脱炭素ソリューションとは?必要性からポイント、企業メリットまで解説
社会全体で脱炭素を実現するためには、企業における脱炭素ソリューションを促進する必要があります。
しかし脱炭素ソリューションといっても、具体的にどうすればいいのかわからない企業担当の方がほとんどではないでしょうか。
そこで本記事では、企業における脱炭素ソリューションの重要性やポイント、さらにメリットまで具体的に解説します。脱炭素ソリューションについての知見を深めたい方は、ぜひご一読ください。
脱炭素ソリューションとは
ソリューションとは課題を解決するという意味です。脱炭素ソリューションとは、温室効果ガスを削減し、脱炭素化を進めるためのさまざまな取り組みを指します。
脱炭素ソリューション実施の重要性
脱炭素ソリューションはなぜ重要なのでしょうか。人間活動による温室効果ガス排出は増加の一途をたどり、地球温暖化は加速しています。そして気温上昇による異常気象は、熱波や干ばつ、豪雨など深刻な災害を招きます。CO2(二酸化炭素)を代表とする温室効果ガス排出を削減するための取り組みは、一刻を争うといっても過言ではありません。
世界のエネルギー起源CO2排出割合(2021年)
出典:エネルギーに関するさまざまな動きの今がわかる!「エネルギー白書2024」(資源エネルギー庁)
しかし脱炭素を推進するといっても具体的な取り組みが伴わなければ意味がありません。企業や組織で脱炭素を推進するためには、確実で効果的な取り組みが必要です。そのために脱炭素ソリューションが重要となります。
脱炭素ソリューションの重要ポイント4つ
企業における脱炭素ソリューションの重点ポイントはいくつかありますが、ここでは次の4つのポイントについてわかりやすく解説しましょう。
1. エネルギーを置き換える
これまで使用していた化石由来のエネルギーから、CO2排出量の少ない低炭素エネルギーに置き換えることで、CO2削減につながります。具体例を挙げると、社内の電力を再生可能エネルギー由来の電力に置き換える、ガソリン車をEV(電気自動車)に置き換えるなどがあげられます。
2. エネルギーを削減する
エネルギーを削減することも脱炭素への道筋のひとつです。そのためには社内設備を省エネ性能に切り替えたり、事業活動の無駄な電力使用を見直したりするなどの工夫が必要です。エネルギー使用量を減らし、コスト削減に取り組みながら脱炭素を実現していきます。
3. 再生可能エネルギーを創る
太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーで電力を創り出すことは、脱炭素ソリューションの中でも特に重要なポイントです。日本は化石エネルギー使用による火力発電がメインのため、燃料のほとんどを海外から輸入しています。しかし自国の自然資源を利用する再生可能エネルギーなら、海外の燃料に依存することなく永続的に使用が可能です。さらに電気の自給自足という恩恵をもたらしながら、脱炭素化を推進することができます。
4. CO2を削減する
温室効果ガスの代表であるCO2の削減に取り組むことは、いまや企業の社会的責任といえます。CO2削減を推進するには、自社のCO2排出量がどのくらいなのかを把握することが何より重要です。そのため企業はサプライチェーン全体での排出量を把握し、具体的な数値で削減目標を掲げ取り組むことがポイントとなります。
脱炭素とは
それではそもそも脱炭素とは何なのか。ここでは簡単に解説しましょう。
脱炭素とは
脱炭素とは、地球温暖化の原因となるCO2をはじめとした温室効果ガスの排出量をゼロにする取り組みのことです。よくいわれるカーボンニュートラルと一般的にはほぼ同義で使用されています。
脱炭素やカーボンニュートラルとの違いについては、こちらで詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
脱炭素ソリューション実施のメリット
脱炭素ソリューションの実施には多くのメリットがあります。ここでは企業における脱炭素ソリューションのメリットを紹介しましょう。
メリット①イノベーション促進
脱炭素ソリューションによるイノベーションの促進は、自社の新ビジネス拡大や持続可能な企業に成長する大きなチャンスになります。日本ではGX(グリーントランスフォーメーション)促進を掲げ、14の産業分野の脱炭素イノベーション支援を行う計画です。約2兆円のグリーンイノベーション基金を設立し、エネルギー関連産業・製造関連産業・オフィス関連産業等の14の産業分野を推進します。
自社の脱炭素ソリューションを推進し、イノベーションを促進することは、自社の経済成長の大きなメリットとなる時代を迎えています。
GXについてはこちらの記事をご覧ください。
また「スキルアップ Green」では、企業に必要なGXや脱炭素の知識体系や技術、ソリューションが学べます。ぜひご活用ください。
メリット②脱炭素分野の人材育成
脱炭素ソリューション推進は、自社の人材育成の一貫としても有効といえます。消費者庁が令和4年に行った消費生活意識調査結果では、「エシカル消費」について、知っていると回答した人は、年代別では20代が最も高く 36.5%もありました。エシカルとは人・地球環境・社会・地域に配慮した考え方や行動のことです。若年層ほど環境問題に対して敏感であることがわかります。
若い世代は脱炭素のような環境活動を実施している企業で、積極的に働きたいという希望を抱いています。脱炭素ソリューション推進は社会貢献に役立つ優秀な人材を集め、さらに育成することに役立ちます。
出典:消費者庁「令和4年度第3回消費生活意識調査結果について」
メリット③持続可能な社会構築に貢献
持続可能な社会を構築するには、多大なCO2を発生する大量生産・大量消費の経済体制を見直す必要があります。地球温暖化を抑止し持続可能な社会構築を目指すためには、脱炭素を推進し、環境貢献をすることこそが社会的な価値を高める時代になります。
メリット④再生可能エネルギーの拡大に寄与
脱炭素ソリューションの推進は再生可能エネルギーの拡大に繋がります。再生可能エネルギー市場が拡大すれば、日本も自国でエネルギーを自給自足でき、経済的にも大きなメリットを得られます。再生可能エネルギー導入にかかるコストは年々低下しており、多くの企業が再生可能エネルギーを活用しています。
