LNG(液化天然ガス)とは?LPGとの違いやメリット、最新動向まで解説

LNG(液化天然ガス)は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出が少ないクリーンエネルギーとしても注目されています。一般的に都市ガスと呼ばれ、身近な燃料として利用されているLNGについて、実はよく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、LNGの特徴やメリットなど基礎的な知識から、さらに世界の最新動向まで詳しく解説します。LNGについて知見を深めたい方は、ぜひご一読ください。
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LNG(液化天然ガス)とは
LNGとは「Liquefied Natural Gas」の略であり、採取した天然ガスから不純物を取り除き、マイナス162℃の超低温に冷却した液体のことをいいます。液化することで約600分の1の体積となるため、貯蔵が容易で可燃性に優れています。ここではLNGについて製造プロセスや特徴、使用用途について解説していきます。
LNGの製造と供給プロセス
採取した天然ガスには、硫化水素やCO2などの不純物が多く含まれているため、それらを取り除かなくてはなりません。除去プロセスには、以下のような種類があります。
- 耐性ガス除去
- 水分除去
- 重質分除去
- 水銀除去
天然ガス中のCO2や有機硫黄などを除去し、LNGの液化工程に合うよう処理するプロセス。
ガス中の水分を除去するプロセス。
軽質炭化水素をエタン、プロパン、およびブタンより沸点の高い成分に分離するプロセス。
水銀を除去するプロセス。一般的な方法として、吸着法、吸収法、酸化法、冷却分離法などがある。
これらの処理を経て、精製が完了し液化工程に移ります。LNGは本来気体ですが、冷却することで液体化が可能なため、以下のような方式で液体化して貯蔵されます。
- カスケード・プロセス
カスケード・プロセスとは、エタンやエチレンなど温度レベルの異なる単一の冷媒の冷凍サイクルを組み合わせることで、天然ガスを液化する方法です。メリットとして、運転が容易、動力原単位が良いことが挙げられます。一方、機器数が多く設備費が高い、エチレン、プロピレンなどの場合は、外部より冷媒を購入しなくてはならないなどのデメリットもあります。
- 混合冷媒プロセス
混合物冷媒であるエタンやプロパンなどを使用する方式です。冷媒を冷却・分離しながらいくつかの温度レベルに分け、それぞれ同一の熱交換器内で減圧フラッシュさせます。それにより原料ガスや、低温レベルの冷媒を冷却していきます。機器数が少ないため、設備費がカスケード・プロセスより安いというメリットがあります。
- エキスパンダープロセス
コンプレッサーやエキスパンダ―を利用して、窒素やメタンなどを圧縮・膨張しながら、冷媒として使用します。プロセスが簡単というメリットがありますが、液化効率ではカスケード・プロセスや混合冷媒プロセスに劣ります。そのため、現時点では小規模プラントでの採用に限られています。
タンクに貯蔵されたLNGは、都市ガスとして地下のパイプラインを利用して、各需要家に供給されます。
引用:天然ガス液化プロセス(独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構)
LNGの使用用途
LNGは輸入量の約70%が火力発電所の燃料となり、約30%は都市ガスに使用されています。その他では、次世代エネルギーとして注目される水素を製造する際にも利用されており、また家庭用や自動車の燃料、工業用への使用など用途の幅広さが特徴です。
火力発電に関してはこちらの記事も参照ください。
火力発電とは?仕組みや種類、メリット・デメリットと未来を解説
LNG(液化天然ガス)の特徴
LNGの特徴として「省エネルギー」と「クリーンエネルギー」であることが挙げられます。詳しく解説していきましょう。
LNG(液化天然ガス)は省エネルギー
LNGのマイナス162℃という温度を利用して、省エネルギーに役立てることが可能です。前述したように、LNGは液化することで約600分の1の体積になります。そのため液体から気体に戻すときは、逆に体積が一気に約600倍に膨らみ、大きな圧力が発生します。その力をさまざまな場面で応用することで省エネルギー化を図れます。
LNG(液化天然ガス)はクリーンエネルギー
主成分がメタンであり天然ガスは、燃焼時のCO2の排出量が最も少ない化石燃料といわれています。また大気汚染の原因となる窒素酸化物の排出が少なく、硫黄酸化物も排出しません。そのためクリーンエネルギーとして、地球の温暖化抑止に有効と考えられています。
