【DAY1】GX Envisioning Conference 2023 講演レポート
竹内純子氏、経済産業省、USEN-NEXT HOLDINGS、尼崎市、三井住友銀行がご講演
2023年9月26日(火)、27日(水)、28日(木)に『GX Envisioning Conference 2023』を開催しました。「GX推進のリアルを学び、脱炭素経営に近づく3日間」と題した本イベントでは、各業界のソートリーダーやGX推進の実務者の皆様をお招きし、カーボンニュートラル実現のあり方について講演を行いました。
本記事では、9月26日(火)に開催した5講演のイベントレポートをお送りします。
基調講演「日本のGX推進の課題と展望」
温暖化・エネルギー政策の専門家である竹内氏に、GXが盛り上がりを見せる背景や今後の課題についてお話いただきました。気候変動問題に対する危機感の高まりや、産業界における資本市場の変化を受け、CO2削減に対する注目が集まるようになりました。一方で竹内氏は「CO2削減だけでなく、付加価値を創造し、社会の持続可能性を高めるGXが重要である」と示唆しました。
竹内氏は今後企業に求められる施策として、「供給側の脱炭素化(電源の脱炭素化)として再生可能エネルギーや原子力などに切り替えていくことも重要だが、需要側の取り組みも同時進行で進めるべき」と述べました。具体的には、生産工程全体を見直したり、生産の質を変えたりするなど、さまざまなイノベーションを起こしていくことで、社会全体のGXを実現していく。そしてその過程で、DXも活用しながら顧客起点の変化を起こしていく必要がある点を強調しました。
また、企業内でGXを加速できる人材の特徴について「脱炭素を“目的化”するのではなく、自分たちがイノベーションを起こす変革の好機とポジティブに捉えて、産業間の垣根を取り払いながらアクションを起こせること」を挙げました。
講演「GX推進に欠かせない『GX推進戦略』のポイント」
産業技術環境局GX投資促進室の山田氏より、日本政府としてどのようにGXを推進するのか、その方針や展望について解説いただきました。
世界各国でカーボンニュートラルに向けた動きと、GXに関する大規模な投資が進められるなか、日本では2023年7月に「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(通称:GX推進戦略)」が閣議決定されました。日本においては、「既存技術の活用とともに新規技術の開発確立、そして社会実装の前倒しが必要だ」と山田氏は指摘します。
そのために、「既存製品との価格差を埋めるカーボンプライシング(排出者の行動の変化を促すために、排出した炭素に価格を付ける取り組み)」と、「民間のGX投資を促し、新技術の実装等を進めるための先行投資支援」を組み合わせることが、日本の特徴的なGX政策であると説明しました。
また、その他の具体的な取り組みとして、「トランジション・ボンド形式のGX経済移行債発行」や「アジア諸国のカーボンニュートラル・GXの推進」、「GXに向けた野心的な取組を進める企業群の枠組みである、GXリーグの発展」などを挙げました。
特にGX人材の拡大に関しては、「GXリーグにおけるGX人材市場創造ワーキング・グループにて、GX人材のスキルセットや人材ポートフォリオの設計を進めていくことが重要課題である」との提言をいただきました。
講演「USEN-NEXT GROUPの攻めと守り GX経営戦略・その裏側」
サステナビリティ推進室長を務める山本氏より、USEN-NEXT GROUPにおけるGXの取り組みをご紹介いただきました。コンテンツ配信事業や店舗・施設支援事業など幅広くB to C、B to B事業を展開する同社では、「エンターテインメントとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する」をコンセプトに、サステナビリティの推進に取り組んでいます。その中でも環境への取り組みとして「脱炭素への貢献」、「循環型社会の構築」、「自然との共生」、「生物多様性への対応」を掲げ、積極的に取り組みを進めています。
