火力発電とは?仕組みや種類、メリット・デメリットと未来を解説

火力発電は、石炭・石油・天然ガスなどの燃料を燃やして発電する方法で、資源エネルギー庁の2024年10月の電力調査統計では日本の電力供給の75.9%を担っている重要な発電方法です。発電の仕組みはシンプルで、大量の電力を安定供給できる一方で、二酸化炭素の排出や価格変動の影響を受けやすいなどの課題があります。
本記事では、火力発電の基本的な仕組みや種類、それぞれのメリット・デメリットを解説するとともに、脱炭素社会を目指す中での最新技術や今後の展望についても詳しく紹介します。
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火力発電とは?
火力発電は、化石燃料(石炭・石油・天然ガスなど)を燃焼させ、その熱エネルギーを利用して発電する方式です。燃料を燃やして高温の蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回し、発電機を駆動することで電力を生み出すことが可能です。
この仕組みはシンプルで高効率なため、世界中で広く採用されています。特に、日本のようなエネルギー資源に乏しい国では、安定した電力供給を支える重要な役割を果たしています。
出典:電気をつくる方法 その 火力発電・水力発電(資源エネルギー庁)
火力発電の重要性と役割
火力発電は、日本をはじめとする多くの国にとって基幹的な電源です。その最大の強みは、安定した電力供給が可能な点にあります。
再生可能エネルギーのように天候の影響を受けることなく、必要な時に発電を増減できるため、電力需要の変動にも柔軟に対応することが可能です。
しかし、二酸化炭素(CO₂)の排出が避けられないため、環境負荷を低減するための対策が求められています。
日本および世界における火力発電の現状
日本では、東日本大震災後に原子力発電所の稼働が大幅に減少したことにより、火力発電の比率が一時的に大幅に増加しました。資源エネルギー庁の電力調査統計では、現在でも2024年10月分の日本の発電電力量のうち、火力発電は全体の75.9%を占めています。
しかしその一方で、世界的には再生可能エネルギーの導入が進む中、火力発電の在り方も変化してきました。特に、欧州では脱炭素化に向けて石炭火力の削減が進められ、天然ガス火力や水素を活用した新技術への移行が進んでいます。
今後は、日本でも環境負荷を抑えた「クリーン火力発電」への移行が求められるでしょう。
火力発電の仕組みと種類
火力発電は、燃料を燃焼させて得られる熱エネルギーを利用し、蒸気やガスの力でタービンを回転させて発電する方式です。その燃料の種類や発電方式によって、さまざまな種類の火力発電が存在します。
ここでは、火力発電の基本的な仕組みや、燃料の種類、さらに代表的な発電方式について詳しく解説します。
火力発電の基本的な仕組み
火力発電の基本的な流れは、以下のようになっています。
- 燃料の燃焼:石炭、石油、天然ガスなどの燃料を燃焼させ、高温・高圧の蒸気を作り出します。
- タービンの回転:発生した蒸気の圧力を利用してタービンを回転させます。
- 発電機の駆動:タービンに接続された発電機が回転することで電気が発生します。
- 排熱の利用:発電に使用した蒸気は冷却され、再利用または廃棄されます。コンバインドサイクル発電などではこの排熱を有効活用することで発電効率を向上させます。
燃料と火力の種類
火力発電で使用される燃料にはさまざまな種類があります。代表的なものとしては、石炭、石油、LNG(液化天然ガス)、バイオマスなどです。燃料の選択は、コスト、供給の安定性、環境負荷などの要因によって決まります。
特に近年は、CO₂排出量の少ない燃料への転換が求められており、よりクリーンなエネルギーへの移行が進んでいます。
石炭火力
石炭火力発電は、安価で安定した供給が可能なことから、長年にわたり世界の主要な発電方法として利用されてきました。しかし、燃焼時に大量のCO₂や大気汚染物質を排出するため、環境負荷が大きいという課題があります。
近年では、超臨界圧(SC)や超々臨界圧(USC)といった高効率な発電技術が導入され、環境負荷を低減する努力が進められています。
石油火力
石油火力発電は、石油を燃焼させて発電を行う方式ですが、燃料コストが比較的高いため、近年では減少傾向にあります。
主に非常用発電や、電力需要が急増した際のバックアップ電源として利用されることが多く、他の燃料に比べてCO₂の排出量が多いことも課題とされています。
LNG(液化天然ガス)火力
LNG(Liquefied Natural Gas)火力発電は、天然ガスを液化して輸送し、燃焼させて発電を行う方式です。石炭や石油と比べるとCO₂の排出量が少なく、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)の排出も少ないため、環境負荷が低いとされています。
