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脱炭素への取り組みをわかりやすく解説|世界と日本の企業事例も紹介

世界的な課題である地球温暖化を抑止するには、脱炭素社会の実現が不可欠です。日本でも2020年の「2050年 カーボンニュートラル」で、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を宣言しました。

温室効果ガスの削減は個人だけではなく、企業を含む社会全体で取り組むことが重要です。そこで今回は、脱炭素への取り組みの重要性と世界と日本の動向を解説し、さらに企業として、どのような対策を行えばいいのか事例も併せてご紹介します。

脱炭素への具体的な取り組みを知りたい方は、ぜひご一読ください。

脱炭素とは

ここでは脱炭素の持つ言葉の意味や、必要とする背景を解説します。

脱炭素とは温室効果ガス排出を “実質ゼロ”にすること

脱炭素とは「地球温暖化の原因となる二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」ことです。「実質ゼロにする」というのは、排出された温室効果ガスの量と植林や森林保護などの活動を通して発生した温室効果ガス吸収量を相殺し、プラスマイナスゼロにすることを指します。

脱炭素とともに「カーボンニュートラル」もよく耳にしますが、こちらは複数ある温室効果ガスのうち「二酸化炭素(CO2)」に特化した言葉になります。ただし、環境省の資料でも「カーボンニュートラル(=脱炭素)」と表記されており、脱炭素との実質的な違いは、ほぼないと考えて問題ありません。

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脱炭素社会への取り組みが必要な背景とは

それでは脱炭素社会の実現はなぜ必要なのでしょうか。次の2つの視点から解説していきます。

  • 地球温暖化の現状
  • パリ協定の制定

地球温暖化の現状

気象庁により2022年の世界の平均気温の基準値は、1891年に統計を開始してから6番目に高い値となったことが報告されました。さらに、世界の年平均気温は100年あたり0.74℃の割合で上昇していることも判明しています。

「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の第5次評価報告書では、CO2の累積排出量と世界の平均気温の上昇は、比例関係があることも伝えられました。温室効果ガス排出量削減の努力をしなければ、2050年までに人間の生活が困難な2℃近くまで平均気温が上昇する可能性が高まっています。

出典:気象庁「世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2022年)」

パリ協定の制定

パリ協定とは、2015年に「COP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)」にて採択された気候変動に対する国際的なルールです。パリ協定の最大の特徴は、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」という、温室効果ガス削減に向けた取り組みを明文化したことです。

パリ協定制定後、世界の温室効果ガス削減への機運は高まり、各国の取り組みは拡大します。日本では2020年に菅元首相により、2050年に温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを世界に宣言しました。

日本の脱炭素への取り組み【経済システム全体を変革】

日本は脱炭素を経済成長のチャンスと捉え、さまざまな取り組みを開始しています。

GX(グリーントランスフォーメーション)の推進

世界の脱炭素の潮流は経済界にも大きく影響しています。日本はエネルギー安全補償のために、脱炭素事業に多大な投資をするなど、環境への取り組みこそが経済や産業への成長へとつながる時代に変化しています。そのため政府はGX(グリーントランスフォーメーション)により、「脱炭素化達成に向けた取り組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体の変革」を推進しています。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?意味やメリット、取り組み事例などをわかりやすく解説

グリーン成長戦略によるイノベーション促進

脱炭素化関連のイノベーション促進のために政府は2022年度補正予算で、2兆円の「グリーンイノベーション基金」を設立しました。「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策である「グリーン成長戦略」において、以下の14の重点分野を選定し、支援を実施します。企業にとって大きなビジネスチャンスの到来といえます。

1
洋上風力・太陽光・地熱
2
水素・燃料アンモニア
3
次世代熱エネルギー
4
原子力
5
自動車・蓄電池
6
半導体・情報通信
7
船舶
8
物流・人流・ 土木インフラ
9
食料・農林水産業
10
航空機
11
カーボンリサイクル・マテリアル
12
住宅・建築物・次世代電力マネジメント
13
資源循環関連
14
ライフスタイル関連

自治体の取り組み

自治体による取り組みも積極的に開始されています。いくつかをご紹介しましょう。

自治体名 脱炭素推進表明概要 詳細
東京都 「ゼロエミッション東京」 プラスチック、ZEV※や省エネ・再エネ施策等の更なる強化
群馬県 「ぐんま再生可能エネルギープロジェクト」 群馬県の恵まれた再生可能エネルギー資源のフル活用や、エネルギーの地産地消の推進
鹿児島県 「ゼロカーボンシティかごしま」 再生可能エネルギーの地産地消や、電気自動車・燃料電池自動車の普及促進、エコスタイルへの転換推進

