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グリーンウォッシュとは?事例から学ぶグリーンウォッシュの実態と法規制の最新動向まで解説!

近年、環境問題に配慮した製品やサービスを提供する企業が増え、SDGsといった言葉も世の中に浸透し、消費者の環境への意識も高まってきました。

そんななか、新たな問題となっているのが消費者を勘違いさせる行為であるグリーンウォッシュです。

そこで今回の記事では、グリーンウォッシュとは具体的にはどのような行為を指すのかをはじめ、グリーンウォッシュの問題点や企業におけるリスクなどについて事例を交えてご紹介していきたいと思います。

グリーンウォッシュのなかには企業が意図しないところで、グリーンウォッシュとみなされてしまう場合もあるため注意が必要で、それに対して企業はどのような対策を練り、取り組んでいけばいいのかについてもあわせて解説していきます。

グリーンウォッシュにおけるポイントなどについても本記事にまとめましたので、参考にしてみてください。

<目次>

  1. グリーンウォッシュ(Greenwashing)とは
    1. グリーンウォッシュ(Greenwashing)の具体例
    2. グリーンウォッシュ(Greenwashing)の規制
    3. SDGsウォッシュとの違い
    4. グリーンウォッシュ(Greenwashing)の6つのタイプ
  2. グリーンウォッシュ(Greenwashing)の問題点
    1. 1:消費者が本当に環境に配慮した製品を選択できない
    2. 2:投資家の意図とは異なる投資がされてしまう
    3. 3:持続可能性に逆行する企業の利益の増加
  3. グリーンウォッシュ(Greenwashing)で消費者が取るべき対策
    1. 情報を鵜呑みにしない
    2. 第三者機関の認証を確認
    3. 企業の透明性を評価
  4. グリーンウォッシュ(Greenwashing)の企業リスク
    1. 企業ブランドの毀損
    2. 消費者からの信頼損失による不買運動
    3. 投資家からの評価ダウンと株価下落
    4. 取引先との契約停止
    5. 国の法規制等による罰則
    6. 従業員のモチベーションの低下
  5. グリーンウォッシュ(Greenwashing)が社会的に注目される背景
    1. 環境配慮に真剣に取り組んでいる企業を阻害する可能性がある
    2. 環境情報開示と情報の「質」への関心の高まり
    3. 環境活動に取り組む企業を見極める基準の必要性
  6. 企業におけるグリーンウォッシュ(Greenwashing)回避のポイント
    1. 1:「グリーンウォッシュ7つの罪」の確認
    2. 2:欧州「グリーンクレーム(環境主張)指令」などの海外のガイドラインを活用する
    3. 3:環境省の環境表示ガイドラインに則る
  7. グリーンウォッシュ(Greenwashing)であると批判、指摘された具体的な海外の事例
    1. マクドナルド
    2. H&M
    3. ​スターバックス(スタバ)
    4. ライアンエアー
    5. ルフトハンザドイツ航空
    6. アディダス
    7. トヨタ
  8. グリーンウォッシュ(Greenwashing)を取り締まる日本での動き(国内での事例)
  9. まとめ

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グリーンウォッシュ(Greenwashing)とは

グリーンウォッシュ(Green washing)とは、企業が実際には環境によくない製品または活動を、「エコ」や「環境にやさしい」と言う印象を与え、あたかも環境に配慮していたり、環境に優しい商品であるかのように見せかけてPRする行為を指します。

例えば、十分な科学的根拠がないのにも関わらず、企業が環境に配慮しているという印象を与えるために「持続可能性」「生分解性」「環境配慮」など「エコであること」を謳い、商品を誇張したり、誤解を招くような「環境訴求」をして商品をPRする行為がグリーンウォッシュにあたります。

簡単に言えば「根拠のない環境主張を行い、実質が伴わない環境訴求を行うこと」がグリーンウォッシュに当たります。

グリーンウォッシュは環境に良いイメージがある「グリーン」という言葉と、「ウソをごまかす」欠点を隠して「上部だけ」いいものに見せかける「ホワイトウォッシュ(色を塗って隠す)」を掛け合わせた造語で、PRする行為だけではなく、環境問題に取り組む(取り組んでいる)と見せかけて実際は何もしていないビジネス活動をする行為もグリーンウォッシュに含まれます。

つまり、実際には環境改善効果がなかったり環境に配慮していないのにも関わらず、企業が環境に配慮した取り組みをおこなっているかのように見せかけて消費者を誤解させて販売するなど「実質が伴わない環境訴求」がグリーンウォッシュです。