さらに、ガスタービンとの組み合わせにより発電効率を向上させるコンバインドサイクル発電にも適用され、現在の火力発電の主力となっています。
バイオマス火力
バイオマス火力発電は、木材チップ、農作物の残渣、家畜糞尿などの有機資源を燃料として使用する発電方式です。燃焼時にCO₂を排出しますが、バイオマスが成長する過程でCO₂を吸収するため、カーボンニュートラルなエネルギー源と見なされています。
再生可能エネルギーの一つとして、持続可能な発電方式としての注目が高まっています。
汽力発電
汽力発電とは、一般的に火力発電の一種であり、高温の気体を利用して発電を行う方式です。特にガスタービンを用いた発電がこれに該当し、気体の膨張エネルギーを直接利用することで高い発電効率を実現しています。
コンバインドサイクル発電
コンバインドサイクル発電(CC)は、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式です。ガスタービンで発電した後、その排熱を利用して蒸気を発生させ、さらに蒸気タービンを回すことで二重にエネルギーを利用することができます。
これにより発電効率が向上し、CO₂排出量も削減されるため、LNG火力と組み合わせて導入が進められています。
ACC(Advanced Combined Cycle)
ACC(Advanced Combined Cycle)は、高効率なガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式で、従来のコンバインドサイクル発電(CC)をさらに進化させたものです。
最新技術を用いたガスタービンで燃焼し、その排熱を活用して蒸気タービンを回すことで、エネルギーを最大限に利用し、発電効率を向上させます。燃料消費を抑えつつCO₂排出を削減できることから、環境負荷の低い次世代の火力発電方式として注目されています。
MACC(More Advanced Combined Cycle)
MACC(More Advanced Combined Cycle)はACCを元にさらに改良した発電方法であり、より高温・高圧での燃焼を可能にすることで、発電効率を向上させています。さらに、排熱を利用して蒸気タービンを駆動する従来のコンバインドサイクル方式を最適化することで、燃料消費の削減やCO₂排出量の低減を実現することが可能です。これにより、環境負荷を抑えつつ、より持続可能なエネルギー供給ができるようになります。
内燃力発電
内燃力発電は、ディーゼルエンジンやガスエンジンを利用した発電方式です。大規模な発電には向いていませんが、非常用発電機や分散型発電システムとして広く活用されています。
特に、災害時や緊急時のバックアップ電源として重要な役割を果たしており、小規模施設や離島などでも利用されています。
火力発電を利用するメリット・デメリット
火力発電は、世界中で広く利用されている主要な発電方式の一つです。石炭、石油、天然ガスといった化石燃料を燃焼させて電力を生み出す仕組みであり、発電量の調整が容易であることから、多くの国でエネルギー供給の要となっています。
しかし、その一方で環境負荷や資源の有限性などが課題です。ここでは、火力発電のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
メリット
主なメリットは以下の通りです。
安定した電力供給
火力発電は、電力需要に応じて出力を調整しやすいという特長があります。天候の影響を受ける太陽光発電や風力発電とは異なり、必要なときに確実に発電できるため、安定した電力供給が可能です。
特に、ベースロード電源としての役割を担うことができ、急な需要増加にも対応できる点が大きな強みです。
設備コストの比較的低さ
火力発電所の建設には一定のコストがかかりますが、原子力発電に比べると設備投資が少なくて済みます。また、技術的にも確立されているため、新たに発電所を建設する際のリスクが比較的低いのもメリットです。
そのため、発展途上国でも導入しやすく、多くの国で採用されています。
既存のインフラ活用のしやすさ
火力発電は長年にわたり利用されてきた発電方式であるため、既存の送電網や関連インフラをそのまま活用しやすいのも利点です。
再生可能エネルギーのように新たな送電技術や蓄電技術を大規模に整備する必要がなく、比較的スムーズに導入・運用が可能です。
デメリット
また次のようなデメリットもあります。
環境への影響(温室効果ガスの排出)
火力発電は、化石燃料を燃焼させることでエネルギーを得るため、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスを大量に排出します。これが地球温暖化の原因の一つとされており、国際的な環境規制の対象となっています。
近年では、CO2の排出を抑える技術が進化していますが、依然として環境負荷の大きい発電方式とされています。
資源の枯渇リスク
