ZEBとは|ZEHとの違いや種類、メリット、補助金、導入事例を紹介
近年耳にするようになったZEBについてご存知でしょうか?ZEBとは、エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物です。ZEBを導入することで、企業にとってさまざまなメリットがあります。
この記事では、ZEBとは何かを説明した上で、ZEBを導入するメリット・デメリット、活用できる補助金や導入事例などを紹介していきます。ZEB導入を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
ZEBとは?
ZEBとは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略で、エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物です。
具体的な方法としては、高断熱の壁を取り入れるなどの省エネと、太陽光発電を導入するなどの創エネがあります。双方の取り組みを行うことで、エネルギー収支ゼロを目指すのです。
ZEBを導入することで、温室効果ガスの排出量を削減でき、カーボンニュートラルの実現に貢献できます。近年環境に配慮する企業は、消費者や投資家から注目を集めており、彼らに対してよい印象を与えることにもつながるでしょう。
ZEHとの違い
似た言葉に、ZEHがあります。ZEHとは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、エネルギー収支をゼロにすることを目指した住宅です。つまりZEBとZEHは、建物の種類が異なります。
ZEBの種類
ZEBには、次の4つの種類があります。
- ZEB
- ZEB Ready
- Nearly ZEB
- ZEB Oriented
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ZEB
ZEBは、建物の年間のエネルギー収支がゼロもしくはマイナスの建物を指します。具体的には、一次エネルギー消費量の50%以上の削減、かつ創エネで100%以上の削減を実現している建物という基準が定められています。
ZEB基準を満たすのは、非常に難しいです。経済産業省の調査によると、2020年の実績数651件に対して、ZEBは83件と約12.7%にとどまっています。
出典:令和3年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(ZEBの普及拡大に係る調査)|経済産業省
ZEB Ready
ZEB Readyは、ZEBに限りなく近い建物です。具体的な基準として、一次エネルギー消費量の50%以上を削減、かつ創エネで75%以上を削減することと定められています。つまり、創エネの設備を拡充すれば、ZEB基準をクリアできます。
Nearly ZEB
Nearly ZEBは、これからZEBを目指していく建物を指します。具体的な基準としては、一次エネルギー消費量の50%以上の削減です。つまり、創エネには未着手もしくは着手中であり、省エネには取り組んでいる状態といえます。
ZEB Oriented
SZEB Orientedは、延床面積が10,000㎡以上の施設が対象であり、ZEB Readyを目指して省エネ・創エネに取り組んでいる建物を指します。基準は下記の通りです。
- 事業所・学校・工場は一次エネルギー消費量の40%以上削減
- ホテル・病院・百貨店・飲食店は一次エネルギー消費量の30%以上削減
他の3種類と比べて基準が緩やかであり、満たしやすい基準です。また、対象の施設のエネルギー消費量は大きな割合を占めていることから、政府はZEB Orientedの普及に力を入れています。
参考:ZEBの定義|環境省
ZEBを導入するメリット
ZEBを導入するメリットとして、以下の5つが挙げられます。
- 光熱費を削減できる
- 環境負荷を抑えられる
- 快適な空間を保てる
- 建物の不動産価値が高まる
- BCP対策になる
それぞれのメリットについて説明していきます。
光熱費を削減できる
ZEBを導入することで、光熱費を削減できます。
ZEBは、省エネと創エネによって実現されます。省エネが実現されれば、電気代を削減できるため、直接的に光熱費を削減できます。
創エネに関しては、初期費用がかかるものの、数年で回収できることが多いです。初期費用を回収すれば、光熱費を削減できるどころか、売電して収益を得られる可能性があります。
光熱費の削減によって利益を拡大できるため、企業にとっては非常に嬉しいポイントです。
環境負荷を抑えられる
ZEBの導入は、環境負荷の軽減を抑えることにもつながります。
そもそもZEBは、温室効果ガスの排出量を減らして、地球温暖化の問題を解決するために始まりました。そのため、ZEBを導入すれば、温室効果ガスの排出量を削減でき、環境負荷を抑えられます。
個人ではなく企業でZEBに取り組むことで、大きな効果を期待できます。また、企業が取り組むことで従業員も環境問題に対する意識をもち、社会全体で取り組みが広まりやすくなるでしょう。
快適な空間を保てる
ZEBを導入することで、快適な空間を保てるメリットもあります。
ZEBの導入にあたり、高断熱の壁や高気密の窓などを採用する企業は多いです。これらを採用することで、室内の温度や湿度が安定して、快適な空間を保てます。
近年は職場環境の快適さを重視する社員が増えているため、ZEBを導入することで採用の面でもメリットが期待できるでしょう。
建物の不動産価値が高まる
