脱炭素×DXの関係とは?国内外の導入事例や企業のメリットまで徹底解説!

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロとし、脱炭素社会の実現を目指す「カーボンニュートラル宣言」を行いました。
これに伴い、政府は脱炭素経営を検討する企業に向けた支援も行っており、脱炭素に向けてDXの推進を進めています。
脱炭素とDXは、一見何も関係がなさそうに見えますが、実は脱炭素経営にはDXの実現が欠かせません。
今回はそんな、脱炭素とDXの関連性、企業が双方に取り組むことの重要性や、脱炭素とDXの具体的な取り組み方法などについて最新の事例を交えながらお伝えします。
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脱炭素DXとは
脱炭素DXとは、デジタル技術を活用した脱炭素化のことを言います。
脱炭素DX=企業や社会が脱炭素を目指して行うデジタル技術の導入とその活用のこと。
脱炭素DXは、デジタル技術を活用して、脱炭素を効率的に進める取り組みのことで、環境負荷の低減とビジネス変革を同時に実現するという新しいアプローチです。
脱炭素DXの具体例としては、例えば業務のデジタル化による環境負荷低減としてペーパーレス化による脱炭素化を進める動きや、テレワークの推進やオンライン会議による出張削減を行ったり、通勤移動が削減されることによる温室効果ガス削減、ビジネス変革による例としては、シェアリングサービス(シェアサイクルやオフィススペースのシェアなど)でリソースを共有することで削減されるエネルギー消費などが挙げられます。
このように脱炭素DXは、環境対策とデジタル化をうまく組み合わせることで、より柔軟に効果的な脱炭素化を実現できる手法として注目されています。
また、これまでの企業のビジネスでは、コスト削減をや顧客体験を向上させることで収益性を高めるためにDX化を推進する動きが多かったものの、現在は欧州を中心に、脱炭素を実現するためにDX化を進め、業務効率向上に取り組む企業が増えてきています。
例えば、欧州を中心に「炭素生産性」といった、企業の償却前営業利益など、企業・産業が生み出す付加価値をCO2の排出量で割った数値を指標として、脱炭素への取り組みを後押しする機運が広がっています。
脱炭素とは
脱炭素(カーボンニュートラル)とは、地球温暖化の要因となっている温室効果ガス、特に二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする取り組みのことを指します。
実質ゼロとは人間が排出した二酸化炭素と、植物などが吸収した二酸化炭素がプラスマイナスゼロになり排出量と吸収量が均衡している状態のことで、大気中の二酸化炭素の量が増えてもいなく減ってもない状態のこと(ニュートラル)を言います。
脱炭素について詳しくは「脱炭素とは?簡単に解説!カーボンニュートラルやGXとの違い、各企業の取り組みを紹介」をご覧ください。
DXとは
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略称で、顧客や市場の変化に対応するために、業務のデジタル化を進め、新たな製品やサービスを開発したり、新規事業の創出を行うなどをし、競合他社の中で優位性を確保させることを指します。
単なるデジタル化にとどまらずデジタル技術を活用して、組織や事業のあり方などビジネスプロセスや組織文化を本質的かつ根本的に変革することを指し、企業の競争力や社会課題解決のための手段として重要視されています。
脱炭素とDXとの関係性
脱炭素とDXは、相互補完の関係にあります。
例えばDXは脱炭素を効率的に進めるための重要なツールになりますし、脱炭素はDXの重要な目的の一つに当たります。
脱炭素とDXの相互補完の具体例を挙げると、DX化によるデータ分析によりエネルギー使用料を可視化できたり、効率的な設備運用ができたり、二酸化炭素排出量の正確な把握をすることができるようになります。
またペーパーレス化やデータによる物流の最適化など、脱炭素とDXは持続可能な社会や効率化とコスト削減、競争力の強化、そして社会課題の解決といった目的に向かい密接に関連しあっています。