LNG(液化天然ガス)のメリットとデメリット
ここではLNGのメリットとデメリットを詳しくご紹介します。
LNGのメリット
LNGには次のようなメリットがあります。具体的に解説していきましょう。
- 環境負荷が低い
- 安定供給が可能
- 発電効率が良い
- LNGの安全性
環境負荷が低い
LNGは燃焼時のCO2排出量が石炭の約60%、窒素酸化物は石炭の約20〜40%と、非常に低いのが特徴です。ススや燃えかすなどのばいじんの発生も少ないため、地球温暖化や大気汚染という観点からみても、環境負荷の少ないクリーンエネルギーといえます。
安定供給が可能
天然ガスは埋蔵量が豊富で世界各地で産出されるため、国際情勢の影響を受けるリスクが低いというメリットがあります。また、LNGは液体化され、体積が600分の1と小さくなるため、大量輸送・大量貯蔵が容易であることも大きなポイントです。
発電効率が良い
LNGによる発電は効率が良いことでも注目されています。2023年、東北電力は「上越火力発電所1号機(LNGを燃料とする発電設備)」が世界最高効率のコンバインドサイクル発電設備として、発電効率63.62%を達成したと発表しています。
参照:東北電力に発電効率ギネス認定、上越火力1号(電気新聞)
安全性が高い
LNGは安全性が高いことでも知られています。LNGを貯蔵している日本の地上式タンクは、世界でも活用されています。超低温にも耐えられる9%がニッケル鋼という、特殊材料を使用した内槽と鋼製の外槽による二重殻構造です。タンクの周辺にはLNGの外部流出を防ぐ防液提を設置し、タンク散水装置、高発泡装置、粉末消火設備の設置など、安全性への配慮が多くなされています。
また阪神・淡路大震災以降、耐震性を高めるために低圧導管を、鋳鉄製からポリエチレン製へと切り替えを加速しています。災害時における迅速な復旧対策も講じており、大阪北部地震では、わずか1週間で供給が復旧しました。
LNGのデメリット
LNGのデメリットに関しては以下のようなものがあります。
- 輸送に関するリスク
- 安定確保が難しい
- コストがかかる
輸送に関するリスク
日本は世界のLNG輸入量の約2割を占める世界最大のLNG輸入国です。そのため、輸送に関するリスクが存在します。例えば近年シェアが伸びている米国産のLNGは、メキシコ湾からパナマ運河を通過して太平洋を航行しアジア地域に輸出されます。メキシコ湾に大型ハリケーンが発生した場合、LNG価格、プロパン価格が高騰する恐れがあります。
安定確保が難しい
冬季は荒天に伴うLNG船の入港制約が生じることがあるため、燃料制約が生じないような措置を講じなくてはなりません。またLNGはボイルオフガス(気化による損失)が生じるため、長期的な貯蔵には設備・運用上の工夫が必要です。さらに国際情勢による価格高騰などといった燃料調達リスクが大きく、安定確保が極めて重要であると考えられています。
コストがかかる
LNGは輸送や製造、安定確保のためのコストが発生します。LNGを運ぶための専用タンカー代、貯蔵するための冷凍設備も必要です。安全面で見るとマイナス162℃の超低温で取り扱うため、安全管理にもコストが発生します。またLNGはパイプラインが整備されている地域のみしか使用できません。供給範囲が限られることも課題です。
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LNGとLPGの違いとは
LNGと混同されがちな燃料にLPGがあります。ここではLNGとLPGの違いについて、わかりやすく解説します。
LPG(液化石油ガス)とは
LPガスとは「Liquefied Petroleum Gas」の略であり、プロパンやブタンなどの炭化水素を主成分とする液化燃料です。
LNGとLPGの違い
原料 | 特徴 | |
---|---|---|
LNG(液化天然ガス) | メタンを主成分とする天然ガス |
|
LPG(液化石油ガス) | プロパン・ブタンを主成分に持つ液化石油ガス |
|
LNGとLPGの共通点
LNGとLPGの共通点としては、両方ともガスを液体化することが挙げられます。液体化することで密度が高まり、容易な保存や輸送を可能にしています。また燃焼時に発生するCO2や窒素酸化物などの排出量が少なく環境負荷が少ない点や、家庭用や自動車の燃料、工業用など、幅広い用途に活用可能な点も共通しています。
LNGの海外と日本の動向
ここでは海外と日本のLNGの現状や動向を解説していきます。
海外主要国のLNG価格の推移