※グリーンウォッシュは、環境意識の高まりに伴い1980年代から使用され始めた古い概念です。

グリーンウォッシュ(Greenwashing)の具体例

グリーンウォッシュを、わかりやすい例で言うと「環境にやさしい商品である」と商品の特徴をアピールしているものの、製造の過程で環境に「配慮」していない、または環境に「害のある成分」を使っているなどがあげられます。

つまりこのケースでは、結果としてできた商品は「エコである」ように見せかけながらも、実は製造過程において環境に害のある化学物質を使っていて、実際は環境に優しくない、これがグリーンウォッシュにあたります。

また、商品から伝わるイメージやパッケージデザインは環境に配慮していることを連想させるデザインなのにも関わらず(エコを連想させる色や言葉を含む)、実は「環境悪化の一因となる恐れがある商品である」などもグリーンウュッシュに含まれます。

さらには、実際は「CO2削減効果」が小さいのにも関わらず「CO2削減」を大々的に宣伝し商品訴求を行う活動もグリーンウォッシュに含まれます。

最も身近な例では「省エネ」と表示されているのにも関わらず、実際は「省エネ」の効果が薄かったり「省エネ」を示す根拠が明確でない「省エネ」に繋がらない商品であること、これもグリーンウォッシュとして判断されます。

  • 「環境にやさしい商品である」・・・実際には製造過程で環境に害のある行為をしている。
  • 緑やエコを連想させるパッケージデザイン・・・環境悪化の恐れがある商品である。
  • 「CO2削減効果が大きい」・・・科学的根拠がなく実際はCO2削減効果が低い。

このように、「ウォッシュ」は環境問題の場面では何か都合が悪いことを隠す時に使われることが多く、実際は活動が伴っていないのにもかかわらず「フリをする」という文脈でよく使われます。

グリーンウォッシュ(Greenwashing)の規制

グリーンウォッシュを排除するための規制は、いくつかの国で進められています。

例えば韓国では2023年1月に環境に配慮した取り組みに対して虚偽や誇張した表現を行う企業に対して罰金を下す法案が可決されています。

なかでも環境対策に早くから取り組んでいる欧州での法規制は顕著で、フランス、イタリアの欧州各国はすでに企業のグリーンウォッシュに対し罰金を含めた厳しい法的措置が取られています。

例えば、イギリスでは2021年に「Green Claims Code」を制定し環境効果を表現するガイドラインが示されていたり、フランスでは2023年1月には金融商品や消費財製品にグリーンウォッシュを排除するための広告規制を行い、罰金を含めた厳しい法的措置が取られていたりと根拠のない曖昧な環境表現を禁止する取り組みがなされています。

また、欧州委員会では2023年3月22日付でグリーンクレーム法案を公表し、自社製品・サービスに関して「カーボンニュートラル」「ネットゼロ」「環境にやさしい(エコフレンドリー)」などの表現を用いる企業は、外部機関により検証されたエビデンスを公表することが義務付けられることとなり、2026年頃に加盟各国においてエビデンスを公表することの義務が施行されることになります。

SDGsウォッシュとの違い

SDGsウォッシュとは、SDGsのフリをして、見せかけのビジネス活動を行うことを指します。

SDGsウォッシュは、2015年のSDGs採択以降に登場した比較的新しい概念で、グリーンウォッシュの対象を含み、グリーンウォッシュよりも、より広範な部分で誤解を招くような訴求をしてビジネス活動を行う概念になります。

例えば、活動を「1:貧困をなくそう(貧困撲滅)」「4:質の高い教育をみんなに(教育)」「5:ジェンダー平等を実現させよう(ジェンダー平等)」「8:働きがいも経済成長も(経済成長)」などの目標番号に紐づけて、SDGsで目標とされている社会貢献活動に配慮していると見せかけてビジネス活動をするものの、実際にはその目標に伴っていないそうではない活動がSDGsウォッシュになります。

つまり、企業がSDGsの目標を掲げて積極的に取り組んでいるように見せかけてているものの実態が伴っていない、これがSDGsウォッシュにあたります。

グリーンウォッシュ(Greenwashing)の6つのタイプ

環境先進国である欧州ではグリーンウォッシュを取り締まる法整備を進めており、2020年の欧州委員会の調査では、企業の環境に関する主張の53.3%が曖昧であると報告しています。

