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世界と日本の地球温暖化対策とは?企業の取組事例までわかりやすく解説

地球温暖化による気候変動の影響は深刻さを増しており、過去50年で平均気温は約1℃上昇しました。こうした状況に対し、世界や日本ではどのような対策を講じているのでしょうか。

本記事では、地球温暖化のメカニズムから各国の対策事例、企業の取り組みまで幅広く解説します。

地球温暖化とは

まずは地球温暖化の仕組みについて詳しく解説していきます。

温暖化の原因と仕組み

地球温暖化とは、人間活動によって排出される温室効果ガスの濃度が高まり過ぎて、地表の温度が過度に上昇する現象をいいます。温室効果ガスの種類は、CO2(二酸化炭素)をはじめとしたメタンや一酸化二窒素、フロンガスなどです。これらの温室効果ガスには地表からの赤外線の熱を大気に蓄積し、地表に戻すという温室効果の性質があります。

地球温暖化による急速な気温上昇

近年は温室効果ガスが増加し続けているため、温暖化に拍車がかかり、深刻な気温上昇を招いています。世界の年平均気温は産業革命以前と比較して1.09℃、日本においては、過去100年で1.28℃上昇したといわれています。世界の平均気温は長期的には100年あたり0.76℃の割合で上昇しています。特に1990年代半ば以降、高温となる年が増えています。

出典:世界の年平均気温偏差の経年変化(気象庁)

地球温暖化の深刻な影響

地球温暖化による影響にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは次の3つの視点から解説していきます。

  • 気候変動・災害の増加
  • 生態系への影響
  • 経済危機

気候変動・災害の増加

地球温暖化による気候変動は世界に深刻な災害を発生させています。たとえば山火事による森林の焼失は、この20年間で2倍近くに増加しました。気候変動が引き起こす猛暑が乾燥を招き、森林火災につながっていると言われています。また世界中で豪雨や雷雨が多発し、各地で冠水や洪水、土砂災害などの被害が多発しています。日本では、1時間に50ミリ以上になる豪雨の割合が、約40年前の1.5倍に増加しました。

生態系への影響

地球温暖化は生態系にも大きな影響を与えています。気温上昇による気候変動は、森林や植物、そして多くの生物の減少を招きます。気候変動の影響による絶滅危機種は西暦2000年以降、急激に増加しています。2010年では、絶滅危機種は600種近くに上り、2020年には4,000種にまで増加し、現在も増え続けています。

経済危機

地球温暖化は経済活動にも多大な影響を生じさせます。世界経済フォーラムの報告によると、気温が24〜26°Cを超えると労働の生産性が低下することが判明しています。国際労働機関(ILO)によると、2030年までに世界の総労働時間の3.8%が、気温上昇による影響で失われる可能性が高いことを伝えました。これはフルタイムの労働換算では、1億3,600万人分の雇用に相当し、世界の経済損失は2兆4,000億ドルに達すると考えられています。

参照:気候危機が、仕事と労働者に与える3つの影響(世界経済フォーラム)

>>>「気候変動を巡る国際イニシアチブの最新動向をダウンロードする」

GX検定監修者より

地球温暖化の現状と深刻な影響は、すでに生活に影響を及ぼしており、直視すべき喫緊の課題です。
影響の範囲は広域であり、一つの事象が多方面へ影響を与えあい、拡大しています。
まずは人間の活動との密接な関係を理解し、影響を認識したうえで対策について考えていきましょう。

地球温暖化対策とは

では、地球温暖化を抑止するためにはどのような対策が有効なのでしょうか。ここでは温室効果ガス削減の重要性とカーボンニュートラルについて解説します。

地球温暖化対策には温室効果ガス削減が有効

地球温暖化の対策には何より温室効果ガスの削減が有効です。世界の経済活動によるエネルギー起源のCO2排出量は2021年度336億トンにも上りました。「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」は、CO2の累積排出量と世界の平均気温の上昇は、比例関係があると報告しています。

出典:世界のエネルギー起源CO2排出量(環境省)

カーボンニュートラルの重要性

温室効果ガス削減にはカーボンニュートラルの考え方が重要です。カーボンニュートラルとは「人為的な発生による温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」です。わかりやすくいうと、温室効果ガス排出量を削減する努力をしつつ、削減しきれなかった分の温室効果ガスを、森林の植林活動や保全活動で吸収した除去量で「実質0」にすることをいいます。

