風力発電とは?仕組みや特徴、メリット・デメリットまでわかりやすく解説

風力発電は風の力を電力変換して発電する仕組みで、再生可能エネルギーの一つです。近年は海洋に設置する洋上風力発電が注目を集めています。
今回は風力発電について、どのような仕組みで発電するのか。種類や設置場所はどうなっているのか。メリットやデメリットまで含めてわかりやすく解説します。
風力発電について基礎的な知識を深めることが可能ですので、ぜひ参考にしてください。
風力発電とは
風力発電の仕組みや種類、発電量や設置場所を解説していきます。
風力発電の仕組み
ここでは代表的なプロペラ型風力発電機の仕組みについて解説します。風力発電機は「ブレード」と「ナセル」、「塔体」によって構成されています。
- ブレード
上部にある3枚のブレードはハブによってロータ軸に連結している。 - ナセル
増速機やブレーキ装置、発電機を格納している。 - 塔体
円柱状の支柱の役割。
風力発電は風の運動エネルギーを風車によって回転エネルギーに変えます。そしてその回転力を直接、または増速機を経て、発電機に伝えることで発電する仕組みです。風が持つ運動エネルギーは風を受ける面積に比例し、風速の 3 乗に比例して増大する性質を持っています。
したがって風速が 2 倍になれば、風力エネルギーは 8 倍になります。そのためより風の強い場所に設置することが求められます。
左:陸上風力 右:洋上風力
風力発電の種類
風力発電の種類は、大きく分けると次の2つになります。
形式 | 特徴 |
---|---|
水平軸風車(回転軸が地面に平行に設置) | 3 枚翼プロペラ式が主流であり、アップウィンド方式とダウンウィンド方式がある |
垂直軸風車(回転軸が地面に垂直に設置) | 回転軸が風向きに対して垂直なため風向きに対する依存性がない |
発電量
風車の発電量は、設置場所や風況、機種によって変化しますが、例えば日本で進められている「秋田洋上風力プロジェクト」で使われている風車は、1基あたりの最大出力が4.2MWです。秋田港と能代港の港湾区域に33基の洋上風力発電が設置されており、おおよそ140MWの電気を生産しています。これは一般家庭約13万世帯分の消費電力量に値する発電量になります。
風力発電の設置場所
風力発電には陸上風力発電と洋上風力発電があります。設置場所として共通しているのは、年間を通して強風が吹く風況の良い場所であることが挙げられます。
それぞれに適した具体的な設置場所は次のようになります。
陸上風力発電
日本では丘陵や海岸沿いに風の強い場所が存在するため、それらの場所に陸上風力発電が設置されます。一般に風速4〜25m/sの場所が適していると言われています。そのほかには風車パーツの輸送のしやすさ、住民の住まいの近くではないなども大きなポイントです。
洋上風力発電
海洋に設置する洋上風力発電機には2タイプあります。発電機を海底に固定する「着床式」と、発電機を洋上に浮かべる「浮体式」です。着床式は水深の浅い海域に大型の発電機を設置可能です。ただし浅い海域に限定されます。浮体式は場所を選ばすに多数設置が可能ですが、発電機の大きさや発電効率が制限されます。
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風力発電のメリット
風力発電には、次のようなさまざまなメリットがあります。
- 他の再生可能エネルギーと比較して発電効率が高い
- クリーンエネルギーで環境に貢献
- 夜間でも発電が可能
- 費用対効果が高い
- 自国の自然資源を活用可能
それぞれ具体的に解説していきます。
1. 他の再生可能エネルギーと比較して発電効率が高い
風力発電は再生可能エネルギー(以下再エネ)の一つですが、ほかには太陽光、地熱、バイオマス、中小水力などがあります。風力発電は中小水力発電に次いで、電気の変換効率が高いことが特徴です。以下に比較をまとめてみました。
再生可能エネルギー種類 | 変換効率 |
---|---|
風力 | 約30~40% |
太陽光 | 約20% |
地熱 | 約8% |
バイオマス(biomass) | 約20% |
中小水力 | 約60~70% |
再生可能エネルギーに関してはこちらの記事もぜひご覧ください。
>>>「再生可能エネルギーとは?種類や特徴、メリット・デメリットを解説」
2.クリーンエネルギーで環境に貢献
世界はパリ協定以後、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」という、温室効果ガス削減に向けた取り組みをルール化しました。風力発電は温室効果ガスの排出が少ないクリーンなエネルギーです。そのため地球温暖化対策に有効で環境に貢献できます。