EU全域での製品カテゴリの環境特性を見ても企業が主張する40%には科学的根拠に基づく明確性や正確性がないことが判明しています。

そこで欧州委員会は2023年3月、環境主張する際に満たすべき最低要件を定め、要件を満たさない環境主張を禁止する「グリーンクレーム(環境主張)指令案」を公表し、5月に欧州議会が決議し、翌2024年2月20日にはグリーンウォッシング禁止法を採択、「根拠がない環境にやさしい」などの表示を禁止しております。

参考:EU、グリーンウォッシング禁止法を採択、根拠ない「環境に優しい」など表示禁止(EU) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

出典:プラネット・トラッカー(Planet Tracker)|「The Greenwashing Hydra」

また、英金融シンクタンクNGOのプラネット・トラッカー(Planet Tracker)は報告書「The Greenwashing Hydra」の中で、グリーンウォッシュは6つに分類されると報告しています。

グリーンウォッシュの6つのタイプに基づく分析は、企業が環境対応を装う際に用いる典型的な手法を分類したもので、特に投資家や消費者に対し、誤解を招く企業の環境対応を見抜くための指針を提供しています。

以下で6つのタイプのポイントを見ていきます。

1.グリーンクラウディング
(Greencrowding)
環境に配慮した名称を掲げる組織・団体を隠れ蓑にし、実際は削減に対して消極的なロビー活動を行うなど、環境に有害なアプローチを隠し続ける方法。
2.グリーンライティング
(Greenlighting)
企業が実際の環境負荷の大きさを隠すため、特定の小さな環境配慮の活動を強調する手法。

自社が取り組む小さな環境配慮を「良い取り組み」として積極的に紹介し(広告を含む)、自社の環境破壊的な計画や活動から消費者の目を背けさせる方法。

例えば、ある事業や製品が「環境にやさしい」と言う面飲みにスポットライトを当てて「環境破壊的な活動から注意をそらす」こと。

3.グリーンシフティング
(Greenshifting)
企業が消費者をガスライティングし、消費者に非があるとほのめかし環境対策への責任を消費者に転嫁すること。

企業が「バリューチェーンの上下に責任を転嫁する方法」や企業が大量のCO2を排出する活動を行いながら、消費者にCO2排出削減に向けた行動を促すこと。

4.グリーンラベリング
(Greenlabelling)
「地球に優しい」「サステナブル」など定義が曖昧かつ不透明性の高い単語を使い、事業や商品が環境に配慮していると誤解をさせるようなマーケティングを行うこと。

実態は事実とは異なり誤解を招くことが多く、企業が「エコである」ことを誇張した広告で「消費者を欺」くこと。

5.グリーンリンシング
(Greenrincing)
企業がESG目標について、達成不可能な目標を掲げ、達成する前に目標や中身を変更、達成期限を変えたりするなど「環境問題に取り組む姿勢を見せかけでごまかす」こと。
6.グリーンハッシング
(Greenhushing)
企業の経営陣がステークホルダーや投資家の目をすり抜けたりグリーンウォッシュに対する批判を回避するため「ESG目標や信用情報など最低限の情報しか報告」しなかったり、「サステナビリティに関する情報を過小に報告したり隠したりする」こと。

以上がグリーンウォッシュの6つの分類です。

国境を越えた不正な取引行為を防止するための取組を促進する国際ネットワークであるICPENによるWebサイト分析によると、さまざまな分野の商品やサービス(衣類、化粧品、食品など)を宣伝する500のWebサイトのうち、およそ40%以上のWebサイトがグリーンウォッシングの疑いのある誤解を招くような表現をしているという調査報告があり、グリーンウォッシュの深刻さが浮き彫りになっています。

参考:Global sweep finds 40% of firms’ green claims could be misleading | ICPEN

参考:Global sweep finds 40% of firms’ green claims could be misleading – GOV.UK

参考:Econsumer.gov

参考:報告書「The Greenwashing Hydra」(Planet Tracker)

グリーンウォッシュ(Greenwashing)の問題点

それではグリーンウォッシュの問題となる焦点はどこにあるのでしょうか。

ここでは、グリーンウォッシュの代表的な3つの問題点について触れていきます。

1:消費者が本当に環境に配慮した製品を選択できない

企業がグリーンウォッシュを行うと、消費者は本当に環境に配慮した商品かどうかを判断できなくなります。

企業が行うグリーンウォッシュにより「なんとなく環境に良さそう」な商品を、消費者が「環境に配慮した商品である」と思い込み手に取ってしまうなど正しい判断をできなくなってしまうことが問題とされています。

