脱炭素経営とは | 企業が取り組むメリット・デメリットや方法、事例を紹介
近年耳にする機会が増えた脱炭素経営ですが、具体的にどのようなメリットがあるのか、どのような手順で実施すればよいかご存知でしょうか?
この記事では、まず脱炭素経営について簡単に説明していきます。その上で、メリット・デメリットや方法、取り組み事例を紹介していきます。これから脱炭素経営に取り組もうと考えている経営者や担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
脱炭素経営とは?
脱炭素経営とは、気候変動対策の視点を織り込み、脱炭素化を目標とした企業経営を行うことです。脱炭素化とは、企業から排出される温室効果ガスを実質ゼロにすることであり、排出量の削減と吸収量の増加の両軸が重要になります。
脱炭素経営を推し進める上で欠かせないのが、以下3つの取り組みです。それぞれ具体的に説明していきます。
TCFD
TCFDは、気候変動への取り組みの具体的な開示を推奨する国際的な組織です。TCFDのルールに沿って気候関連の財務情報を作成することで、投資家にわかりやすく情報を提供することが目的となっています。
ちなみに東証は、2022年4月からプライム市場に上場する企業に対して、TCFDに基づく情報開示を義務付けています。
SBT
SBTとは、パリ協定の目標と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減⽬標のことです。さらに、5〜15年先の長期的な目標を策定すること、サプライチェーンの排出量を削減することも求められます。
環境省の資料によると、2023年1⽉10⽇時点で認定企業2,140社、コミット企業2,237社の合計4,377社まで拡大しています。(コミット企業=2年以内にSBT認定の取得を宣⾔している企業)
RE100
RE100とは、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニシアチブです。自社で再生可能エネルギーを導入する、もしくは電力市場から再生可能エネルギーを購入する方法があります。
ちなみに2024年1月現在では、日本から84社が参加しています。
参考:RE100・EP100・EV100|日本気候リーダーズ・パートナーシップ
脱炭素経営が注目されている理由
脱炭素経営が注目されているのは、2050年カーボンニュートラルを実現するために、企業による協力が不可欠であるからです。日本で排出されている温室効果ガスの多くは企業から発生しており、企業が削減努力をすることでカーボンニュートラルの実現に大きく近づきます。
政府は企業の脱炭素経営を後押しするために、一部の企業に対してTCFDに基づく情報開示を義務付けたり、補助金制度・法整備を進めたりしています。
脱炭素経営に取り組むメリット
脱炭素経営に取り組むメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 企業のブランド価値が向上する
- エネルギーコストの削減につながる
- 補助金・助成金が受けられる
それぞれ具体的に紹介していきます。
企業のブランド価値が向上する
脱炭素経営に取り組むことで、企業のブランド価値が向上することが期待されます。例えば、メディアで取り組み事例が紹介されたり、SBT認定を受けたりすることで、消費者から注目を集めることがあるでしょう。
その結果、他社との差別化を図ることができ、企業のブランド価値向上につながります。
エネルギーコストの削減につながる
脱炭素経営の一環として、ZEBを導入したり、節電を心がけたりすることで、使用するエネルギーを削減できます。また、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入すれば、長期的に電気代を削減することが可能です。
このように、脱炭素経営に取り組むことで、エネルギーコストの削減につながることも大きなメリットといえます。
補助金・助成金が受けられる
脱炭素経営を推進するために、政府や自治体はさまざまな補助金・助成金制度を設けています。それらを利用すれば、通常よりも費用をかけずに、ブランド価値の向上やエネルギーコストの削減を実現できます。
補助金・助成金の内容は年度によって変動するため、環境省による情報をこまめに確認するのがおすすめです。
脱炭素経営に取り組むデメリット
一方で、脱炭素経営にはデメリットもあります。ここでは、2つのデメリットに触れていきます。
初期費用がかかる
脱炭素経営の取り組みとして、ZEBや再生可能エネルギーを導入する企業が多いです。しかし、それらの取り組みには初期費用がかかり、企業にとっては大きな負担となる可能性があります。
