サーキュラー・エコノミーとは:取り組んでいる10社の事例も紹介
サーキュラー・エコノミーは、経済活動において廃棄されていた原材料や製品などを資源とみなして再利用することで、資源の循環を可能とする経済システムとして注目されています。
しかし、サーキュラー・エコノミーの一般的な認知度は低く、詳細まではあまり知られていません。
そこで本記事では、サーキュラー・エコノミーとは何か確認した上で、サーキュラー・エコノミーの3原則やサーキュラー・エコノミーが求められている理由、導入企業などについて解説します。
サーキュラー・エコノミーとは
サーキュラー・エコノミーとは、日本語訳では循環型経済です。リサイクルや再利用を前提に商品やサービスを設計し、新たな資源の投入量や消費量をできる限り抑えることで循環型の経済を目指します。
サーキュラー・エコノミーでは、経済活動において廃棄されていた原材料や製品などを資源とみなし、再利用するという資源の循環を目指す取り組みを実施します。また、廃棄物や汚染などの発生を抑えた製品、およびサービスの設計を行うことで循環型の経済システムを実現に導きます。
近年、世界的な人口増加や経済成長などを理由に、大量生産と大量消費が繰り返されています。そうした中で、処理できなくなった廃棄物が自然環境を汚染し、生態系に甚大な被害を与えています。地球環境を守り、社会を持続させるためには循環型の経済システムへの移行は必須といえるでしょう。
サーキュラー・エコノミーの循環システム
出所:経済産業省https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ce_finance/pdf/001_02_00.pdf
従来の循環システムでは、利用した製品は廃棄されるのが一般的でした。まだ使用できるものでも廃棄されることも多く、リサイクルできる製品や材料などもごみとして扱われることも珍しくありません。
一方、サーキュラー・エコノミーでは利用後にメンテナンスを施した上で再利用を行うほか、再販売やリファービッシュ、再製造を行います。
そのほかにも、利用後に収集し、グローズドループ・リサイクルや循環資源サプライヤー、リサイクル材、副産物の対象とし、素材加工をした上で再利用をすることもあります。
サーキュラー・エコノミーの3原則
サーキュラー・エコノミー推進団体であるエレンマッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として以下の項目を示しています。
- 廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)にする
- 製品と原料を使い続ける
- 自然システムを再生する
資源を循環させるため、製品を生み出す前のデザインの段階から廃棄物・汚染の排除を織り込むなど、事業活動を根本から変えようとしています。商品やサービスの設計に関わる人は、サーキュラー・エコノミーへの理解が必須になるでしょう。
サーキュラー・エコノミーと3Rとの違い
サーキュラー・エコノミーと混同されがちな言葉として3Rがあります。3RとはReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字を取った言葉です。
Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の意味を解説します。
- Reduce(リデュース) ごみの発生を削減する
- Reuse(リユース) 同じものを繰り返し利用する、もしくは再利用する
- Recycle(リサイクル) 廃棄物を資源とみなして再活用する
3Rは廃棄物の排出量を減らしたり(リデュース)、再活用したり(リサイクル)することを目指していますが、廃棄物が出ることが前提です。
一方、サーキュラー・エコノミーが前提とすることは、廃棄物と汚染を発生させないという考え方にあります。製品を製造する際に再利用やリサイクルしやすい設計にしたり、メンテナンスやシェアリング、リースを行い利用効率を高めることも重要視されています。
サーキュラー・エコノミーが求められている理由
現在、日本だけでなく、世界的にもサーキュラー・エコノミーが求められています。
サーキュラー・エコノミーが求められている理由として、以下の3つの理由が挙げられます。
- 資源リスクの顕在化
- 廃棄物処理システムの機能不全
- 気候変動
それぞれについて詳しく解説していきます。
資源リスクの顕在化
現在、世界全体でみると人口増加が問題になっています。日本では人口減少が問題となっていますが、 2050年には世界の人口が97億人に達すると予想されています。
人口が急激に増加すると、資源や食料、エネルギーなどをすべての人たちに行き渡らせることが困難になります。また、人口が増えると、エネルギーの消費量も増えるため、エネルギーの枯渇問題も深刻化するといわれています。
