GX人材の転職市場が急成長!今注目される理由とキャリアアップ方法
地球温暖化や環境問題が深刻化するなか、今転職市場でGX人材の採用が盛んになってきています。
20代〜30代を中心に採用活動をしてきた業界や企業が40代〜50代以上の人を採用する事例も増えてきており、脱炭素社会の実現に向けて、特にエネルギー会社、プラント、建設会社などでGX(グリーン・トランスフォーメーション)を推進する人材のニーズが高まっています。
そこで今回の記事では、近年注目されつつあるGX人材の転職について、GX人材とは一体どのような人材のことを言うのか、その定義とスキル、それにGX人材として考えられるキャリアパス、GX人材として転職するために必要なスキルや資格、最後にGX人材として転職するための具体的な方法について記していこうと思います。
GX人材の最新の転職動向などについても合わせて解説していきますので、GX人材としての転職に興味がある方はぜひ読み進めて参考にしてみてください。
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GX人材とは
GX人材とは脱炭素やカーボンニュートラルの業務に携わる人材のことを指しますが、広く気候変動や環境問題に対処し、企業や社会を持続可能な方向へと導くための専門性を持った人材のことを言います。
GX人材が求められている理由には、GXに関する経験や知識をもつ専門職としてのGX人材が不足しているという背景があります。
GXへの取り組みが急務となっている昨今の社会環境のなかで、短期的な利益にとらわれずに、長期的な視点で社会と経済を持続可能な成長機会へと変革させる役割を担う人材が広く求められているのです。
GX人材については「これから必要とされるGX人材とは?必要とされる理由や育成機関を紹介」の記事でも紹介していますのであわせて読み進めていただくとGX人材に何が求められているのかをより深く理解していただけるかと思います。
GX人材の定義とスキル
実はGX人材には、「GXに関連する業務であること」以外に明確な定義がありませんでした。
しかし、2024年5月にGXリーグ(※詳しくは後述します)がGXを推進する「GX人材」の定義を策定し、CO2排出量策定、削減計画の分析・実行など、それぞれの役割に基づき「GXアナリスト」「GXストラテジスト」「GXインベータ―」「GXコミュケーター」の4類型にGXSS(GXスキル標準※)として区分されることに取り決められました。
GX人材の4類型 出典:GX推進スキル標準(GXSS‐P)
これにより、GX人材としてそれぞれの役割やレベルに応じて求められる能力が明確に定義づけられ、今後はGX人材で求められる能力水準のスキルが職種能力ごとに設定されることになります。
ただし「GXスキル標準(GXSS)」内に記載されている「GX推進スキル標準(GXSS-P)Ver1.0」では、GX推進に必要な人材累計とロールの定義として「GXアナリスト」「GXストラテジスト」についてのみ記載されており、この記事を書いている現時点では「GXインベータ―」と「GXコミュケーター」については明確に定義づけされておりません。
「GXインベータ―」と「GXコミュケーター」の定義は「GX推進スキル標準(GXSS-P)Ver1.0」以降で取り決められることになります。
そのほか、その他の類型に関しても、今後の取り組みの中で定義が変わってくることが予想され、現状はいったんの枠組みとしての位置付けという解釈で柔軟に対応していくことが求められています。
※GXリーグについては、ここでは詳しく触れませんが詳細については「GXリーグとは|具体的な取り組みや参加方法、企業が参画するメリットを解説」を参考にしてください。
※GXSS(GXスキル標準)とは、GXに関する知識やリテラシー、推進に必要な人材、役割、スキルを定義・標準化したもので、GX人材育成のための指針のことです。GXSSについて詳しく知りたい方は「GXスキル標準(GXSS)とは?策定された背景や内容を解説」にてまとめられていますので目を通してみてください。
GXアナリストの役割と求められるスキル
GXアナリストの定義 出典:GX推進スキル標準(GXSS‐P)
GXアナリストとは、GX推進の算定・分析のプロセスにおいてデータ解析を通じてGXの現状を把握し、その結果をもとにした戦略や意思決定をサポートする専門家のことです。
主な業務内容は要請に基づいてデータ分析をし、どの分野で改善が必要かを把握し削減計画立案を提案することなどです。
主な役割