火力発電の燃料となる石炭、石油、天然ガスは有限の資源であり、将来的に枯渇するリスクがあります。特に、エネルギー消費の増加が続く中で、これらの資源の確保がますます困難になる可能性があります。
加えて、一部の燃料は特定の地域でしか産出されないため、エネルギー供給の安定性にも影響を与える可能性があります。
価格変動の影響を受けやすい
化石燃料の価格は、国際市場の動向や地政学的な要因によって大きく変動します。そのため、火力発電に依存する国では、燃料費の変動が電力料金に直接影響を与えることがあります。
特に、エネルギー価格の高騰時には経済全体への影響も大きく、エネルギー政策の柔軟性が求められます。
火力発電のコスト構造と他電源との比較
火力発電のコスト構造は、主に燃料費、設備費、運用・保守費の三つです。特に燃料費は全体のコストの大部分を占め、石炭、天然ガス、石油といった燃料価格の変動に大きく左右される点が特徴です。
設備費は高額な初期投資がかかりますが、技術の進歩によって効率化が進み、近年ではコスト削減が図られています。
一方で、再生可能エネルギーや原子力と比較すると、火力発電は即応性に優れ、安定した電力供給が可能であるものの、長期的な燃料コストの変動リスクが大きいです。
再生可能エネルギーは燃料費が不要な点では優位ですが、天候の影響を受けやすく、発電コストの安定性には課題があります。火力発電は現時点で主力電源の一つだが、今後のエネルギー政策の変化や技術革新によって、その経済性と役割が変化する可能性があります。
火力発電と環境問題
火力発電と環境問題は、現代社会において非常に重要なテーマとなっています。電力を安定的に供給するために広く利用されている火力発電は、エネルギー供給の基盤となる一方で、環境に与える影響が深刻な問題として浮き彫りになっています。
CO₂排出と地球温暖化への影響
まず、火力発電所が抱える最大の環境問題の一つは、CO₂の排出です。石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を燃焼させることにより、CO₂が大気中に放出され、これが温室効果を引き起こして地球温暖化を加速させる要因となります。
温暖化による気候変動の影響は、極端な気象現象の増加、海面上昇、農作物への影響など、多岐にわたります。
このため、火力発電所のCO₂排出を削減することは、地球温暖化対策において重要な課題の一つとされています。
大気汚染(NOx, SOx, PM2.5など)
次に、大気汚染についても火力発電の重要な影響の一つです。発電所の煙突からは、二酸化窒素(NOx)、二酸化硫黄(SOx)、さらには微小粒子状物質(PM2.5)などが放出されます。
これらは呼吸器系の疾患や心臓疾患を引き起こすなど、健康問題を引き起こす原因です。NOxとSOxは大気中で反応して酸性雨を引き起こし、土壌や水質の悪化を招きます。
また、PM2.5はその微細さから肺深部にまで到達し、深刻な健康被害を及ぼすことが多くの研究で明らかにされています。このような大気汚染の問題は、都市部において特に深刻であり、発電所の排出規制を強化する必要性が高まっています。
低炭素社会に向けた取り組み
これらの環境問題を解決するために、低炭素社会に向けた取り組みが進められています。低炭素社会とは、温室効果ガスの排出を抑えた社会のことです。これを実現するためには火力発電を中心としたエネルギーシステムの抜本的な改革が求められます。
そのために、再生可能エネルギーの導入拡大や、省エネルギー技術の普及が進められていますが、同時に、火力発電の効率化や排出削減技術の革新を行うことも重要です。
クリーンコール技術(CCS, IGCCなど)
低炭素社会を実現する技術の一つがクリーンコール技術です。
これには、二酸化炭素を発電所から分離して貯留する技術(CCS、Carbon Capture and Storage)や、石炭をガス化してより効率的に発電する技術(IGCC、Integrated Gasification Combined Cycle)が含まれます。
CCS技術は、CO₂を発電所から排出される前に捕えて地下に貯蔵することを目指しており、温暖化ガスの削減に寄与することが期待されています。
IGCCは、石炭をガス化して発電することで、燃焼効率を高めるとともに、CO₂の排出量を削減できることが可能です。
これらの技術が普及すれば、火力発電所の環境負荷を大幅に低減できる可能性があります。
高効率化技術(超々臨界圧発電)
火力発電の高効率化技術も重要です。例えば、超々臨界圧発電(超超臨界圧発電)技術は、非常に高温高圧で運転することによって、発電効率を大幅に向上させるものです。
これにより、同じ量の燃料を使ってより多くの電力を得ることができ、結果としてCO₂の排出量を削減することができます。この技術は、すでに一部の発電所で導入が進んでおり、今後の普及が期待されています。
燃料転換の動き(LNGやバイオマスの利用拡大)