つまり、脱炭素とDXの両者を組み合わせることで、相乗効果が生まれ、脱炭素とDXにおいて双方でより大きな効果を発揮できると考えられています。
脱炭素とDXは現代の2大メガトレンド
脱炭素は温室効果ガスを削減する動きのことで、例えば自動車業界では温室効果ガスを削減するためにエンジンを廃止し電気自動車(EV)に移行するといった動きが含まれます。
DXには、インターネットなどのネットワーク上で、サーバーやストレージ、ソフトウェアなどのサービスを利用するクラウドコンピューティング、身の回りのさまざまなモノをインターネットに繋ぐ技術であるIoT、人工知能(AI)などが含まれます。
DXは、主に業務の進め方を再定義するものですが、こうしたデジタル化を進めることで人手を借りずに高品質な製品やサービスを継続的に提供し続けることができるようになったり、行政手続きの簡略化・迅速化や自治体が保有する公共性の高い情報の産業利用ができるデジタル政府などの実現を目指して様々な動きが活発になっています。
脱炭素とDXは表裏一体で矛盾点も指摘される
ただし脱炭素とDXには矛盾した点もあります。
EV普及による充電ステーション設置は送電効率の低下やエネルギー需要の増加を伴う可能性がありますが、再生可能エネルギーの導入と並行して進めることで、二酸化炭素排出量削減に寄与することが期待されています。
つまり、より本質的には普及するペースに合わせて太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー由来の電力へと置き換えないと脱炭素化は実現できてないという矛盾点が指摘されています。
またDXとの関係においても相容れない部分があります。
例えば、多くの企業がDXを推進し続けるためには莫大なデータを扱うことができる情報機器や通信インフラが必要になってきますが、これらを動かすためにはこれまで以上に多くの電力が必要になります。
つまり、現在の技術でDXを推し進めるほど、エネルギーが必要となり、脱炭素からは遠のくことになります。
このことからDXの推進を持続可能にするためには、IT関連での省電力化が必須になることはもちろんのこと、脱炭素に向けた施策を無視して、豊かさや経済効率だけを目指したDXを推し進めることはできないと考えられています。
さらに、特定の分野や業界での脱炭素化をすすめるだけでは、本質的には解決されないという問題が潜んでおり、分野や業界を横断した上での社会全体を変革する総合的な取り組みが必要になります。
脱炭素DXが注目される理由
脱炭素DXが注目される理由には社会的・政策的な要因が大きく関わっています。
近年の地球温暖化の影響を受けて、気候変動対策の緊急性が高くなってきたことや政府による2050年カーボンニュートラル宣言、それにESG投資の拡大や環境規制の強化などそれぞれの要因が複雑に絡み合っています。
これらの要因が重なり、脱炭素DXは企業の持続的成長に不可欠な戦略として注目されており、環境対策とデジタル化を同時に進めることで、持続可能かつ効率的な経営変革が可能とされています。
脱炭素DXとグリーン成長戦略の関係
日本は「2050年カーボンニュートラル宣言」の対策として「グリーン成長戦略」を掲げており、企業の温暖化への挑戦を後押ししています。
脱炭素DXとグリーン成長戦略は、デジタル技術を活用して持続可能な経済成長を目指す取り組みで、互いに相互補完のような関係にあります。
※グリーン成長戦略については「グリーン成長戦略とは|14の重点産業分野の実行計画や政府の支援策をわかりやすく解説」でも詳しく解説していますので参考にしてください。
革新的な技術開発
グリーン成長戦略の実現には、エネルギー効率の向上や二酸化炭素排出量の削減を可能にする革新的な技術が不可欠で、脱炭素DXはデジタル技術を活用し、革新的技術の開発を促進します。
例えば、AIとIoTによる効率化として、工場やオフィスのエネルギー消費を最適化する技術開発を促進させたり、カーボンキャプチャー・ストレージ(CCS)により排出された二酸化炭素を回収して貯蔵する技術の効率化を促進させたり、スマートグリッドの構築でデジタル技術を駆使してエネルギー供給と消費をリアルタイムで調整し、再生可能エネルギーの利用を最大化するなどの技術開発を加速させることができます。