3.夜間でも発電が可能
再エネの代表である太陽光発電は、気候や日照時間によって発電量が変動するというデメリットがあり、夜間の発電はできません。しかし風力発電は一定の風力さえあれば、夜間でも発電ができるため、より多くの電気を生産可能です。
4.費用対効果が高い
風力発電は1kWの発電にかかる費用が比較的安く、費用対効果が高いことも長所です。そのため風力発電で発電した電力は、FIT制度(固定買取価格制度)で売買できるというメリットがあります。
5.自国の自然資源を活用可能
日本は火力発電がメインのため、海外から燃料を輸入しなければなりません。しかし風力発電は自国にあまねく吹きわたる風のエネルギーを使用して発電します。いわゆる電気の自給自足を可能とするため、エネルギーの自給率向上に役立ちます。
風力発電のデメリット
次のような風力発電のデメリットについても、しっかりと把握しておきましょう。
- 発電量が安定しない
- コストがかかる
- 設置場所に複数の条件がいる
- 落雷や強風などの自然災害にさらされる
- 居住地域への騒音問題に配慮する必要がある
1.発電量が安定しない
風力発電は、風の吹くエネルギーを利用するため、安定した風況の場所でなければ発電量も不安定になります。また台風などで風が強すぎても発電できず、風向きにも影響されます。
2.コストがかかる
風力発電は、発電した電力における費用対効果は高いですが、それ以外には資本費や接続費、運転維持費、設備利用率などのコストがかかります。ここ数年の陸上風力発電のコスト動向は以下のようになります。内訳として、電気や設置にかかる工事費に最もコストがかかっています。
年代 | コスト代 |
---|---|
2019年 | 38.1万円/kW |
2020年 | 37.2万円/kW |
2021年 | 40.7万円/kW |
2022年 | 33.4万円/kW |
2023年 | 33.5万円/kW |
3.設置場所に複数の条件がいる
風力発電機の設置場所として、第一に発電に適した風況の良い場所でなくてはなりません。風速の目安として年間平均で6.5m/秒以上である場所に限定されます。また送電網に接続しやすい場所であることや、近隣に住宅がないなどの一定の条件を満たす必要があります。
4.落雷や強風などの自然災害にさらされる
過去に台風などの強風や落雷により、風車が破損したケースがあります。自然資源を活用するためには、このような自然災害のリスクも考える必要があります。
5.居住地域への騒音問題に配慮する必要がある
令和6年に改正された「再エネ特措法」では、大規模な風力発電設備は、安全面、防災面、だけではなく、騒音や環境への配慮が求められ、地域住民への説明会などが義務付けられています。
世界の風力発電の現状と動向
世界の風力発電の現状と動向を、海外主要国の取り組みからみていきます。
世界の風力発電導入状況
世界風力会議(GWEC)によると、2020年末の世界の風力発電の累計導入量は743GW(前年比14%増)でした。日本の累積導入量は4.37GWで世界20位(0.6%)です。近年は洋上風力発電の導入が進んでおり、国別の導入量を見ると次のようになっています。
国 | 導入量 |
---|---|
1.英国 | 10.4GW |
2.中国 | 10GW |
3.ドイツ | 7.7GW |
4.オランダ | 2.6GW |
5.ベルギー | 2.3GW |
6.デンマーク | 1.7GW |
これを見ると全体の7割を欧州が占めていることがわかります。
出典:知っておきたい世界や日本における、風力発電の最新・重要データ(WindJournal)
海外主要国の風力発電への取り組み
海外の主要国における風力発電への取り組みには以下のようなものがあります。
- ヨーロッパ
欧州委員会は2024年、風力発電の整備に向けた「欧州風力発電行動計画」を発表しています。EU(欧州連合)はエネルギーミックスに占める再エネ比率の2030年目標を42.5%に設定しました。そのため風力発電能力を2023年の204GWから500GWに増やす必要があると試算しています。これは年間に換算すると37GW分の新設に相当します。 - アメリカ
バイデン政権時、2030年までに洋上風力発電容量を30GWまで拡大し、浮体式洋上風力発電を2035年までに15GWまで拡大するとの目標を掲げ、具体的なロードマップ戦略を策定しました。しかし気候変動対策に否定的なトランプ政権に変わったため、アメリカの今後の風力発電政策は不透明と言えます。 - 中国
