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ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?仕組みや算定方法から事例まで解説

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品やサービスの資源調達から生産、流通、廃棄、リサイクルまで含めた一連の流れで生じる環境負荷を定量化し、評価する手法のことです。

企業が環境経営を行う上で有効な取り組みとなる手法のため、ライフサイクルアセスメント(LCA)について学ぶことは非常に重要です。

本記事では、ライフサイクルアセスメント(LCA)について概要やメリット、算定方法や企業事例まで網羅して解説します。ぜひ参考にしてください。

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ライフサイクルアセスメント(LCA)とは

ライフサイクルアセスメントの仕組みと注目される背景、そして混同されがちなScope3と、カーボンフットプリント(CFP)との違いについて解説します。

ライフサイクルアセスメント(LCA)の仕組み

ライフサイクルアセスメントとは英語で「Life Cycle Assessment」であり、「LCA」と略されることが一般的です。ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、簡単にいうと企業の環境負荷を定量化し可視化する手法です。

ライフサイクルとは、原料の調達から製造、流通、使用、廃棄、リサイクルに至る製品の一生のことです。ライフサイクルアセスメント(LCA)の手法は、ライフサイクル全体における各段階の資源や、エネルギーの投入量、排出物の量などを定量的に把握できます。そして環境への影響を評価して改善に向けた取り組みを促すことが目的です。


出典:再生可能エネルギー及び水素エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン(環境省)

サプライチェーン排出量Scope3との違い

サプライチェーン排出量とは「企業の事業活動におけるすべての温室効果ガス排出量」のことで、以下のようにScope1.2.3まで存在します。

Scope1 事業者による温室効果ガスの直接排出量
Scope2 他社からの電気や熱などのエネルギーによる間接排出量
Scope3 Scope1.2以外から間接排出されるすべての温室効果ガス。さらに15の活動範囲カテゴリに分類される

このようにScope3とは、サプライチェーンにおける温室効果ガスが排出の影響を受ける範囲のことです。ライフサイクルアセスメント(LCA)は、影響を算定し評価する手法のため意味が異なります。

Scope3については、こちらの記事もぜひご覧ください。

GHGプロトコルとは?基準やScope1.2.3の算定方法を解説

カーボンフットプリント(CFP)との違い

カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products)」は、CFPと略され、ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量をCO2に換算し、商品や各サービスにわかりやすく表示する手法です。ライフサイクルアセスメント(LCA)を活用した「CO2排出量に特化」した環境ラベルのひとつです。

カーボンフットプリント(CFP)については、こちらの記事もぜひご覧ください。

カーボンフットプリント(CFP)とは|計算方法や商品例、企業の取り組み事例を紹介

ライフサイクルアセスメント(LCA)が注目される背景

ライフサイクルアセスメント(LCA)が注目される背景には、カーボンニュートラル実現、企業の環境負荷低減や脱炭素への流れ、グリーンウォッシュ対策などの要因が挙げられます。特に近年、SDGsの推進により消費者の環境活動への関心が高まるなか、グリーンウォッシュに対する視線は厳しさを増しています。グリーンウォッシュとは、企業が上辺だけの環境活動を装い、実際は何も行っていないことをいいます。ライフサイクルアセスメント(LCA)はサプライチェーンを含めたすべての環境負荷を可視化するため、グリーンウォッシュ防止に有効です。

ライフサイクルアセスメント(LCA)のメリット


ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは次の3つの視点でメリットを解説していきます。

  • 企業の環境負荷を把握し活用可能
  • 多面的な評価が可能
  • 社会的地位の向上

企業の環境負荷を把握し活用可能

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、製品やサービスの一生における環境負荷の算定を行うため、企業のサプライチェーン全体の環境負荷を把握可能です。把握したデータは、企業のマーケティングに反映したり、自社の環境活動アピールに利用したりなど、あらゆる形で活かすことができます。