さまざまな脱炭素ソリューション
脱炭素ソリューションにはさまざまな方法があります。ここでは代表的なソリューションをいくつかご紹介していきましょう。
CO2排出量の可視化
脱炭素推進において、どのくらいのCO2を排出しているか把握することはたいへん重要です。CO2排出量が可視化されれば、具体的な取り組みや目標が見えてきます。また企業においては、LCAやサプライチェーン全体での排出量を把握することが必須です。
そのための有効な手立てとして、カーボンフットプリントの活用があげられます。
カーボンフットプリント
カーボンフットプリントとは、製品やサービスのライフサイクルで排出される温室効果ガスの排出量を、CO2に換算して商品・サービスに表示する手法です。これにより企業や消費者は、その製品がどのくらいのCO2量を排出しているのかを知ることが可能です。
カーボンフットプリントについては、こちらで詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)
エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは、エネルギーの使用状況を可視化することでエネルギーの運用を最適化するためのシステムです。例えば工場やビル、地域施設で必要以上のエネルギーを使わず最適化すれば、CO2排出量も減り環境にも負荷をかけずに済みます。エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、対象とする施設によって以下のようなものがあります。
- FEMS(フェムス):工場等のエネルギー管理
- BEMS(ベムス):オフィスビルや商業ビル対象
- HEMS(ヘムス):モバイルデ等で外出先からの遠隔操作が可能
- CEMS(セムス):地域全体のエネルギー運用を管理
植林・育林
森林を構成している樹木は光合成により大気中のCO2を吸収し、炭素として蓄えることで成長し酸素を放出しています。カーボンニュートラル実現のためには、CO2排出量を実質ゼロにすることが必要です。そのためにはCO2を削減するだけではなく、森林保護活動や育林、植林によるCO2吸収量を高めることも重要です。
林野庁によると、36〜40年生のスギ人工林1ヘクタールが1年間に吸収するCO2の量は、約8.8トンと推定されており、植林・育林の重要性がわかります。
出典:森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?(林野庁)
再生可能エネルギー活用
脱炭素ソリューションの中でも最も有効かつ重要なのは再生可能エネルギーの普及拡大を図ることです。国内で普及している太陽光発電と、今後の期待が高い洋上風力発電について解説しましょう。
太陽光発電
太陽光発電は、国内で最も普及している再生可能エネルギーです。太陽光を太陽電池モジュール(太陽光パネル)に当てることで、直流電気を発電します。住宅の屋根だけではなく、カーポートの屋根なども利用可能で、新築住宅に設置を義務付けている自治体も増えています。また蓄電池と併用することで災害時に活用できる非常電源としても、有用です。
洋上風力発電
風力タービンを回転させ、風力エネルギーを電力に変換するシステムが風力発電です。近年は島国の日本でポテンシャルの高い洋上風力発電が有望視されています。洋上風力発電には「着床式」と「浮体式」の二種類があり、開発が進められています。
CCS・CCUS(CO2回収、有効利用、貯留)
「CCS」とはCO2を回収・貯留する方法のことで、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略です。工場や発電所のCO2が大気に放散される前に、分離・回収して地中深くに長期間安定的に貯留を行う技術です。
一方「CCU」とは、「Carbon dioxide Capture and Utilization」の略で分離・回収したCO2を地中に貯留するのではなく、資源として捉え有効利用するための技術です。「CCS」と「CCU」の二つの技術を総称して「CCUS」と呼びます。国内では苫小牧で大規模実証試験が行われています。
CCSについてはこちらの記事もぜひご覧ください。
EV(電気自動車)
EVとは「Electric Vehicle」の略で「電気自動車」のことです。アメリカのテスラをはじめとして海外で普及が拡大しています。環境省の2020年の報告によると、ガソリン車の走行時の温室効果ガス排出量は39.3tCO2eでした。それに対してEVは0.0tCO2eであり、排出量が非常に少ないことがわかります。
国内でも大手メーカーによるEV開発は進んでおり、自治体ではEV購入時に補助金を支援しているところも増えています。
世界と日本の脱炭素ソリューション動向
ここでは世界と日本の脱炭素ソリューションの実例についてご紹介していきます。
海外事例
脱炭素にいち早く取り組んでいるEU(欧州連合)は、脱炭素化を加速するために2035年に欧州域内でCO2を排出する自動車販売を禁止し、EV(電気自動車)への移行を促進する予定です。今後は、2030年に乗用車と小型商用車のCO2排出量を、2021年比で55%削減、2035年には100%削減の目標を掲げています。
出典:欧州委、2035年までに全ての新車のゼロエミッション化提案(JETRO)
国内事例
国内では再生可能エネルギー開発が促進されています。特に洋上風力発電開発では「洋上風力産業ビジョン」を掲げ、2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000万kW~4,500万kWの案件を形成する予定です。長崎県五島市沖のプロジェクトでは風車を8基設置し、総出力は16.8メガワットにもなる予定です。
まとめ
脱炭素ソリューションについて、重要ポイントからどのようなソリューションがあるのかまで解説しました。脱炭素ソリューションの促進は今や世界的な潮流です。
企業が脱炭素ソリューションに取り組む場合は、明確な目標設定や具体的な取り組み方法をしっかりと検討する必要があります。
政府が推進するGXの知見を深めることも脱炭素ソリューションに大いに役立ちます。
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