「COP(Conference of the Parties)とは|COP29・COP30の最新動向と日本の取り組みを解説」
昨今、COP(Conference of the Parties)という言葉を耳にする機会が増えてきました。こちらは締約国会議の略であり、地球温暖化問題の解決に向けて開催される会議です。COPで採択された内容を把握すれば、地球温暖化問題の解決に向けた世界の指針や取り組み内容を理解できるでしょう。
この記事では、COPの目的や歴史、押さえておくべきCOPについて紹介します。COPの中でも重要なパリ協定との関連性も解説するので、ぜひ参考にしてください。
COPとは?
COPとは、「Conference of the Parties(締約国会議)」の略であり、条約を結んだ国々による会議という意味です。COP(Conference of the Parties)は、さまざまな条約ごとに開催されています。。
COP(Conference of the Parties)の中でもよく耳にするのが、「気候変動枠組条約」に基づくCOPです。そしてこの記事では、「気候変動枠組条約」に基づくCOP(Conference of the Parties)、つまり地球温暖化問題について協議するCOPについて紹介していきます。
正式名称は「国連気候変動枠組条約締約国会議」です。「気候変動枠組条約」の加盟国が集まり、地球温暖化の対策について話し合います。
第1回は、1995年にドイツで開催されました。以降は毎年1回開催されており、2023年で28回目の開催を迎えます。(2020年のみ新型コロナウイルスの影響で中止)
COPの参加者
COP(Conference of the Parties)の参加国は、「気候変動枠組条約」の加盟国です。本条約は、1992年の地球サミットで採択されました。具体的には、197カ国・地域が参加しています。
主な参加者は、政府関係者や国連関係者、専門機関・国際機関の関係者などです。政府関係者だけでなく産業界や専門家などが集っていることから、あらゆる組織が環境問題に取り組むことの必要性が伺えます。
COP(Conference of the Parties)の目的
COP(Conference of the Parties)の目的は、地球温暖化問題の解決です。大気中の温室効果ガスを一定基準に保つことを目指して、温室効果ガスの削減対策などのルールを協議します。
参加国には、温室効果ガスの排出目標の設定や実績の報告が求められます。また、先進国は発展途上国に対して、資金提供や技術移転の推進をしなければなりません。これは、「先進国は発展途上国に比べて重い責任を追うべきである」という考え方に基づいています。
このように、参加国が互いに協力し合い、地球温暖化問題の解決を目指しています。
COPの歴史
COP(Conference of the Parties)は2023年で28回目の開催を迎えます。これまでのCOPの歴史の中から、代表的なCOPを紹介します。
会合 | 開催年 | 開催場所 | 主な内容 |
---|---|---|---|
COP3 | 1997年 | 日本(京都) |
|
COP15 | 2009年 | デンマーク(コペンハーゲン) |
|
COP21 | 2015年 | フランス(パリ) |
|
COP26 | 2021年 | イギリス(グラスゴー) |
|
COP28 | 2023年 | アラブ首長国連邦(ドバイ) |
|
COP29 | 2024年 | アゼルバイジャン(バクー) |
|
COP30 | 2025年 | ブラジル(ベレン) |
|
押さえておくべき代表的なCOPの内容
2023年8月現在、27回開催されたCOP。この中から、押さえておくべき代表的なCOP(Conference of the Parties)を3つ紹介します。それぞれ議題や決定した内容などを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
COP3(1993年開催:京都議定書が採択)
COP3は、1997年に京都(日本)で開催されました。COP3で採択された「京都議定書」は、地球温暖化問題解決への大きな一歩とされています。
京都議定書では、1990年の排出量を基準に2008年から2012年の間に温室効果ガスの排出量を平均で約5.2%削減することが目標とされました。(日本の目標は6%)
ただし、京都議定書には問題点がありました。それは、発展途上国に対する具体的な削減目標が設けられなかったことです。そのため、中国やインドなど、日本よりもCO2の排出量が多い国への拘束力がなく、不公平感がありました。
