これから必要とされるGX人材とは?必要とされる理由や育成機関を紹介
GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、地球温暖化対策と経済成長を両立させ、産業構造を変革させることをいいます。
世界中の国や、グローバル企業を始めとする大企業では、すでにGXに相当する動きが始まっており、企業では自社のGXを推進させる「GX人材」の確保が急務となっています。
本記事では、GXがなぜ注目されているのか、GX人材とは何か、必要とされるスキルや資質、人材の育成・教育機関を紹介します。
「自社のGXを進める人材を確保したい」「自社でGX人材を育成したい」と検討している方はぜひ参考にしてみてください。
なぜGXが注目されているのか
では、今なぜ世界でGXが注目されているのでしょうか?
以下のパートで詳しく解説します。
世界的に高まる脱炭素の機運
国際社会が地球温暖化に危機感を持ち、対策を始めたのは、1997年の『京都議定書』の採択がきっかけです。
しかしこの時、温室効果ガスの削減目標は先進国のみに課され、途上国は対象外とされていました。
また、その後、2001年には「経済成長を阻害する」としてアメリカが離脱するなど地球温暖化対策について国際社会の足並みは揃いませんでした。
しかし、2015年に採択された『パリ協定』ではアメリカ・中国が参加、途上国を含めて197ヶ国に対象国が広がり、その後の各国のカーボンニュートラル宣言に繋がります。
各国では大規模な予算と政策を動員し国を挙げてGXへの舵を切っており、現在、世界の脱炭素の機運はこれまでにないほど高まっています。
重点投資分野としてのGX
気候変動問題解決と経済成長を両立させるGXの取り組みは、投資の対象としても大きな注目を集めています。
政府は岸田政権のもと『新しい資本主義』の4つの重点分野のうちの一つにGXを挙げました。今後10年間で官民協調のもとGX分野に150兆円の投資を先導するとの方針を掲げています。
また、その呼び水となる『GX経済移行債(仮称)』に20兆円を支出する見込みです。
欧州では事業者が再生エネルギー分野に参入しやすい環境を整えたことで、参入企業が増えさらなるコスト低下・新規参入事業者の流入に繋がるといった好循環が生まれました。
今後、日本でも政府の政策や予算によってGXに投資資金が流入することで市場の成長や収益率の向上、それによるさらなる投資資金の流入や事業者の参画といった効果が見込まれるでしょう。
また、日本政府はGXやDXなどの重点領域を含む学び直し(リスキリング)の支援に5年間で1兆円を投入する方針を示しています。重点領域にはAIやIoTなどのデジタル領域もありますが、脱炭素化も含まれています。
ヨーロッパではすでに『緑のリスキリング』の取り組みがスタートしました。電力大手が石炭火力発電所の職員に職業訓練を実施し、再生エネルギー人材への転換を図っています。
GX人材とは
2023年3月現在、経済産業省などが示しているGX人材の定義はありません。現状のGX推進状況に鑑みると、GX人材とは、「GXやカーボンニュートラルなど基本的な知識を持った上で、カーボンニュートラル達成のための一連の活動の一端を担える人材」と定義するのが妥当です。
つまり、グリーンに関連する研究者・技術者のみならず、業界のGX関連のルールメイキングができる人材、企業においては、技術を活用して新しいビジネスを生み出せる人材などもGX人材の定義の中で位置付けられると考えられます。
特に、GX推進において必要な知識・スキルを有しており、プロジェクトの責任者・リーダーとして、関係各所を巻き込み主導できる人材は、企業のGX対応は喫緊の課題でもあることから、今後急速に重要度が増してくるでしょう。
なぜGX人材が注目されているのか
GX人材が注目されている背景について解説します。
ESG投資の高まり
世界の投資家の間では、環境や社会に配慮した取り組みを行っている企業を投資先に選ぶESG投資が活況となっています。
世界全体の投資資金の内訳を見ると、ESG投資の運用額は2020年に35.3兆ドルに達し、全運用資産のうち35.9%を占めています。
今後も投資資金は増加していくと見られており、資金調達や株価維持の意味でも企業のGXを推進する人材の配置は急務です。
各事業部のマネージメントを行い、GXに向けた会社全体のアクションを先導し、会社の顔として、投資家や一般消費者に向け自社のGXに関するメッセージを発信したり、コミュニケーションをとったりすることができるGX人材のニーズは高まりつつあります。
コーポレートガバナンスコードの改訂
2021年6月のコーポレートガバナンスコードの改訂では、脱炭素、気候変動対応、多様性に関するより高い対応が上場企業に求められることになりました。
特に、プライム市場上場会社に対しては、気候変動に関する情報開示を、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」などに基づいて進めるべきだという規定が設けられており、従来から環境部門の人材を抱えていない企業は、対応自体を外部のコンサルティング会社に求めるなど、大きなコストを支払っているのが実情です。
取引先企業からのGHG排出量開示要請
コーポレートガバナンスコードの改訂等の影響を受ける上場企業を中心に、サプライチェーン排出量の算定・削減アクションが求められる中、scope3として、自社製品の材料調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費に関わる他社が排出した温室効果ガスも含めた算定が求められています。
こうした状況下において、取引先企業にGHG排出量を開示する動きが加速しています。また、開示のみならず、実際のGHG排出量の削減を要請しているケースも見受けられるようになっています。例えば、Apple社は、グローバルサプライチェーンに対して2030年までに脱炭素化することを要請しています。
GX人材育成・教育機関
2022年に入り、スタンフォード大学やコロンビア大学などのアメリカのトップ大学が、気候変動の解決策を見出せる人材を育成するためのスクールを開校しました。