「温暖化ガスの排出量算定」が主な役割です。GXアナリストとして環境データを分析し、持続可能な経済成長に向けてCO2削減やエネルギー効率向上の戦略立案をサポートする役割を担っています。
求められるスキル
「情報開示を見据えた算定と立案」に付随するスキルが必要で、データ解析能力はもちろん、温室効果ガス削減や再生可能エネルギーなどのサステナビリティに関する知識、また環境規制やカーボンクレジット市場の理解などが求められます。
GXストラテジストの役割と求められるスキル
GXストラテジストの定義 出典:GX推進スキル標準(GXSS‐P)
GXストラテジストとは、GX推進の分析・計画化のプロセスにおいて、GXを実現するためのビジョンと戦略を設計し、GXを実現するために企業や組織全体の方向性を導くことができる人材のことを言います。
算定をはじめ、企業の長期的なGX目標に向けたビジョンを描き、GX実現に向けての具体的な戦略やアクションプランを設計することなどが主な業務内容となります。
主な役割
「削減計画の分析・実行」が主な役割です。GXストラテジストとして企業や組織のGX戦略を策定、さらにカーボンニュートラル達成に向けたビジョンを構築し、経済成長と環境保護を両立させる方針を導く役割を担っています。
求められるスキル
「削減計画の分析と実行」に付随するスキルが必要で、リーダーシップやチームマネジメント能力はもちろんのこと、持続可能性に基づいた環境政策や市場動向における深い洞察、長期的なビジネス戦略の構築力などが求められます。
GXインベンターの役割と求められるスキル
GXインベンターとは、GX推進の実行プロセスにおいて、環境指標と経済指標の両面において、GXに必要な革新的技術を発見し開発できる人材のことを言います。
「GX推進スキル標準(GXSS-P)Ver1.0」では「GXインベンター」の詳細定義が未着手となっていますが、現在のところ広くGXに向けた技術ソリューションを提供する人材のことと定義づけられています。
GXインベンターには、GXに関する技術的な専門知識や、実験、開発プロセスの管理能力などが求められます。
主な役割
「計画を実現する技術開発」が主な役割です。GXインベンターとしてCO2削減や再生可能エネルギーの利用促進に向けた革新的技術を開発し、GX推進のための技術的ソリューションを提供する役割を担っています。
求められるスキル
「商品や事業の開発」に付随するスキルが必要で、環境技術に関する専門知識、技術的課題解決能力、新しい観点やこれまでにない発想で新たな価値観を生み出すイノベーション創出力、プロトタイプ開発や実証実験の経験が必要です。
GXコミュニケーターの役割と求められるスキル
GXコミュニケーターとは、GX推進の実行プロセスにおいて、GXの取り組みを社内外に伝え、ステークホルダーとの協力を促進しGX実現に向けて自社の計画を推進できる人材のことを言います。
GXインベンター同様に、「GX推進スキル標準(GXSS-P)Ver1.0」では詳細定義が未着手となっていますが、現在のところ広くステークホルダーとの連携だったり、GX啓蒙と情報発信などPR広報活動ができる人材のことであると定義づけられています。
GXコミュニケーターには、環境問題やGXに関する知識はもちろんのこと、広報やマーケティングの経験、文章力やプレゼンテーション力などのコミュニケーション能力が求められます。
主な役割
「関係者との交渉やGX実現推進」が主な役割です。GXコミュニケーターとしてGXの取り組みや成果を社内外に効果的に伝え、ステークホルダーとの協力体制を構築し、GXに対する理解と支援を促進する役割を担っています。
求められるスキル
「広報や営業」に付随するスキルが必要で、環境問題に関する幅広い知識をはじめ、要点を的確に伝えられる優れたコミュニケーション能力が求められ、広報やマーケティングの経験はもちろん、多様な利害関係者との調整力など幅広い分野での関係構築力が求められます。
参考:GXスキル標準(GXSS) GXリーグ GX人材市場創造WG
GX人材が転職市場で求められる3つの能力
以上のようにGXリーグの「GXスキル標準(GXSS)」で定義づけられた、GX人材は求められるスキルが極めて高く、全ての要件を満たせるような専門性の高いGX人材は転職市場には、わずかしかいないという現実があります。
今後、GX人材の転職市場が現在よりも大きくなるにつれて、要求されるレベルやスキルがより高くなっていくことが予想されます。