近年中国では風力発電のイノベーション発展が加速し、技術水準は世界トップレベルとなりました。国産化の産業チェーンシステムが構築されたことで、技術競争力が高まり、大型風力発電設備容量の規模が拡大しました。そのため2013年から2023年までの間に、中国の風力発電設備容量は約7600万キロワット余りから4億4000万キロワット以上に増加し、発電コストは約60%低下しています。
出典:欧州委、風力発電の整備加速に向けた行動計画発表(JETRO)
出典:米エネルギー省、2023年版風力発電報告書を公表、インフレ削減法などによる活況を示す(JETRO)
ヨーロッパで風力発電が促進されている理由と背景
前述のように、ヨーロッパではかねてから風力発電の普及が進んでいますが、近年は特に洋上風力発電の普及が促進されています。ヨーロッパで風力発電が促進されている背景には、次のような要因が挙げられます。
- 自然環境に恵まれている
ヨーロッパは風況が良く、広域に渡り遠浅の地形が続くため、洋上風力発電機を多く設置することが可能です。 - 技術的な蓄積がある
ヨーロッパではこれまで陸上風車の技術を改良して、洋上風車の建設を20年ほどかけて進めるなど、風力発電に培ってきた技術の蓄積があります。 - 風力発電のルール整備が確立
ヨーロッパでは、2000年代後半より洋上風力発電に関するルール整備が進められてきました。政府が調査や事業可能な区域の選定、電力系統の確保など、多様な役割を担うため、事業者の負担が軽減されています。
日本の風力発電の取り組み動向
ここでは日本の風力発電への取り組みの現状や動向について解説していきます。
風力発電の普及状況
「一般社団法人日本風力発電協会」によれば、2022年の日本での風力発電の累積導入量は約4.8GW、導入された設備は2,622基でした。
国のさまざまな支援策
国は風力発電のさらなる導入拡大を目指し、2030年度には陸上風力発電で17.9 GW、洋上風力発電で5.7 GWの導入を目指しています。また経済産業省は「グリーンイノベーション基金」を設立し、洋上風力発電への支援を実施します。
日本の洋上風力発電へのポテンシャル
日本は陸上風力発電設備を増設するためには、土地が狭いため思うように進展しないのが現状です。しかし島国で周りを海に囲まれているため、洋上であれば、約43万平方キロの領海と約405万平方キロの排他的経済水域(EEZ)を活用できます。そして多くの洋上風力発電の設置を行えば、膨大な電力を生産可能です。
そのため、政府は「洋上風力産業ビジョン」を策定し、2040年までに国内調達比率を60%とする目標を打ち立てています。洋上風力発電促進区を指定し、洋上風力発電の開発を促進します。2020年秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖(北側・南側)や、千葉県銚子市沖などが促進区域に指定されています。
風力発電の課題と今後の展望
日本での風力発電の導入量は、2012年度から2022年度までの10年間の累計導入量は510万kWであり、それらのほとんどが陸上風力発電でした。しかし陸上風力発電が設置できる場所は限定されており、今後大量の陸上風力発電設置は困難と言えます。
そのため近年は前述のように、島国である日本のポテンシャルを活かした洋上風力発電の開発が促進されています。ただし洋上風力発電の進んでいるヨーロッパは、岸から遠く沖の方まで水が浅い場所が多いのに比べ、日本では海底の地形が深く、基礎が設置しづらいという課題があります。またコスト面や、海上で運用する際の明確なルールもなかったため、海洋事業者、漁業関係者との協力や対話の必要性も浮かんでいます。
脱炭素化や自国のエネルギー自給率をあげるためにも、今後再生可能エネルギーの促進は必須と言えます。洋上風力発電は、日本のエネルギー自給率向上に対して大きなポテンシャルを秘めているため、官民一体となった開発促進、設備投資、人材育成が求められます。
まとめ
再生可能エネルギーの一つである風力発電について仕組みや種類、世界や日本の普及状況まで、さまざまな角度から解説しました。
再エネの導入拡大を目指すためにも、風力発電の開発は重要です。そのためには風力発電に対するメリット・デメリットをしっかりと知っておくことが求められます。
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