2024年の12月時点の米国のスポットガス価格※は、天然ガス需要の上昇や気温低下による暖房需要の伸びにより、月半ばから後半にかけて上昇基調となり、3.95米ドルと4米ドルに迫りました。
欧州に目を向けると、ガススポット価格はノルウェーからの供給の安定と比較的温暖な気候が予測されたこともあり、下落が続きました。ウクライナ経由の流入も横ばいで、ロシア産ガスの欧州市場への流入は、2025年には減少するとの見方が強まり上昇しています。
※スポット価格とは、長期契約ではなく一回の取引ごとに成立する市場価格のこと
日本平均LNG輸入価格
2024年11月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり12.07米ドル、円建てでは1トン当たり95,672円となりました。供給地域別では、米国産は10.80米ドル、ASEAN地域産が11.42米ドル、中東産が11.98米ドル、ロシア産が12.90米ドルとなっています。
参照:天然ガス・LNG価格動向2024年12月(独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構)
世界のLNG貿易実績
2023年の世界のLNG貿易量は403.1MT、前年比で14.0MT、3.6%の増加でした。需給が逼迫し、価格が高騰する中でも安定的な伸びを示しているといえます。特に欧州のLNG輸入量は、増加を遂げています。また世界のLNG輸出量は、1位米国85.1MT、2位豪州81.4MT、3位カタール79.5MTでした。
世界のLNG市場動向
2024年における世界のLNG市場は、全体としてゆるやかに推移しました。この傾向は 2025年も継続され、価格は他の化石燃料に比べて高水準を維持すると予測されています。市況感は、2022年2月のウクライナ危機直後、一時は約70 ドルまで高騰しましたが、その後は約20〜60ドルで推移しています。
LNG 供給は、米国産を中心に豊富であり、世界LNG市場規模は2024年4億トンから、2025年4.4億トンに拡大する見通しです。
欧州ガス市場の重要性
これまで世界のLNG市場は独立性が高いのが特徴でした。しかし、LNGのスポット価格の取引量が増加するにつれ、現在では自由化が進んだ世界最大規模の欧州ガス市場が大きな影響力を持つようになっています。欧州ガス市場の影響は、日本を含むアジア地域にも波及します。そのため欧州のLNG需要状況や価格変動を注視する必要があります。
参照:天然ガス・LNG最新動向 ―2023年世界のLNG貿易実績および中長期LNG価格イメージとLNG調達戦略・欧州ガス政策へのインプリケーション―(独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構)
日本のLNGの現状
日本では電気の安定供給の確保のため、LNG火力は重要であるという位置づけです。そのためガイドラインの作成や、燃料在庫の定期的なモニタリングの導入などを進め、必要な燃料を政府や関係事業者等が協調して確保する体制が構築されました。
将来的な脱炭素化を前提としたLNGの供給力を確保する観点から、需給バランスの将来動向を見つつ、LNG活用の技術開発を促進する計画です。
メタネーション技術の開発
日本が開発を促進しているメタネーションとは、天然ガスの主成分であるメタンを、H2とCO2を反応させ合成する技術のことです。メタンは燃焼時にCO2を排出しますが、そのCO2を回収し利用することができれば、燃焼時のCO2を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現したことになります。
そのためメタネーションは、カーボンニュートラルを実現できる技術として注目されており、開発が促進されています。
GX推進
日本のエネルギー政策では、産業構造、産業立地に関する政策と一体で展開していく必要があるとの考えからGX(グリーントランスフォーメーション)を推進しています。GXとは温室効果ガスの排出削減と、経済成長の両立に向けた社会変革の取り組みを指します。
メタネーションはGX推進に関わる「グリーン成長戦略」において、「次世代熱エネルギー産業」として重要分野のひとつに位置づけられています。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?意味やメリット、取り組み事例などをわかりやすく解説
まとめ
LNGについて、概要から製造プロセス、メリットまで詳しく解説しました。
エネルギー政策や脱炭素化推進において、海外や国内のLNGの動向や技術開発は、今後も注視する必要があります。
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