ダボス会議とは?テーマやメンバーからサステナビリティ関連まで解説
ダボス会議とはなにかご存知でしょうか。ダボス会議とはスイスの「ダボス・クロスタース」で開催される世界経済フォーラムのことです。
本記事ではダボス会議について、これまでのテーマや歴史、ダボス会議の役割、日本代表までわかりやすく解説します。またサステナビリティとの関連についても言及しますので、さまざまな角度からダボス会議の知見を深めることが可能です。
ダボス会議とは
ダボス会議とは世界経済フォーラムのことです。ここではダボス会議の目的や沿革を解説します。
ダボス会議とは世界経済フォーラムのこと
1971年に非営利財団として設立された世界経済フォーラム「WEF(World Economic Forum)」は、スイスのジュネーブに本部があります。年に一度、「ダボス・クロスタース」で会議が開催されるため、一般的にダボス会議と呼ばれています。
ダボス会議の目的
社会には複雑な課題が山積みになっています。それらの課題を解決するためには官民が連携し、グローバルな取り組みが必須です。世界経済フォーラムは、ドイツの経済学教授であるクラウス・シュワブ教授による「ステークホルダー理論」をもとに創立されました。「ステークホルダー理論」とは従業員、供給業者など、ステークホルダーすべてに利益をもたらすべきという考え方です。
世界経済フォーラムはステークホルダー間の信頼を確立し、協力と進歩のためのイニシアチブを構築します。そしてグローバルかつ、公平な非営利のプラットフォームを提供しています。
ダボス会議の歴史
ダボス会議のこれまでの歴史を簡潔にご紹介します。
年代 | 事象 |
---|---|
1971年 | 第1回年次総会 |
1976年 アラブ世界と欧米の橋渡し |
第四次中東戦争後、緊張関係にあった 欧米とアラブ諸国はダボス会議において、第1回アラブ・ヨーロッパ事業協力シンポジウムを両国で共催しました。 |
1987年 | 冷戦終結の始まり |
1988年 | ギリシャ、トルコ間の戦争を回避 |
1990年 ドイツの統合と新しい欧州 |
ダボス会議では、東西ドイツ議員やビジネスリーダーが一体となり、東ドイツの通貨安定化プログラムの実施を要求しました。東西ドイツの経済統一支柱となり、1990年10月にドイツは統一されたのです。 |
1992年 | マンデラとアパルトヘイトの終結 |
1998年 G20の誕生 |
アジア市場に影響を及ぼす金融危機や、世界的な金融システムの改革について議論されました。これをきっかけに2009年9月、米国ピッツバーグで開催された世界首脳会議で、国際経済協調主要フォーラムとしてG8に代わり、G20がなることが宣言されました。 |
1999年 コフィー・アナン氏とグローバルコンパクト |
1万の企業が署名し、10の倫理原則を軸とする国連グローバルコンパクトが生まれました。 |
2000年 | ビル・クリントン氏とGAVI創設 |
2002年 | 「ダボスで行う年次総会」、米同時多発テロ事件を受け、ニューヨークへ移設 米国同時多発テロ事件を受け、米国民との連帯を示すために、世界経済フォーラムは、この年の年次総会会場をニューヨークへ移設しました。 |
2005年 ジェンダー・ギャップレポートを初めて発表 |
「女性の参画:グローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)の測定」を開始しました。 |
2007年 | 迫り来る金融危機 |
2012年 | ヤングリーダーのコミュニティ 20代の卓越した新進リーダーである「グローバル・シェイパーズ」が参加し、若者の関心や活動に対する重要性に焦点が当てられました。 |
2016年 第四次産業革命の理解 |
デジタル時代が及ぼす重要な影響を「第四次産業革命」という言葉で表現し議論しています。 |
2018年 | マネル(男性だけのパネル)ではない、本物のパネル |
2019年 自然界を脅かす緊急事態 |
環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏、英国のサー・デイビッド・アッテンボロー、霊長類学者のジェーン・グドール氏が、気候変動対策について緊急提言しました。 |
2020年 ステークホルダーが作る、持続可能で結束した世界 |
ダボスで開催される世界経済フォーラム第50回年次総会では、「ステークホルダー資本主義」に重点をおき、パリ協定と持続可能な開発目標 (SDGs)に向けた支援を提供していきます。 |
出典:世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ(世界経済フォーラム)
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ダボス会議の参加メンバーとは
ダボス会議に参加しているメンバーには、どのような立場の人がいるのでしょうか。ここでは世界と日本の参加メンバーをご紹介します。
世界のメンバー
2023年は、アメリカの元財務長官サマーズ氏や、著名な歴史家ファーガソン氏、過去に国務長官を務めたキッシンジャー氏などが参加しました。その他、ドイツのショルツ首相やEUのフォンデアライエン委員長など、多くの国家元首および政府代表、民間企業トップが集いました。
2024年にはアメリカのブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官、ウクライナのゼレンスキー大統領がメンバーとして参加しました。その他には中国の李強首相、フランスのマクロン大統領、スペインのサンチェス首相、イスラエルのヘルツォグ大統領など。企業のトップでは、マイクロソフトのサトヤ・ナデラCEO、セールスフォースのマーク・ベニオフCEO。さらに動物行動学者のジェーン・グドール氏ら研究者や、俳優のミッシェル・ヨー氏を含む多くのアーティストも名を連ねました。
日本のメンバー
2023年度、日本からの参加メンバーは河野デジタル大臣や西村経済産業大臣、後藤経済財政担当大臣が参加しています。企業からは株式会社商船三井の橋本剛社長が、日本の海運会社で唯一参加しました。
2024年度は、新藤経済再生担当大臣や河野太郎デジタル大臣などです。企業からはサントリーホールディングス社長の新浪剛史氏、商船三井社長の橋本剛氏、ソニーグループ会長の吉田憲一郎氏、元JAXA宇宙飛行士の野口聡一氏などが参加しています。
ダボス会議の果たしてきた役割
ダボス会議の歴史でも前述した通り、これまでダボス会議は多くの役割を果たしてきました。ここでは代表的な事例として、次の3つを詳しくご紹介します。
- ギリシャとトルコ間の戦争を回避
- アパルトヘイトの終結
- ワクチン接種で命を救う
ギリシャとトルコ間の戦争を回避:1988年