そのため、現在の転職市場では「GXスキル標準(GXSS)」で定義づけされたような突出して専門性の高い能力は求められておらず、次の項目で解説するGX人材に必要な3つの能力を備えていれば、GX人材として十分に活躍できると考えられます。
なぜならGX人材の求人におけるニーズは、ここ数年の急激なビジネス環境の変化のなかで生まれたもので、現在はGX系の職種を経験している人材が少なく、市場が求めているGX人材のニーズに対して需要が追いついていない状況だからです。
つまり、GX人材は売り手市場(求職者にとって有利な市場)だといえるでしょう。
さらに、GX人材の需要は年々ニーズが高まっており、今後ますます伸びていくことが予想されています(詳しくは後述します)。
現在のGX人材の転職市場において求められている能力は下記の3つです。
1:GXへの強い興味関心と情報キャッチアップ力
GX人材に求められる能力の1つ目は、GXへの強い興味関心と、自らが率先して情報をとりにいくキャッチアップ力です。
GXは国内だけではなく、国際的な取り組みでもあるため、2030年までの温室効果ガス削減の目標達成に向けて、今現在も目まぐるしい速さで情報がアップデートされています。
そのため、GXに関わる以上、常にGXについてのアンテナを張り巡らせておく必要があります。
例えば、GX人材にとって必要な基本的知識である持続可能性や気候変動など環境保護に関する知識はもちろん必要となりますが、それらについての強い興味や関心を絶やさずに、国内外から常に新しい情報を得ようとキャッチアップする能力が必要になります。
GX人材には温室効果ガス削減についての知識はもちろん、再生可能エネルギーなどに関する最新の専門知識を拾い上げ、常にアップデートしていく能力が求められるのです。
2:ステークホルダーとのコミュニケーション力
GX推進には、従業員や株主、政府機関や地域社会などとの連携が必要であるため、社内外のステークホルダーとコミュニケーションをはかることが不可欠となります。
そのためGX人材にはステークホルダーと連携をはかりGXを円滑に進めていくコミュニケーション能力が求められます。
例えば、GX推進にはサプライチェーンなどとの連携が不可欠で、自社の事業に関わるサプライチェーンやさまざまな専門家などの幅広いステークホルダーとやり取りをする必要があります。
またステークホルダーからの支持を得るために、技術的な問題や、環境対策の必要性などを効果的に説明をするプレゼンテーション能力をはじめ、持続可能な取り組みを円滑に進める交渉力、調整スキルが必要になります。
3:プロジェクト推進力(適応力・推進力)
GX人材には、多様な関係者との協力を通じてGXプロジェクトを推進していく能力も求められます。
2020年10月が初出しとなるような、比較的新しい概念であるGXは、急務である一方で法律による規制や標準化などが設けられていない領域も存在するため、GXに関するプロジェクトは常に変化の連続であることが予想されます。
そのため、GX人材には法律を含む社会環境の変化に柔軟に適応し対応しながら、プロジェクトを推進する推進力が求められます。
GX人材における転職マーケットの状況
つづいてGX人材における現在の転職マーケットの状況や今後の動向、求められている業界や職種について解説していきます。
GX人材が転職市場で注目される理由
GXが注目されるようになったのは、2015年のパリ協定がきっかけです。
パリ協定によって2050年カーボンニュートラル宣言が公になり、社会的、国際的に脱炭素社会実現に向けての取り組みが最重要課題となった背景があります。
日本も2020年10月に経済産業省が中心となって策定した「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、加えて2021年4月に国の方針として、2030年度までに2013年度からの温室効果ガスの46%削減を目指し、さらに削減率50%の高みを目指すことを発表、これによりGX人材が注目されるようになりました。
国内においても脱炭素社会実現に向けての取り組みは最重要課題として位置付けられており、急務となっています。
GX人材は転職市場で人材不足
2015年のパリ協定をきっかけとして、世界がカーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)に向けて動き出しており、今、国際的な取り組みとしてGXは注目されています。
一方でGXそのものが比較的新しい概念であるため、日本ではGXに関する経験や知識があるGX人材が少なく、また需要に対してGX人材が不足していることから、GX人材の採用が急務となっています。