※ZEV:「Zero Emission Vehicle」排出ガスを出さないEV(電気自動車)や燃料電池車のこと

脱炭素における世界の動向と取り組み


世界の脱炭素に向けた取り組みを、各国の温室効果ガス削減計画からみてみましょう。

各国の温室効果ガス削減政策

国名 2030年までの排出削減目標 政策及び関連予算
アメリカ -50 ~ -52%(2005年比) ・インフレ削減法:3,690億ドル(約59兆1,915億)
・インフラ投資雇用法:880億ドル(約14兆1,161億)
EU -55%以上(1990年比) ・欧州グリーン・ディール:1兆ユーロ(約171兆9,690億)
・REPowerEU:2030年までに3,000億ユーロ)
英国 -68%以上(1990年比) グリーン産業革命に向けた10項目:120億ポンド(約2兆4,350億)
韓国 40%(2018年年比) 2022年度のカーボンニュートラル関連予算として12兆ウォン(約13兆9,033億8,123万)
中国 ・CO2排出量を2030年までにピークアウト
・GDP当たり排出量を-65%以上(2005年比)
国家主席宣言
インド GDP当たりGHG排出量-45%(2005年比) モディ首相COP26宣言
日本 -46%(2013年度比)さらに50%を目指す グリーン成長戦略:基金2兆円等

出典:脱炭素を巡る世界の動向(資源エネルギー庁)

国際的基準GHG(温室効果ガス)プロトコル

「GHG(温室効果ガス)プロトコル」とは、国際的な脱炭素の基準です。温室効果ガス排出削減に取り組むためには、製品やサービスが生産されてから廃棄されるまで、ライフサイクル全体の排出量を把握することが重要です。GHGプロトコルでは、企業のサプライチェーンをScope1〜3に区分することで、それぞれの排出量を把握できます。

Scope1 エネルギーの燃焼や生産過程において、事業者自体が直接排出する温室効果ガスのことで「直接排出」と呼ばれる
Scope2 自社の購入電力が化石燃料で、発電の際に排出する温室効果ガスのこと。「間接排出量」とも呼ばれる
Scope3 Scope1.2以外のサプライヤーから間接排出されるすべての温室効果ガスのこと

企業の脱炭素取り組みへの意識と対策

企業は脱炭素に向けて、どのような問題意識を持って取り組むべきでしょうか。またどのような対策が有効なのでしょうか。企業の脱炭素取り組みのポイントを解説していきます。

温室効果ガスの計測や目標設計

まずは自社の温室効果ガス排出量をカーボンフットプリント等の手法で算定し、把握することが必要です。把握したうえで削減目標を設定し、目標に向けてどのような施策を実施するかを検討します。

自社の脱炭素への課題を洗い出す

排出量を把握したら削減目的の確立と、課題の洗い出しを行いましょう。例えば以下のような視点から自社の脱炭素における課題を洗い出し、施策を検討することが重要です。

  • 省エネ・コスト削減
  • 社会的価値の向上
  • 成長機会の創出
  • 競争力の強化
  • 環境への貢献

それぞれの部署においてどのような課題があるのかを抽出し、さらに自社のリソースを確認しておくことも必要です。脱炭素推進が形だけの施策にならないように、社内全体で脱炭素への意識を共有することも大切です。

再生可能エネルギー導入を検討する

脱炭素化を促進するためには、何より化石エネルギーの使用を減らさなくてはなりません。そのためには再生可能エネルギーの導入が不可欠です。日本の再生可能エネルギー導入率は、2011年度は10.4%でしたが、2022年度には21.7%と約二倍に上昇しています。またPPAモデルによる市場も拡大しており、以前より導入によるコストは減少しています。

国際的イニシアティブに参画する

国際的なイニシアティブに参画することは、脱炭素推進のみならず社会的価値向上にも有効な手立てです。それぞれの特徴を確認し、自社に有効なイニシアチブ参加を検討してみましょう。

