2025年3月に公表された「SSBJ基準」が、いよいよ効力を発揮します※1。有価証券報告書での気候関連を含む情報の開示は、2027年3月期から時価総額の大きい企業を皮切りに、「記載すれば良い」段階から、算定根拠まで問われる段階へと移行していきます※2。改正省エネ法・温対法も施行済みで、2026年度からは日本版排出量取引制度(GX-ETS)が義務化を伴う第2フェーズに入っています。にもかかわらず、社内では「GXはサステナビリティ部門の仕事」という認識のまま止まっている企業が少なくないのではないでしょうか。
法人営業は顧客への提案内容を、サプライチェーン管理や調達を担う部門はサプライヤーへの要請を、人事は研修体系を、それぞれ見直す局面に入っています。担当が一部署に偏ったままでは、現場の実務が追いつきません。
*この記事は、株式会社スキルアップNeXtが提供するホワイトペーパー「GX検定を活用した職種別キャリアアップ・ロードマップ」の内容を再構成したものです。 資料をダウンロードする
なぜ今、「知っている」だけでは通用しなくなったのか
規制対応の局面が変わったことで、人材への要求水準も変わりました。リクルートの調査によると、GX関連の求人は急増している一方で、対応できる人材の供給が追いついていません※3。転職市場で人材を新たに獲得する動きだけでは、この差は埋まりません。だからこそ、既存の社員のスキルをアップデートする取り組みが急務になっています。
ここで求められる人材像は、環境の専門知識だけを持つ人ではありません。算定ルールやLCA、法規制対応といったグリーンスキルに加えて、論理的思考や社内調整力といったポータブルスキル、粘り強く周囲を巻き込むヒューマンスキルを掛け合わせて持つ人材です。
企業で本当に不足しているのは、研究者ではありません。脱炭素をビジネスモデルに組み込んで収益化できる企画・事業開発の担当者、顧客の課題をGXの文脈で解釈して提案できる営業やコンサルタント、多様な部署を巻き込んで実装まで完遂するプロジェクトマネジメントの担い手です。知識を持つ人材ではなく、実務を動かせる人材が不足しています。
GXは環境部門の専門知識ではなく、全職種の「OS」である
この状況を変える鍵は、GXを一部署の専門知識としてではなく、あらゆる職種の専門性に組み込むべき基本ソフトとして捉え直すことです。
既存の専門性にGXの実務実装力を掛け合わせると、他社には真似のできない市場価値が生まれます。専門力だけでは、国際規制や技術動向の変化に置いていかれてしまいます。実務実装力だけでも、自身の職域で成果を出す土台がありません。両方を併せ持つ人材が、組織の中で代替の利かない存在になります。
財務・経理、SCM・購買、IT・DX、法人営業、人事・総務、不動産・管財、金融・投資、法務・リスク管理、研究開発・設計、経営企画・コンサル。これらの職種は「攻め・守り」「内部・外部」という2つの軸で捉えると、それぞれ異なる役割を担っています。
法人営業や経営企画・コンサルは市場や取引先といった外部に対して新しい価値を生み出す役割を、財務・経理や法務・リスク管理は組織の信用を守る役割を担います。IT・DXや研究開発・設計は社内の基盤を、人事・総務や不動産・管財は組織の土台を固める役割を果たします。特定の部署だけがGXを推進するのではなく、この全方位の連携があって初めて、組織全体のアップデートが成立します。
あなたの職種は、何を求められるのか
では、具体的に何を、どの順で身につければよいのでしょうか。GX検定は、この道筋を「ベーシック」「アドバンスト」「スペシャリスト」の3段階に整理しています。ベーシックは背景を理解し共通言語で対話できる基盤をつくる段階、アドバンストは算定や削減プロセスの構築といった実務を完遂する段階、スペシャリストは既存の枠組みをGXの視点で再定義し新しい価値を主導する段階です。

財務・経理職のキャリアにおける検定レベル(ホワイトペーパー p.22)
この3段階を職種ごとに具体化すると、目指すべき姿が見えてきます。
財務・経理であれば、目指す姿は「財務諸表と同等の正確性を持った排出量データを基に、脱炭素投資の意思決定を財務面からリードする」ことです。
法人営業であれば、目指す姿は「環境価値を分かりやすく提案し、顧客の脱炭素の課題を自社製品で解決する頼れるパートナーになる」ことです。
同様に、SCM・購買、IT・DX、人事・総務、不動産・管財、金融・投資、法務・リスク管理、研究開発・設計、経営企画・コンサルにも、それぞれの職種ならではの目指す姿と3段階のロードマップが定義されています。自分の職種が、今どの段階にいて、次に何を身につけるべきかを知ることが、キャリアアップの最初の一歩になります。
個人のキャリアと組織の育成計画、それぞれの次の一手
ここまでの内容は、個人にとっても組織にとっても、次の行動を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
個人であれば、自分の職種の目指す姿と現在地の距離を把握することが、専門性に代替不可能性を上乗せする最短の道筋になります。人事・研修の担当者であれば、全社一律の啓蒙にとどめず、職種ごとに求めるGXのレベルを設計できることが、経営層への説明材料になります。
実際にこの考え方を取り入れ始めている企業もあります※4。
株式会社ノーリツは営業本部を中心に約750名がGX検定を受験しました。大和証券株式会社はGX推進に関わる約300名を対象に、講座と検定を連動させたプログラムを実施しました。
KDDI株式会社は部門内9名を対象に中級レベルの「GX検定 アドバンスト」を活用しています。
取り組みの規模や進め方はさまざまですが、共通しているのは、知識の習得を実務の入り口に位置づけている点です。
自分の職種の目指す姿は分かっても、そこに至る3段階で具体的に何を実行すればよいかは、この記事だけでは判断できません。人事・研修の担当者にとっても、職種ごとに求めるレベルの根拠がなければ、育成計画には落とし込めないはずです。
ホワイトペーパー「GX検定を活用した職種別キャリアアップ・ロードマップ」には、次の内容を収録しています。
- 財務・経理、SCM・購買、IT・DX、法人営業、人事・総務、不動産・管財、金融・投資、法務・リスク管理、研究開発・設計、経営企画・コンサル、10職種すべてのベーシック・アドバンスト・スペシャリスト別の具体的なアクション
- 各職種で「なぜGX知識が必要か」を裏付ける市場価値の根拠
- ノーリツ・大和証券・KDDIの導入事例における取り組み内容と効果の詳細
自分の職種の3段階を一から洗い出すには、時間も手間もかかるのではないでしょうか。ホワイトペーパーには、その土台となる整理がすでに用意されています。
脚注
※1 サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ基準委員会がサステナビリティ開示基準を公表」(2025年3月15日) https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards/2025-0305.html
「温室効果ガス排出の開示に対する改正」の公表(2026年3月13日)
https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards/2026-0313.html
※2 金融庁「サステナビリティ情報開示に関するワーキング・グループ」事務局説明資料(2025年10月30日) https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20251030/01.pdf
※3 リクルート「2023年8月 プレスリリース」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2023/0830_12586.html
※4 導入事例詳細
株式会社ノーリツ https://green-transformation.jp/success_stories/noritz/
大和証券株式会社 https://green-transformation.jp/success_stories/daiwa_securities/
KDDI株式会社 https://green-transformation.jp/success_stories/kddi/