廃棄物処理システムの機能不全
これまで日本は、一定の廃棄物の処理は自国内で行うものの、処理しきれなかった廃棄物の大部分はアジア諸国へ輸出し、外国が代わりに日本の廃棄物を処理してきました。しかしアジア諸国の廃棄物輸入規制の影響で、これまでに輸出してきた廃プラスチックや古紙、廃電線が国内に滞留している状態です。
また、廃棄物を原料として受け入れを行っている産業も国内では斜陽傾向にあり、将来的に循環システムを維持していくことが難しくなっています。
このような問題を解消するためには、国内の資源循環システムの見直しが必須になっています。
廃棄物を原料として受け入れを行っている産業も国内では斜陽傾向にあり、将来的に循環システムを維持していくことが難しくなっています。こうした問題を解消するためには、国内の資源循環システムの見直しが必須です。
気候変動
地球には、地球表面の温度を適度に保つ役割があります。二酸化炭素や水蒸気といった微量成分は人類が誕生する前から地球の温度を適度に保ってきました。しかし、人間の社会活動の中で大気中の二酸化炭素が増加し、温室効果が高まった結果、地球表面の温度は上昇しつつあります。
エレン・マッカーサー財団のレポート「COMPLETING THE PICTURE」によると、温室効果ガス排出の有効的な対策案として、サーキュラー・エコノミーが挙げられています。
サーキュラー・エコノミーに取り組んでいる企業の事例を紹介
国内外における多くの企業がサーキュラー・エコノミーを意識した取り組みを行っています。ここでは、国内大企業、国内中小企業、外資系企業に分けて、各企業が実施している取り組みを見ていきましょう。
国内大企業
国内大企業の中にはサーキュラー・エコノミーの取り組みを実施している企業が多くあります。
ここでは、以下5つの企業の取り組みを紹介します。
- ダイキン
- ミツカングループ
- 三菱ケミカル
- 日揮グループ
- メルカリ
それぞれについて詳しく解説していきます。
ダイキン
ダイキンは資源の効率的な使用を目指すため、生産工程で発生する排出物の削減や再資源化、製品や包装材の省資源化、リサイクルしやすい製品設計などを実行しています。
電気ノイズ除去フィルタの包装は、公益社団法人日本包装技術協会主催「2019 日本パッケージングコンテスト」の工業包装部門賞、世界包装機構( WPO:World Packaging Organisation )主催「ワールドスターコンテスト 2020」のワールドスター賞を受賞しています。
この梱包は品基板の下部を段ボールの下敷きで浮かせ、基板の枠を中敷きで固定するというシンプルな仕様が特徴です。このような工夫を施した仕様によって包装材使用量を削減しています。
ダイキンのこれらの環境に配慮した取り組みは高く評価されています。
参考:製品での資源の有効活用 | 資源の有効活用 | ダイキン工業株式会社 (daikin.co.jp)
ミツカングループ
ミツカングループは京都市と連携した取り組みを実施しています。家庭の残り野菜を活用した、もったい菜(な)漬(づ)けのレシピを共同開発し、食品ロスを目指しています。
野菜をもったい菜(な)漬(づ)けにすることで、冷蔵庫に残っている野菜や捨ててしまいがちな部分のロスの削減が期待できます。また酢の抗菌効果は身体によく、健康促進効果があります。そのほかにも、もったい菜(な)漬(づ)けを常備しておけば、忙しい日の一品としても重宝するはずです。
参考:ミツカングループ×京都市 食品ロス削減取り組み第二弾 │ミツカングループ企業サイト (mizkan.co.jp)
三菱ケミカル
三菱ケミカルはリニア・エコノミーからサーキュラー・エコノミーへの移行を推進し、社会からの要請に応えた会社の持続的成長を目指しています。具体的な取り組みとして、CEの推進を行う専門部署の設置や、廃プラスチック、気候変動問題への取り組みなどが挙げられます。
また、ENEOS株式会社と共同して、使用済みプラスチックを石油精製・石油化学の原料として再生利用を行う事業化にも取り組んでいます。
さらに、三菱ケミカル茨城事業所に年間2万トンの処理能力をもつプラスチックの油化設備を建設し、2023年度の営業運転開始を目指しています。製造されるリサイクル生成油は、ENEOSと三菱ケミカルの既存設備である石油精製装置やナフサクラッカーで原料として使用し、石油製品や各種プラスチック、化学品へと再製品化する予定です。
参考:持続可能な成長をめざすサーキュラーエコノミー|サステナビリティ|三菱ケミカル株式会社 (m-chemical.co.jp)
日揮グループ
日揮グループは廃プラスチックや廃繊維のケミカルリサイクル、使用済み食用油を用いた次世代航空燃料製造などを実施しています。