このように、消費者は何が環境によくて、何が環境に悪いのかを判断できなくなり、本当に環境に配慮した製品を手に取ることができなくなってしまいます。

ポイント:消費者が正しい選択をできなくなる

2:投資家の意図とは異なる投資がされてしまう

近年、持続可能な社会を実現するために、グリーンボンドや環境問題への取り組みを意識したESG投資が盛んですが、グリーンウォッシュによって環境に配慮していない活動をしている企業に資金が行き渡ってしまい、本来の投資家の意図とは異なる投資がされてしまう恐れがあります。

ポイント:不正な資金集めが横行してしまう。

3:持続可能性に逆行する企業の利益の増加

グリーンウォッシュは真剣に環境問題に取り組んでいる企業の活動や利益を阻害することにもつながります。

その結果、サステナブルな取り組みをしている企業に本来行き渡るはずの利益が、不当な方法で環境問題を謳う企業に行ってしまい、持続可能性に逆行する企業の利益の増加につながってしまうことで、公正な競争に支障をきたしてしまいます。

このように、持続可能性に逆行する企業の利益が増加してしまうと、正しい形で環境に貢献している企業や、環境に良い商品やサービスが認知されにくくなったりと、世の中全体で真剣に環境問題に取り組む意識が薄れてしまう結果につながってしまいます。

また、環境に配慮した取り組みはコストがかかるため、2050年の持続可能な社会へ向けたSDGsのゴールの達成の障害になってしまう恐れがあります。

ポイント:環境問題に取り組んでいない企業の利益増加につながってしまう。

グリーンウォッシュ(Greenwashing)で消費者が取るべき対策

「エコフレンドリー」である商品をうたうグリーンウォッシュは身近なところで存在しており、環境に配慮した製品であると思い込むことで本来の意にそぐわないところで企業の利益の増加に加担してしまっている恐れがあります。

これを防ぐためには、消費者側も企業の発信する情報をそのまま受け取るのではなく、グリーンウォッシュについての理解を深めたり、事前に下記のような対策をとることが必要です。

情報を鵜呑みにしない

環境に関する製品ラベルや広告を鵜呑みにしないことです。

見た目は環境に良さそうな商品であっても、製品ラベルや広告を見る際は必ず裏付けとなる情報を確認するようにしてください。

第三者機関の認証を確認

環境ラベルはもちろん「環境にやさしい成分を配合」「天然由来の成分配合」などの表示に惑わされないことが大事です。

商品を手に取るときは必ず、第三者機関の認証をしっかりと確認し、信頼性や根拠のある商品を選ぶようにしてください。

企業の透明性を評価

また信頼できる企業の商品を選ぶ上で、公開されている情報が本当のことであるのか情報をしっかりと精査してください。

特に企業がどれだけ透明性を持って環境対策を公開しているのかしっかりと評価、確認することが大切な視点となります。

グリーンウォッシュ(Greenwashing)の企業リスク

それが意図的であろうがなかろうが、グリーンウォッシュには企業にとって下記のようなリスクがあります。

企業ブランドの毀損

まず第一にグリーンウォッシュが発覚するとブランドイメージが悪化し、企業の信用をはじめ、信頼性、ブランドの価値が損なわれます。

企業のリスク:グリーンウォッシュだとみなされると、イメージを改善することは容易ではない

消費者からの信頼損失による不買運動

グリーンウォッシュであると判断されると、ブランドイメージが悪化し消費者からの不買運動が起きる可能性があります。

これにより売上減少や株価の下落につながる可能性があります。

企業のリスク:消費者からの信頼を失い、不買運動につながるリスクがある

投資家からの評価ダウンと株価下落

企業の環境、経済、ガバメントを重視するESG投資が広まるなか、投資家は企業の環境への取り組みを厳しく評価しています。

グリーンウォッシュと判断されると、持続可能な投資を行うファンドから除外される可能性があったり、企業が投資家からの信頼性を損ない、資金調達が困難になるリスクがあります。

企業のリスク:投資家からの失望売りにより、株価の下落につながるリスクがある

取引先との契約停止

また、環境問題に積極的に取り組んでいない企業だと判断されると、環境問題に前向きな姿勢の取引先との契約停止に追い込まれてしまうリスクもあります。

企業のリスク:取引先との契約を停止されるリスクがある

国の法規制等による罰則

特に欧州で見られますが、多くの国では誤解を招く環境主張に対して規制が強化されています。

環境に関する虚偽の広告や誇張された主張に対する厳しい罰則が課される場合があり、法的な罰金や訴訟によるリスクがあります。

企業のリスク:国の法規制等によっては罰則を受けてしまうリスクがある

従業員のモチベーションの低下

企業が誤解を招くような環境対応を行っているケースでは、内部で働く従業員にも不信感が広がることがあり、従業員の士気の低下や離職の原因につながり、悪影響を及ぼすことがあります。

