カーボンニュートラル燃料とは?具体的な利用方法と企業の取り組み事例を紹介
地球温暖化に関連してカーボンニュートラルへの取り組みが世界的に求められています。
特にカーボンニュートラルの実現に向けて注目されているのがカーボンニュートラル燃料です。
ではなぜ今、カーボンニュートラル燃料が注目されているのでしょうか?
今回の記事では、カーボンニュートラル燃料についての基礎知識はもちろん、カーボンニュートラルが果たす役割、各企業の取り組みや実例も紹介し、最後にカーボンニュートラルに向けてどのように取り組んでいけば良いのか、身近な例をあげて紹介していきます。
ぜひ最後まで読み進めて参考にしてみてください。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(GHG)の排出量と吸収量が均衡している状態のことを指します。
つまり温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガス)を排出した分だけ、どこかで吸収もしくは除去されることで差し引きゼロ(温室効果ガスの排出量が実質ゼロ)になる状態、これをカーボンニュートラルと言います。
カーボンニュートラルの基礎知識については”カーボンニュートラルとは|意味や企業の取り組み、推進するメリットをわかりやすく解説”にて解説しておりますので参考にしてください。
カーボンニュートラル燃料とは
カーボンニュートラル燃料とは、二酸化炭素(CO2)や水素(H)を合成して作られた合成燃料やバイオ燃料など、大気中のCO2濃度に極力影響を与えないように設計された燃料のことです。
カーボンニュートラル燃料は、燃料の生成と使用の全過程で、排出されるCO2の量が生成過程で使用されるCO2の量と等しいか、またはそれを下回るように設計されており、全体として大気中のCO2の総量に大きく影響を与えない燃料として注目されています。
(燃料を生産する際の大気中の二酸化炭素の総量がおさえられたニュートラルな燃料であることから「カーボンニュートラル燃料」と呼ばれています)
ただし、現時点においては、技術的に完全な均衡を保つことは難しく、大気中の二酸化炭素の総量に多少の誤差が生じる可能性があるといわれています。
カーボンニュートラル燃料の原料
カーボンニュートラル燃料の原料として使われるのは発電所や工場などから排出された二酸化炭素、水素です。
画像出典:資源エネルギー庁
なかでも再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力など)を用いて水(H2O)の電気分解を行った水素(H)は「グリーン水素」と呼ばれ、このとき生成されたグリーン水素を利用して合成された燃料は「e-fuel(イーフューエル)」と呼ばれます(e-fuelについて、詳しくは後述します)。
カーボンニュートラル燃料=製造過程や使用時に排出される二酸化炭素の量が、吸収される量と等しいか、またはそれを下回る燃料のこと
二酸化炭素を原料の一部として、再生可能エネルギーを使って作られた燃料がカーボンニュートラル燃料だと考える事ができます。
そして、カーボンニュートラル燃料には二酸化炭素を『加工』して燃料の材料にしたものと、二酸化炭素を『吸収した植物など』を原料として作られた燃料の2つがあります。
1.二酸化炭素を『加工』して燃料の材料にしたもの
2.二酸化炭素を『吸収した植物など』を原料としたもの
カーボンニュートラル燃料のメリット
ではカーボンニュートラル燃料を利用するメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
代表的なメリットは次の4つです。
1:環境保護(二酸化炭素排出量の削減)
2:持続可能性(既存設備の再利用)
3:長期的なコスト削減
4:日本国内のエネルギー自給率の向上
1:環境保護(二酸化炭素排出量の削減)
カーボンニュートラル燃料の最大のメリットは地球温暖化の要因のひとつとされている二酸化炭素の排出量を大きく削減できることです。
現在主流の方法では燃料を合成する際に二酸化炭素を排出しますが、カーボンニュートラル燃料は燃焼時の二酸化炭素を回収し再利用して作られるため(カーボンリサイクル)製造工程で二酸化炭素の排出量が「差し引き0」になります。