同グループの注目すべき事業の一つとして、繊維to繊維を実現するケミカルリサイクル技術が挙げられます。この技術を用いることで、マテリアルリサイクルでは困難な原料中の染料や不純物などの除去はもちろん、石油由来のバージン品に匹敵する品質のリサイクルチップの製造の実現が期待できます。
また、将来的には繊維製品を含む衣料品やボトルなどのポリエステル製品のクローズドループを実現することを目指しています。
参考:資源循環 | 事業紹介 | 日揮ホールディングス株式会社 (jgc.com)
メルカリ
メルカリは個人間で不要になったものを売買し、製品を継続して使うことを促すビジネスモデルであり、サーキュラー・エコノミーを推進しています。
同社はこのようなビジネスモデルのほかにも、リユースできる梱包材メルカリエコパックを開発し、包装材の循環も行っています。そのほかにも、サーキュラー・エコノミー推進団体への寄付などにも積極的です。
参考:株式会社メルカリ | Circular Economy Hub – サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア (cehub.jp)
国内中小企業
国内中小企業の中にもサーキュラー・エコノミーの取り組みを実施している企業があります。
ここでは、以下2つの企業の取り組みを紹介します。
- 山翠舎
- 会宝産業
山翠舎
山翠舎は環境に配慮した企業として、2019年に長野県SDGs推進企業に第1期登録しています。古民家の解体から古木にまつわる一連のシステムを「古民家・古木サーキュラー・エコノミー」として体系化したことが評価され、2020年にはGOOD DESIGN賞を受賞しました。そのほかにも、社員に対するSDGs教育に力を入れています。
同社は入手ルートが明確、かつ高品質な古民家から得られる古い木材を「古木」と名付け、商標を取得しています。事業としては古民家の解体から設計、施工までを一貫して引き受けています。古民家が取り壊され、廃棄されている材木をもったいないと考え、活用したいという思いから生まれた事業です。
同社はカフェや居酒屋、書店など幅広く建物を手掛けています。いずれも古木が活かされた建築となっています。
参考:山翠舎 サーキュラーエコノミー – 検索 (bing.com)
会宝産業
会宝産業は石川県に所在する自動車リサイクル会社です。中古部品の海外輸出を主な事業とし、世界約90カ国で中古部品の取り引きを実施しています。
また、同社は循環型社会の実現も目指しています。その一つの取り組みとして、途上国でのリサイクル工場の建設が挙げられます。途上国における廃車の不法投棄の問題に目を向け、リサイクル工場などを建設して解体技術を伝承しています。
同社は2017年に、国連開発計画(UNDP)が主導するビジネス行動要請(BCtA)への加盟が承認されており、これは日本の中小企業としては初の快挙です。
参考:https://mbp-japan.com/jijico/articles/32208/
外資系企業
サーキュラー・エコノミーは世界的にも重要視されていることから、外資系企業の中にもサーキュラー・エコノミーに関する取り組みを実施している企業が多くあります。
ここでは、以下の3つの企業の取り組みを紹介します。
- NIKE
- adidas
それぞれについて詳しく解説していきます。
NIKE
アメリカの大手スポーツ用品店NIKEは全製品のうち75%で再生素材を活用しています。再生素材は衣服や靴用途の化学繊維、服の縁取り(トリム)、靴のソールなどで多く使用されています。また、トリムには靴底のクッション材を再利用しており、回収したソールは一度粉砕した上で使用しています。
また、箱詰めなどで使用しているボール紙や用紙のリサイクル素材使用率は84%を維持しており、商品だけではなく、梱包においても再生素材を活用しています。
参考:【アメリカ】NIKE、再生素材を一部活用した製品割合が75%に到達。綿調達も大きく改善 | Sustainable Japan
adidas
adidasはスタンダードな素材の範囲の見直しを行い、天然素材やリサイクル素材を活用しています。また、環境に配慮した新素材の開発も進めており、海岸で回収されたプラスチックごみをアップサイクルした素材「PARLEY OCEAN PLASTIC」はその一つです。
その他にも、同社はAllbirdsと連携して一足当たりの二酸化炭素排出量を3kg未満に抑えたランニングシューズの製造にも成功しています。
参考:adidas | Circular Economy Hub – サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア (cehub.jp)
サーキュラーエコノミーとは?リサイクルやリユースと何が違うのか | コクヨのMANA-Biz (kokuyo-furniture.co.jp)