これらの技術により持続可能な社会を支える基盤を築きながら、産業競争力を向上させることが可能です。
ESG投資によるイノベーション推進
ESG(環境・社会・ガバナンス)投資は、企業の脱炭素DXやグリーン成長を後押しする重要な資金源で、ESG投資によって、イノベーションが促進され、環境対応型の事業モデルが生まれます。
例えば、脱炭素に向けたAIやIoT、ブロックチェーンなどの技術開発に対してESG投資が流入しやすくなり、デジタル活用の資金調達ができるようになります。
また投資家が持続可能性を重視することで、企業は長期的な利益を追求しながら脱炭素を推進できるといった持続可能性と利益の両立が可能になったり、脱炭素に関連するスタートアップがESG投資を通じて資金を確保し、新しい市場を開拓しやすくなるなどがあります。
こうしたイノベーションの推進により、社会全体での脱炭素技術の進展が加速することが見込まれます。
火力発電から再生可能エネルギーへの政策の転換
グリーン成長戦略の中心には、火力発電に依存するエネルギー政策から再生可能エネルギーへの転換がありますが、デジタル技術はこの政策転換を実現する上で重要な役割を果たします。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは発電量が変動するため、スマートグリッドやAIによる需給調整が必須ですし、データを活用してCO2削減目標を可視化し、政策の進捗を管理したり、地方自治体やコミュニティで再生可能エネルギーを活用する仕組みを、デジタル技術で効率化するなどが挙げられます。
※再生可能エネルギーについては「再生可能エネルギーとは?種類や特徴、メリット・デメリットを解説」を参考にしてください。
脱炭素DXの推進と環境保全
脱炭素DXの推進は、環境保全を実現するための有力な手段にもなります。
1:エネルギー効率の最適化と削減
脱炭素DXにより、エネルギー使用の効率化を図ることで、消費量を大幅に削減することができるようになります。
例えば、DXによるAIやIoTを活用することでセンサーやリアルタイムデータを基に、設備や建物のエネルギー消費を最適化し必要な場所に必要なだけのエネルギーを供給する仕組みを整えることができます。
また太陽光や風力発電の利用を最大化することで化石燃料への依存を減らし二酸化炭素の排出量削減とともに運用コストの削減も実現できます。
2:リソースの管理と持続可能な供給
DXによるデジタル技術を活用したリソース管理により、資源の効率的な使用と持続可能な供給ができるようになります。
具体的にはサプライチェーンの透明化により、原材料の調達から、製品の廃棄に至るまで、ライフサイクル全体を把握し資源の無駄を削減できるようになります。
さらに、リサイクルや再利用のプロセスをデジタル化し、廃棄物を減少させる取り組みを強化し、循環型経済を促進させることができます。
このように、自然資源の保護と環境負荷の低減を両立することができます。
3:新しいビジネスモデルとエコシステムの供給
脱炭素DXをきっかけとして、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」型のビジネスから、環境保全を重視したモデルへの転換が進んでいます。
具体的には、製品を所有する代わりに使用料を払うシェアリングサービスを導入し資源の消費を抑制するサービスを提供することや、異業種企業間でのデータ共有やコラボレーションを進めることで、エネルギーや資源の利用効率を向上させるグリーンエコシステムの構築などが挙げられます。
これらの施策により、環境保全をしながら利益創出をするというサービスを実現することができるようになります。
4:データ分析と環境問題への新しい視点の提供
脱炭素とDXを組み合わせる、脱炭素DXにより、大量のデータを分析し環境問題の本質を解明することで、新たな解決策を生み出す助けとなることもあります。
例えば、気候変動シュミレーションにより、気象データやエネルギー消費データを解析し、効果的な対策を予測・計画したり、製品やサービスが環境に与える影響をデータとして可視化し、持続可能性を高める選択をできるようにする環境影響の定量化などが挙げられます。