環境にやさしいクリーンな燃料と言えるでしょう。
画像出典:HONDA自動車
またカーボンニュートラル燃料は原油に比べて、硫黄分や重金属分が少ないことからも排出ガスに健康影響リスクのあるSOxが含まれないクリーンな燃料であると言われることもあります。
さらに、今後は大気中のCO2を直接分離・回収して合成燃料を作るといった、二酸化炭素の排出をおさえる燃料の研究開発も進んでおり、将来的にはCO2を資源として利用するカーボンリサイクルに向けた取り組みがされています。
2:持続可能性(既存設備の再利用)
カーボンニュートラル燃料は、自動車はもちろん航空機や船舶などの貨物車の燃料として使用できます。
化石由来のガソリンや軽油のようにエネルギー密度が高い特徴があるからです。
エネルギー密度の比較 出典:トヨタ自動車
また、カーボンニュートラル燃料を利用するために新しい設備を導入する必要がなく既存の設備を再利用できる点も大きなメリットと言えます。
既存の化石燃料の設備を利用して、カーボンニュートラル燃料を生成できる上に、合成燃料は既存のエンジン車の燃料としても使用できるのです。
つまり、エネルギーの利用用途はそのままに、化石燃料よりも環境負荷の少ないエネルギーとして利用できる、これもカーボンニュートラル燃料が注目を浴びている理由のひとつです。
カーボンニュートラル燃料が普及すると化石燃料の依存度が少なくなる上に、よりエネルギー供給の安定性が向上していきます。
3:長期的なコスト削減
カーボンニュートラル燃料は、既存の化石燃料の設備を再利用し燃料を生成できることや、再生可能エネルギーを利用するコストが年々低下していることから、燃料製造コストの削減が見込まれています。
「見込まれている」といった表現の通り現時点ではまだカーボンニュートラル燃料の製造コストが高く、製造における生成コストの削減もカーボンニュートラルの実現に向けての課題のひとつになっているのです(詳細はカーボンニュートラル燃料のデメリット「1:現時点ではコストがかかる」を参考にしてください)。
ただし、コスト削減の課題については、カーボンニュートラル燃料が普及することで関連する技術革新が促されるため、燃料の合成方法の効率化やコスト削減が期待できるので削減可能と言えるでしょう。
現在は、技術開発や大規模実証等により既存のガソリンの代わりとなる合成燃料を2050年には1リットルあたり100円〜150円におさえるコスト目標が設定されています。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁 CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案)
4:日本国内のエネルギー自給率の向上
カーボンニュートラル燃料を利用すれば日本国内のエネルギー自給率を高めることができます。
経済産業省の公表によると2022年度のエネルギー自給率(IEAベース)は12.6%とされており、前年度比0.7pt減となっています。
エネルギー自給率(IEAベース) 出典:経済産業省2022年度エネルギー需給実績(確報)参考資料
このように日本国内のエネルギー自給率は他の先進国と比べて低いものとなっているのが現状で国をあげて取り組むべき課題の一つとなっています。
先進国の中でもエネルギー自給率の低い日本において、脱炭素化を実現できる燃料の研究や開発によりエネルギー自給率を向上させることができれば、エネルギー供給の安定性が確保できるため、結果として国際競争力の向上につながっていきます。
つまりカーボンニュートラルをきっかけとして、より経済成長をうながせられると考えられています。
参考:令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(確報)
カーボンニュートラル燃料のデメリット
カーボンニュートラル燃料にはメリットもある一方で、デメリットもあります。
代表的なデメリットは3つです。
1:現時点ではコストがかかる
2:現時点では原料の安定的確保が難しい
3:実用化には時間がかかる
1:現時点ではコストがかかる
カーボンニュートラル燃料の最大のデメリットは化石燃料と比べて製造コストが高いことです。
