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モーダルシフトとは?必要とされる理由からメリットや推進事業まで解説

モーダルシフトとは、トラックなどの自動車による貨物輸送を、環境負荷が低く大量輸送が可能な鉄道や船舶に転換することをいいます。

脱炭素やドライバー不足が叫ばれるなか、モーダルシフトへの転換は大きく注目されており、政府もさまざまな支援策を講じています。

本記事ではモーダルシフトの概要から、メリット、デメリットまでわかりやすく解説します。モーダルシフトに対して、企業がどのように取り組むべきかも網羅していますので、ぜひご一読ください。

モーダルシフトとは

モーダルシフトの概要や、必要とされる背景を解説していきます。

モーダルシフトの語源

モーダルシフト(Modal shift)は、英語の「modal」(様式)と「shift」(転換)を組み合わせた言葉です。この場合の「modal」は輸送モードのことを指しているため、モーダルシフトは「輸送手段の転換」という意味になります。

つまり、これまでトラックや自動車などで運搬していた貨物の輸送を、鉄道や船舶への輸送に転換するのがモーダルシフトです。

出典:モーダルシフトとは「国土交通省」

必要とされる背景

モーダルシフトが必要とされる主な背景について、「脱炭素の推進」と「深刻なドライバー不足」という2点から解説していきます。

脱炭素化の推進

地球温暖化の加速による気候変動は世界的に重要な課題ですが、要因として人間の経済活動による温室効果ガスの発生が挙げられます。温室効果ガスを大量に発生することで、地球の温室効果が高まり、異常気象や気温上昇、災害を発生させることは科学的にも証明されています。

国連環境計画(UNEP)は、2023年度の世界における温室効果ガス排出量は、CO2換算で前年と比べて約1.3%増加し、過去最高水準となる571億トンに達したことを報告しました。地球温暖化を抑止するためにも、温室効果ガスの発生を低減することは喫緊の課題です。

深刻なドライバー不足

日本ロジスティクスシステム協会の試算では、2015年時点で76万人いた貨物運送のドライバーは2030年には3割減となることが報告されています。今後は少子化の影響などでドライバー不足はますます加速し、輸送業は安定した事業運営が困難になるとの見方がされており、具体的な解決策が求められます。

モーダルシフトを推進することは、これらの課題を解決する可能性を高めます。そのため、近年モーダルシフトは大きく注目されているのです。

引用:日本の物流とは ドライバー、2030年に3割減も(日本経済新聞)

モーダルシフトの種類


モーダルシフトはトラックや自動車から、「船舶」と「鉄道」の輸送へと転換します。「船舶」と「鉄道」にはどのような種類があるのかを解説していきます。

船舶

海上輸送でコンテナを利用する場合、大きく分けてFCL(Full Container Load)とLCL(Less than Container Load)の2種類の方法があります。

  • FCL(Full Container Load)
    荷主が1つのコンテナを借り切るタイプ。一度に輸送する貨物量が大きかったり、大量に輸出入されたりする場合に使用される。
  • LCL(Less than Container Load)
    1つのコンテナに複数の荷主の貨物を乗せて輸送するタイプ。小さく少量の貨物を輸出入する際に使用される。

海上輸送に使われる船舶の種類は次の通りです。

  • コンテナ船
    貨物を箱状の入れ物(コンテナ)に詰めて輸送する貨物船。食品や衣類のみならず危険物の輸送も可能で、国際規格によってコンテナの重さやサイズが決められている。コンテナ船は海上輸送の主要手段といわれている。
  • RORO船(ローローせん)
    ロールオン(Roll-On)、ロールオフ(Roll-Off)の頭文字をとりRORO船と呼称される。貨物を積んだトラックをそのまま運ぶことができ、建設機械などの大型車両を効率的に輸送可能。トラックが自ら船に乗降できるため作業効率化を図れるというメリットがある。
  • 長距離輸送フェリー
    長距離輸送フェリーは、主に300㎞以上の長距離を旅客、車両、貨物を乗せて輸送する。陸上輸送のバイパス的な役割を担う旅客フェリーであり、RORO船で対応できない特殊、大型車両の輸送を可能にする。

このほか、石油やLPGやLNGなどのガスを輸送するタンカーもあります。

鉄道

日本における貨物鉄道輸送の特徴は3つあり、次のようになります。

  • 長距離輸送
    日本の貨物鉄道輸送の大部分は日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)が担っており、JR貨物のコンテナの平均輸送距離は900㎞を超えており、中長距離帯における輸送を得意とする。
  • 大量輸送
    大量輸送の列車には、標準タイプのコンテナ(5t積み)130個を積載することが可能で、1編成あたり650tの荷物を一度に輸送することができる。
  • 低環境負荷
    カーボンニュートラル達成のために運輸部門での温室効果ガス削減が重要視されている。貨物鉄道輸送は環境負荷の小さい輸送手段であり、国土交通省では「エコレールマーク」という制度を設けて、一般に周知を図っている。