ZEBを導入することで、建物の不動産価値が高まることもメリットの一つです。
環境問題への貢献度が重視される現代において、ZEBを導入した建物は高い評価を受ける傾向にあります。そのため、将来売却する際には、購入時よりも高い価格で売却できる可能性が高いです。
BCP対策になる
BCPとは、災害や非常事態が発生した際に、事業や生活を継続するための計画です。ZEBはエネルギーを生成できるため、外部からのエネルギー供給が途絶えても、一定期間の事業活動の継続が可能です。
そのため、BCP対策になることも大きなメリットです。
ZEBを導入するデメリット・課題
ZEBを導入するデメリット・課題として、以下の2つが挙げられます。
- 建設コストが高い
- メンテナンス費用が高い
それぞれ順番に解説していきます。
建設コストが高い
ZEB導入のデメリットは、通常の建設と比べてコストが高い点です。
例えば、高断熱の壁を導入する場合、通常の壁よりもコストが高くなります。他の設備に関しても、最新技術を導入しているため、通常のものより高くなりがちです。
また、ZEBを効果的に機能させるためには、専門的な知識をもった設計者などが必要です。彼らに依頼する際には、通常の設計者よりも依頼費用が高くなる傾向にあります。
メンテナンス費用が高い
ZEB導入の課題として、メンテナンス費用が高いことも挙げられます。
ZEBに使用される先進的な設備やシステムは、従来のものと比較して、メンテナンスが複雑であることが多いです。そのため、メンテナンスや修理の際のコストが高くなることがあります。
ZEBの導入事例
ここでは、ZEBの導入事例を3つピックアップして紹介します。
東急コミュニティー
東急コミュニティーは、総合不動産管理会社です。今後増加するZEB化建物に備えて、自社の技術研修施設をZEB化しました。また、東京都内の事務所ビルとして初の「Nearly ZEB」を実現。
自社の建物をZEB化することで、社員がZEB化建物を管理・運営するために必要な知識・経験を身につけられました。
参考:事例 – 東急コミュニティー技術研修センターNOTIA|環境省
三菱電機
三菱電機は、ZEB関連技術の開発を加速させるため、実証棟「SUSTIE」を建設しました。本施設は、省エネの設備に加えて、様々な自然エネルギーが活用されています。
2019年にZEB認証を取得。以降はその知見を活かして、ZEBプランナーとして他社へ業務支援を行い、ZEBの普及に努めています。
参考:事例 – ZEB関連技術実証棟「SUSTIE」(サスティエ)|環境省
福島県須賀川市
福島県須賀川市の土木事務所庁舎は、アクティブ技術とパッシブ技術の両方を最大限導入することで、一次エネルギー消費量の87%削減を実現しました。その結果、庁舎として東北初の「Nearly ZEB」認証を取得。
今後は、完成したZEB化モデル施設の見学を実施することで、ZEBへの理解促進・普及につなげていくとのことです。
ZEBの導入に活用できる補助金
ここでは、ZEBの導入に活用できる補助金を3つ紹介します。
新築建築物のZEB化支援事業
本補助金は、新築の業務用施設のZEB化に資する高効率設備等の導入を支援するものです。対象は、地方公共団体(延床面積制限なし)と民間団体(延床面積10,000㎡未満)です。
補助率はZEBの種類によって異なるため、申請前には環境省の資料を確認してください。
既存建築物のZEB化支援事業
本補助金は、既存の業務用施設のZEB化に資する高効率設備等の導入を支援するものです。対象は、新築建築物のZEB化支援事業と同じく、地方公共団体(延床面積制限なし)と民間団体(延床面積10,000㎡未満)です。
補助率は一律で2/3であり、補助金額上限は5億円となっています。
住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業
本補助金は、安定的で適切なエネルギー需給構造の構築を目的に、経済産業省が補助を行う制度です。対象には、新築と改築どちらも含まれます。上記2つの補助金と異なり、「設計費」「設備費」「工事費」などが補助の対象費用です。
補助率は一律で2/3であり、補助金額上限は 5億円/年 ・10億円/事業です。
参考:令和5年度経済産業省によるZEB実証事業について|一般社団法人 環境共創イニシアチブ
ZEBに関するよくある質問
最後に、ZEBに関するよくある質問とその回答を紹介していきます。
Q.改築でもZEBを導入できますか?
改築でもZEBを導入できます。改築用の補助金制度もあるため、うまく活用してZEBを導入していきましょう。
Q.ZEB基準とは何ですか?
ZEB基準とは、ZEB認証を受けるための基準です。ZEBには4種類あり、それぞれに基準が設けられています。
Q.ZEBは義務化されていますか?
ZEBは、2023年10月現在では義務化されていません。ただし、2030年度以降の新築の建築物にはZEB化が義務化される予定です。
まとめ
当記事では、ZEBとは何かを説明した上で、ZEBの種類や導入するメリット・デメリット、導入事例や活用できる補助金などを紹介しました。
ZEBを導入することで、電気代などのコスト削減や環境負荷の軽減、建物の不動産価値向上などのメリットを享受できます。一方で、初期費用やメンテナンス費用は高くなる傾向にあるため、注意が必要です。
ZEBを導入する際、補助金を活用できる場合があります。これまでにZEB認証を受けている企業・自治体の事例を参考にして、ZEBの導入を検討していきましょう。
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