カーボンニュートラル燃料の製造コストは、製造方法や生産規模によって大きく異なりますが、経済産業省資源エネルギー庁の試算によると国内の水素を活用し合成燃料を製造すると「700円/リットル」コストがかかるとされています。
また、海外の水素を国内に輸送し、国内で合成燃料を製造するケースでは「350円/リットル」、さらに合成燃料を海外で製造するケースでは「300円/リットル」と試算されています。
画像資料:資源エネルギー庁
将来的には水素価格が20円/Nm3になり「200円/リットル」となると試算されていますが、現時点ではコストが高くつくことは最大のデメリットと言えるでしょう。
国内の水素を活用して国内で合成燃料を製造する場合 700円
海外の水素を国内に輸入して国内で合成燃料を製造する場合 350円
合成燃料を海外で製造する場合 300円
将来水素コストがNm3メートルあたり20円になった場合 200円
出典:経済産業省エネルギー庁 CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案)(合成燃料の製造とコスト)
このように、カーボンニュートラル燃料は、製造コストの高さが一番のデメリットとしてあげられることが多く、合わせて燃料合成時の製造効率の問題や、製造効率の向上が課題としてあげられることが多く、製造においての問題として語られている状況にあります。
2:原料の安定的確保が難しい
またカーボンニュートラル燃料は、これまでの石油や天然ガスとは異なる原料を必要とします。
例えばバイオエタノールやSAFは、植物や廃棄物、廃食用油などが原料となり、それらは食料としての需要が高く、原料の確保や供給量には限りがあります。
燃料の需要が高くなると、原料の奪い合いになることが予想されるため、安定した供給量を確保するために日本国内で一体となり実用化へ向けた取り組みを行う必要があるのです。
カーボンニュートラル燃料は次世代エネルギーとしてのポテンシャルがある一方で、現時点では原料の製造プロセスにおいては課題があり限界があるのが現状なのです。
3:実用化には時間がかかる
カーボンニュートラル燃料を実用化するには技術的なハードルが高く、段階的な実証実験を繰り返す必要があります。
例えばより製造効率を向上させるためのプロセスを踏む必要があったり技術革新による大量生産、先ほど記述したデメリットのひとつである原料の確保とコストの低下など課題が多く残っています。
今後集中的な技術開発と実証を行い、大規模な製造技術を確立することが目指されており、日本国内においては2030年代前半までに商用化を目指す計画で技術開発、実証が進められています。
総じて、カーボンニュートラル燃料を商用化するにあたって、製造プロセスを含めた全体的な効率化のための技術開発が必要とされているのです。
カーボンニュートラル燃料の種類
ここからはカーボンニュートラル燃料にはどんなものがあるのか、燃料の種類について見ていきます。
カーボンニュートラル燃料の種類は次の5つに分類されます。
1:合成燃料
2:e-fuel=再エネ由来の水素を用いた燃料
3:バイオ燃料
4:SAF
5:水素
1:合成燃料
合成燃料は、二酸化炭素と水素を合成して作られる燃料のことです。
原料となる二酸化炭素は発電所や工場から排出されたものを使い、水素は石炭や化石などの化石燃料から水蒸気を使って精製された「グレー水素」や「ブルー水素」が使われます。
合成燃料を生成する際の燃焼時には二酸化炭素が排出されますが、原料としても二酸化炭素が利用されるため、空気中の二酸化炭素はプラマイゼロとなり(均衡状態)、大気中の二酸化酸素の総量に変化はおきません。
また合成燃料は成分や性質が石油に近いため、既存のインフラをそのまま利用できます。
例えば乗用車や貨物車などのガソリンの代わりとして利用したり、灯油の代替として合成燃料を利用するなど産業だけではなく家庭用の活用も想定されています。
2:e-fuel=再エネ由来の水素を用いた燃料
大気中のCO2を直接分離回収するDAC技術が使われ、さらに再生可能エネルギーを用いて(太陽光、風力、水力など)水(H2O)の電気分解を行った水素(H)を原料として生成されたカーボンニュートラル燃料はe-fuel(イーフューエル)と呼ばれます。
先にあげた合成燃料との違いは、DAC技術が使われていること、それに再生可能エネルギーによって水分解で作られたグリーン水素が使われていることなどがあります。