企業のリスク:社員が会社に失望し、疑念や反感を抱き始めてしまうリスクがある

グリーンウォッシュ(Greenwashing)が社会的に注目される背景

グリーンウォッシュが社会的に注目される背景には下記のような理由があります。

環境配慮に真剣に取り組んでいる企業を阻害する可能性がある

まず第一に、真剣に環境問題に取り組んでいる企業の活動を阻害する可能性があるからです。

例えば環境にいい商品であるとPRしながら、実際には科学的根拠がなく逆に環境を悪化させる可能性がある商品であるとしたら、真剣に環境問題に取り組んでいる企業から買うはずだった消費者が、そうでない企業に奪われてしまっていることになります。

真剣に環境対策に取り組んでいる企業にお金が回らないことで、環境対策に対する活動全体が停滞してしまう恐れがあります。

環境情報開示と情報の「質」への関心の高まり

また、グリーンウォッシュが社会的に注目される背景には、世間一般的にも環境情報が開示されるに従い、地球環境の深刻さが浮き彫りになってきており、情報に求める「質」が高まっているという理由もあります。

環境活動に取り組む企業を見極める基準の必要性

さらには、消費者も企業がグリーンラベリングなどの上辺だけの環境活動をしていることや、グリーンライティングによる自社の環境破壊的な計画や活動から消費者の目を背けさせる行為に気がついてきているという背景もあります。

そこで、本当に「環境にやさしい」と言える確かな根拠やそれを見極める基準が必要となってきたという背景もあります。

企業におけるグリーンウォッシュ(Greenwashing)回避のポイント

これまでグリーンウォッシュのリスクや注目される背景について見てきましたが、一方で企業が意図しないところでグリーンウォッシュであると判断されてしまうこともあります。

こうした企業が意図しないところでのグリーンウォッシュを回避するためにも企業側もしっかりと対策をしていく必要があります。

1:「グリーンウォッシュ7つの罪」の確認

企業側の対策としては、アメリカの第三者安全科学機関のULsolutionsによって買収されたTerraChoice社が提唱した消費者がグリーンウォッシュを見極めるためのツールを活用することが有効であるとされています。

消費者が誤解を招くような環境保護を謳った製品を見分けるための「グリーンウォッシュ7つの罪」と呼ばれるツールですが、「グリーンウォッシュの罪」は、消費者が持続可能性の主張を評価する際に役立つ、人気の高い学習ツールであることに留まらず、企業もその中身を知ることにより、意図しないところでのグリーンウォッシュを防ぐことができます。

・1. 隠れたトレードオフの罪(Sin of the hidden trade-off)

他の重要な環境問題に目を向けることなく、狭い範囲の属性に基づいて製品が環境に優しいと主張すること。

例えば紙は、持続可能な方法で伐採された森林から生産されたものだからといって、必ずしも環境的に好ましいとは限らない。

製造時の温室効果ガスの排出や漂白における塩素の使用など、製紙工程における他の重要な環境問題も同様に重要かもしれない。

ポイント:ある側面においては環境に優しいと主張するも、別の側面において環境に負荷がかかっていることに言及しないこと。

・2. 証拠を示さない罪(Sin of no proof)

簡単に入手できる裏付け情報や、信頼できる第三者認証によって立証されていない環境主張。

よくある例として、根拠を示すことなく、さまざまな割合でリサイクルされたティッシュ製品がある。

ポイント:十分な根拠を示さないまま「サステナブル」「環境に良い」と主張すること。

・3. あいまいさの罪(Sin of vagueness)

定義が曖昧であったり、範囲が広すぎるために、その本当の意味が消費者に誤解される可能性が高い主張。

天然素材がその例。ヒ素、ウラン、水銀、ホルムアルデヒドはすべて自然界に存在し、有毒である。天然素材は必ずしもグリーンではない。

ポイント:定義が不十分で、何がどれだけ良くなったのか具体的に示さず、消費者の誤解を招きやすい表現や表示を行うこと。

・4. 偽りのラベル表示の罪(Sin of worshiping false labels)