多面的な評価が可能

ライフサイクル全体のデータの収集や分析を行えるため、環境への影響を多面的に把握することが可能です。市場チェーン内で、改善の余地が最も大きい活動分野を明確に評価することができるため、企業の事業活動におけるシステムの最適化を図れます。

社会的地位の向上

一般消費者にも可視化可能なライフサイクルアセスメント(LCA)の取り組みは、企業としての信頼度や環境価値を高めることができます。近年、グローバルな経済活動において、脱炭素推進や気候変動対策は不可欠であり、信頼性の高い取り組みが重要視されます。前述したグリーンウォッシュに対する社会の厳しい目に対応するためにも、ライフサイクルアセスメント(LCA)での取り組みは大きなメリットがあります。

ライフサイクルアセスメント(LCA)の活用方法

ここではライフサイクルアセスメント(LCA)活用方法について、国際規格と環境ラベルの2点から解説します。

国際基準ISO規格

企業によって環境負荷の算定にばらつきがあっては、正確な検証を行うことは困難です。そのためライフサイクルアセスメント(LCA)の仕組みは、国際的なマネジメントシステム規格であるISOによって標準化されています。ISOによる評価の手順は次の通りです。

ISO14040 原則及び枠組みの決定
ISO 14044に統合された内容 ISO14041 目的・調査範囲を設定しインベントリ分析を実施
ISO14042 ライフサイクルにおける影響評価を実施
ISO14043 ライフサイクルの影響を解釈する

詳細な手法については、各々の目的に照らし合わせて実施することになっています。

環境ラベル

ライフサイクルアセスメント(LCA)の手法は、環境ラベルにおいても活用されています。カーボンフットプリント(CFP)以外にも、エコマークやグリーンマーク、エコリーフなどさまざまなものがあり、以下の3タイプがあります。

  • タイプI(ISO14024)「第三者認証」
  • タイプⅡ(ISO14021)「自己宣言」
  • タイプⅢ(ISO14025)「環境情報表示」

出典:ISOの環境ラベルに関する規格(環境省)

ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施・算定方法


ここからはライフサイクルアセスメント(LCA)の実施、算定方法を具体的に解説していきます。ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施・算定は、国際基準であるISO規格に準じます。

基本的な算定方法

ライフサイクルアセスメント(LCA)の、基本的な算定式は以下のようになります。

  • 環境負荷=環境負荷原単位×活動量

活動量とは事業者の活動の規模に関する量を表し、エネルギーの投入量や排出物の量が該当します。環境負荷原単位とは活動量あたりの環境負荷の量を表します。例えば温室効果ガス排出量を把握する場合は、電気1キロワットアワーあたりの排出量や廃棄物1トンあたりの温室効果ガス排出量がそれに該当します。

実施の流れ

ライフサイクルアセスメント(LCA)実施の流れは以下のようになります。

  1. 目的・調査範囲の設定
  2. インベントリ分析
  3. ライフサイクル影響評価

目的・調査範囲の設定

ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施には「目的と調査範囲の設定」を行わなくてはなりません。しかし企業の業務形態や業種により異なるため、目的意識と調査対象を明確にすることが必要です。またライフサイクルアセスメント(LCA)を実施後の対応を含めて、検討することが望まれます。

インベントリ分析

インベントリ分析では、収集したデータをインプットデータとアウトプットデータに分類し把握します。インベントリ分析を行うことで、ライフサイクルのどの段階でどれくらいの環境負荷があったのかを定量的に把握可能です。

ライフサイクル影響評価

ライフサイクル環境評価は、温室効果ガス排出量などが環境に及ぼす影響を評価します。製品の可視化されない部分の影響も評価対象であり、異なる環境影響を評価するためのさまざまな方法があります。例えば環境問題ごとに評価結果を示す方法、多種多様な環境問題への影響を集約して人間社会と生態系に与える影響を示す方法、あるいは、それらをまとめて一つの指標として示す方法などです。