さらに、現在GXについて専門性を持つGX人材が企業内に少ないため、人材の育成に力を入れようにもなかなか進まず、採用の障害となっていることがひとつ大きな課題となっている背景があります。
つまり転職市場にGXを専門とする「経験者」がほとんどおらず、ポジションの採用についても「自社が必要とする人材」がどのようなものなのか模索している段階にあるということです。
例えば企業規模問わず、サステナリビティやカーボンニュートラルを推進する専門部署や組織などを立ち上げてみるものの、GXについて専門性の高いGX人材を適切に配置できておらず、GX実現へ向けての推進力や取り組みが中途半端になってしまっていたりします。
そのため、事業変革を担う人材の採用が進む企業は、年齢や転職歴などはあまり考慮せず、必要なスキル・経験に絞り込んだ選考を行っています。
こうしたビジネス環境の変化があり、転職市場では今GX人材のニーズが高騰しているのです。
GX人材の転職の求人伸び率は7倍
出典:2024年度 転職市場の動向 リクルート
リクルートエージェントによると、転職市場でGX人材の求人は2016年〜2023年比で7.27倍になっており、特に経済産業省がGXについて示した「カーボンニュートラル宣言」が発表された2020年からの伸び率が非常に高くなっています。
社会の流れを受けてビジネス環境が大きく変わったと見て取れるでしょう。
今後カーボンニュートラルの達成に向けて、まずは2030年の中間目標(温室効果ガスを2013年度非で46%削減する)を達成するために、企業の取り組みがますます加速していくことが予想され、それに伴いGX人材の確保が急務となり、これまで以上にGX人材の転職の求人の伸び率が高くなっていくことが予想できます。
参考:令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021)│ 資源エネルギー庁
また、日経転職版によると適材が200万人不足しており、人材争奪で年収が1,000万円提示もあったり、三菱総合研究所では、GXに関連する職種の雇用は、国内で20~35年に266万人分が新たに生まれると予測されています。
特に、太陽光・風力発電会社の総務や企画といった事務職が(78万人)、電気自動車(EV)エンジニアなどの専門技術職が(69万人)、生産職が(63万人)などが大幅に増えると予測されています。
参考:GX、適材200万人不足 人材争奪で年収1000万円提示も|日経転職版
GX人材の転職者は3倍に急増し、求人需要が供給を上回る
またGX人材のニーズ拡大とともに実際にGX求人に応募し転職した転職者もここ数年で3倍以上になっています。
企業が求めるGX人材の伸び率に対して、GX求人の転職者も増加しており、同じように2020年のカーボンニュートラル宣言を境に上場傾向にあります。
出典:リクルートエージェントにおけるGX求人の転職者推移
求人の伸び率が7倍に対して、実際の転職者が3倍にしか増えていないということは企業のGX人材の需要に対して、人材の供給が追いついていない状況といえるため、今まさにGX人材の転職市場は売り手市場で活況であるといえるのです。
つまりGX人材は企業にとって、喉から手が出るほど欲しい人材であり、今まさに転職するにはチャンスである市場と言えます。
GX人材が求められている業界
では実際にどのような業界や職種でGX人材が求められているのでしょうか。
出典:2024年度 転職市場の動向 リクルート
リクルートエージェントにおけるGX求人の推移(業界別)によると、業界別では最も採用活動が活発なのが「化学業界メーカー」次に「IT通信業界」さらには「サービス・アウトソーシング業界」「電気・電子・機械業界商社」となっています。
2016年を「1」とした場合の伸び率は「化学業界メーカー」が8.65倍、「IT通信業界」が8.04倍、つづいて「サービス・アウトソーシング業界」が6.52倍、「電気・電子・機械業界商社」が6.15倍となっています。
このようにGX人材は業界問わずに採用活動が活発であることがわかり、今まさに注目の業界であるということがわかります。
GX人材が求められている職種
次にGX人材が求められる職種についてみていきます。
出典:2024年度 転職市場の動向 リクルート
リクルートエージェントにおけるGX求人の推移(職種別)によると「経営企画・事業企画・業務企画」が最も活発で、「化学エンジニア」、つづいて「品質管理・品質保証/認証・品質分析」そして「機械エンジニア」の順番に求められていることがわかります。