こうした取り組みにより、企業や社会が持続可能な行動をとるための道筋を明確にすることができます。
脱炭素DXの企業のメリット
ここからは企業が脱炭素とDXに取り組むことで、どのようなメリットが得られるのかについて解説していきます。
投資を受けやすくなる
脱炭素に取り組む企業は、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)のESGを重視する投資家や金融機関から注目を集めます。
特にESG投資は近年急成長していることから、環境課題に対応した企業は持続可能性を重視するファンドや機関投資家にとって魅力的な投資先となり得ます。
また、脱炭素とDXによる効率化やイノベーションは事業の競争力を高め、財務面でも好評価を得やすくなり、結果、資金調達がスムーズになり、経営基盤が盤石になり企業価値が向上していくことが期待されます。
取引量が増加する可能性が高まる
現在、多くの企業が脱炭素目標を掲げており、サプライチェーン全体でカーボンフットプリント削減を進める動きが広がっています。
こうした企業にとって、環境対応が進んだサプライヤーは優先的に選ばれる傾向があり、脱炭素DXを推進することで、環境基準を満たす取引先としての信頼が高まり、新たなビジネスチャンスの獲得や既存取引の拡大につながる可能性があります。
特に、国際的な取引では環境規制への対応が求められるため、競争優位性が高まるメリットがあります。
税金の支払いを抑えられる
現在、多くの国や地域で、炭素税や環境規制に基づく税負担が導入されており、脱炭素DXによって、エネルギー使用量や二酸化炭素排出量を削減することで、これらの税負担を軽減することができます。
2023年2月には「炭素税」や「排出量取引」など、カーボンプライシングに向けた「成長志向型カーボンプライシング構想」が打ち出され、今後はDXを推進し、脱炭素を進めることで、税金の支払いを抑えられるようになる見込みとなっています。
また、日本を含む多くの国では、再生可能エネルギーの導入や省エネ技術への投資に対して税制優遇措置が設けられており、これにより、直接的なコスト削減だけでなく、長期的な財務基盤の安定化をはかることができます。
DXで脱炭素を実現していくための具体例
ここからは、DXで脱炭素を実現していくための具体例について解説します。
テレワークの導入
テレワークは脱炭素DXの一つです。
2024年の現時点で最新のデータである2020年の国勢調査では、自家用車で通勤している人の割合は48.13%となっており、約半数にのぼっています。
この問題に対し、テレワークを導入すれば、交通機関や自家用車の利用を抑えられ、CO2排出量を削減できます。
またオフィス勤務を縮小することでオフィスやデータセンターの利用による電力や紙の使用量も削減でき、テレワークでは書類がペーパーレス化されるため、モノの生産や廃棄で発生する二酸化炭素も削減できる効果が見込めます。
AIによる需要予測
AIを使って消費者の需要を予測し仕入と生産を最適化することで、生産や物流の無駄を削減できます。
例えばコンビニやスーパーなどで需要と供給のミスマッチが起きると廃棄ロスの問題やコスト増加といった問題が生じてきます。
AIを使った発注システムのように、DXによるさまざまなデータ分析を行えば需要と供給のミスマッチを防ぐことができ、廃棄ロスの削減やコスト削減ができるようになります。
例えば、大手スーパーの食品売場では、AIによる発注支援システムをテスト導入し、キャンペーンや気温、天気、曜日などの販売に影響する要素をチャート化した図と、販売に影響する項目を発注端末で提示したところ、発注時間の35%削減、欠品率の27%改善といった効果が得られたという事例もあります。
このように、AIによる需要予測で必要な分だけ生産・配送できるため、廃棄ロス問題や、コスト増加の解消が見込まれ、エネルギーや資源の無駄を防ぐことができます。
電力の最適化
脱炭素化をすすめる上で、電力や熱、交通の再生可能エネルギー化は避けて通れませんが、再生可能エネルギーは、自然に左右されたりと供給が安定しないことに最大の欠点があります。