「脱炭素への貢献」に関しては、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った情報開示」と「SBT(Science Based Targets;パリ協定の水準に整合した企業が設定する温室効果ガス排出削減目標)へのコミット」を行っており、カーボンニュートラルの目標数値の達成のため「事業所電力の再エネ化」や「車両のEV/HV化」などを推進しているとのこと。
また従業員のサステナビリティ活動についての理解を深めるために、「サステナチャンネル」という動画チャンネルを社内に配信したり、「SUSTAINABLE COLLECTIONS」というグループアイテムを社内販売しています。
さらに、2022年には再生可能エネルギー電力を扱う事業会社「株式会社U-POWER」を立ち上げ、全国各地に高圧・低圧の電力提供を実施しています。山本氏からは、今後も社会的な価値提供などを行う「攻めのGX」と、ESG経営の推進などをする「守りのGX」の両面でサステナブルな社会に貢献していきたいとの言葉がありました。
講演「ゼロカーボンベースボールパーク(阪神タイガースファーム)を活用した官民連携まちづくり」
経済観光振興課の西岡氏から、尼崎市におけるまちづくりの事例をご紹介いただきました。尼崎市は環境省の「脱炭素先行地域(第1回)」に応募し、選定されました。
具体的には「阪神大物地域ゼロカーボンベースボールパーク整備計画」と題し、阪神電気鉄道株式会社と共同で官民連携事業を展開しています。人口減少が進む南部大物地域の小田南公園に阪神タイガースファーム施設が移転することに合わせ、同公園内の野球場や練習施設等に太陽光・蓄電池を導入しつつ、不足する電力はごみ発電の余剰電力を活用するといったゼロカーボン計画を進めています。
さらに市内の6駅すべてのゼロカーボンステーション化や、EVバスの導入などにより、交通手段の脱炭素化にも取り組んでいます。
こうした施策の効果として、「交流人口の増加や経済波及効果の発生を想定している」と西岡氏は語ります。尼崎市は官民連携のまちづくりを進めるにあたり、阪神電気鉄道社との間で「駅を中心としたまちづくりや交通機能の強化」、「地域資源を活用したまちの賑わいづくり」、「都市防災の強化や暮らしの安心安全の向上」に関する協定を締結しました。
西岡氏は「地域課題の解決につながる施策として、尼崎市の魅力発信だけでなく、阪神電気鉄道社にとっても対外的なPR効果を生む事業にしていきたい」と締めくくりました。
講演「効率的手法で進める脱炭素経営」
サステナブルソリューション部の清水氏に、脱炭素経営の進め方のポイントについて解説いただきました。世界の潮流や産業界全体の関心ごととして、脱炭素経営への注目が高まっています。企業が脱炭素経営に取り組む意義として、「さまざまなステークホルダーとの関わりにおいてポジティブな影響力が発揮される」と清水氏は説明します。
脱炭素経営に向けた代表的な進め方としては、現状把握(CO2排出量の算定)→目標設定(CO2削減目標の設定)→打ち手の検討(CO2削減施策の検討)→打ち手の実行(CO2削減施策の実行)というステップが有効であるとの示唆がありました。その過程において、SMBCグループは「見える化」「つなぐ」「金融支援」という各ステップを一気通貫で伴走し、企業の脱炭素経営の実現に貢献しています。
脱炭素経営は短期的には支出が先行するケースもあり、二の足を踏む企業も多いなか「中長期的な視点で考えてみてほしい」と清水氏は語ります。5年先、10年先を見据えた目標であっても、その取り組みやプロセスが評価されれば、企業価値の向上につながります。清水氏は「リスクの分散方法や投資回収期間の工夫など、お客様に最適なスキームを提案することが我々金融機関のミッションの一つです」と強調しました。
講演の全編をオンデマンドで配信中
現在、セッション内容をいつでもお好きな時間に視聴できるオンデマンド配信をしています。期間限定の配信となりますので、ぜひご視聴ください。以下からお申込みいただけます。
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2023年9月27日(DAY2)のレポートはこちら
2023年9月28日(DAY3)のレポートはこちら
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