化石燃料とは?地球環境への影響と脱炭素社会への道を解説
化石燃料が私たちの生活に与える影響を知ることは、持続可能な未来への一歩です。
本記事では、化石燃料のメリット・デメリットをわかりやすく説明し、今後私たちが取るべき具体的な行動まで考えたいと思います。是非参考にしてみてください。
化石燃料とは
化石燃料とは、何百万年もの時間をかけて地球内部で形成されたエネルギー資源です。具体的には、動植物が地中で圧縮され、高温・高圧の環境下で変化を遂げたものです。石油、石炭、天然ガスといったものがこれに該当し、私たちの日常生活に欠かせない存在となっています。
たとえば、毎日使っているガソリン、電気、プラスチック製品など、これらはすべて化石燃料から作られています。また、化石燃料は世界中で利用されており、工業、交通、家庭のエネルギー供給の基盤となっています。これらのエネルギー源は、安定して大量のエネルギーを供給できるため、現代社会の発展に不可欠です。
化石燃料の種類と特徴
石油
石油は、主に海洋に生息していた微生物が地層中で分解・変質して形成されます。このプロセスは数百万年以上かかり、高圧・高温の状態で進行します。石油は現代社会において非常に重要な資源であり、ガソリンやディーゼル、ジェット燃料などの燃料として利用されるほか、プラスチック製品の原料としても使用されます。
石炭
石炭は、主に地球上に生息していた植物が地中に埋もれ、長い時間をかけて炭素が濃縮されて形成されたものです。石炭は主に発電や鉄鋼業で使用され、特に電力の供給には欠かせないエネルギー源です。石炭を燃焼させることで得られる熱エネルギーは、蒸気タービンを回すために使用され、大量の電力を生成します。
天然ガス
天然ガスは、石油と同じく、微生物が地中で分解された際に発生するガスが圧縮されて生成されます。このガスは、主にメタンから成り、家庭用ガスや発電に利用されています。天然ガスは、石炭や石油に比べて二酸化炭素の排出量が少ないため、クリーンなエネルギーとされています。
その他の化石燃料
シェールガスやメタンハイドレートなどの新しいエネルギー資源も注目されています。シェールガスは、シェール層と呼ばれる堆積岩層から抽出される天然ガスであり、メタンハイドレートは深海底や永久凍土に存在するメタンを含む氷状の物質です。これらの資源は、エネルギー供給の多様化を図る上で重要な役割を果たすと期待されています。
化石燃料を使うメリット
ここでは化石燃料を使用するメリットについて3つの観点から詳しく解説していきます。
・エネルギーとしての安定供給:
化石燃料の最大のメリットの一つは、エネルギーの安定供給が可能である点です。国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、化石燃料は世界のエネルギー供給の中心であり、その安定した供給能力が経済活動や日常生活を支えています。
石炭や天然ガスを利用した火力発電は、天候や時間帯に左右されず、24時間365日、安定して電力を供給できます。これは、太陽光や風力といった再生可能エネルギーが自然条件に依存して変動するのに対して、化石燃料は常に一定のエネルギーを提供できる点が大きな利点です。特に、都市や工業地帯での電力需要を安定して満たすことが可能であり、経済活動が途切れることなく継続できるという安心感があります。
・経済性:
化石燃料は、コストパフォーマンスが高いエネルギー源です。経済産業省のエネルギー白書によると、石炭や天然ガスは大量に採掘でき、コストが比較的低いため、広く利用されていることがわかります。また、化石燃料を利用した発電は、既存のインフラを活用することができるため、初期投資が少なくて済むという経済的なメリットもあります。
これにより、発展途上国や新興国においても、安価にエネルギーを供給でき、経済発展を支える基盤となります。また、電力コストが低く抑えられることで、製品の生産コストも削減され、消費者にとっても経済的なメリットが生じます。
・技術的な成熟度:
化石燃料を利用した発電技術は、長年の研究と開発によって非常に成熟しています。世界エネルギー会議(World Energy Council)のレポートによれば、石油精製技術や火力発電の技術は数十年にわたって改良が進められ、高い効率と信頼性を実現しています 。
また、これらの技術は世界中で標準化されており、多くの国で容易に導入・運用することが可能です。すでに整備されたインフラを活用できるため、新たな設備投資の必要が少なく、エネルギー供給が迅速かつ安定して行われるという利点があります。
▼参考
国際エネルギー機関(IEA)
世界エネルギー会議(World Energy Council)
化石燃料のデメリットとリスク
化石燃料は、私たちの生活や産業を支える重要なエネルギー源ですが、その利用には多くのデメリットとリスクが伴います。以下では、環境問題、資源の枯渇、価格変動という3つの観点から、化石燃料のデメリットとリスクについて解説します。
1.環境問題
化石燃料の使用が引き起こす最も深刻な問題は、環境への影響です。具体的には、地球温暖化と大気汚染が大きな課題となっています。
