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ライフサイクルコスト(LCC)とは?低減ポイントやランニングコストとの違いも解説

ライフサイクルコストとは、製品や設備、建造物などの運用から廃棄に至るまでのライフサイクルに発生するコストのことです。

特に投入資金が大きい建造物に関しては、持続可能で長寿命、省エネルギー化の適切な推進が求められます。ライフサイクルコストはそのための重要な指標になります。

本記事ではライフサイクルコストについて、意味や算出の考え方、そしてランニングコストとは何が違うのかまで、わかりやすく解説します。

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ライフサイクルコストとは


ライフサイクルコストの言葉の意味や種類、ライフサイクルアセスメントとの違いを解説していきます。

ライフサイクルコストの意味

ライフサイクルコストのライフサイクルとは「人や生物の誕生から死に至るまでの段階」のことです。転じてビジネスでは、「製品や建造物、サービスなどの開発、製造から廃棄までの過程」を意味します。

つまりライフサイクルコストとは、製品や建造物、サービスなどの一生にかかるコストのことです。

ライフサイクルアセスメント(LCA)との違い

ライフサイクルコストと似た言葉に、「ライフサイクルアセスメント(以下LCA)」があります。それぞれの違いは何なのか具体的に解説しましょう。

まずLCAとは、製品や建造物、サービスの一生における温室効果ガス排出量などの、環境負荷を評価する手法です。LCA手法の構成を分類すると以下のようになります。

ライフサイクルアセスメント(LCA) ライフサイクルエネルギー(LCE) ライフサイクルCO2(LCCO2) ライフサイクルコスト(LCC)
ライフサイクルを通じた環境負荷 ライフサイクルを通じた消費エネルギー量 ライフサイクルを通じた二酸化炭素(CO2)量 ライフサイクルを通してかかったコスト

ライフサイクル全体を俯瞰するという点で、LCAと同様にLCCは重要な役割を果たすといえます。

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?仕組みや算定方法から事例まで解説

ライフサイクルコストの構成要素

次にライフサイクルコストの構成要素を見てみましょう。ここでは例としてわかりやすく、建造物のライフサイクルコストの構成要素を紹介します。

建設費 建物開発・土地取得・設計・施工などのかかる費用
運営管理費 点検・保守などにかかる費用
水道光熱費 電気・上下水道費・ガスにかかる費用
管理費 施設の運用・税金や保険などにかかる費用
清掃・修繕費 清掃・定期的なメンテナンスや修繕などにかかる費用
解体処分費 建物の撤去・運搬・最終処分など解体にかかる費用

ライフサイクルコストの種類

ライフサイクルコストには、さらに以下のような種類に分けることができます。それぞれを詳しく解説していきましょう。

イニシャルコスト

製品や建造を行う際にかかる初期費用を指します。建設の場合は建設費や企画設計費などがこれに当たります。

ランニングコスト

製品や建造物の運用にかかるコストのことを指します。具体的には、家賃や水道光熱費、消耗品費、ガス代、固定資産税や各種保険料などが該当します。

メンテナンスコスト

製品や建造物の維持管理に必要なコストです。具体的には、清掃や点検、修繕や改修などになります。

ライフサイクルコストとランニングコストの違い

ランニングコストとライフサイクルコストは混同されやすい言葉ですが、前述した通りライフサイクルコストとは、建造物や製品の一生を通して発生する総費用のことです。ランニングコストとは、製品や建物の運用や維持管理にかかる費用で、ライフサイクルコストの要素の一つになるため、同一ではありません。

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ライフサイクルコストの重要性

ライフサイクルコストの重要性を次の3つの視点から解説していきます。

  • コストを事前に試算
  • 適切な設備投資の実施
  • 資産価値の維持

コストを事前に試算

ライフサイクルコストにかかる比率で、最も高いのはランニングコストです。一般的に消費者は、初期費用であるイニシャルコストに関しては、慎重になる傾向があります。

しかし実際は、将来的に建造物や設備を維持していくランニングコストの比率を中長期的な面で考慮することが重要です。ライフサイクルコストを事前に試算することで、どれだけのランニングコストがかかるのか把握し、全体を検討することが可能です。