日本においても、大学による同様の動きは存在します。早稲田大学や東京大学などでも、カーボンニュートラルを実現する⼈材の輩出を目指した動きがあります。
SPRING GX
SPRING GXは東京大学で博士後期課程の学生を対象に行われている研究支援事業です。
カーボンニュートラルだけでなく、AI・ダイバーシティ・難民・貧困など地球規模の課題解決に向け、オール東大でGX人材を育成することを目指しています。
SPRING GXは講義や交流会を通してGXの意識を身につける『基幹プログラム』と、海外派遣・産学連携インターンシップで学生の挑戦や研究を発展させる『高度スキル養成プログラム』の2つから構成されています。
事業は2021年秋に開始しており、東京大学の博士課程学生600名が参加しています。
長崎海洋アカデミー(NOA)
長崎においては、アジア初の海洋エネルギー開発の専門人材育成アカデミーとして、長崎海洋アカデミー(NOA)が開講されており、すでに500名以上の受講者を受け入れています。
アカデミーでは、洋上風力発電などの海洋再生可能エネルギーの仕事を行う上で欠かすことのできない、ビジネス知識(マーケットのトレンド、プレイヤー、事業環境、法律、政策等)、や技術の基礎知識(計測技術、海洋工学、機械工学、電気工学、施工技術等)を短期間で集中的に習得できる講義が行われており、長崎ならではの現地視察、洋上視察を通じて、実際の環境なども体感することができます。
スキルアップグリーン
スキルアップグリーンはスキルアップAI株式会社が企業向けに実施しているGX人材育成プログラムです。
企業のレベルやニーズ・事業に合わせて育成プログラムを提供しています。
育成プログラムでは『カーボンニュートラル入門/基礎講座』といったベーシックなものから、『GXビジネスクリエイション講座』といった実践的な講座まで選べます。
実践的な『GXビジネスクリエイション講座BtoB編(全事業者向け)』では、実際に企業での取り組み時に必要な下記スキルが得られます。
- 特定分野のGXビジネスの構造(提供価値、ステークホルダー、お金の流れ、サプライチェーンなど)を分析できるようになる
- 分析に基づいて、自社のポジショニングを把握し、ビジネスモデルを整理、実現性のあるGXビジネスを創出できる
ITEC
ITエンジニアの派遣事業や企業向け研修事業を行っているITECでは、動画でGXの基礎的な内容を学べるe-ラーニング講座を提供しています。
『GX』『SDGs』『ESG』といった基本的な事柄の概要や具体的な取り組みを知り、社内でGXに関する共通認識を醸成することが目的です。
カリキュラムはSDGs・地球温暖化の背景や概要について学ぶ『第一部』と、GXが提唱される背景と日本での取り組みを紹介する『第二部』で構成され、各部について確認テストが設けられています。
GXの基礎的な知識や気づきを得、企業のGX推進の第一歩となる講座です。
異業種・職種からのGX人材採用も【事例あり】
GX自体が新しく定義された領域のため、現在GX人材はそれほど多くありません。
採用しようとすると、GXを専門とする人材の絶対数は少ないため、専門知識・業界経験者に絞ることで採用が滞ってしまう可能性もあります。
そのため、企業のGX人材採用においては、他業種からの未経験転職も検討する必要があるでしょう。
以下のパートで異業種・異職種からのGX人材採用の事例を紹介します。
ポテンシャル採用の例
①商社の営業から化学メーカーの新規事業企画へ
商社で培ったリサイクルに関する知見やプロジェクト推進力を評価し、新規事業企画のポジションへ。高度な専門知識や技術ではなく、事業を前へ進める能力を重視した採用を行った。
②化学メーカーの研究開発から化学メーカーのLCA(ライフサイクルアセスメント)担当へ
GXに関連する研究開発業務ではなかったが、大学時代に学会に参加してLCAを学んだ経験があったことや、業界のサプライチェーン構造を理解していたため、GXに関する知識があるとして評価され採用。GX分野には経験者が少ないため、周辺・関連領域の知識があれば即戦力のGX人材と考えられやすい。
(※LCA・・・「資源採取ー原料生産ー製品生産ー流通ー消費ー廃棄ーリサイクル」までのサプライチェーン全工程の環境負荷を定量的に評価する手法)
前職での経験を異業界で生かす
このほか、前職の業務経験をそのまま活かしながら環境に関する異業界に即戦力採用されるケースもあります。業界や立ち位置が大きく変わっても通用する知識・経験を買われての転職です。
①運輸会社の総合職から新電力企業の電力調達へ
前職の運輸会社で電力調達業務を担当していた。その知識を買った新電力会社で即戦力として採用。
②官公庁から新電力企業の技術渉外へ
官公庁から新電力企業の技術渉外ポジションへ。もともと官公庁でエネルギー分野の政策を立案・実行しており、その実績と企画推進力が評価され採用。
GX人材は今後需要の高まる人材。早急に育成・採用に向けた準備を
今後GXは業種・業界を問わず、様々な企業で取り組みが求められます。
同業他社に遅れをとらないためにも、GX推進の一翼を担えるGX人材の採用はできるだけ早く始める必要があります。
ただ、GXは現在定義が仕掛かりの分野でもあるため、実績や経験がなくとも、資質やスキル・ポテンシャルを持つ人材を育成することで、短期間でGX人材を得ることも可能です。
スキルアップNeXt株式会社では、GX推進に向けた人材育成プログラム「Skillup Green」を提供しています。
「Skillup Green」を受講すると、以下のメリットを得たうえで学ぶことが可能です。
- 入門から実践まで体系的な講座となっているので、スムーズな学習体制が構築できる
- 専門領域でのビジネス経験豊富な講師陣から学べる
- 自社に合った形にカスタマイズをして研修を受けられる
- 一社法人研修の場合、モチベーション管理、講師のフィードバックを受けながらモチベーションの高い学習を行える
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