For the oceans -サステナビリティ- | 【公式】アディダスオンラインショップ -adidas-
Googleは廃棄物と汚染を生み出さない設計でプロダクトを製造し、限りある材料と資源を長期的に使用・再利用するための方法を模索しています。
また、Googleは2015 年からエレンマッカーサー財団のパートナーを務めており、その取り組みからヒントを得た「サーキュラー原則」があります。ビジネス全体で一貫性と再製造性の向上を目指し、最大限の影響力を目指した設計となっています。設計の初期の時点でサーキュラリティを組み込み、今作っているモノが未来のモノの資源となることを目指しています。
参考:サーキュラー エコノミーを実現するための取り組み – Google のサステナビリティへの取り組み (sustainability.google)
サーキュラー・エコノミーをビジネスチャンスととらえよう
近年、企業には自社の利益を拡大させていくことだけでなく、自然環境に配慮することも求められています。そうした中で注目されているものの一つとして、サーキュラー・エコノミーが挙げられます。
本記事で解説したようにサーキュラー・エコノミーは経済活動の中で廃棄されていた原材料や製品などを再利用して資源を循環させる仕組みのことです。資源の枯渇や気候危機、生物多様性の喪失、貧困などの問題の解消を目指し、持続可能な社会を実現するためにはサーキュラー・エコノミーを実現することが求められています。
サーキュラー・エコノミーを導入している企業は大企業、中小企業ともに少なくありません。これらの企業は自社の利益拡大とともに、企業責任として持続可能な社会の実現に貢献しているのです。
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参考資料
サーキュラーエコノミーとは?リサイクルやリユースと何が違うのか | コクヨのMANA-Biz (kokuyo-furniture.co.jp)
サーキュラーエコノミー(循環経済/循環型経済)とは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
【アメリカ】NIKE、再生素材を一部活用した製品割合が75%に到達。綿調達も大きく改善 | Sustainable Japan
adidas | Circular Economy Hub – サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア (cehub.jp)
製品での資源の有効活用 | 資源の有効活用 | ダイキン工業株式会社 (daikin.co.jp)ミツカングループ×京都市 食品ロス削減取り組み第二弾 │ミツカングループ企業サイト (mizkan.co.jp)
持続可能な成長をめざすサーキュラーエコノミー|サステナビリティ|三菱ケミカル株式会社 (m-chemical.co.jp)
資源循環 | 事業紹介 | 日揮ホールディングス株式会社 (jgc.com)
サーキュラーエコノミーとは?企業ができることから事例まで解説|サスティナビリティハブ (sustainability-hub.jp)
サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の 取組について
製品での資源の有効活用 | 資源の有効活用 | ダイキン工業株式会社 (daikin.co.jp)
ミツカングループ×京都市 食品ロス削減取り組み第二弾 │ミツカングループ企業サイト (mizkan.co.jp)
持続可能な成長をめざすサーキュラーエコノミー|サステナビリティ|三菱ケミカル株式会社 (m-chemical.co.jp)
資源循環 | 事業紹介 | 日揮ホールディングス株式会社 (jgc.com)
山翠舎 サーキュラーエコノミー – 検索 (bing.com)
SDGsにもつながる「サーキュラー・エコノミー」とは? 中小企業の取り組み事例からビジネスチャンスを知る
adidas | Circular Economy Hub – サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア (cehub.jp)
サーキュラー エコノミーを実現するための取り組み – Google のサステナビリティへの取り組み (sustainability.google)
サーキュラーエコノミーとは?リサイクルやリユースと何が違うのか | コクヨのMANA-Biz (kokuyo-furniture.co.jp)
For the oceans -サステナビリティ- | 【公式】アディダスオンラインショップ -adidas-
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