偽のラベルなど言葉や画像によって、第三者による保証が存在しないにもかかわらず、そのような印象を与える商品。

ポイント:第三者からの評価がない、もしくはありもしない第三者機関からお墨付きをもらったように「認証済み」と主張すること。

・5. 的外れの罪(Sin of irrelevance)

真実かもしれないが、環境的に好ましい製品を求める消費者にとっては重要でない、あるいは役に立たない環境主張。

例えば、モントリオール議定書でフロン(CFC=クロロフルオロカーボン)が禁止されているにもかかわらず、フロンフリーは頻繁に主張される。

ポイント:製品や企業が引き起こす環境負荷とは関係のない事実を引き合いに出し、あたかもすごいことであるように伝えること。

・6. まだマシの罪(Sin of lesser of two evils)

製品カテゴリー内では真実かもしれないが、そのカテゴリー全体が環境に与える大きな影響から消費者の目をそらす危険性のある主張。

有機タバコや低燃費のスポーツ用多目的車などは、この罪の例となりうる。

ポイント:環境負荷を生み出す根源2つを比べ、一方よりは「まだマシ」だと主張すること。

・7. 嘘をつく罪(Sin of fibbing)

単に虚偽の環境主張。

ポイント:不正確な情報に基づいてサステナブルだと主張する

参考:Sins of Greenwashing | UL Solutions

2:欧州「グリーンクレーム(環境主張)指令」などの海外のガイドラインを活用する

欧州グリーンクレーム指令とはグリーンウォッシュに対して厳しい措置を行う法案のことをいいます。

海外の基準を参考にすることで意図しないところでの企業のグリーンウォッシュを回避できる可能性が高まります。

欧州グリーンクレーム指令案では、環境主張に対してさまざまな角度から規制がかけられていますが、おおむねポイントを抑えると下記の通り整理されます。

【欧州グリーンクレーム司令のポイント】

1:自社の製品やサービス・ブランド・活動に誠実かつ明確であること
2:消費者がそのメッセージをどう受け取るかを考え、製品の情報と一致するようにすること
3:重要な情報を省略しない・隠さないこと
4:製品の比較は、公平で意味のあるものだけを行うこと
5:製品のライフサイクル全体を考慮すること
6:製品に関する主張には、必ず信頼できる最新の証拠(裏づけ)があること(検証機関の規定と要件)

参考:Green claims code

参考:EUR-Lex – 52023PC0166 – EN – EUR-Lex

3:環境省の環境表示ガイドラインに則る

日本には、まだ国が定めたグリーンウォッシュに対する明確な基準はありませんが、環境省より「環境表示ガイドライン」が制定されています。

環境表示ガイドラインは、主に自社の宣言によって環境表示を行う企業や団体を対象にしており、自己宣言による環境アピールをする企業に対しては、ISO14021規格に準拠することを求めており、下記5つの事項を基本項目としています。

1:あいまいな表現や環境主張は行わないこと
2:環境主張の内容に説明文を付けること
3:環境主張の検証に必要なデータおよび評価方法が提供可能であること
4:製品または工程における比較主張はLCA評価、数値等により適切になされていること
5:評価および検証のための情報にアクセスが可能であること

これにより「環境にやさしい」と記載した場合は

1:なぜ、どの部分で環境にやさしいのか
2:環境にやさしい理由となる説明文をつける
3:環境にやさしいと証明する数値データを示す
4:製品または工程における比較主張はライフサイクル全体で評価し数値等で適切に示す
5:評価、検証した情報を入手することができる

以上のように環境表現を検討する場合は、しっかりとデータ的な根拠に基づいて示していく必要があります。

参考:環境省_環境ラベル等データベース

グリーンウォッシュ(Greenwashing)であると批判、指摘された具体的な海外の事例

ここからは、実際にどのようなケースで企業がグリーンウォッシュであると批判、指摘されてしまったのか、海外での具体的な事例について紹介していきます。

マクドナルド

イギリスとアイルランドで展開するマクドナルドの例ですが、2018年に紙ストローは100%リサイクル可能だとし、プラスチック製のストローから「エコフレンドリー(環境にやさしい)」と称し紙ストローへの切り替えを実施しました。

しかし内部の関係者からの「紙ストローの厚みがありすぎてリサイクルは困難」という内部メモが外部に流出し、実際は紙製ストローはリサイクルされることなくそのままゴミ箱へ捨てられていることが発覚しました。