【合成燃料】
CO2 化石燃料を使った発電所や工場から出たCO2など
H(水素)化石燃料によるグレー水素、またはCO2を分離したブルー水素。カーボンニュートラルを達成するためには、再生可能エネルギーを用いて製造されるグリーン水素が望ましい。
【e-fuel】
CO2 大気中のCO2を直接分離回収するDAC技術が使用されている
H(水素)再生エネルギー電力による水分解で作られるグリーン水素が使われている
日本国内でもe-fuelの生成方法の研究が進められていますが、回収効率やコストの問題が残っているため、実用化にはまだ時間が必要になるとされています。
3:バイオ燃料
バイオ燃料は、動物や植物の生物資源(バイオマス)を原材料としている燃料で(化石燃料は含まず)、微生物発酵させて作る方法とエステル化(酸とアルコールから、水を分離し縮合して生成する方法)などで作られる方法があります。
バイオ燃料は既に多くの国で導入が進んでおり、特にトウモロコシやサトウキビを産出する南北アメリカ諸国では混合ガソリンとしてガソリンにバイオエタノールを混ぜたガソリンが流通しています。
また、バイオ燃料は精製方法によって下記の3つに分類されます。
バイオエタノール
バイオエタノールは原材料をサトウキビ、とうもろこし、イナワラ、木材などとし、微生物や酵母を利用して発酵させて製造するバイオ燃料のことです。
バイオディーゼル
バイオディーゼルは、なたね油、パーム油、オリーブオイル、魚油、牛脂、などの生物資源を原材料としエステル化などで作られるバイオ燃料のことです。
バイオエタノールのように発酵させる必要はないものの原材料として使われる油は粘度が高いため、粘度を下げた処理を施して精製されます。
バイオガス(メタンガス)
バイオガスの原材料は主に廃棄物です。排泄物(下水、し尿、肥料など)を用いて、微生物により発酵を促進させ、バイオガスとして製造されています。
4:SAF
SAF(Sustainable Aviation Fuel)は、「持続可能な航空燃料」のことで、原材料として廃油や植物油などバイオマス系から作られた燃料のことを言います。
厳密には二酸化炭素(CO2)で生成されたSAFはありませんが、原料となる植物が光合成によって二酸化炭素を吸収するため、カーボンニュートラルだと考えられています。
また、現在の燃料認証の規定においてはSAFを100%航空燃料として利用することは認められておらず、これまで活用されてきたネット燃料と混ぜて使うように取り決められています。
5:水素
水素は酸素と結合して水を生成し、さらに燃焼させても二酸化炭素を排出しないことからカーボンニュートラル燃料として最も注目を集めています。
現在は、地球環境はもちろん人体に害を与えない安全性の高い気体として、クリーンな燃料として評価されています。
また、水素は化石燃料を燃焼した際にバイオマス燃料活用時に生成するのも可能で、再生可能エネルギーとしても非常に優れた燃料として注目されています。
- 地球上のあらゆる場所にあり資源枯渇の可能性が低い
- 燃焼する際にCO2が生じない
- エネルギー密度が高い(ガソリンの2倍以上)
- 運搬しやすく長期間保存可能
さらに水素は作ることもでき、石油や天然ガスなど化石燃料を燃焼させる際やバイオマスを活用したりとカーボンニュートラルな素材として様々な使われ方が期待されている燃料です。
ちなみに、水を「電気分解」することで得られる水素を「グリーン水素」と言いますが、トヨタ自動車などでもガソリンに代わる燃料としての取り組みや実証実験が進められています。
カーボンニュートラル燃料の活用方法
次に、カーボンニュートラル燃料が活用されている場面について紹介していきます。
自動車
合成燃料、e-fuel、バイオ燃料は自動車のガソリンにかわるカーボンニュートラル燃料として利用できます。
なかでも合成燃料やe-fuelは成分や性質などが石油とよく似ている特徴があり、灯油の代わりとしても利用できるよう日夜技術開発が進められています。
また、バイオ燃料は既に南北アメリカ諸国で混合ガソリンとして使用されていたり、本格的な実用化が既に始まっています。
さらに、現在は燃料電池自動車のエネルギー源として水素を利用する実証実験が繰り返されていたりと、実用化に向けて技術開発が進められています。