2016年を「1」とした場合の伸び率は「経営企画・事業企画・業務企画」が12.65倍、「化学エンジニア」が7.69倍、「品質管理・品質保証/認証・品質分析」が6.88倍、「機械エンジニア」が6.82倍と「経営企画・事業企画・業務企画」が他の職種よりも突出していることがわかります。
GX人材の採用職種は企画系からエンジニアなどの技術系に至るまで多岐に渡るということがこの推移でもみてとることができます。
参考:GX(グリーントランスフォーメーション)求人は6年で5.87倍に増加の一方、転職者は3.09倍にとどまる。グリーン戦略に取り組む人材の育成・確保に課題|リクルートエージェント
GX人材のキャリアパス
ではGX人材ではどんなキャリアパスを描くことができるのでしょうか。
ここからは、GX人材の具体的なキャリアパスについてみていこうと思います。
1:エネルギー・環境関連企業でのキャリア
エネルギー関連に従事する会社や環境コンサルティングを手がけている企業、また最近では再生可能エネルギーに関連したスタートアップ企業も増えてきていますので、GX人材としてさまざまな企業でのキャリアパスが考えられます。
GX人材として考えられる代表的なキャリアは下記のとおりです。
- エネルギーエンジニア:再生可能エネルギーの技術を設計・開発し、エネルギー効率化に取り組む
- 環境コンサルタント:企業や自治体に対して、持続可能な戦略や規制対応をアドバイス
- カーボンマネージャー:企業のカーボンフットプリントを測定し、削減計画を策定・実行
2:企業のCSR(企業の社会的責任)・サステナビリティ部門
また多くの企業は、CSRやESG(環境・社会・ガバナンス)部門を設置しています。
そのため、それぞれの企業が求めるGX人材によってポジションごとに以下のようなGXの業務に関わることができるでしょう。
- サステナビリティマネージャー:企業の持続可能な事業運営を推進し、環境や社会的課題に対処する
- ESGアナリスト:企業のESGリスクを評価し、投資家や経営陣に報告
3:政府・国際機関での政策立案
GXは比較的新しい概念でその内容もまだ発展途上の段階です。
そのためその働きぶりが認められれば、気候政策やエネルギー政策を担当する政府機関、環境省や国連気候変動枠組条約(UNFCCC)などの国際機関でのキャリアも考えられるでしょう。
- 政策アナリスト:環境規制や政策の分析と提言
- 気候変動プログラムオフィサー:国際機関での気候変動対策プロジェクトの管理
4:学術・研究機関でのキャリア
一方で大学などの研究機関でGX関連に関する技術や政策の研究を行う研究者や技術開発者としてのキャリアパスも考えられます。
GX分野の取り組みは国際的な取り組みであり、2050年の脱炭素の目標達成に向けて国を上げての動きも盛んであるため、それ相応のキャリアパスが考えられます。
- 研究者・教授: エネルギー技術、環境経済学、政策研究などに従事
- 技術開発者:新しい環境技術やエネルギーシステムの研究開発に携わる
5:スタートアップ企業など
最近ではGX分野での技術革新、並びにGX関連の新しいビジネスモデルを生み出すスタートアップ企業も増えてきています。
GX関連のスタートアップで働く道や、自らがGX業界人として起業するキャリアパスも考えられます。
- 再生可能エネルギー企業の創業者:新しいエネルギー技術やサービスを提供する企業の設立
- 循環型経済ビジネスの創業者:リサイクル、廃棄物管理など、資源を効率的に利用するビジネスの立ち上げ
このようにGX人材は技術、研究、政策、ビジネスといった多分野にわたり、進む方向性次第でさまざまなキャリアパスが考えられます。
関わる業務も多様でエネルギー、環境、CSRなど関心のある分野でのキャリアパスを考えることができます。
GX人材の転職に必要なスキルと資格
GX人材の転職に必要なスキルや、GX人材の転職に有利となる資格については下記を参考にしてください。
1:専門知識・技術スキル
GX人材は、環境に配慮した技術や持続可能なエネルギー関連の専門知識や技術スキルが必須となります。
特定の業界や分野によって異なる部分もありますが、以下に基本的な知識や技術スキルを上げていきます。
【再生可能エネルギーに関する専門的な知識や技術】
- 太陽光、風力、水力、バイオマスなどの発電技術の知識並びに実践的な運用スキル
- スマートグリッド、蓄電システム、エネルギーマネジメントシステムなどの運用スキル
- 再生可能エネルギーの設計や管理能力