その結果マクドナルドはグリーンウォッシュであると疑われてしまい、批判を浴びることになりました。

参考:マクドナルドの紙製ストローはリサイクルできず廃棄されていた|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

H&M

出典:H&M CONSCIOUS EXCLUSIVE

H&Mでは2019年にオーガニックコットン・リサイクルポリエステルを使用した「コンシャスコレクション」を発表しました。

リサイクル素材を使っていることから「環境にやさしい持続可能なファッションのキャンペーン」として展開しましたが、素材の使用量などの信頼に値する根拠が示されていないことから、ノルウェーの消費者庁によって「グリーンウォッシュであり違法なマーケティングの疑いがある」と指摘を受けてしまい、最終的には違法であるという判断を受けてしまいました。

ノルウェーのマーケティングの現行法では、製品の品質にかかわる主張は消費者がその根拠となるデータなどを簡単に入手でき、なおかつ消費者が理解できるものでならないと定められており、根拠を示すことなく「環境に良い」「環境にやさしい」と表現し販売促進につなげる行為は違法にあたると定められています。

実際、コンシャスコレクションはどの製品のどの生地にどれくらい(何%)リサイクル素材を使っているのか明確に示しておらず、さらにはリサイクルポリエステルはその製造過程で約2万リットルと多量の水を使用することから、環境に良いと言えるのか?サステナブルだと言えるのかという疑問の声が上がっていました。

スターバックス(スタバ)

スターバックスでは2018年に持続可能な取り組みの一環として、年間10億本のプラスチック製ストローを削減するために「ストローのいらない蓋」をリリースしましたが、この蓋には兼ねてから使われていたストローと蓋の組み合わせよりも多いプラスチックが含まれていることが判明しグリーンウォッシュであると指摘された事例があります。

スターバックスはこれに対し、リサイクル可能なポリプロピレンで作られており、インフラで回収できると回答していましたが、当時の記録では世界のプラスチックの9%ほどしかリサイクルされていない実態があり、批判を受けてしまいました。

なお、ストローのいらない蓋は2020年に日本のスターバックスジャパンでも同社が掲げる「リソースポジティブ(2030年までにCO2の排出量と廃棄物、水の使用量を50%削減する)」の一環として従来のアイスドリンクを注文した際のプラスチックカップから紙製のカップと共にリリースされており、これにより年間を通じて約6100万杯分のプラスチックカップ削減効果が見込めると発表しています。

参考:FSC®認証紙カップとストロー不要の新リッド採用で、プラスチック削減に大きく貢献 スターバックス国内103店舗で2020年11月より、一部アイスビバレッジに導入開始 翌年2月に全店舗に拡大を予定 | スターバックス コーヒー ジャパン

ライアンエアー

出典:RYANAIR

アイルランドの格安航空会社ライアンエアーは近年航空機による移動の環境負荷が大きく知られることとなり、環境にやさしい取り組みをアピールしたいとの狙いがあり、それにより客層を伸ばそうとしました。

そこで、2019年の広告の中で「ヨーロッパで最も環境負荷の低い大手航空会社」と主張しました。

ところが、これに対しイギリスにある広告基準局ASA(Advertising Standards Authority)は広告で使われている主張は何を根拠に最も環境負荷が低いと言っているのかが曖昧で正当な裏付けとなるデータが存在せず広告を見た人の誤解を招く恐れがあると指摘しています。

例えば裏付けとなるデータは2011年までのものであり広告が出稿された2019年に即していなかった点をはじめ、広告の中でヨーロッパで最もとされているものの、この主張の根拠となる情報が存在せず、報告書から抜けていた点などが指摘されることになりました。

2020年2月には英国の監視委員会により広告がグリーンウォッシュであるという理由から禁止処分を受けています。

ルフトハンザドイツ航空

ドイツのルフトハンザ航空でも同社が展開する2023年の広告の中で「Connecting the world. Protecting its future(世界をつなぎ、その未来を守る)」が「航空機の環境インパクトについて消費者を誤解させる」として英広告基準機構(ASA)から指摘を受けています。

これに対してルフトハンザ側は「広告の表現は、2050年ネットゼロ、30年半減を掲げる同社の温暖化対策目標を含めての希望(aspiration)を示したもの。(読み手の)自由な解釈に委ねており、消費者は広告を見ても、『航空機が地球環境を害さない』とか『(地球を守ることが)同社による完全な約束(absolute promise)』とは考えないと思う」と反論しました。