例えば、VPP(バーチャルパワープラント)はエネルギー資源を制御することで、発電所と同等の機能を提供するビジネスモデルを指しますが、分散型電源(家庭や工場の太陽光発電、風力発電、蓄電池、電気自動車など)をネットワークでつないで、全体を一括管理し、IT技術を使って、発電・蓄電・電力消費の調整を最適化、余った電気を家庭の蓄電池にためて、電力需要が高いときに送るといったような効率的な電力供給ができるようになります。
これによりエネルギーの無駄をなくし、再生可能エネルギーの導入拡大につながると考えられています。
運送・配送ルートの効率化
DX化により、AIやGPSを活用して最適な配送ルートを選ぶことで、移動距離や時間を短縮できます。
また、燃料消費を減らし、温室効果ガス排出量を減らし、運送業のCO2排出量を抑え、運転時間を減らし無駄な運行本数を減らすことができます。
ペーパーレス化
紙の使用をデジタルデータに置き換えることで、紙の製造による環境負荷を軽減し、また紙を焼却廃棄する際に生じる温室効果ガスを削減することができます。
1本の木から約一万枚の紙が作成できると言われていますが、これを焼却する際に約13.6キロの二酸化炭素が生じると言われており、紙資源削減することで森林破壊だけではなく、温室効果ガス削減にもいい影響をもたらすと言われています。
クラウド化
データやアプリケーションをクラウドに移行することで、サーバーの効率的な利用が可能になり、これにより個別の物理サーバーを減らし、エネルギー消費を削減できるようになります。
脱炭素DXを実現させるための具体的な取り組み方法
脱炭素DXを実現させるために具体的に、どのような取り組みが必要なのかについて解説していきます。
ここではDXを推進することでどのように脱炭素につながるのかについて見ていこうと思います。
エネルギーの可視化を実現させる取り組み
エネルギーの見える化により、削減効果が明確になり、従業員やステークホルダーの意識向上につなげることができます。
例えば、スマートメーターの導入により電力やガスなどのエネルギー消費をリアルタイムで把握し、可視化することで部門ごとに時間帯ごとの使用量をモニタリングすることで効率的な管理を実現させることができます。
また、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入により、施設全体でエネルギー消費を管理し、ピークシフトや最適化を実現したり、カーボントラッキングにより企業全体の二酸化炭素排出量を数値化し、削減目標に対する進捗を可視化することもできます。
こうした可視化を実現させる取り組みを行うことで、電力消費のピーク抑止、余剰エネルギーの再利用などが実現でき、電力の無駄を抑えることができます。
AIやIoTによるデータ活用を活性化させる取り組み
AIやIoTを活用することで、エネルギー使用の効率化や生産プロセスの最適化を進めることができ、エネルギー管理だけではなく、業務全体の生産性を向上させることができます。
例えば、IoTセンサーの設置など工場やオフィスに設置したセンサーで温度、照明、設備の稼働状況をモニタリングし無駄な稼働を抑制することができます。
また、AIによるビッグデータ解析による予測分析により天候データや過去の使用量データをもとに、エネルギー需要を予測し、過剰消費を回避したり、スマートグリッドとの連携により、再生可能エネルギーの発電量や消費量をAIが調整し、効率的なエネルギー供給を実現させることができます。
これにより効率の悪い部分や改善の余地のある部分を特定し、エネルギーの浪費を防ぐことができます。
多様な働き方を実現させるための取り組み
脱炭素を実現させるためには働き方改革も重要です。
柔軟な働き方は、移動やオフィスでのエネルギー消費を削減するだけでなく、従業員の満足度を高め、持続可能な組織運営の実現につながります。
例えば、テレワークや在宅勤務の推進により通勤による二酸化炭素排出量を削減したり、本来であれば新幹線や航空機を利用しなければならない場所への出張回数の減少を実現できたり、さらにペーパーレス化やオフィスでのエネルギー消費も減少させることができます。