燃料転換の動きも重要です。従来の石炭や石油に代わるクリーンな燃料として、天然ガスやバイオマスの利用が拡大しています。特に、天然ガスはCO₂の排出量が石炭よりも少なく、クリーンなエネルギー源として注目されています。
バイオマスは、植物や廃棄物を燃料として利用するもので、カーボンニュートラルな特性を持つのが特徴です。
これらの燃料を利用することによって、火力発電所の環境負荷を減らしつつ、安定した電力供給を維持することが可能となります。
バイオマス発電についてはぜひこちらの記事も参考もご覧ください。
>>>バイオマス発電を徹底解説!仕組みと種類、世界の最新動向や課題まで
世界と日本の火力発電の現状と今後の展望
世界各国における火力発電の動向は、その国のエネルギー政策や経済状況に大きく左右されます。特にアメリカ、中国、ヨーロッパでは、火力発電に関する政策が急速に変化しています。
世界の火力発電の動向(主要国の政策とトレンド)
世界各国の火力発電政策の動向は以下の通りです。
アメリカ、中国、ヨーロッパなどの火力発電の現状
2023年のデータではアメリカの火力発電の割合は約74%です。アメリカでは、前のバイデン政権が発足した後、再生可能エネルギーへの転換が加速しました。その間、風力や太陽光の普及に力を入れることで、火力発電の比率は減少してきました。
今期のトランプ政権では民主党政権下で進められてきた脱炭素化を中心とする政策を改め、国産化石燃料の増産を重視し、さらにはその輸出拡大を図るとされています。これにより、火力発電の比率が高まると予想されます。
中国における火力発電の割合は2022年時点で約66.5%であり、今日まで石炭を主力とする火力発電が重要な位置を占めてきました。しかし、再生可能エネルギーの導入にも力を入れており、特に風力や太陽光発電の導入が進められています。
中国は、2030年までに二酸化炭素排出量のピークを迎え、2060年までにカーボンニュートラルを目指す目標を掲げています。今後は火力発電の割合を減らし、クリーンエネルギーへの転換が求められるでしょう。
出典:
U.S. energy facts explained(U.S. Energy Information Administration)
ヨーロッパでは、EUが2030年までに温室効果ガスの排出を40%削減する目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入を積極的に進めています。特に、風力発電や太陽光発電が急成長を遂げており、火力発電は縮小傾向です。
主要国で見ると2023年のドイツにおける火力発電の割合が約47%、フランスが約7.4%、イタリアが2020年時点で約57%でした。
ただし、各国のエネルギー安全保障や経済的な事情により、火力発電が完全に排除されるわけではなく、短期的には一部の国で依存が続くことが予想されています。
出典:
電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合、初の50%超え(JETRO)
長期的なエネルギー安全保障に向けEDFを国有化し原発建設を推進(フランス)(JETRO)
令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)第3節 二次エネルギーの動向(資源エネルギー庁)
再生可能エネルギーとのバランス
火力発電と再生可能エネルギーのバランスは、今後のエネルギー政策において重要な課題となります。再生可能エネルギーは、環境への影響が少なく、持続可能な電力供給を提供する可能性が高い一方で、発電量の変動や供給の安定性を確保することが課題です。
太陽光や風力発電は、天候や時間帯による影響を受けやすく、電力の安定供給を担保するためには、バックアップとして火力発電の役割が依然として重要です。
再生可能エネルギーについてはぜひこちらの記事もご覧ください。
>>>再生可能エネルギーとは?種類や特徴、メリット・デメリットを解説
日本における火力発電の現状
日本においては、地理的条件や技術的な課題から再生可能エネルギーの導入が進んでいますが、完全に火力発電を排除することは難しいでしょう。そのため、火力発電の効率を向上させる技術や、炭素回収技術の導入が重要です。
また再生可能エネルギーとの調和を図ることも求められます。今後は、再生可能エネルギーの割合を増加させる一方で、火力発電の役割を持続可能な形で維持するための技術革新が必要となるでしょう。
エネルギーミックスと火力発電の比率
エネルギーミックスは、各国がエネルギー源を多様化し、安定的かつ持続可能な電力供給を実現するための重要な指針です。火力発電はその中で依然として主要な位置を占めており、特に日本や多くの発展途上国では、安定的な供給を支えるために重要な役割を果たしています。
脱炭素社会に向けた方針
脱炭素社会の実現に向け、各国は温暖化ガス排出削減の目標を掲げ、2030年や2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。このためには、火力発電の効率向上やCCS(炭素回収・貯蔵技術)の導入が不可欠です。