ギリシャ、トルコ間の緊張関係は1988年に戦争寸前まで悪化しました。しかし、年次総会の個別会談において、トルコのトゥルグト・オザル首相とギリシャのゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ首相は信頼関係を樹立し、対立を回避したのです。
アパルトヘイトの終結:1992年
反アパルトヘイト運動のリーダーでアフリカ民族会議の議長だったネルソン・マンデラ氏は、南アフリカ共和国のF・W・デクラーク大統領、クワズールー・ホームランドのマンゴスツ・ブテレジ首長と、南アフリカ外で初の三者会談を行いました。紆余曲折ありつつも、この会談から同国の民主化に向けての一歩が始まり、アパルトヘイトの終結に結びつきました。
ワクチン接種で命を救う:2000年
「ワクチンと予防接種のためのグローバル同盟(GAVIアライアンス)」が創設されました。GAVI創設期の支援者には、当時の米国大統領ビル・クリントン氏の他にマイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏も含まれています。GAVIはその後、7億人を超える子どもに天然痘の予防接種を実施し、1,000万人超の命を救っています。
出典:世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ(世界経済フォーラム)
ダボス会議のテーマとは
ダボス会議ではその年ごとにテーマが決められます。どのようなテーマがあったのか見ていきましょう。
これまでのテーマ
ダボス会議の過去7年間のテーマを表にまとめました。
年代 | テーマ |
---|---|
2017年 | Responsive and Responsible Leadership(責任あるリーダーシップの要請) |
2018年 | Creating a Shared Future in a Fractured World(分断された社会で共通の未来を創る) |
2019年 | Globalization 4.0: Creating a Global Architecture in the Age of the Fourth Industrial Revolution(グローバリゼーション4.0 – 第4次産業革命の時代に形成するグローバル・アーキテクチャー) |
2020年 | Stakeholders for a Cohesive and Sustainable World(ステークホルダーがつくる、持続可能で結束した世界) |
2021年(コロナで中止) | The Great Reset(グレート・リセット) |
2022年 | History at a Turning Point: Government Policies and Business Strategies(歴史的転換点:政策とビジネス戦略のゆくえ) |
2023年 | Cooperation in a Fragmented World(分断化した世界における協力) |
2024年度のテーマ
ダボス会議の2024年のテーマは、「RebuildingTrust(信頼の再構築へ)」です。テーマの背景には価値観が多様化するなかでも、気候変動や食糧安全保障など世界共通の課題については、協力して乗り越えていく必要があるという意図があります。そして新たな機会の創出や、経済成長の追求につなげていくことを目指しています。
また次回2025年のダボス会議は、1月20日から24日に開催されます。世界のリーダーたちが集結し、重要なグローバルおよび地域の課題が議論されます。
ダボス会議とサステナビリティ
ダボス会議では、環境や働く人々の人権などサスティナビリティに関わるテーマも重要視しています。国連のSDGsが世界に注目されたのもダボス会議がきっかけでした。ここではダボス会議とSDGsの関係を詳しく見ていきましょう。
SDGsとの関わり
「SDGs(Sustainable Development Goals)」とは、2015年の国連総会で全会一致で採択された「我々の世界を変革する持続可能な開発のための2030アジェンダ」のことをいいます。日本語では「持続可能な目標」と訳され17の目標と、169のターゲットで構成されています。ここでは特にダボス会議との関連が深いテーマを解説していきましょう。
気候変動問題:SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」
SDGs目標13では、「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」ための具体的な項目が記されています。ダボス会議でも「気候、自然、エネルギーの長期戦略」として2050年までにカーボンニュートラルとネイチャー・ポジティブの目標を達成するための取り組みについて言及しています。
ステークホルダーとの関係:SDGs目標8「働きがいも経済成長も」
「新しい時代の成長と仕事の創出」としてダボス会議では、人々をより豊かな軌道の中心に据えるために、政府、企業、市民社会による新たな経済的枠組みを模索しています。これはSDGs目標8「働きがいも経済成長も」に深く関わっており、ステークホルダーを中心としたディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進することにつながります。
サーキュラー・エコノミー :SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」
サーキュラー・エコノミーとは、循環型経済のことです。商品やサービスのリサイクルや再利用を促進することで循環型の経済を目指します。持続可能な社会構築には欠かせない取り組みで、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に深く関わります。世界経済フォーラムでは、オープンイノベーションプラットフォームであるアップリンク(UpLink)とアクセンチュアが、このようなソリューションに取り組むスタートアップ企業を発掘するために、イノベーション・チャレンジを開始しています。
サーキュラー・エコノミーに関してはこちらの記事もぜひご覧ください。
サーキュラー・エコノミーとは:取り組んでいる10社の事例も紹介
まとめ
世界経済フォーラムであるダボス会議について目的や沿革、SDGsに関連する内容などを網羅的に解説しました。
ダボス会議をはじめとした世界の経済情勢や環境課題について知見を深めることは、企業の展望を開きます。
そのためにはSDGsや環境課題についてもしっかりとした知識を身につけることが大切です。それには「GX検定」がおすすめです。
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