【エネルギー効率化に関する専門的な知識やスキル】
- 省エネ技術の知識(例:HVAC、照明システム、断熱材、エネルギーパフォーマンス改善など)
- データ分析とエネルギー効率化を最適化するためのソフトウェアツールの使用スキル
【脱炭素に関わる専門的な知識やスキル】
- カーボンキャプチャー技術やカーボンオフセット技術の理解や応用スキル
- 脱炭素化に向けた技術の研究開発(電動車両、グリーン水素技術など)
【ライフサイクルアセスメント(LCA)についての専門的な知識やスキル】
- 製品やサービスのライフサイクル全体を通じた環境影響の評価スキル
【エネルギーモデリング・シミュレーションの専門的な知識やスキル】
- エネルギー消費や効率をシミュレーションするソフトウェアの使用スキル
(例:EnergyPlus、TRNSYSなど)
2:環境関連の資格
GX人材の転職においては、専門的な知識や技術スキルとは別に、環境に関連した資格を取得していることが重要です。
資格により専門性を証明することにつながり、転職市場での競争力を高めることができます。
【環境プランナー(エコアクション21認証登録審査員)】
- 環境管理システムの構築や環境パフォーマンス改善の知識など、企業が環境問題に対処するために必要な経営知識や実務全般を習得し、事業所向けに環境全般のアドバイスができる能力を持つことを示す資格
【ISO14001(環境マネジメントシステム)審査員資格】
- 環境マネジメントシステムの構築、運用、審査に関する専門知識を証明する資格
【エネルギー管理士】
- 省エネルギーの専門知識を持ち、エネルギー使用の効率化を推進する能力を証明する資格
【公害防止管理者】
- 大気、水質、騒音などの環境保全技術に関する国家資格
【脱炭素アドバイザー】
- 環境省が「脱炭素アドバイザー資格制度認定ガイドライン」に基づいて、脱炭素に関わる民間資格を認定するもの
3:コミュニケーション能力・チームワーク
GX人材の転職において、専門的な知識や技術スキル、それに加えて上記であげたような環境資格があると有利ですが、さらに下記のようなチームをリードする能力や資格があれば転職市場でGX人材としての価値が高く見積もられるのでより有利になります。
【プレゼンテーション能力に関するスキル】
- 複雑な技術や環境データをわかりやすく説明したり、プロジェクトステークホルダーとの効果的なコミュニケーションを行うスキル。
【PMP資格】
- プロジェクトマネジメントの専門家であることを証明する資格。
以上のスキルや資格があるとGX人材の転職市場で有利に働き、キャリアアップにつながる転職をすることができると期待されます。
GX人材として転職するための具体的な方法
GX人材として転職するためにはスキルと資格を習得することはもちろん大事ですが、転職に向けて実践での経験を積んだり、それに並行して人脈作りなども合わせて行なっていくとよりGX人材として、好条件で転職できる確率が高くなります。
以下にGX人材として転職するための行動ベースでの具体的な方法についてステップごとに記載させていただきますので、GX人材として転職を考えている方は参考にしていただき、ぜひあなたのキャリアアップへとつなげてください。
ステップ1:スキルと資格の習得
GX関連の仕事で転職するためには、まずはGX人材として求められるGXの分野で求められるスキルや資格を習得することが有効です。
・GXに関連するスキルの取得
GXに関連するスキルとは再生エネルギー技術に関するものや、エネルギー効率化やカーボンマネジメントに関するもの、加えてライフサイクルアセスメント(LCA)やエネルギーモデリングなど、GX人材として実務で求められる具体的なスキルに特化した知識のことです。
これについては、オンライン講座でスタンフォード大学の教授が設立したMOOCs(ムークス=オンライン学習用の養育プラットフォーム)のCoursera(コーセラ)やedX(エデックス)、Udemy(ユーデミー)などを利用すれば隙間時間を使って効果的に進められますし、自宅に居ながらでも手軽に学習環境を整えることができます(一部英語環境での学習が必要です)。
なお、学習コースを進めると修了証がもらえるものがあり、履歴書などに記載できる修了証もあります。
・環境関連資格を習得する
環境関連資格とはISO14001(環境マネジメントシステム)審査員資格や脱炭素アドバイザーなど、GX分野で評価される資格のことです。
エネルギー管理士などの脱炭素技術に関連する資格を保有することで専門性を証明することができます。