日本は2020年に「2050年カーボンニュートラル宣言」を、世界に向けて発信しました。

出典:環境省「脱炭素ポータル」

カーボンニュートラルに関してはこちらでも解説しておりますので、ぜひご覧ください。

カーボンニュートラルとは|意味や企業の取り組み、推進するメリットをわかりやすく解説

GX検定監修者より

地球温暖化対策は、地球温暖化の進行を食い止める「緩和策」と温暖化による影響を軽減させる「適応策」があり、本記事では「緩和策」としての温室効果ガス排出削減の取り組みをご紹介しています。
IPCCによると2030年までの期間の私たちの選択と行動は、この先何千年までも影響を与え続ける分岐点となると言われています。
将来への影響を最小化するために対策を実行しましょう。

世界や日本の取り組みの現状

パリ協定以降、2021年4月時点で125カ国・1地域が、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しています。

国名 2030年目標
米国 2005年度比で50~52%削減
中国 2030年度までに排出量を削減に転じる
EU 1990年度比で55%以上削減
英国 1990年度比で68%以上削減
日本 2013年度比で46%削減

世界の地球温暖化対策の取り組み

ここでは世界の温暖化対策として、アメリカ、中国、EUの具体的な取り組みを紹介します。

アメリカ

バイデン大統領は、2022年インフレ抑制法案(IRA)に署名し、気候変動対策を推進することを宣言しました。そして米国の温室効果ガス排出量を、2030年までに10億トン削減すると述べています。IRAは農業保護に195億ドルを歳出し、米国農務省の都市・コミュニティー林業プログラムを拡大。さらに地球温暖化から守るための植林プロジェクトを実施します。また2030年までに米国で購入される新車の50%を、EV(電気自動車)にするという目標も設定されました。

参照:アメリカンビュー(アメリカ大使館)

中国

中国は世界最大のエネルギー消費国であり、多くのCO2を排出している国です。しかし習近平国家主席は2020年9月、国連総会で2030年までのカーボンピークアウト、2060年までの実質的なカーボンニュートラル達成目標を表明しました。そして2021年には、「カーボンピークアウトとカーボンニュートラルの完全、正確かつ全面的な実施に関する意見」を発表し、エネルギー消費やCO2排出、森林カバー率などの目標と全体方針を掲げています。

参照:カーボンニュートラル達成に向けた中国政府、企業の対応状況(日本貿易振興機構)

EU

これまでも世界の地球温暖化対策をリードしてきたEUは、2050年までに世界初の気候中立国となる目標を掲げ、「欧州グリーンディール」政策を発表しました。2030年までの温室効果ガスの削減を、1990年比で55%以上にするという目標を掲げています。目的達成のために再生可能エネルギーに関するEUの目標の引き上げや、世界貿易機関(WTO)ルールに準拠した「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」の導入を定めた「Fit for 55」法案を発表しています。

参照:世界の最先端を行くEUの気候変動対策(EU MAG)

また「国連気候変動枠組条約締約国会議」であるCOP29が、2024年11月11日から11月22日までアゼルバイジャンのバクーで開催されます。COP29ではより高いレベルで気候変動対策を推進し、持続可能な開発目標の達成に向けた話し合いが行われます。世界の地球温暖化対策はより加速していくでしょう。

COPについてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

「COP(Conference of the Parties)とは|COP29・COP30の最新動向と日本の取り組みを解説」

日本の地球温暖化対策の取り組み

それでは日本の地球温暖化対策について、さまざまな角度から解説します。

日本の地球温暖化対策の基本的考え方

日本では温室効果ガス削減の中期目標として、2030年度において温室効果ガスを2013年度から46%削減、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていくことを掲げています。そのために次のような対策が行われています。

また政府が実施する具体的な取り組みは、企業における対策としても活用できる点が多くあるため、ぜひ参考にしてください。

政府の温暖化対策への取り組み 具体的な措置
再生可能エネルギーの最大限の活用
  • 建築物及び土地における太陽光発電の最大限の導入を図る
  • 蓄電池や燃料電池を積極導入する
建築物の建築、管理等に当たっての取組
  • 建築物における省エネルギー対策を徹底する
  • 建築物の建築等に当たっての環境配慮の実施
  • 新しい技術の率先的導入
財やサービスの購入・使用に当たっての取組
  • EV(電気自動車)の導入
  • 再生可能エネルギー電力調達の推進
  • 省エネルギー型機器の導入等
事務・事業に当たっての温室効果ガスの排出の削減等への配慮 廃棄物の3R+Renewableの推進
ワークライフバランスの確保・職員に対する研修等
  • 職員に対する地球温暖化対策に関する研修の機会の提供、情報提供
  • 職員に対する脱炭素型ライフスタイルの奨励
各府省庁の実施計画の策定 各府省庁は、温室効果ガスの排出の削減並びに吸収作用の保全及び強化のために「実施計画」を策定する等
政府実行計画の推進体制の整備と実施状況の点検 政府実行計画の推進・点検については、地球温暖化対策推進本部幹事会に実施する