けれども、ASAは「広告を見た消費者は、ルフトハンザは自らの環境インパクトを削減するため、すでに重要な削減対策を実施していると考えそうだ」との見方を変えず広告を取り下げることとなりました。

参考:Lufthansa’s ‘green’ adverts banned in UK for misleading consumers | Airline industry | The Guardian

アディダス

2021年、アディダスはフランスの広告監視機関ARPPから同社が販売するスニーカー「スタンスミス」がグリーンウォッシュであると指摘されました。

問題となったのは2点で具体的な内容が示されないまま「50%リサイクル」という表現を用いたことや、プラスチック廃棄物をなくすと誤認識させてしまう可能性がある「End Plastic Waste」のロゴが使われたことです。

リサイクルされている部位についてのアスタリスク(✳︎)がつけてあったものの、分かりにくいということでグリーンウォッシュであると判断されてしまいました。

参考:ADIDAS – Affichage – Plainte fondée – JDP

トヨタ

2008年トヨタでは、ベルギーで欧州の新聞「European Voice」にプリウスの広告を掲載したところ、グリーンウォッシュであると指摘された例があります。

広告内の「Zero emissions low (CO2排出量ゼロの低さ)」という表現(キャッチコピー)が、明確でいて具体的な数値の明示がなく不正確のため消費者を惑わす可能性があると批判されてしまいました。

当時はプリウスは世界でトップレベルの燃費の良さであったにも関わらず、データが載っていないことから根拠が不十分、また「Zero emissions low」はCO2排出量がないと誤読されかねないとして、グリーンウォッシュであるとの指摘を受けて広告を取り下げることになりました。

参考:Toyota zero emissions ad ruled misleading – Friends of the Earth Europe

グリーンウォッシュ(Greenwashing)を取り締まる日本での動き(国内での事例)

日本にはグリーンウォッシュに対する明確な基準がないものの、取り締まる動きは日本でも同様に起きています。

例えば、2022年12月に「生分解性」を謳いプラスチック製のカトラリー、ストロー、カップ等、レジ袋やゴミ袋などを販売していた業者に対して、その表示が「優良誤認」にあたるとして10社に対して景品表示法第7条1項により措置命令を行っています。

消費者庁によると、10社はそれぞれストローやカップ、ゴミ袋などを製造しており、商品パッケージや自社のウェブサイトなどで「使い捨てられても約3ヶ月で、土や海など自然環境中で微生物によって自然に還る」「水中で二酸化炭素(CO2)と水に分解される」「地表落下後に分解され、屋外での使用に適している」などと表示しており、これに対し、根拠を示した資料の提出を求めていました。

提出された資料から、十分かつ合理的な根拠がないまま自然に分解されるかのように表示されていることが発覚し、それが優良誤認表示にあたるとして措置命令を出しています。

その後、2023年10月には景品表示法違反(優良誤認表示)にあたるとして、そのうち1社に対して行政処分を下し、課徴金納付命令が出た事例があります。

参考:偽の「エコ」に世界の目厳しく 消費者庁も初の摘発 – 日本経済新聞

参考:生分解性プラで優良誤認 景表法違反で10社に命令 – 産経ニュース

参考:グリーンウォッシュ(見せかけの環境対応)の代償と法的リスクの予防

まとめ

消費者の環境に対する意識が高まる中で、環境にやさしい商品であることを謳ったグリーンウォッシュを行う企業も増えてきています。

本文でも触れましたが、実際には悪意を持っているわけでないのにも関わらず、国によっては「グリーンウォッシュである」と判断されることもあり、国際的なガイドラインや評価基準、それに「環境になぜいいのか」具体的かつ客観的な根拠を示すフレームワークに則って対策を行う必要があります。

消費者側の意識も大切で、企業が発信する情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、必ず根拠となるものを確認し、購入することが必要で、そうした対策を消費者がしっかりと行うことにより、グリーンウォッシュを行う企業に資金が流れることがなくなり、本当に環境に良い製品が選ばれる社会になっていくと思います。

これには、企業も消費者も一丸となり、環境問題に取り組んでいくことが必要で、「エコ」「サステナブル」と言う言葉に惑わされるのではなく、しっかりとした根拠が示された商品を選ぶことを意識することが大切です。

そして、それがSDGsの目標達成にもつながり、やがて地球環境に良い取り組みにかわっていくのではないでしょうか。

本当の意味で脱炭素に取り組み地球環境をより良い方向へ変えていくことができるのは、私たちひとりひとりの意識にも関わっているのです。

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GXメディア編集部
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