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脱炭素経営について知っておくべきこと全て解説

脱炭素経営とは「気候変動対策の視点を織り込んだ企業経営のこと」を指します。

カーボンニュートラル宣言以降、国内でも温室効果ガス削減への機運が高まり、脱炭素経営に取り組む企業が増えています。

しかし実際に脱炭素経営に取り組むと言っても、何から始めたらいいのかわからない企業担当の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は脱炭素経営について目的やメリット、具体的な取り組み方法まで、知っておくべき知識を網羅してわかりやすく解説します。

脱炭素経営とは

脱炭素経営とは自社の経営戦略に気候変動対策を織り込み、さらに経営リスク低減や成長のチャンスと捉え、全社を挙げて取り組むことです。

脱炭素経営の定義と概念

ここでは、脱炭素経営の定義や概念について詳しく解説していきます。

脱炭素経営の基本概念

脱炭素経営の基本的な概念は、経営戦略に気候変動対策を重要課題として組み込んでいるかどうかです。地球温暖化は年々深刻化しており、事業活動で大量の温室効果ガスを排出する企業の脱炭素化はもはや責務と言っても過言ではありません。

なにより気候変動対策を企業の成長のチャンスや未来への投資と捉えることが重要です。

気候変動対策がCSR活動から経営の重要課題へシフトしている背景

これまではCSR活動の一環として気候変動対策に取り組む企業がほとんどでした。しかしCSR経営の目的はあくまで社会貢献です。ESG投資市場の拡大を見てもわかるように、近年企業にとっては気候変動対策が重要な経営戦略になりつつあります。

気候変動対策を単なる社会貢献ではなく、企業の利益を向上させるための戦略として捉えることが重要な時代にシフトしています。

脱炭素経営の背景と目的

脱炭素経営が推進されている背景と目的について解説します。

脱炭素経営の背景

脱炭素経営の背景には深刻化する気候変動問題と、投資家の関心の高まりが挙げられます。それぞれを詳しく解説しましょう。

気候変動問題の深刻化と国際的な取り組み

産業活動におけるエネルギーの使用は、CO2をはじめとした温室効果ガスを大量に排出し地球温暖化を招きます。環境省の資料では、このまま行けば2030年には世界のエネルギー起源CO2排出量は362億トンにも上ると報告されています。地球温暖化は気温を上昇させ、異常気象を頻発させる恐れがあります。

そのため2015年のパリ協定では気候変動対策の国際的な指針が示されました。これにより世界の脱炭素活動は大きく動き出したのです。

企業に対する社会的責任の高まりと投資家の関心

これまでの資本主義は、経済向上や便利さのためには多少の地球環境の犠牲は仕方がないという考え方でした。しかしその結果、地球温暖化という深刻な環境問題を招いたのです。

利益を追求するだけではなく、持続可能な社会構築に貢献する企業が求められています。そのためESG投資が世界的に注目されており、日本でもESG投資に占める割合は2020年には世界全体の約8%に及びます。

脱炭素経営の目的

脱炭素経営の目的を次の2つの視点から解説していきます。

  • 持続可能な社会の実現と企業のリスク低減
  • 成長機会の創出と競争力の強化

持続可能な社会の実現と企業のリスク低減

持続可能な社会とは「将来の世代のニーズを充たしつつ、現在の世代のニーズをも満足させるような開発」を指すと言われています。これを実現するためには「資源の安定供給」や「再生可能資源活用」などの促進が重要になります。

企業がこれらの取り組みを行うことで持続可能な社会の達成と、長期的な目線で企業のコストダウンやリスク低減につなげていくことが脱炭素経営の目的のひとつです。

成長機会の創出と競争力の強化

脱炭素推進においてこれまでの経営を見直すことは、自社の大きな成長の機会でもあります。世界では経済と環境課題を分けて考えるのではなく、新たなイノベーション創出と競争力強化のチャンスと捉えている企業がほとんどです。

近年のEV(電気自動車)の国際的な開発競争をみれば、いかに脱炭素化がビジネスチャンスと捉えられているかわかるでしょう。脱炭素化推進を自社の新たな成長のチャンスとすることこそ、脱炭素経営の大きな目的と言えるのです。

脱炭素経営の意義とメリット

ここでは脱炭素経営の意義とメリットについて詳しく解説していきます。

脱炭素経営の意義

脱炭素経営の意義は大きく分けて次の2点になります。

  • 環境保護と社会的責任
  • 経営リスクの低減とレピュテーションの向上

環境保護と社会的責任

国連が定めたSDGsには「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」と明確な目標が掲げられています。これらの目標は人種や国を超えて達成される必要があります。