▼参考
COP3
COP15(2009年開催:昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の採択)
COP15は、2019年にコペンハーゲン(デンマーク)で開催されました。京都議定書の不公平感を解消することが望まれていましたが、最終的な合意は非常に難航しました。
COP15において、「コペンハーゲン合意」が採択。内容は産業革命以前と比べて気温上昇を2℃以下に抑えることや、先進国による途上国の支援などでした。
具体的な削減目標はないものの、多くの国々は独自の取り組みを強化する結果となりました。
▼参考
COP15
COP21(2015年:「パリ協定」の採択)
COP21は、2015年にパリ(フランス)で開催されました。本会議で採択された「パリ協定」は、全ての参加国が同意したことで大きな注目を集めました。
パリ協定では、「地球の気温上昇を産業革命前の水準に比べて2℃以下に抑えることを目標とし、さらに1.5℃以下に抑えるように努力すること」が合意されました。また、参加国は5年ごとにCO2の削減目標を提出・更新することが義務付けられています。
このパリ協定がきっかけとなり、日本では2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」の実現が宣言されました。
▼参考
COP21
【近年の注目COP】COP26のポイントは?
COP26は、2021年にグラスゴー(イギリス)で開催されました。現状のままではパリ協定の1.5℃の達成が難しい状況であることから、どのような結論が出るのか注目されていました。
結果、COP26で合意した内容は「グラスゴー気候合意」としてまとめられ、1.5℃を目標にすることが明記されました。2°Cよりもさらに達成難度の高い1.5℃目標で合意されたことは、地球温暖化問題の解決に向けて大きな意味を持ちます。
ただし現状のままでは目標達成が困難なため、各国は2030年までの温室効果ガスの排出目標を見直すことが求められました。
最新のCOPの動向(COP29・COP30)
COP29の概要と開催地
COP29は、2024年11月11日から11月22日までアゼルバイジャンのバクーで開催されます。COP29のテーマは、より高い野心を持つ国際的な気候行動を推進し、持続可能な開発目標の達成に向けた具体的な行動を支援することです。
COP29の主要議題
気候資金に関する新規目標の設定
- COP29では、この2025年以降の新たな資金目標の具体的な設定が主要な議題の一つになると予想されています。この議論は、気候変動対策における国際的な資金支援の将来的な規模と方向性を決定する重要なポイントとなるでしょう。
排出量取引
- COP28において、パリ協定第6条の市場メカニズムに関する詳細な規則について合意に至っておりません。
第6条は、国家間でGHG排出削減量を取引する仕組みを定めており、2021年のCOP26でその基本的な実施指針が決定しています。
具体的には、6条2項で各国が主導する2国間クレジット制度などの協力的アプローチ、6条4項で国連が管理する多国間の仕組みについて規定しています。これらの排出量取引に関する細部の議論は、意見の一致を見ることができず、COP29に持ち越されることになっています。
▼参考
COP29
COP30の概要と開催地
COP30は、2025年にブラジルのベレンで開催される予定です。ベレンはアマゾン川の河口に位置し、アマゾン熱帯雨林の保護や持続可能な発展が重要なテーマとなるでしょう。COP30は、気候変動に対する国際的な取り組みの深化と、気候変動が生態系や人類に及ぼす影響についての新たな議論の場となることが期待されています。
▼参考
COP30
日本の現状と取り組み
COP29およびCOP30に向けて、日本も地球温暖化対策において重要な役割を果たしています。以下は、日本の現状と取り組みについての概要です。
1.グリーン成長戦略
経済産業省が中心となり、関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。この戦略では、成長が期待される14の重要分野について実行計画を立て、具体的な見通しを示しています。
2.グリーンイノベーション基金
政府は2兆円の基金を創設し、次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなど、革新的な技術開発に挑戦する企業を支援しています。
3.エネルギー政策