弊社の「GX検定ベーシック」は環境省認定制度として『脱炭素アドバイザー ベーシック』に認定されており、試験に合格していただくと「環境省認定制度 脱炭素アドバイザーベーシック」として名刺や公的書類などに記載できるようになります。
>>>脱炭素アドバイザー ベーシックの詳細はこちらからご確認ください。
ステップ2:実務経験を積む
GX人材としての転職時に高く評価され、また即戦力となるためには実務経験が必要になります。
とはいうものの、GX自体が比較的新しい概念のため経験を積むことができる場は限られていますが、実践での経験を積むことで転職市場ではその価値が担保され有利に働きます。
ここでは具体的にGXの経験を積む方法について解説させていただきます。
・ボランティア活動やインターンシップを利用する
GXでの経験を積む最も効率的な方法は、NGOや環境保護団体のボランティア活動に参加し、GX関連のプロジェクトに参加することで実績を積むことです。
GX人材としての転職に向けて、GX関連のプロジェクトのボランティア活動に参加することで実績を作り、転職時のアピール材料として利用する道がこれにあたります。
休みの日を使い、プロジェクトに参加するなど、関わり方を工夫すれば仕事に従事しながらも経験を積むことができます。
・現在の職場での関連プロジェクトへの関与
現在の職場でエネルギー効率化やサステナビリティ関連のプロジェクトに参加する機会を探すことでも経験を積むことができます。
現在働いている職場でGXに関連した業務に携わることで、GX分野での経験を積み上げることができ転職時のポートフォリオとして活用できます。
ステップ3:継続的なインプットや人脈の形成
GXの分野は急速に成長しており、新しい技術のほか政策の更新であったり各種規制などの変化が激しい市場です。そのため、GX人材としての転職に向けて、業界で人脈作りを始め情報収集を効果的かつ効率的に進めていく必要があります。
以下に具体的なステップを記していきますので参考にしてください。
・GX関連イベントやセミナーに参加する
エネルギーイノベーション総合展などの環境関連の展示会、セミナー、関連イベントに参加し、GX関連に従事する業界人と接触をはかり人脈を築いていく方法がこれにあたります。
GX関連のイベントやセミナーに参加することで最新のトレンドなどを把握することもできますし、GX業界に関わる人との人脈を築くことができます。
また環境関連のオンラインコミュニティやフォーラムなどに参加することでも、GX業界人と親しくなれる機会を得ることができます。
・SNSやコミュニティなどを活用する
各種SNSを利用しGX分野に従事している業界の専門家との繋がりを構築する方法もあります。
GX業界の専門家が発信する情報を参考にすれば業界の事情などに関しても詳しくなりますし、GX分野の求人情報を見つける機会が広がるなど可能性が広がります。
ステップ4:求職活動と応募活動
実際にGX人材として転職活動をする際は下記を参考にして進めてください。
・企業や自治体に直接応募する
エネルギー関連への関心が深い、建設業、製造業などのGXへの取り組みが進んでいる企業や自治体を探し出し、直接応募する方法です。
GX関連に関わる企業では、GX戦略を策定しており脱炭素やエネルギー効率向上に向けた人材を求めているため転職しやすい傾向にあります。
まとめ
GX分野は新しい技術や新しい政策が頻繁に更新されるため、その変化が目まぐるしい業界です。
そのためGX人材として転職し、GX人材として業界で活躍するには常に新しい技術をキャッチアップする姿勢が必要になります。
継続的な学びの環境を用意することはもちろんですが、GX分野でのキャリアアップを意識して、ぜひ学習を進めていってください。
弊社でもGX人材の転職に向けてのキャリアアップにつながる学びの環境をそれぞれのステージに合わせて用意しておりますので、効果的にご活用いただきあなたのGX人材としての転職、並びにキャリアアップに向けて学習を進めていただけたらと嬉しく思います。
>>>GX(グリーントランスフォーメーション)推進に向けた人材育成プログラム
また環境省認定制度『脱炭素アドバイザー ベーシック』の資格取得は下記から資格取得いただけますのでご活用ください。
>>>環境省認定制度『脱炭素アドバイザー ベーシック』はこちらから検定を受けていただくことで資格取得していただけます。
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