引用:政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の削減等のため実行すべき措置について定める計画(環境省)

2050 年カーボンニュートラル実現に向けたGX戦略

日本ではGX(グリーントランスフォーメーション)を促進するために、経済産業省が中心となり、関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しています。2兆円を投資して「グリーンイノベーション基金」を創設し、成長が期待される14の重要分野、次世代太陽光発電や低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなど、革新的な技術開発に挑戦する企業を支援する方針です。

GXについてはこちらの記事をご覧ください。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?意味やメリット、取り組み事例などをわかりやすく解説

GX検定監修者より

世界や日本の状況は刻々と変化し続けています。
直近では、米国はトランプ政権に変わり、パリ協定の離脱やIRAの見直し等米国としての地球温暖化対策についての方向転換が懸念されていますが、日本では国として喫緊の課題と捉えており、対策を継続する意向を示しています。
2月には第7次エネルギー基本計画やGX2040ビジョンが閣議決定されるなど、目標に向けて速度をあげて進んでいます。
(2025年5月改訂のGX入門講座はどこよりも早く情報をアップデートしており上記のポイントを解説しています。)

企業が取り組むべき地球温暖化対策とは


地球温暖化に対して企業はどのような対策を取るべきでしょうか。重要なポイントとして以下の3つを挙げることができます。

省エネルギーの促進

企業において省エネルギーを促進することは、自社の資源の無駄や設備の見直しを図ることに繋がります。積極的な省エネ対策を進めることで、地球温暖化の抑止に貢献するとともに自社の経済効率を高めることも可能です。

再生可能エネルギー導入

温室効果ガス削減には、化石エネルギーの減少が重要です。そのためには、CO2排出の少ない再生可能エネルギーを促進する必要があります。日本の再生可能エネルギー導入率は、2011年度は10.4%でしたが、2022年度には21.7%と約2倍に上昇しており、PPAモデルによる市場も拡大しています。導入によるコストは年々減少しているため、再エネを活用する企業は増加しています。

再生可能エネルギーについてはこちらでも詳しく解説しています。

再生可能エネルギーとは?種類や特徴、メリット・デメリットを解説

サステナビリティ経営推進

次世代に持続可能な社会を残すことは、企業の義務といっても過言ではありません。そのためには経営戦略にサステナブルな視点を盛り込むことが大切です。サステナビリティ経営とは、環境保全や社会課題・経済発展を考慮しながら事業の持続可能性(サステナビリティ)を目指す経営方式です。

サスティナビリティ経営についてはこちらにも詳しく解説しておりますのでご覧ください。

サステナビリティ経営の基本と成功事例:CSR・ESG・CSVとの違いを比較

企業の地球温暖化対策事例

ここでは実際の企業の地球温暖化対策事例をご紹介します。

住友商事

住友商事は2021年の重点施策として、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する次世代事業の創出を掲げました。脱炭素を達成するには環境負荷低減と経済成長を両立する持続的なエネルギーサイクルが必要であると定義し、新たな営業組織として「エネルギーイノベーション・イニシアチブ」(EII)を新設しています。

出典:住友商事×脱炭素、地産地消(住友グループ広報委員会)

シャープ株式会社

シャープは地球温暖化対策を経営の重要課題として、2019年に「自社活動のCO2排出量ネットゼロ」を含む長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」を策定しました。また、長期環境ビジョンの達成に向け、CO2排出量を2030年までに40%削減、2035年までに60%削減という中期環境目標を設定しています。

出典:サスティナビリティ(シャープ株式会社)

GX検定監修者より

日本が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現には、企業の協力は欠かせません。
設備面がかかわることも多く、コストと感じてしまいがちですが、中長期的な観点で見るとコスト削減につながります。
企業によってはサプライチェーン全体での取り組みを求め、取引の条件として温暖化対策が提示されています。
企業が存続するために必須の条件となっているため、しっかりと計画を立てて取り組みを進めることが重要です。

まとめ

地球温暖化対策について、世界や日本の取り組みを具体的に紹介し、企業としてどのように取り組むべきかを解説しました。

地球温暖化対策を推進するためには、温暖化についての正しい知識の装着が第一歩となります。GXや脱炭素・カーボンニュートラルの知識については環境省認定のGX検定で身につけることが可能です。

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GXメディア編集部
GXメディア編集部
GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。