地球温暖化: 二酸化炭素排出による温暖化の進行
化石燃料を燃焼させると、大量の二酸化炭素(CO2)が排出されます。二酸化炭素は温室効果ガスの一種で、地球の大気中に蓄積されると、地球全体の気温を上昇させる温室効果を引き起こします。これが地球温暖化の主な原因とされています。国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、化石燃料の燃焼によるCO2排出は、地球温暖化の進行に大きく影響しており、気候変動による異常気象や海面上昇など、地球規模での環境問題を引き起こしています。
▼参考
IEA「CO2 Emissions in 2023」
大気汚染: 健康に悪影響を及ぼす大気汚染の原因
化石燃料の燃焼は、大気汚染の主な原因の一つでもあります。特に、石炭や石油を燃やすことで排出される硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)は、健康に有害な微粒子やオゾンの形成を促進します。これらの大気汚染物質は、呼吸器系の疾患や心臓病のリスクを高めるとされており、世界保健機関(WHO)は、これらの物質が世界中で多くの早期死亡を引き起こしていると警告しています。
2.資源の枯渇
化石燃料は有限の資源であり、無尽蔵に利用できるわけではありません。石油や天然ガス、石炭などの化石燃料は、地球の地下に限られた量しか存在しておらず、いずれは使い果たされることが避けられません。
石油の採可年数
石油の採可年数は、現在の技術で採掘可能な埋蔵量を年間の消費量で割ったもので、これにより残り何年分の石油が利用可能かが推定されます。経済産業省のエネルギー白書によると、世界の石油採可年数はおよそ50年とされていますが、これは技術の進展や新たな埋蔵量の発見によって変動する可能性があります 。しかし、いずれにせよ、化石燃料は再生不能な資源であり、将来的に枯渇するリスクが常に存在します。
3.価格変動
化石燃料のもう一つの大きなリスクは、国際市場における価格変動です。化石燃料は、国際的な需給バランスや地政学的な要因によって価格が大きく変動することがあります。
国際市場での価格変動が家庭や企業に影響を与えること
例えば、主要産油国での政治的不安や紛争、自然災害によって供給が途絶えたり減少した場合、石油価格は急激に上昇します。こうした価格の急激な変動は、家庭のエネルギーコストや企業の運営コストに直接的な影響を与えます。特に、エネルギー価格が上昇すると、輸送コストや製品価格が上昇し、消費者にも負担が増すことになります。さらに、価格の不安定さは、長期的な経済計画を立てる上でのリスク要因となり得ます。
化石燃料依存からの脱却に向けた世界の動き
世界は、気候変動に対処するために、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を進めています。この移行は、地球温暖化を抑制し、持続可能な社会を実現するために不可欠です。ここでは、再生可能エネルギーの主要な形式と、国際的な取り組みについて詳しく解説します。
再生可能エネルギーへの移行
エネルギー | 特徴 | 割合 |
---|---|---|
太陽光発電 | 太陽の光を利用して電力を生成 ・化石燃料を使用しない ・コストが低下中 ・設置場所に制約が少ない |
最も経済的な電力源の一つ |
風力発電 | 風の力で風車を回し電力を生成 ・風の強い地域で効率的 ・技術の成熟 |
2020年に世界の電力供給の6%を占める |
水力発電 | 川やダムを利用して水の流れから電力を生成 ・安定した電力供給 |
再生可能エネルギーの約60%を占める |
太陽光発電
太陽光発電は、太陽の光を利用して電力を生成する技術です。この技術は、化石燃料を使わずにクリーンなエネルギーを生み出すことができるため、地球温暖化対策として非常に重要です。国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、太陽光発電のコストは過去10年間で劇的に低下しており、今や多くの国で最も経済的な電力源の一つとされています。また、太陽光発電は設置場所に制約が少なく、住宅の屋根や広大な土地にパネルを設置することで、効率的にエネルギーを生産できる点がメリットです。
風力発電
風力発電は、風の力で風車を回し、その回転エネルギーを電力に変換する方法です。風力発電もまた、クリーンエネルギーとしてのポテンシャルが高く、特に風の強い地域では非常に効率的に電力を生産することができます。IEAによると、風力発電は2020年に世界の電力供給の6%を占めており、今後もその割合は増加する見込みです。風力発電の技術は成熟しており、海上風力発電も含め、さらなる成長が期待されています。
水力発電
水力発電は、川やダムを利用して水の流れから電力を生成する方法で、再生可能エネルギーの中で最も古くから利用されている技術です。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のデータによれば、水力発電は世界の再生可能エネルギーの中で最も大きな割合を占めており、全体の約60%を占めています。水力発電は安定した電力供給が可能で、昼夜を問わずエネルギーを生み出せる点が大きな利点です。