航空機・船舶
航空機については航空燃料としてSAF(バイオジェット燃料)や合成燃料が利用されています。
規定により100%の航空燃料とすることは認められていないものの、現在でも世界中で実証実験が行われており、SAFと化石燃料を混ぜた燃料が利用されています。
SAFを利用したところ、化石燃料だけを利用した場合と比べて、二酸化炭素の排出量を約80%削減可能となったとされており、日本でも航空燃料の10%をSAFにすることを目指して取り組んでいます。
また船舶についても水素、アンモニアなどの代替燃料の開発が進められており、実用化に向けて日々実証実験が繰り返されています。
その他
その他、灯油、LPガス、都市ガスを利用した暖房器具の代替燃料として合成燃料の利用が期待できます。
産業用ボイラーの燃料としても考えられていたりと、カーボンニュートラル燃料の活用の幅は広くあります。
カーボンニュートラル燃料に取り組む企業の事例
では実際にどのような企業がカーボンニュートラル燃料の開発や実用化に向けてどのような取り組みを行なっているのでしょうか。
ここからはカーボンニュートラル燃料に取り組む企業の実例についてまとめていきます。
1:トヨタ自動車
2:本田技研工業
3:出光興産株式会社
4:ENEOS
1:トヨタ自動車
トヨタ自動車では全社を上げて国や地域の実情に即したカーボンニュートラル社会の実現に向けてさまざまな取り組みがなされています。
例えばエンジン車に「合成燃料」を利用した研究開発が進められていることもその一環だと言えます。
トヨタはカーボンニュートラル燃料を使用したGR86や、液体水素燃料を使用した水素エンジンGRカローラで「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2024 Empowered by BRIDGESTONE 第2戦 NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース」に参戦したことが話題になりましたが、HV(Hybrid Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)などの脱炭素化に向けての取り組みを公式に表明しています。
参考:注目のカーボンニュートラル燃料 エンジン車で脱炭素を実現する「合成燃料」の可能性とは?
また水素エンジンカローラは液体水素ポンプの耐久性の向上と軽量化を実現し、GR86に至っては燃料の成分調整を行い、合成燃料の「燃料がオイルエンジンに希釈しやすい」という短所を改善するなどカーボンニュートラルに向けて日々技術革新が進められています。
参考:進化した液体水素エンジンGRカローラ S耐富士24時間に挑戦
参考:水素エンジンカローラとGR86(カーボンニュートラル燃料)、スーパー耐久シリーズオートポリス大会に参戦
2022年7月には、バイオエタノール燃料製造への取り組みに向けてトヨタ自動車株式会社、ENEOS株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、豊田通商株式会社の6社で「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」を設立したことでも話題になりました。
また、2024年5月27日には公式に脱炭素化に向けてカーボンニュートラル燃料の導入、普及に向けて供給、技術、需要のそれぞれで主要な役割を持つ出光興産株式会社、ENEOS株式会社、三菱重工業株式会社とカーボンニュートラル燃料の検討を開始したと発表されているなど、カーボンニュートラル燃料の推進をより多角的に行なっています。
参考:民間6社による「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」を設立
参考:出光興産、ENEOS、トヨタ自動車、三菱重工業、自動車向けカーボンニュートラル燃料の導入と普及に向けた検討を開始
さらにはカーボンニュートラル実現に向けての特設ページを開設し、2035年までに工場のカーボンニュートラル化を目指して取り組むことなどを公表しており、今後様々な技術革新や発展が見込まれています。
”つくる”ときもカーボンニュートラル。 トヨタならではのアクションとは?