日本をはじめ、先進国は再生可能エネルギーの普及に力を入れつつ、同時に化石燃料を用いた発電の排出削減を進めています。脱炭素社会を支えるためには、技術革新と政策の連携が必要です。
脱炭素社会についてはこちらの記事もぜひご覧ください。
>>>脱炭素社会とは?概要や問題点・デメリット、具体的な取り組み事例を解説
出典:2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方(資源エネルギー庁)
再生可能エネルギーとの共存の可能性
再生可能エネルギーは、火力発電に代わるクリーンな選択肢として注目されていますが、発電の安定性が課題となることもあります。太陽光や風力のような変動型エネルギーは、常に一定の供給を保証することが難しいため、火力発電との共存が必要です。
将来的には、蓄電技術やスマートグリッドを活用し、再生可能エネルギーと火力発電の協調が進むことで、安定した電力供給が可能となるでしょう。
火力発電の未来
火力発電は、今後も世界のエネルギー供給の中で重要な役割を果たし続けると予測されていますが、気候変動対策と脱炭素社会の実現に向けた挑戦が待ち受けています。
特に、温室効果ガスの排出削減に向けた技術革新が進む中で、火力発電の未来は大きく変わりつつあります。カーボンニュートラルを目指す世界的な動きの中で、火力発電はその効率を高め、環境への負荷を減らすために大きな変革を遂げることが求められています。
カーボンニュートラル時代における火力発電の役割
カーボンニュートラル社会に向けた道筋の中で、火力発電は一度はその役割を縮小する可能性があると考えられていました。
しかし、技術の進展により、火力発電は依然として重要な電力供給源となり続けることが期待されています。
二酸化炭素(CO₂)排出量を削減するための技術が進む中で、例えば炭素回収・貯蔵技術(CCS)や、よりクリーンな燃料への転換が進めば、火力発電は温室効果ガスを最小限に抑えながら、安定した電力供給を維持できるようになります。
水素・アンモニア発電の可能性
水素やアンモニアは、火力発電の未来を支える新たな燃料として注目を集めています。水素発電は、燃焼時に二酸化炭素を排出せず、環境に優しいエネルギー源となる可能性を秘めています。
アンモニアも同様に、クリーンな燃料としての可能性があり、特にアンモニアを基にした発電技術は、現行の火力発電所を改良して利用できるのが利点です。
これらの燃料を火力発電に組み込むことで、従来の化石燃料依存を減らし、持続可能なエネルギー供給が実現できるとされています。
出典:水素・アンモニアこれからのエネルギー資源。~「2050年カーボンニュートラル」を達成するために~(エネルギー・金属鉱物資源機構)
AI・IoTを活用した火力発電の最適化
火力発電所の効率を最大化するために、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した最適化技術が重要になっています。
これらの技術は、発電設備のリアルタイム監視や予知保全を可能にし、故障や稼働停止を未然に防ぐことができます。
また、燃料の消費量や排出量の管理を精密に行うことで、コスト削減や環境負荷の低減の実現が可能です。AIとIoTの導入により、火力発電の運用がより効率的で、環境に配慮したものに進化しています。
火力発電と再生可能エネルギーの融合(ハイブリッド発電システム)
再生可能エネルギーの普及が進む中で、火力発電との融合が重要なテーマとなっています。特に、太陽光や風力発電は供給の安定性に課題があるため、火力発電と組み合わせたハイブリッド発電システムが有望です。
これを利用すれば、再生可能エネルギーの変動を補完し、需要に応じた安定供給が可能です。例えば、風力発電の多い地域で夜間に需要が高い場合、火力発電がそのギャップを埋めることができます。
今後、火力発電と再生可能エネルギーを組み合わせたシステムが、エネルギーの多様化と安定供給に貢献することが期待されています。
これらの進展により、火力発電は脱炭素化と再生可能エネルギーとの調和を実現するための重要な役割を果たし続け、未来のエネルギー供給を支える基盤となるでしょう。
出典:環境調和型ハイブリッド発電システム(一般財団法人 新エネルギー財団)
まとめ
火力発電は安定的に大量の電力を供給できるため、日本のエネルギー供給において重要な発電方法です。しかし、二酸化炭素の排出や燃料費の変動といったデメリットも存在します。
今日まで、これらの問題を解決するために、炭素回収技術や再生可能エネルギーとのハイブリッドシステムの導入が進められてきました。
今後の火力発電は、脱炭素化技術を取り入れながら、より環境に優しい形で進化していくことが求められています。
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