またフレックスタイム制度の導入により、ピーク時間帯のオフィス稼働や交通混雑を分散させ、エネルギー効率を向上させたり、サテライトオフィスや共同オフィスの活用により、移動距離を短縮しながらも地域コミュニティとも連携した働き方を実現できるようになります。
このように脱炭素DXにより、環境負荷軽減だけではなく、従業員の多様なニーズに応え、企業全体の持続可能性を高めることができます。
脱炭素DXを推進するための課題
脱炭素DXを推進するには多くのメリットがある一方で、以下の課題が取り組みを進める上での障壁となることがあります。それぞれを詳しく説明します。
データインフラの整備不足
脱炭素DXを実現するには、大量のデータを収集・管理・分析する基盤が必要です。
しかし、企業によっては古いITインフラがその障壁となることもあり、リアルタイムでのデータ収集ができない、データが一元管理されていない、といった問題が進行を遅らせる原因となります。
専門人材の不足
AI、IoT、ビッグデータ解析など、脱炭素DXを進めるための技術的な知識を持った人材が不足しています。
また、環境政策や炭素排出の計測方法に精通した専門家も限られており、推進体制の構築に時間とコストがかかる場合があります。
初期投資の負担
脱炭素DXにはIoTデバイスの導入やAIシステムの構築、エネルギー効率改善のための設備更新など、多額の初期投資が必要です。
特に中小企業では、これらのコストが大きな負担となり、導入に踏み切れないケースがあります。
既存システムとの統合の難しさ
多くの企業では、すでに稼働している既存のITシステムや生産設備が存在します。
新しいDX技術を導入する際に、これらのシステムとの統合が技術的に難しいケースがあり、かえって非効率やコスト増加を招くリスクがあります。
リスクの増加(セキュリティ面)
IoTやクラウドを活用したシステムはサイバー攻撃にさらされやすくなります。
特にエネルギー管理や生産プロセスに関わる重要なデータが漏洩・改ざんされると、事業継続に深刻な影響を与える可能性があるため、セキュリティ強化への追加コストも課題となります。
環境政策の不確実性
政府や国際機関が策定する環境政策が頻繁に変更される可能性があります。
補助金や税制優遇の終了、規制の強化・緩和などが影響し、長期的な計画を立てづらい状況が企業の不安要素となります。
新しい価値観の共有
脱炭素DXを成功させるためには、企業全体での意識改革が不可欠です。
しかし、従業員や取引先との間で新しい価値観(持続可能性や環境重視の姿勢)を共有するには時間がかかる場合があります。
また、短期的な利益を重視する考え方との対立も課題となります。
脱炭素DXの国際的な取り組み
脱炭素DX(デジタル技術を活用した脱炭素化)は、国際的にも重要な課題となっており、多くの国や地域がこのテーマに対して積極的な取り組みを進めています。
ここからは、その背景や国際情勢について、説明していきます。
アメリカ
アメリカでは2022年8月16日に成立した「インフレ抑制法(歳出・歳入法)」通称IRA(Inflation Reduction Act)法により、再生可能エネルギーや電気自動車、エネルギー効率化技術に対する巨額の投資を支援し、グリーンテクノロジー分野での競争力を強化しており、カリフォルニア州など先進的な環境対策を進める州が脱炭素DXをリードしています。
参考:米国インフレ抑制法(Inflation Reduction Act, IRA) – アメリカ穀物協会
EU
ヨーロッパでは、欧州グリーンディールにより2030年までに温室効果ガスを1990年比で55%削減する目標を掲げ、DXを活用したスマートグリッドや循環型経済の構築を推進しています。
またEU炭素国境調整メカニズム(CBAM)による域外からの輸入品にも炭素コストを課す政策で、脱炭素化技術の導入を加速しています。
参考:EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)(2024年2月) | 調査レポート – 国・地域別に見る – ジェトロ
中国