2:本田技研工業
本田技研工業では、1999年より燃料電池を搭載した実験車[FCX-V1](純水素型)と[FCX-V2](メタノール改質型)を公開し、燃料電池車に取り組んできました。
例えば2008年7月より米国で燃料電池自動車(FCV)FCXクラリティのリース販売を開始しています。
また、藻を活用してバイオエタノールを生成する開発、DAC技術を使った合成燃料の研究などカーボンニュートラル燃料において多彩な取り組みをしています。
2020年10月には「カーボンニュートラルの実現」を目指すことを宣言し、その取り組みにおいて「Honda エコマイレッジチャレンジ2024」から、カーボンニュートラル燃料を導入したクラスを新設、2026年からのF1のカーボンニュートラル燃料義務化に備えた合成燃料開発、2024年夏にはSUV「CR-V」をベースにした新型燃料電池車を発売予定などカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいます。
さらにはe-fuel由来のSAFの研究に着手するなど、カーボンニュートラル燃料を使用したHondaJetやHonda eVTOLなどの航空部門への活用が期待されています。
3:出光興産株式会社
出光興産株式会社は、2023年4月5日にカーボンニュートラルの実現に向けて、合成燃料(e-fuel)の製造を行うHIF Global(以下HIF)と合成燃料の生産や日本での実用化・普及を加速させるため戦略的パートナーシップを結ぶMOUを締結したと発表しています。
参考:HIF Global社との合成燃料(e-fuel)分野における戦略的パートナーシップに関するMOU締結について
HIFは南米や北米、豪州などで合成燃料(e-fuel)の製造を行う企業ですが戦略的パートナーシップを締結することで日本国内においての合成燃料の供給の早期社会実装が期待されています。
カーボンニュートラルの実現に向けて以下の3項目がポイントで、今後MOUにより出光興産とHIFとの間で共同で検討される内容となっています。
- 海外プロジェクトからの合成燃料調達および国内供給
- 国内外における合成燃料製造設備への共同出資
- 国内で回収したCO₂の国際輸送と活用(原料化)
2020年代後半までに日本国内における合成燃料の生産や供給体制を確立することを目指した中長期化計画も発表されています。
参考:中期経営計画
4:ENEOS株式会社
ENEOS株式会社は「水素キャリア製造技術(Direct MCH®)」や合成燃料、バイオ燃料などの技術開発を独自で進めています。
特に合成燃料の開発には力を入れており、2040年の商用化に向けて生産工程の性能向上とコスト低減、小規模プラントから大規模プラントへの検証と早期技術確立と事業化を進めています。
国と歩調を合わせて開発を進めていたり、プラント規模でのスケールアップ実証を開始するなど、近い将来地球環境にやさしい合成燃料の製造実現、合成燃料プロセスの商用化に向けての取り組みを推進しています。
バイオ燃料についてはセルロース系のバイオエタノールの研究開発が進められており、生産工程の効率化、並びに技術革新でCO2排出量や生産コストを抑えた生産方法を実現しています。
また、今後は製造技術確立をするために製造プロセスなどの技術革新を通じ、エタノール製造で排出されたCO2を合成燃料の原料とし、現在の排出量よりもさらにCO2排出量削減が見込めるプロセスも計画されていたりと次世代エネルギーの実現に向けて盛んに研究開発が行われています。
参考:カーボンニュートラル|主な研究・開発紹介|研究開発特設サイト
カーボンニュートラル燃料を導入するためにするべきこと
最後にカーボンニュートラル燃料を導入するために検討するべきことについてお伝えします。
1:カーボンニュートラル経営や省エネ活動の推進方法について知る
2:国や自治体の支援策の活用方法を知る
3:人材育成をする
エネルギーの高騰化が進む現在において省エネの観点からカーボンニュートラルに取り組む企業も増えてきていますので、身近な例を挙げつつ、カーボンニュートラル燃料を導入するために検討すべきことについて最後に簡単に解説していきます。
1:カーボンニュートラル経営や省エネ活動の推進方法について知る
地球温暖化が問題視されている昨今、CO2の削減に向けた企業の取り組みは今や当たり前のものとなってきています。
まずは、カーボンニュートラルやカーボンニュートラル燃料、ひいてはカーボンニュートラル経営や省エネ活動の推進方法について知ることからはじめてみると良いでしょう。
カーボンニュートラルに向けてどのような取り組みをする必要があるのか、またしていくべきなのか、はじめはわからないことばかりだと思いますが「知る」ことから始めてください。