適切な設備投資の実施

事前にライフサイクルコストを設定することで、長期的で適切な設備投資や建造物の修繕計画を作成することが可能です。このような計画は建造物自体の資産価値を維持し、かつ価値を高めることに繋がります。

ただしこれらの設備投資は、時期によっては人件費や資材高騰があり得ます。そのため効率性を考慮せずに実施すれば、かえってコストがかさむ可能性もあります。現状のリスクも把握して、しっかりと計画を練ることが大切でしょう。

資産価値の維持

ライフサイクルコストを適切に把握することは、資産価値の維持という点からみても重要です。適切な設備投資や長期の修繕計画は、建造物の長期的な価値の創出を可能にし、資産価値の維持、また価値向上へと繋げることができます。

ライフサイクルコストの具体例と算出の考え方


ここではライフサイクルコストの具体的例と算出の考え方をご紹介します。今回は建設関係を例として挙げ、解説していきます。

ライフサイクルコストの具体例

50歳代の人物がほぼ同じ条件で、金額に差がある1番と2番のどちらかの住宅を購入しようとしていると考えてください

  1. 某不動産の住宅:2800万円
  2. 某ハウスメーカの住宅:3200万円

1番と2番のプランに大きな違いはないため、価格からみれば当然1番が得と考えるでしょう。しかし、実際に購入者が80代になるまで30年間住み続けたとしたらどうでしょうか。

30年間でそれぞれの住宅には以下のような違いがありました。

  1. 某不動産の住宅:2800万円
    耐震性を備えていなかったため、地震の時に大きな破損が出た。また外壁も年数が経つごとに、複数の修繕が必要になり、結果的に30年の間で1000万円の修繕費がかかった。

    2800万円+1000万円=3800万円

  2. 某ハウスメーカ住宅:3200万円
    耐久性が高く、耐震性も備えていたため地震が起きたときにもほとんど修繕の必要はなし。外壁も丈夫だったため修繕費用も安価に済み、結果的に30年の間で200万円の修繕費しかかからなかった。

    3200万円+200万円=3400万円

1番と2番を比較すると、初期費用だけではなく、運用や維持にかかる費用では400万もの差が出ました。

このように建造物自体の一生を見て、どれくらいのコストがかかるのかを把握することがライフサイクルコストの考え方です。

参照:住まいのライフサイクルコストを考える(一般財団法人住宅金融普及協会)

算出の考え方

新規整備および、建替事業を実施する公営住宅等を対象としたライフサイクルコストの算出の基本的な考え方は以下のようになります。

  • ライフサイクルコスト=(建設費+改善費+修繕費+除却費)〔単位:千円/棟・年〕

具体的な内訳は次の通りです。

建設費 建設時点に投資した工事費
改善費 想定される管理期間における改善工事費の見込み額から修繕費相当額を控除した額
修繕費 管理期間における修繕工事費の見込み額と長期修繕計画で設定している平均修繕項目・周期等に基づき修繕費を算定する
除却費 想定される管理期間が経過した後の除却工事費の見込み額

またライフサイクルコストの縮減効果の算出の基本的な考え方は、以下の通りです。

  • 1棟のライフサイクルコスト縮減効果〔単位:千円/棟・年〕 =ライフサイクルコスト(計画前)-ライフサイクルコスト(計画後)
  • ライフサイクルコスト(計画前)=(建設費+修繕費+除却費)は公営住宅等長寿命化計画に基づく改善事業(ライフサイクルコスト算定対象)を実施しない場合に想定される管理期間に要するコスト(建設費+修繕費+除却費)
  • ライフサイクルコスト(計画後)= (建設費+修繕費+除却費)÷評価期間(改善非実施)