脱炭素経営を行う上では、取り組みにかかる費用と効果を加味して、優先順位を付けて取り組むことが大切です。また、政府の補助金・助成金をうまく利用して、収支のバランスを取りながら進めていきましょう。
取引先との調整が必要になる
脱炭素経営を目指すためには、自社だけではなく、サプライチェーンの全体の協力も不可欠です。仮に取引先の企業が脱炭素経営に協力してくれない場合は、新たな取引先を見つける必要があるかもしれません。
環境省が公表!脱炭素経営に取り組む方法
環境省が公表した「SBT等の達成に向けた GHG排出削減計画策定ガイドブック」には、脱炭素経営に取り組む方法が紹介されています。順番に見ていきましょう。
1.将来の事業環境変化を見通す
まずは、これから事業環境にどのような変化が起きるのかを考えましょう。過去10年間で企業のビジネス環境は大きく変化したことから、今後も大きな変化があることが予測されます。
具体的には、以下の3つを注視するとよいでしょう。
- 人口動態の変化
- 社会・経済構造の変化
- 価値観の変化
2.現状と今後の見通しを把握する
次に、現状の温室効果ガスの排出量を把握して、他社事例などを参考にしながら目標達成までの見通しを立てます。このステップにおけるポイントは、以下の2つです。
- サプライチェーン含め自社のCO2排出の特徴を捉える
- 早い段階から関連部署と連携して横断的に検討する
3.施策を検討する
自社の状況を把握したら、施策を具体的に検討していきましょう。短期・中長期の双方の視点で検討することが大切です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- サプライヤーと連携して製造や輸送にかかる排出量を削減する
- 省エネ性能が高い製品を開発する
- 通勤や出張を削減する
- カーボンフットプリントの見える化により、顧客の削減行動を支援する
4.ロードマップを作成する
ロードマップを作成して、取り組み内容を時系列に沿って整理していきます。また、今後検討すべき取り組みがあれば、検討の進め方もロードマップ化しておくとよいでしょう。一度作成したロードマップは適宜見直して、最適な内容にアップデートすることが大切です。
5.ステークホルダーに伝える
ロードマップを作成したら、ステークホルダーから最適な評価を受けるために、目標や取り組み内容を伝えましょう。説得力のあるストーリーを構築することで、自社の評価を高めることが可能です。
中小企業における脱炭素経営の取り組み事例
環境省の資料を参考にして、中小企業における脱炭素経営の取り組み事例を紹介します。
ジェネックス
ジェネックスは、太陽光発電を自社保有して、売電から施設運用までをワンストップで行っている企業です。現在は150ヶ所、40MWの太陽光発電所を保有しています。
この企業の課題は、出張時の社有車利用に伴うCO2排出量が多いことでした。そこで、ガソリン車の利用をハイブリッド車へ切り替えることによるCO2削減率を整理。社有車のカーリースの期限をふまえ、CO2削減計画を策定しました。
CO2排出量は約半分削減できる見込みであり、出張制度や社用車の利用ルールの整備を進めています。
マックエンジニアリング
マックエンジニアリングは、高精度な治具・金型・部品の製造を行っている企業です。この企業は、再エネと省エネ両面から削減計画を検討しました。
再エネでは、工場での屋根置き太陽光発電の導入可能性や再エネ電気メニューへの切り替え。省エネでは屋根に遮熱塗料の塗布による空調負荷の軽減等に取り組む予定です。
これらの対策により、エネルギー効率化によるコスト削減が期待されます。
三和興産
三和興産は、アスファルト合材の製造・販売や道路建設工事など、さまざまな事業を手掛けている企業です。同社のCO2排出量を大幅削減するためには、アスファルト合材製造過程に加熱用として使用しているA重油の対策が鍵でした。そこで、モデル事業ではA重油の燃料転換を重点的に検討しました。
また、燃料転換や省エネ対策による CO2 排出量削減の検討を踏まえ、SBT目標を確実に達成するために、さらなる再エネ電気の調達を検討しました。
これらの対策により、CO2 排出量の削減を目指します。また、A重油タンクの撤去により、安全性や作業効率性の向上、メンテナンス費用の削減といった効果が期待されています。
まとめ
この記事では、脱炭素経営の概要やメリット・デメリット、方法や事例を紹介しました。脱炭素経営に取り組むことで、自社のブランディング向上やエネルギーコスト削減などのメリットが期待できます。
また、中小企業での取り組み事例も増えています。この記事で紹介した事例を参考にして、あなたの企業でもできることから取り組んでみてはいかがでしょうか?
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