ライフサイクルアセスメント(LCA)の課題

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、環境負荷を定量化するためには非常に有効な手法ですが、課題もないわけではありません。例えばデータ収集には、自社だけでなくサプライチェーンの上流や下流の企業にも協力してもらう必要があります。しかしデータが膨大な場合は、相当の労力やコストがかかるため、取引先の協力がスムーズにいくか困難な場合もあるでしょう。

また数値モデルが存在しないトピックについては、影響を分析できません。さらに専門的な知識も多く必要とします。そのためライフサイクルアセスメント(LCA)の手法を取り入れる場合は、社内で慎重に検討することが必要です。

海外と日本のライフサイクルアセスメント(LCA)の動向

ここでは世界と日本のライフサイクルアセスメント(LCA)への取り組みの動向を解説していきます。

海外のライフサイクルアセスメント(LCA)の取り組み

海外のライフサイクルアセスメント(LCA)の動向として、まずはEU加盟国全体の動きが挙げられます。EUは、建築物のエネルギー性能に関わる欧州指令( EPBD)の改正を行い、2024年、ライフサイクルGWPの算定および開示義務を含む改正案が欧州議会で承認されました。2028年1月以降には、1,000㎡以上の新築建築物にLCAを実施することが求められます。

また、EV(電気自動車)市場が急拡大している中国も、2025年にライフサイクルアセスメント(LCA)の導入を検討しているといわれています。

企業事例「ミシュラン」

フランスの多国籍タイヤ製造企業である「ミシュラン」は、タイヤの全ライフサイクルにおける環境負荷低減を掲げています。再⽣可能な素材を45%含む乗⽤⾞⽤タイヤと、58%含むバス⽤タイヤは、公道⾛⾏の承認を取得。さらに⾃社専⾨知識に加えて、スタートアップ企業とも連携しつつ、タイヤの全ライフサイクルにおける環境負荷低減の取り組みを実施しています。

出典:LCAに向けた⾃動⾞産業の取り組みと今後の課題〜ミシュラン北イタリア⼯場訪問の事例〜(デジタル庁)

国内のライフサイクルアセスメント(LCA)の活用事例

国内のライフサイクルアセスメント(LCA)の動向はどうなのでしょうか。ここでは「LCA日本フォーラム」と、国内の企業事例についてご紹介します。

LCA日本フォーラム

日本には、ライフサイクルアセスメント(LCA)に係わる産業界、学界、国公立研究機関の関係者が集うプラットフォームとして、「LCA日本フォーラム」が存在します。国内外の動向を踏まえ、ライフサイクルアセスメント(LCA)に対する啓発・普及活動を行うことで、持続可能な経済社会の実現を目指すことが目的です。

企業事例「旭化成」

旭化成グループでは、製品やサービスのライフサイクル全体で環境負荷低減に貢献している製品・サービスを「環境貢献製品」として社内での認定を実施しています。そしてこのような製品を積極的に展開することで、社会の環境負荷低減を推進しています。

出典:サスティナビリティ(旭化成)

企業事例「大日本印刷」

大日本印刷はライフサイクルアセスメント(LCA)を推進する「DNPライフサイクルCO2認証システム」に取り組んでいます。外部機関やステークホルダーを含めたカーボンニュートラルを推進する取り組みとして高く評価され、2022年度「LCA日本フォーラム会長賞」を受賞しています。

出典:ニュース(大日本印刷株式会社)

まとめ

環境負荷を把握するために重要な取り組みであるライフサイクルアセスメント(LCA)について、さまざまな角度から解説しました。脱炭素を推進する企業にとって不可欠な取り組みですが、ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施するためには、専門的な知識が必要です。

脱炭素化を推進し、社会に対して貢献したい企業担当の方は、スキルアップNeXt株式会社の人材育成プログラム「Skillup Green」をぜひご利用ください。

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GXメディア編集部
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GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。