水素や洋上風力などの再生可能エネルギーの拡充、送電線の増強、デジタル技術によるダム発電の効率化などを進めています。
4.地域脱炭素化
環境省は「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、2030年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域の創出を目指しています。また、ゼロカーボンシティをはじめとする地方自治体の脱炭素化の取り組みを支援しています。
5.環境教育と意識啓発
環境省は、脱炭素社会づくりに貢献する「賢い選択」を促進する取り組みを進めています。
日本の将来展望と課題
気候変動対策は国際社会の喫緊の課題であり、日本もCOP(Conference of the Parties)での合意を踏まえて積極的に取り組む必要があります。以下、日本が直面する主要な課題とそれに対する将来展望を3つの観点から述べます。
1.脱炭素化とエネルギー転換
課題:
日本は現在、エネルギーの多くを化石燃料に依存しており、再生可能エネルギーの導入が遅れています。また、原子力発電の再稼働についても議論が分かれています。
今後の展望:
COP28で合意された「グローバル再エネ・省エネ宣言」に基づき、日本も2030年までに再生可能エネルギーの容量を大幅に増やす必要があります。太陽光発電や洋上風力発電の導入を加速させるとともに、エネルギー効率の改善にも注力することで、脱炭素社会への移行を進めることができるでしょう。また、原子力発電の役割についても再検討が行われ、安全性を確保しつつ活用していく可能性があります。
2.産業構造の転換とグリーン成長
課題:
日本の主要産業である自動車産業や重工業は、脱炭素化に伴う大きな変革を迫られています。この転換には多大なコストと時間がかかり、国際競争力の維持も課題となります。
今後の展望:
日本政府が策定した「グリーン成長戦略」に基づき、14の重要分野で具体的な行動計画を実施していくことで、環境保護と経済成長の両立を目指すことができます。例えば、次世代自動車の開発や普及、水素技術の実用化、カーボンリサイクル技術の開発などを通じて、新たな産業や雇用を創出し、国際競争力を維持・強化することが期待されます。
3.国際協力と気候資金
課題:
気候変動は地球規模の問題であり、日本一国の取り組みだけでは解決できません。また、COP28で設立が合意された「損失と損害」基金への貢献など、国際的な気候資金への拠出が求められています。
今後の展望:
日本は、優れた環境技術を活かして途上国支援や技術移転を積極的に行うことで、国際社会での存在感を高めることができるでしょう。特にアジア地域でのリーダーシップを発揮し、地域全体の脱炭素化を推進することが期待されます。また、「損失と損害」基金への貢献を含め、国際的な気候資金への拠出を拡大することで、気候変動対策における国際的な信頼を高め、世界の持続可能な発展に貢献することができます。
これらの課題に取り組み、展望を実現していくことで、日本は国際的な気候変動対策の中で重要な役割を果たしつつ、新たな経済成長の機会を創出していくことが期待されます。
▼参考
・経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」
・環境省「2030年目標、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた成長志向型カーボンプライシング構想について」
まとめ
この記事では、COPの目的や歴史、押さえておくべき代表的なCOPについて紹介しました。COPとは、地球温暖化問題の解決を目標として開催される国際会議です。その中でもCOP3やCOP21は大きな転換期であり、それぞれ「京都議定書」と「パリ協定」が採択されました。
そして近年のCOP26では、目標が明確化され、各国は具体的な対策の策定と実行が求められました。日本ではこの目標に基づき、再生可能エネルギーへの転換や森林保全活動を急いでいます。
具体的な取り組みなどは、下記の記事でも紹介しています。ぜひ参考にして、COPやカーボンニュートラル、地球温暖化問題への理解を深めてみてください。
カーボンニュートラルとは|意味や企業の取り組み、推進するメリットをわかりやすく解説
スキルアップNeXtのメールマガジンでは会社のお知らせや講座に関するお得な情報を配信しています。
メルマガに登録して用語集をもらう
また、SNSでもGXに関するさまざまなコンテンツをお届けしています。興味を持った方は是非チェックしてください♪