サプライチェーンがグローバル化するなか、企業が積極的に脱炭素経営を実施することは環境への配慮を行い、社会的責任を果たすことに繋がります。

経営リスクの低減とレピュテーションの向上

消費者の中でも若年層は環境問題に対して敏感です。フェアトレード等の環境に配慮した商品を積極的に購入するエシカル消費は、2023年度の認知度は29.3%で2019年度調査の同12.2%から大きく増加しています。また就活生の多くは、環境課題や社会貢献に取り組む企業への就職を希望しているという報告もあります。

消費者は利益だけを追求する自己中心的な企業を求めていません。企業が脱炭素経営を推進することは、未来的な経営リスクの低減やレピュテーションの向上につながります。

脱炭素経営のメリット

脱炭素経営には多くのメリットが存在します。ここでは次の2つの視点からメリットを解説していきましょう。

  • コスト削減と経営の効率化
  • 新市場の創出とビジネスチャンス

コスト削減と経営の効率化

脱炭素経営を推進することは、企業のコスト削減と効率化のチャンスでもあります。なぜなら温室効果ガス削減は自社のエネルギーマネジメントを見直すことにつながるからです。

エネルギーマネジメントの見直しは光熱費・燃料費の低減、さらには無駄な設備コスト削減へと繋がります。またエネルギー価格が高騰する中、補助金を活用したりカーボンクレジットによる長期的なコスト削減も見込めます。

新市場の創出とビジネスチャンス

日本政府は2022年GXリーグ基本構想を発表しました。GX(グリーントランスフォーメーション)とは「温室効果ガスの排出削減を目指す取り組みを、経済成長の機会と考え、産業競争力の向上や、社会全体の変革につなげる」ための施策です。

そのため成長が期待されるエネルギー関連産業、輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業の14の分野に対して、約2兆円のグリーンイノベーション基金を設立しました。これによりグローバル市場や世界のESG投資を意識し、国際連携を推進していく計画です。企業の脱炭素化推進は、まさに最大のビジネスチャンスである時代が到来しています。

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脱炭素経営に向けた取り組み

脱炭素経営に向けた取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。取り組み事例や実際の排出量の測定方法をご紹介します。

各企業の具体的な成功事例

ここでは企業の成功事例を2つご紹介します。

山形精密鋳造株式会社

精度の高い鋳物を製造している山形精密鋳造株式会社は2000 年より自動車部品の製造を行い、国内自動車メーカーに多くの納品実績があります。温室効果ガス削減は将来的に自社の競争力強化につながると考え、積極的な省エネ対策を実施し光熱費の削減を達成しています。

具体的には山形県工業技術センターの電力等測定事業で電力量計の貸与を受けたり、主要設備の電力使用状況を把握し、省エネ無料診断を受けたりしました。その結果、実施すべき対策をしっかりと絞り込むことに成功し、自社の温室効果ガス削減に結びつきました。

河田フェザー株式会社

国内唯一の羽毛の専業メーカーである河田フェザー株式会社は、羽毛の国内外における品質及び検査基準を作ってきたトップカンパニーです。環境配慮にも取り組み、熱回収や電力削減、再エネ電気利用を進めています。また羽毛業界世界初となる SBT や RE100 にも加盟しています。

具体的対策としては自社に直接関わる Scope 1、2への対策を行い、利用するボイラーを重油から LP ガスにしたことにより、年間 66t-CO2 のCO2排出量の削減を達成したのです。

参照:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック 事例紹介」

業種別の取り組み事例と傾向

業種別の取り組み事例と脱炭素施策の傾向を、環境省の「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入 事例集」の令和4年モデル事業を例にまとめましたので参考にご覧ください。

分野 業種 対策傾向
製造業 非鉄金属製造業 業界全体や上流・下流における企業を巻き込んだサプライチェーン排出量削減実施
サービス業 廃棄物処理業 DXやSX予算を導入し、削減施策の評価・優先順位の基準を明確化
国際イニシアチブSBT目標に対して削減見込みを試算
卸売業・小売業 陶磁器卸売業 脱炭素に係る新規事業を開始し、バリューチェーンの CO2削減量を可視化
建設業 総合建設業 現場の排出量の算定方法を確立、ステークホルダ‐と共に削減施策を検討しサプライチェーン全体で実施
運輸業 道路貨物運送業 EV活用や共同輸配送の拠点設置、廃棄物のリサイクル
情報通信業 情報サービス業 パートナー企業と協力し、電気の使用や事業活動による排出量を算定、サプライチェーン排出量の削減を実施

どのような業種であれ、自社のみでの削減は難しくパートナー企業やサプライチェーンでの削減対策を行うことが重要です。

排出量削減目標の設定

それでは実際の排出量削減目標の設定方法と計算式について解説していきます。

排出量の測定方法と基準

CO2排出量は電気や燃料の使用量(活動量)に係数を乗じることで測定できます。係数とは活動量当たりのCO2排出量のことです。具体的な計算式は次のようになります。

  • CO2排出量=活動量×係数

目標設定の重要性と方法について

時系列や事業所・設備間等の3つの検討事例で比較し、自社のCO2排出量の特徴を分析し目標を設定することが重要です。

  • 時系列 での比較
    CO2排出量を時系列で比較することで、突出したエネルギー使用や不規則な変動等を確認することが可能です。
  • 事業所・設備間 での比較
    CO2排出量を事業所間や設備等で比較し、大量に排出されている部分がないかを確認することで具体的な目標を設定することができます。
  • 適正値 との比較
    省エネ診断士や設備メーカー等の専門家に相談し、自社の設備等のエネルギー使用量が適性かを比較することで削減すべきCO2排出量が見えてきます。