政府や自治体、それに企業が主体となって発信しているメディアからもカーボンニュートラルについて知ることができますし、今では無料のオンラインセミナーや脱炭素化に向けたコンサルティングを受けることもできます。
例えば、カーボンニュートラルに向けた取り組みの身近な例をあげると、オフィスで利用しているレーザープリンターをインクジェットプリンターに変えただけで従来のエネルギー消費量の40%以上を削減できたという報告例もあります。
インクジェットプリンターは紙にプリントをする際に熱を使わないため、省エネを実現できるのです。
このように、今回の記事で扱ったカーボンニュートラル燃料に現在直接の関わりがない企業でも、省エネを推進することで脱炭素化に向けた経営ができるようになりますし、それに伴い補助金などを活用できるケースもあります(補助金について詳しくは事項で解説します)。
まずは「知る」ことから、自社で取り組める身近な例からはじめ、自社産業を取り巻くカーボンニュートラルの動き、自社への影響をとらえるために情報収集からはじめてみてください。
2:国や自治体の支援策の活用方法を知る
実は、脱炭素化に向けた経営を行うと国や自治体から補助金がもらえるケースもあります。カーボンニュートラルを実現することは、それだけ急務となっていますし、国をあげて、世界規模の取り組みとなっています。
また、補助金は大企業だけではなく、中小企業も対象となっています。
例えば経済産業省や環境省からカーボンニュートラル支援策としてカーボンニュートラルに取り組んだ企業に対して様々な補助金がおりています。
詳しい内容については下記リンク先のページで確認できます。
また脱炭素関連の補助金や助成金などについて端的に詳しく知りたいという方は「【2024年度版】脱炭素で受け取れる14の補助金・助成金を徹底解説」にてまとめられていますので参考にしてみてください。
会社全体でカーボンニュートラルに取り組むことで、メディアや行政機関から先進的事例として紹介され表彰対象としてなることもあります。
表彰されることで自社の知名度や認知度の向上にもつながっていきますのでカーボンニュートラル経営に取り組んだ結果、新規取引先の開拓につながることもあるでしょう。
この他にも地方自治体などから支援金などが出るケースもありますので、それぞれの地域での支援策の活用方法を探してみてください。
3:人材育成をする
脱炭素化に向けた環境推進部として専門部署を立ちあげて取り組んでいる会社もあります。
それほどカーボンニュートラルは企業が取り組むべき重要な経営課題として位置付けられているということです。
また、カーボンニュートラルに向けた施策は急速に変化しており、数年前に比べて状況が異なることが一般的です。それに伴い、人材の確保、人材の育成が急務となっているケースもあります。
(先ほども記述したように取り組み内容によっては世間一般に向けて自社の企業価値を向上させられるケースもあります)
人材育成が難しい場合でも、脱炭素化に向けて協力できるパートナーに依頼する選択肢などもあります。
これについては、カーボンニュートラルについて無料で学べるセミナーなども様々なところで日々開催されていますので、機会を逃さないためにも積極的に参加し受講していただくことをお勧めします。
弊社でも脱炭素やGX人材育成のために「GX検定ベーシック※」を随時行っておりますのでGXの体系的な基礎知識の習得にお役立てください。
※習得していただきますと環境省認定の「脱炭素アドバイザー」認定資格を取得できます。
まとめ
今回の記事ではカーボンニュートラル燃料の種類やカーボンニュートラル燃料を扱う代表的な企業の取り組みについて詳しくみてきました。
記事内でも触れたように、カーボンニュートラル燃料は現時点では技術的な問題はもちろん、生産コストの問題などから課題が残り、実用化にはまだ時間がかかると言われています。
しかし、地球温暖化に歯止めをかけるためカーボンニュートラル燃料の実用化に向けた取り組みは世界中で盛んに行われ、日々研究開発はもちろん、実証実験が繰り返されています。
特にバイオ燃料などは一部の国で既に実用化が実現していたりと、日本国内の国際競争力を高める意味でも政府や自治体、企業が一丸となって取り組み、商用化していくべき課題のひとつでしょう。
今後、日本国内においても2030年までにCO2排出量を45%削減することを目標としていますので、実用化に向けて政府、企業が主体となってより力を入れて大規模な研究開発が行われていくことと思われます。
脱炭素経営の実現に向けて遅れを取らないためにもまずは、カーボンニュートラルについて知ることからはじめてみてはいかがでしょうか?
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