▼参考
資源エネルギー庁「エネルギー消費の動向」
国際エネルギー機関(IEA)「World Energy Outlook 2022」
国際再生可能エネルギー機関(IRENA「Renewable energy statistics 2023」
国際的な取り組み
パリ協定
パリ協定は、地球温暖化を抑制するための国際的な枠組みであり、2015年に締結されました。パリ協定の主な目標は、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることであり、さらに1.5度未満を目指す努力を続けるとしています。この協定により、各国は温室効果ガスの排出削減目標を設定し、再生可能エネルギーの導入を加速させています。
COP会議
COP(Conference of the Parties)は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議であり、各国が環境問題について話し合う場です。COP会議では、各国の進捗状況を共有し、今後の気候変動対策について議論が行われます。最新のCOP会議では、各国がより野心的な排出削減目標を設定し、再生可能エネルギーへの移行を強化することが求められました。
▼参考
COP
COPについてより詳しく知りたい方は下記のページでも解説しておりますのであわせてご覧ください。
>>>COPとは|歴史やパリ協定との関係などポイントをわかりやすく解説
日本における化石燃料の現状と課題
日本は天然資源に乏しく、国内でのエネルギー生産が限られているため、エネルギー需要の大部分を海外からの輸入に依存しています。特に、石油、天然ガス、石炭などの化石燃料が日本のエネルギー構成の主要部分を占めています。
これにより、エネルギー供給の安定性や国際市場の価格変動に対する脆弱性が指摘されています。
・エネルギー自給率の低さ
経済産業省のデータによると、日本のエネルギー自給率は13.3%であり、主要先進国の中でも非常に低い水準です。このため、日本は石油や天然ガスなどの化石燃料を大量に輸入し、エネルギー供給を維持しています。しかし、これにより、国際市場での価格変動や地政学的リスクに大きく影響されることになります。
▼出典
資源エネルギー庁「2023―日本が抱えているエネルギー問題」
・脱炭素社会への取り組み
政府の政策
日本政府は、再生可能エネルギーの導入を推進するため、さまざまな政策を打ち出しています。2030年までに、再生可能エネルギーの比率を全電力供給の22~24%から36%~38%へ引き上げる目標を設定しており、そのためのインフラ整備や技術開発が進められています。
企業の努力
多くの日本企業も、脱炭素社会を目指して具体的な取り組みを進めています。例えば、再生可能エネルギーの利用拡大や、エネルギー効率の向上、CO2排出量の削減を目指した新技術の導入が挙げられます。これらの取り組みは、企業の持続可能性を高めるだけでなく、国際競争力の強化にも寄与しています。
「脱炭素社会」についてより詳しく知りたい方は下記のページでも解説しておりますのであわせてご覧ください。
>>>脱炭素社会とは?概要や問題点・デメリット、具体的な取り組み事例を解説
化石燃料の未来:私たちにできること
私たちは、日常生活の中でエネルギー消費を見直し、持続可能な未来に向けた行動をとることが求められています。
エネルギー消費を見直す
家庭やオフィスでのエネルギー消費を見直すことは、脱炭素社会に向けた重要なステップです。例えば、以下のような具体的な行動が挙げられます。
- エネルギー効率の高い家電製品を選ぶ
- 不要な照明をこまめに消す
- 断熱性能の高い住宅を選ぶ
再生可能エネルギーを選ぶ
電力会社を選ぶ際には、再生可能エネルギーを利用したプランを選択することが可能です。これにより、自宅で利用する電力がクリーンエネルギーに切り替わり、個人レベルでのCO2排出削減に貢献できます。
環境保護への貢献
日常生活の中で、小さな行動を積み重ねることで、環境保護に貢献することができます。ゴミの分別やリサイクル、マイバッグの利用、公共交通機関の利用など、これらの行動が持続可能な社会を築くための一歩となります。
▼参考
環境省「COOL CHOICE」
まとめ
化石燃料のメリットとデメリットを理解し、私たちの生活にどのように影響を与えているのかを学ぶことは、持続可能な未来を考える上で非常に重要です。化石燃料は、現代社会の発展を支えてきた一方で、環境問題や資源枯渇のリスクを抱えています。そのため、再生可能エネルギーへの移行やエネルギー消費の見直しといった行動が求められています。
今後は、私たち一人ひとりが、日常生活の中でエネルギーの使い方を見直し、持続可能な未来に向けて行動を起こすことが重要です。具体的なアクションを通じて、よりクリーンで持続可能な社会を実現するために、私たちにできることを考えていきましょう。
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