脱炭素経営の実践について

脱炭素経営の実践について具体的な取り組み方法を解説していきます。

具体的な取り組み方法

ここでは次の3つの具体的な取り組み方法をご紹介していきます。

エネルギー効率の改善と再生可能エネルギーの導入

まず重要なのは、自社のエネルギーマネジメントを見直すことです。設備のエネルギーに無駄はないか、非効率な使い方をしてはいないか。社員一人一人が意識し取り組むことが大切です。また再生可能エネルギー(以下再エネ)導入も大いに有効です。

再エネは近年コストが低下しており、企業が再エネ業者と直接契約するPPAも普及しています。日本での再エネ導入は、2011年度10.4%から2021年度20.3%にまで拡大しています。脱炭素経営の基盤としてぜひ検討してみましょう。

サプライチェーン全体での取り組み

物流や情報網の発達で、企業のサプライチェーンはますますグローバル化しています。そのため、原材料製造時や製品使用時等も含めたサプライチェーンの脱炭素化が重要となっています。

実際に米国のApple社は、サプライヤーに対して再エネ由来の電力を使用することを要請しており、要請に応えられない場合は取引を終了する可能性も示唆しています。このように取引先から脱炭素化を求められたときに慌てないためにも、サプライチェーン全体での脱炭素推進が重要です。

新技術の活用とイノベーション

脱炭素経営に取り組むには新技術活用やイノベーションの推進も欠かせません。例えばAIによる電力有効活用や省エネの推進、エネルギー消費量を限りなくゼロにするZEBの建設による温室効果ガス削減等は、今後拡大が期待されています。

どのような技術やイノベーションが必要なのかをじっくりと検討し取り組むことで、脱炭素経営を推進することが可能です。

政府の支援策

気候変動対策における政府の支援策にはさまざまなものがあります。いくつかご紹介しましょう。

環境省や経済産業省の支援プログラム

【環境省】

  • エコアクション21
    国際標準化機構のISO14001規格を参考とした日本独自の環境マネジメントシステム(EMS)です。中小事業者にとっても取り組みやすい環境経営システムの在り方を規定しています。

【経済産業省】

  • 排出量等算定ツールの提供
    エクセルやシステムを使って、エネルギー使用量を入力することで、排出量を算定可能です
  • ものづくり補助金
    革新的な製品・サービス開発に必要な 設備・システム投資等を支援します。
  • バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業
    地球温暖化対策のための設備投資に係る融資利息の一部を補給します。

金融機関の役割

社会的課題の解決につながるサステナブルファイナンスが注目されています。金融機関は企業の脱炭素経営推進においては、さまざまな条件を踏まえつつ協働して持続可能な社会貢献への取り組みを進める役割を推し進めることが重要です。

銀行業界による資金調達支援とコンサルティング

銀行業界はコンサルティングやソリューションの提供、成長資金等の提供等の顧客企業の支援を行うことが重要です。具体的には顧客企業の温室効果ガス排出量の視覚化や、新たな技術や産業育成につながる成長資金のファンド等を通じた供給等が挙げられます。

脱炭素経営の今後の展望と未来について

脱炭素経営は国内だけではなく、世界の流れをしっかりと注視していくことが重要です。脱炭素経営の展望と未来について解説します。

グローバルな規制の動向と企業の対応策

気候変動対策を先駆けて推進している欧州連合(EU)は、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロの目標を打ち立てています。そのため「欧州グリーンディール政策」に基づき、EU排出権取引制度の強化や、輸入品の規制を行う計画です。

日本企業は脱炭素経営を推進し、いち早くグローバルな規制に対応できるよう備える必要があります。

持続可能な成長に向けた戦略的な取り組み

脱炭素経営の最大の展望は持続可能な社会の実現です。そのためには気候変動対策をはじめとした環境課題に取り組む経営戦略が不可欠です。しかし経営陣だけが脱炭素を行えばいいわけではありません。社員一人一人の意識改革が脱炭素経営を推進するための何よりの力となるのです。

まとめ

脱炭素経営について、あらゆる角度から解説しました。脱炭素化は世界的な潮流として今後ますます推進され、企業への取り組みが求められていくことは間違いありません。ぜひ本記事を参考に脱炭素経営の知見を深め、自社の取り組みへの一助としてください。

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GXメディア編集部
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GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。