また貨物列車の体系は以下のようになります。かつては貨物鉄道輸送は主に車扱輸送が占めていましたが、近年はコンテナ輸送が主力です。

  • コンテナ輸送
    貨物をコンテナに入れて、トラックと鉄道とが協同して、発荷主の戸口から、着荷主の戸口まで、コンテナ内の荷物を積み替えることなく一貫して輸送する方法。
  • 車扱輸送
    車扱(しゃあつかい)輸送はタンク車などの貨車を、1両単位で貸し切って輸送する方法。石炭やセメント、農産品や工業品など、多くの製品を輸送していたが、近年はコンテナ輸送への転換が進み、車扱の輸送量は大幅に減少している。

モーダルシフトのメリット


モーダルシフトに転換することでさまざまなメリットを得ることができます。ここではメリットについて詳しく解説していきます。

環境負荷低減

モーダルシフトは環境負荷低減に有効です。例えば、1tの貨物を1㎞運ぶ(=1トンキロ)ときに排出されるCO2の量で比較すると、トラックが207gであるのに対し、船舶は42g(約1/5)、鉄道は19g(約1/11)と、船舶利用なら約80%、鉄道利用なら約91%ものCO2の排出削減が可能です。(2023年度時点)2050年にカーボンニュートラルを達成するためにも、モーダルシフトの推進は不可欠といえます。

大量輸送が可能

鉄道の場合は、貨物列車26両分は、10tトラック65台分に相当します。輸送効率が高いので、長距離になるほど輸送コストを低減することが可能です。モーダルシフトにおける「大量輸送」は、大量の貨物を少ない人数で輸送可能なため、人員コストも低減します。結果的に輸送に対する効率化が向上するというメリットが生まれます。

ドライバー不足を解消

モーダルシフトの背景でも解説した通り、輸送業界におけるドライバー不足は深刻な問題です。特に2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)が適用され、労働時間に厳しい制限が設けられました。この基準により長距離輸送におけるドライバー不足はさらに深刻化するといわれています。しかし持続可能な社会構築には、人間らしい働き方を推奨することが重要です。モーダルシフトで、長距離の輸送経路をフェリーなどに置き換えることは、人員不足の解消につながり、働き方改革を推進します。

モーダルシフトの進まない理由

モーダルシフトはメリットが多く環境への貢献も高い輸送方法ですが、なかなか推進されないのが現状です。ここではモーダルシフトが進まない理由について解説していきます。

輸送時間が長い

鉄道や船舶は決められたダイヤ・スケジュールに従って運行されるため、運行スケジュールによる制約が発生し、当然ながらトラックで陸上輸送するよりも日数や時間がかかります。またトラック輸送のように納入元から納入先へ直接配達するわけではないため、リードタイムも長くなってしまいます。

短距離だとコストがかかる

モーダルシフトの大きなメリットは、大量の貨物を長距離で輸送できることにあります。そのため、短距離・小ロットの輸送では、積み替えのコストが輸送コストを上回り、トラック輸送よりもコストが割高になる可能性があります。

ルートや対象が限定される

鉄道や船舶は輸送されるルートが決まっている場合がほとんどです。鉄道でいえば、線路が一路線しかない場合は、別ルートへの変更は困難です。船舶の場合は、トラックのまま乗船できるフェリーかRORO船ですが、それらが運航している港や航路は限定されます。

モーダルシフト推進のための政策や支援策

モーダルシフトを推し進めることは、世界の潮流となっている脱炭素を促進するためにも重要です。そのため国は次のような政策や支援策を掲げています。

物流総合効率化法

物流総合効率化法」とは、流通業務の総合化(輸送、荷役、保管、荷さばき及び流通加工を一体的に実施)、ならびに「輸送網の集約」、「モーダルシフト」、「輸配送の共同化」などの輸送の合理化により、流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や、支援措置を定めた法律です。

物流総合効率化法の認定を受けると、以下のようなメリットが受けられます。

  • 営業倉庫に対する法人税や固定資産税・都市計画税の減免制度
  • 市街化調整区域に物流施設を建設する場合の開発許可に関する配慮
  • モーダルシフト等の取り組みに対する計画策定経費や運行経費等の補助

モーダルシフト等推進事業

モーダルシフト等推進事業」の目的は労働力不足への対応、カーボンニュートラルを推進するための温室効果ガスの排出量削減、そして物流効率化法の枠組みの下、荷主・物流事業者を中心とする多様な関係者と連携したモーダルシフト等を推進することです。