  • EP100
    EP100(Energy Productivity100%) は、「Climate Group 」が主導する企業におけるエネルギーの効率化を促進するイニシアチブです。エネルギー生産性の倍増、エネルギー管理システムの導入、ネットゼロカーボンビルの実現など、エネルギー効率の向上に取り組む 125 社以上の意欲的な企業が結集しています。
  • RE100
    「RE100(Renewable Electricity100%)」 は、 再生可能エネルギーによる電力を100%使用する再エネ促進の国際イニシアチブです。ITから自動車業界まで、グローバル500 企業を含む多様な分野から企業が集結しており、日本からも多くのグローバル企業が参画しています。
  • EV100
    「EV100 (Electric Vehicles 100%)」は、EV(電気自動車)への移行を加速することに取り組んでいる国際イニシアチブです。2030 年までに最大7.5 トンの自社所有および契約車両をEVに切り替え、従業員と顧客向けの充電インフラ設置を掲げています。

RE100とは?メリットや日本・海外の加盟企業などをわかりやすく解説

日本と世界の取り組み事例

ここでは脱炭素化を推進している日本と世界の企業事例をご紹介します。ぜひ自社の取り組みへの参考にしてください。

日本の企業事例

ミニストップ株式会社

2030年までに店舗に使用する電力から、CO2排出量を2013年度比で50%の削減目標を掲げています。具体的な取り組み例としては、ソフトクリームにつけていたプラスチックのスプーンを、「たべるスプーン」に切り替えることで、ライフサイクル全体で3.5グラムの温室効果ガス削減を達成しました。

出典:ミニストップ株式会社 サステナビリティ

住友林業株式会社

住友グループは、2030年までに温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減する目標を設定しています。そのために温室効果ガス排出量が少ない建築物の木化に取り組んでおり、2021年桐朋学園大学仙川キャンパスで、木造3階建ての音楽ホール「桐朋学園宗次ホール」を竣工。CO2排出量を鉄骨造より21%、鉄筋コンクリート造より28%削減したことを報告しています。

出典:住友グループ広報委員会 住友林業×脱炭素

イオンモール

アジア全域で事業を展開するイオンモールは、顧客のEV導入を支援することに注力しており、国際イニシアチブ「EV100」に参画しています。すでに日本国内80か所に1,000を超える充電ポイントを設置しており、2030年までにその規模に応じ各モールに急速充電器を最高で17基設置することを計画しています。

出典:EV100 ケーススタディ: 日本での前進

鈴廣かまぼこ株式会社

東日本大震災後にエネルギー問題に取り組み、2025年までにグループ全体でCO2実質排出量を2019年比23%削減の目標を掲げています。工場の電力の80%を太陽光発電で賄ったり、地熱や太陽熱による温水をレストランに使用したりするなど、再エネや創エネの積極的な活用を実施しています。

出典:鈴廣かまぼこのサステナビリティ

世界の企業事例

ユニリーバ(イギリス)

イギリスに本拠を置く世界最大級の消費財メーカー「ユニリーバ」は、2039年までにライフサイクルすべての過程でCO2排出量実質ゼロの目標を掲げています。2023年末時点で、全世界の工場やオフィスからの温室効果ガス排出量を2015年比で74%削減しました。また全世界で使用する92%の電力を再エネで調達しています。

出典:ユニリーバジャパン サステナビリティ

メルセデス・ベンツ(ドイツ)

ドイツのメルセデス・ベンツでは、2039年までに技術開発から、バリューチェーンや新車の全車両のライフサイクルすべてにおいて、カーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。また全車両を電動化する計画も進めています。

出典:メルセデス・ベンツ カーボンニュートラルへの取り組み

吉利汽車(中国)

2025年までに自動車1台当たりの炭素排出量を、2020年比で25%以上削減することを掲げています。2022年度、製造工場での再エネ使用率は36%に及び、自動車1台当たりの温室効果ガスの総排出量は2020年比で24.8%削減しています。

出典:カーボンニュートラル達成に向けた中国政府、企業の対応状況(JETRO)

まとめ


本記事では脱炭素への取り組みをさまざまな角度から解説しました。脱炭素への取り組みはすでに世界的な潮流であり、社会全体で取り組むことが重要です。

そのためには脱炭素に関する知識が不可欠であり、脱炭素に関する知識をより身につけたい場合はGX検定がおすすめです。

脱炭素化を推進し、社会に対して貢献したい企業担当の方は、スキルアップNeXt株式会社の人材育成プログラム「Skillup Green」をぜひご利用ください。

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GXメディア編集部
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GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。