活動によって排出されるCO2を大幅に削減できます。そのため、地球温暖化の抑止につながる取り組みとして、大きな注目を集めています。
CCUSやCCUとの違い
似た言葉にCCUSやCCUがありますが、それぞれ違うものを意味します。
CCUSとは、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略称です。CCSに加えて、回収したCO2を資源として再利用する技術も加わります。つまり、回収したCO2の一部を貯留、一部を再利用するということです。
再利用の場合は、化学品や燃料などの用途で利用されます。また、回収したCO2を再利用することを、カーボンリサイクルともいいます。
CCUとは、「Carbon dioxide Capture and Utilization」の略称です。回収したCO2を資源として再利用する技術単体を指します。つまり、CCSとは回収したCO2の処理方法が異なります。
CCSが注目を集めている背景
CCSが注目を集めている背景には、世界全体でカーボンニュートラル実現を目指している背景があります。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、全体としてゼロにすることです。
日本では、2050年までにカーボンニュートラルを実現する「2050年カーボンニュートラル」を掲げています。しかし、排出量を急激に減らすことや、吸収量を急激に増やすことは困難です。そこで注目されているのが、CCSです。CCSを活用すれば、大幅にCO2の排出量を削減でき、カーボンニュートラルの実現に近づくでしょう。
CCSのメリット
CCSのメリットは、以下の3つです。
- CO2を大幅に削減できる
- 炭素を有効活用できる
- 再生可能エネルギーの普及を後押しできる
それぞれ説明していきます。
CO2を大幅に削減できる
CCSのメリットは、CO2を大幅に削減できる点です。
CCSは、産業活動において発生するCO2を回収して、地下深くに貯留する技術です。この技術を用いることで、大気へ放出されるCO2の大幅な削減が可能になります。
例えば、約27万世帯分の電力を供給できる火力発電所にCCSを導入した場合、年間約340万トンのCO2を削減できるそうです。このように、CO2の排出量が多い火力発電所や重工業へ導入すれば、より大きな効果が見込まれるでしょう。
参考:CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み|環境省
炭素を有効活用できる
CCUSやCCUにも当てはまるメリットの1つでもありますが、炭素を有効活用することができる点が挙げられます。
回収されたCO2は、化学品や燃料として再利用されます。例えば、再生可能エネルギー由来水素とCO2を反応させることで、メタンなどの化学品を生産できます。
ただ炭素を貯留するのではなく有効活用できるのは、地球環境にとっても大きなメリットです。
再生可能エネルギーの普及を後押しできる
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーで発電した電気は、現時点で貯蔵する仕組みが十分ではありません。しかし、CCSの技術を用いてCO2と水素を組み合わせてメタンを生成すれば、再生可能エネルギーの余剰電力を貯蔵できるのです。
これまでは再生可能エネルギーの電気を貯蔵する仕組みがないことが一つの要因となり、普及が進んでいませんでした。CCSによってこの課題を解決できると、再生可能エネルギーの普及の後押しとなるでしょう。
参考:CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み|環境省
CCSのデメリット
一方で、CCSにはデメリットもあります。ここでは2つのデメリットを紹介していきます。
高いコストがかかる
CCSのデメリットとしてまず挙げられるのが、コストが高い点です。
CCSを導入するためには、CO2の回収や輸送、地下への注入という一連の工程が必要です。しかし、どの工程においても専門的な技術と設備が求められるため、初期投資や運用コストが高いことが問題となっています。
具体的には、CO2を1トン回収するのに、約4,000円前後のコストがかかるといわれています。将来的にはコストは削減されていくはずですが、現時点ではコストが見合っておらず、想定よりも導入が進んでいないのが現状です。
法律等の整備が必要である
CCSのデメリットとして、法律等の整備が必要なことも挙げられます。
CCSを導入するためには、地下へのCO2の長期的な貯蔵に関する安全性や所有権など、多くの法的な課題があります。例えば、地下深くに貯留したCO2が放出された場合、誰の責任になるのでしょうか。この場合の責任の所在などは、現在明確に決められていません。
CCSに関連する法律等はまだ十分に整備されておらず、導入への大きな障壁となっています。
CCSに関する世界の動向
IEA(国際エネルギー機関)によると、2050年に世界全体でカーボンニュートラルを実現するには、年間約38〜76億トンのCO2をCCS・CCUSで圧入貯留しなければならないことがわかっています。そのため、世界中でCCS・CCUSの取り組みは加速しています。
2022年9月時点で、開発中のCO2回収施設の容量は2.44億トンに拡大。直近の一年間で44%増えている状況です。CCS施設の数は操業中が30件、建設中が11件、開発段階が153件、操業停止中の2件を加えて、合計196事業となっています。
参考:Global CCS Institute
CCSに関する日本での取り組み
IEAが試算した2050年のCO2貯留量に対して、日本が占めるCO2排出量の割合(3.3%)をかけると、年間約1.2〜2.4億トンのCCSが必要であることがわかっています。そのため、日本でも2030年のCCS事業化を目指し、実証試験や適地検査などが進められている状況です。
まとめ
この記事では、CCSの概要やメリット・デメリット、世界や日本での取り組み状況などを紹介しました。
CCSは大幅なCO2削減が見込まれる一方で、コストや法整備などが大きな障壁となっています。しかし、これらの課題を解決でき、実証試験や実地検査などが進んでいけば、カーボンニュートラル実現に大きく近づくでしょう。
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