対象となる事業は次の通りです。

  • 物流効率化法に基づく総合効率化計画策定のための調査事業:総合効率化計画策定事業
  • 物流効率化法の総合効率化計画に基づき実施する事業:モーダルシフト推進事業、幹線輸送集約化推進事業、ラストワンマイル配送効率化事業、中継輸送推進事業

モーダルシフト加速化事業費補助金

モーダルシフト加速化事業費補助金」は荷主企業および貨物運送事業者などが、モーダルシフトを実施・導入する場合において、要する経費の一部を補助金として交付するものです。それにより、物流分野の労働力不足に対応した物流効率化の取り組みを推進することが目的です。

モーダルシフト推進のため企業がするべきことは

モーダルシフトを推進するために、企業は何を為すべきなのでしょうか。主なポイントは次の2点になります。

現状の把握

まずは自社が輸送に対してどのくらいの人員や時間、そしてエネルギーコストをかけているのかを把握することが重要です。また環境負荷低減への観点から、輸送に対してかかる温室効果ガス排出量を可視化することも必要となるでしょう。モーダルシフトに取り組む為にはこれらの現状をしっかりと把握し、社内での情報や意識の共有も大切です。

輸送条件の再検討

進まない理由でも述べた通り、モーダルシフトの大きな課題の一つに輸送時間の長さがあります。輸送する距離にもよりますが、船舶輸送の場合なら、通常プラス1日程度の余裕を見なくてはいけません。しかし現時点では、消費財の物流は、受注翌日の納品が一般的です。しかし、持続可能な社会構築に向け消費者の意識も変化しており、必ずしも迅速な納品を必要としないケースもみられます。翌々日納品への見直しを行うなど、自社の輸送条件を積極的に再検討することが求められます。

モーダルシフト取り組み事例

ここではモーダルシフトに取り組んでいる企業事例をご紹介していきます。

花王

花王は年間24億個もの家庭用製品を運んでいるため、より環境に負荷をかけず、効率的な輸送方法としてモーダルシフトに取り組んでいます。1995年にはモーダルシフトへの本格的な転換を図っており、それ以降モーダルシフト化率を維持しています。2005年には、鉄道輸送活用の取り組みとその実績が評価され、第1回「エコレールマーク」認定企業に選ばれました。

参照:モーダルシフトの進化「花王株式会社」

三菱ケミカル・東ソー・三井化学

化学業界における物流の課題解決に向け、東海・中国地区での鉄道輸送による共同物流の実証実験を三菱ケミカル・東ソー・三井化学が荷主となり開始されました。単独荷主のトラック輸送から、専用コンテナを複数荷主で運用する鉄道輸送にモーダルシフトすることで、環境負荷低減やドライバーへの負担解消が期待されています。

参照:ニュースリリース「三井化学株式会社」

イオン

イオン北海道株式会社は、イオングローバルSCM株式会社、栗林商船株式会社、センコー株式会社と連携し、2024年よりイオン釧路店に納品する衣料品や日用品、食料品の一部商品について、RORO船を活用した海上輸送による店舗配送を実施しています。海上輸送にモーダルシフトすることで、トラックの車両便数削減やドライバー不足問題、トラックから排出されるCO2削減など、社会課題の解決を目指します。

参照:RORO船を活用した海上輸送の店舗配送開始について「イオン株式会社」

西濃運輸

西濃運輸は環境負荷低減のため、積極的にモーダルシフトを実施しています。2018年に開始した貨物専用列車「カンガルーライナーSS60号」では、大型トラック60台分の貨物を輸送し、同区間の年間CO2排出量を87%削減しました。これらの取り組みにより、2020年「第21回物流環境大賞」を受賞しています。

参照:モーダルシフト「西濃運輸株式会社」

サッポロビール

サッポロビールは物流に関わる諸問題の解決や、サステナブルな社会の実現に貢献することを目指しています。その一環として千葉工場で製造したビール製品を仙台物流センターへ輸送する際に、トラック輸送の一部を鉄道輸送に切り替えることでモーダルシフトを推進しています。これによりトラックの長距離輸送を減らし、さらには年間CO2排出量約44トンの削減を見込んでいます。

参照:ニュースリリース「サッポロホールディングス株式会社」

まとめ

サステナブルな輸送手段として注目されているモーダルシフトについて、メリットから企業は何を為すべきかまで、網羅して解説しました。運輸部門の脱炭素化やドライバー不足問題は、今後ますます重要となります。

世界的にもモーダルシフトへの転換は加速しています。そのため企業はいまから対策を講じることが重要です。ぜひ本記事でモーダルシフトについて知見を深め、対策を講じるための手立てとしてください。

また日本ではGX(グリーントランスフォーメーション)を推進しており、今後企業は環境への貢献と、経済性向上の両者を構築していく努力が必須となります。

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GXメディア編集部
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GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。