具体的な内訳は次の通りです。

建設費 推定再建築費になるが、該当住棟の建設時点に投資した建設工事費を把握できない場合は、建設当時の標準建設費で代用
修繕費 建設後、評価期間(改善非実施)末までに実施した修繕工事費および、長期修繕計画で設定している標準的な修繕項目・周期等に基づき、修繕費を算定
評価期間(改善非実施) 改善事業を実施しない場合に想定される物理的な劣化や、社会的価値の低下に伴い、供用に適さない状態になるまで管理期間
除却費 評価期間(改善非実施)末に実施する除却工事費

参照:伊達市公営住宅等長寿命化計画 第8章ライフサイクルコストとその縮減効果の算出(北海道伊達市)

ライフサイクルコストの変化のタイミング


ライフサイクルコストは変化することも考えられます。例えば以下のようなタイミングは、ライフサイクルコストに影響を与える可能性が高いでしょう。

老朽化や災害による破損

設備の老朽化や経年劣化、または災害による破損は修繕費用や賠償費用などを生み出し、ライフコストの増加に繋がります。最終的に住居に住めなくなるという事態も想定されるため、事前のリスク管理や定期的な修繕が重要となります。

資産価値の変化

不動産の価値を構成する要素の一つである資産価値の変化もライフサイクルコストに影響します。特にマンションの資産価値はハードとソフトの両面から判断され、耐用年数はメンテナンスや修繕状況により大きく差が出るため、資産価値への影響を注視する必要があります。

ライフステージによる変化

高齢化に伴う住居の間取りの変更やリフォーム、または病気により身体に影響が出た場合は、バリアフリーにしなくてはならないなど、ライフステージによる変化はライフサイクルコストに大きな影響を与えます。

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ライフサイクルコスト低減の5つのポイント

ライフサイクルコストの重要性を踏まえたうえで、低減できるところは低減することが理想です。ここではライフサイクルコストを低減するための、5つのポイントを解説していきます。

①定期的な品質確保

定期的な品質確保を行う定期点検には、法令に基づく点検と管理者の自主的判断で行う自主点検の2つがあります。法令で定める定期点検には、消防法や電気事業法、ガス事業法、浄化槽法、水道法、大気汚染防止法などがあります。これらの点検は、専門的知識を有する者が行うことが望ましいとされています。定期的な点検を行うことで建造物の品質を常に確保すれば、ライフサイクルコストの低減に繋がります。

②効率的な維持管理

効率的な維持管理は、ライフサイクルコストを低減できる最も有効な手段です。そのためには、日常的に建築物や設備のわずかな変化をとらえて、適切に処置することが大切です。そうすることで、大きな異常や故障、あるいは事故の発生を未然に防ぐことを可能とし、結果的に建造物の寿命を伸ばします。

③ライフプランの考慮

子供の成長や自身の高齢化など、ライフステージに合わせたライフプランを事前に考慮することで、費用対効果(コストパフォーマンス)の高い住宅を計画することが重要です。そうすることで、ライフサイクルコストの低減に結びつけることが可能です。

④省エネを推進する

省エネの推進はライフサイクルコストの低減に繋がるだけではなく、環境保全の面からも重要です。具体的な取り組みとして、省エネ設備の導入や節水設備の導入、照明のLED化、そして外部専門機関からの省エネ診断などが挙げられます。

⑤ITの活用

ITツールの活用もライフサイクルコストの低減に大きな役割を果たします。ITツールの導入で、建物の使用状況やエネルギーの使用量、さらに予算の計画など、さまざまな情報を一元管理が可能です。ITツールの活用で不要なコストやエネルギー消費などを可視化できれば、予算の検討をし直したり、コスト削減に繋げたりすることができます。

まとめ

ライフサイクル全体を俯瞰するという点で、LCAと同様にLCCも注目されており、環境負荷とコストの両面から製品や建物を評価することが可能です。

GX検定」では環境負荷を評価するLCAや、政府が掲げるGX(グリーントランスフォーメーション)について学ぶことができます。

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GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。