中国では再生可能エネルギー(太陽光・風力)の急速な普及に加え、スマートグリッドの整備が進行中で2060年までにカーボンニュートラルを達成すると表明しデジタル技術を活用してエネルギー効率を高める政策を推進している状況にあります。
日本
日本ではグリーン成長戦略として、2050年カーボンニュートラルを目指し、脱炭素DXをエネルギー、産業、交通など幅広い分野で展開し、水素技術やCCUS(炭素回収・利用・貯留)に注力しています。
国際協力の進展
パリ協定により、各国が削減目標(NDC: 国が決定する貢献)を提出しており、デジタル技術の活用は効率的な削減策として注目されています。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)はデジタル技術を活用した再生可能エネルギー導入支援を強化しており、また国際エネルギー機関(IEA)はスマートシティやスマートグリッドの普及を通じたエネルギー効率向上を推進しています。
貧困国に対しては、デジタル技術を活用した小規模なエネルギーシステムの普及によって、発展途上国でも再生可能エネルギー利用が進展できるように努めています。
気候変動問題は国境を超えた課題であるため、脱炭素DXには国際協調が不可欠で、技術標準の共有、グリーン技術の移転、炭素価格の調和などが重要なテーマとなっています。
このように脱炭素DXは単なる技術革新だけでなく、国際的な競争力や協力の枠組みを再定義する鍵となっており、脱炭素DXを成功させるには、各国の取り組みが相互に連携し、長期的な視点での政策が求められています。
参考:国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の概要
脱炭素DXの企業の導入事例と成功事例
脱炭素DXを導入した企業の具体例と成功事例は下記のとおりです。
オムロン株式会社
オムロン株式会社は2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにする「オムロン カーボンゼロ」戦略を掲げており、「省エネ・創エネの拡大」と「国内全76拠点のカーボンゼロの実現」に向けて取り組みを進めています。
また、事業所での空調設備の省エネ化、再生可能エネルギーの活用、太陽光発電設備の導入などを実施し、2016年比で2021年度に50%の削減を達成しました。
さらに、オムロンは「自己託送(発電した電力を送配電ネットワークを介して遠隔地にある自社工場や事業所などに送電して使用する電力供給システム)」方式による送電を開始し、太陽光発電所で発電した電力を、約100km離れた自社事業所に送電、供給しています。
参考:京阪奈イノベーションセンタへ再エネ電力の「自己託送」を開始|オムロンフィールドエンジニアリング
ソニーグループ株式会社
ソニーグループでは「Green Management 2025」を策定し、環境負荷ゼロを目指す中期目標を設定しています。
これによりPlayStationの消費電力削減や製品の省資源化を進め28%の消費電力を低減、また、英国のソニーUKテクノロジーセンターでは、電力使用量の8%は太陽光パネルによりまかなわれており、再生可能エネルギー電力の利用率100%を実現しています。
参考:ソニーグループポータル | 環境 | ビジョン | GM2025スペシャルサイト
参考:環境中期目標「Green Management(グリーンマネジメント)2025」を策定
まとめ
今回は現代のメガトレンドである「脱炭素」と「DX」について、その密接な関係性を紹介しました。
本文でも触れましたが、今後脱炭素もしくは脱炭素経営を進めていくにあたってDXによる後押しは必要不可欠となっています。
脱炭素とDXは一見無関係なトレンドに見えますが、脱炭素とDXは表裏一体の関係で密接に関与し合っており、この2つの取り組みなくして、脱炭素もDX化も実現できません。
繰り返しになりますが、今後、企業がDXを推進していくにあたって、それが脱炭素につながるかという視点を持つことがとても重要であり、企業が生き残っていくうえでも、脱炭素とDXの視点を持つことは欠かせないポイントとなるといえるでしょう。
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