脱炭素の取り組みは、いまや大企業だけのものではありません。地域の自治体や中小企業、そして個人のキャリアにも広がっています。本企画「活躍する脱炭素アドバイザー」では、環境省認定制度の脱炭素アドバイザー資格(GX検定)を取得し、現場で活躍する方々にお話を伺います。
第1回は、千葉県匝瑳(そうさ)市の地域おこし協力隊として脱炭素地域づくりに取り組み、GX検定ベーシック・アドバンストを取得された土屋さん。前職での再生可能エネルギーとの関わりから、資格取得のきっかけ、学習方法、そしてこれからの展望まで、じっくりお聞きしました。
プロフィール
| お名前 | 土屋 さん |
|---|---|
| 肩書き (インタビュー当時) |
千葉県匝瑳市 地域おこし協力隊(脱炭素地域づくり担当) |
| 現在 | 2026年7月末に協力隊を退任。 今後は脱炭素アドバイザーとしての活動を準備中 |
| 保有資格 | 脱炭素アドバイザー ベーシック(GX検定 ベーシック) 脱炭素アドバイザー アドバンスト(GX検定 アドバンスト) |
【補足】脱炭素アドバイザー資格とGX検定
脱炭素アドバイザー資格制度は、企業の脱炭素化に関して社内外へ専門的な助言ができる人材を育てる、環境省の認定制度です。能力・役割に応じてベーシック/アドバンスト/シニアの3レベルがあります。GX検定は全レベルで認定を受けており、GX検定ベーシックは「脱炭素アドバイザー ベーシック」、アドバンストは「脱炭素アドバイザー アドバンスト」、スペシャリストは「脱炭素シニアアドバイザー」に対応します。認定者数は、ベーシック73,712名、アドバンスト4,096名、シニアアドバイザー102名(2026年3月31日時点)です。
出典:環境省「脱炭素アドバイザー資格のご紹介」
地域おこし協力隊として、脱炭素地域づくりに取り組む
―― まずは自己紹介をお願いします。現在、どのようなお仕事をされているのでしょうか。
千葉県匝瑳市で、地域おこし協力隊として脱炭素地域づくりを担当してきました。2024年12月に着任し、約1年8か月にわたって、再生可能エネルギーの推進や市民向けの啓発活動に取り組んでいます。
地域おこし協力隊というと、若い世代が3年間かけて地元の課題解決に取り組むイメージが強いかもしれません。総務省も全国で約8,000人、最終的に1万人を目標に広げています。ただ、私のように前職の社会人経験を活かして参加する40〜50代のメンバーも、この10年ほどで増えてきました。
その中でも「脱炭素」や「再生可能エネルギー」をテーマにする協力隊はまだ少なく、全国で横のつながりを探しても数名ほど。珍しい部類の活動だと思います。
―― 前職から、脱炭素や再エネに関わっていらっしゃったのですか。
前職はアウトドアウェアメーカーで、環境問題に積極的に取り組む会社でした。国内店舗の電力を再生可能エネルギーに切り替えるなど、再エネとの接点が多かったんです。
なかでも匝瑳市とは、「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」を通じた縁がありました。農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と発電を両立させる仕組みです。前職時代から現地に足を運ぶうちに関心が深まり、協力隊への応募につながりました。
具体的な業務内容 ―― 市民啓発から経営者の相談対応まで
―― 協力隊としての業務内容を詳しく教えてください。
匝瑳市は、環境省の「脱炭素先行地域」に千葉県で2番目に選ばれた自治体です(脱炭素先行地域は全国で100自治体まで拡大しています)。5か年計画の3年目にあたり、ソーラーシェアリングに加え、一般家庭の屋根や公共施設・民間企業へ太陽光パネルを広げる事業を進めています。
私のミッションは、こうした取り組みを市民に伝え、理解を深めてもらうことでした。着任してまず取り組んだのが「脱炭素フェスティバル」の開催です。1年8か月で2回開き、海外の再エネをテーマにした映画の上映や、子ども向けにペットボトルでソーラーカーを作る工作教室、地元企業のパネル展示などを行いました。
とくに力を入れたのが、脱炭素事業を紹介するPR映像の制作です。市長や現場のプレイヤーの方々に出演いただき、「匝瑳市は2050年カーボンゼロに向けてこんなことをしています」と伝える映像を、毎年1本つくりました。
―― 市民だけでなく、地元企業の経営者とも接点があったそうですね。
はい。1年目は特に、ライオンズクラブや倫理法人会など、経営者の集まりに呼ばれる機会が多くありました。1年半で3回ほど登壇し、「なぜ匝瑳市に来たのか」といった経緯からお話ししているうちに、つながりが増えていきました。
なかには「自社にEV車を導入したいが、補助金はどう活用すればいいのか」といった具体的な相談も。退任後もお付き合いが続きそうな経営者が2名ほどいます。
また、資格を取得したことは、市が毎月発行する広報紙でも取り上げてもらいました。「GX検定を取得し、こんな活動をしています」と発信できたのは、市からも歓迎されました。

GX検定を受けようと思ったきっかけ
―― GX検定を受けようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
脱炭素やカーボンニュートラルの取り組みには元々関心があり、独学で勉強していました。ただ、資格制度があることは知らなかったんです。
きっかけは、受講した(再エネ関連)セミナーの講師の方からの薦めです。「脱炭素アドバイザーという資格ができて、GX検定ベーシックを担当部署で受ける企業も増えている」と聞いたんです。
自分のスキルアップになりますし、資格という裏づけがあれば、市民向けの啓発活動にも説得力が出る。そう考えて、まず「GX検定 ベーシック」、続いて「GX検定 アドバンスト」に挑戦しました。
どのように学習したか
―― お忙しいなか、どのように学習を進めましたか。
学習はほとんどeラーニングの動画視聴です。資料をダウンロードして読み返すことはせず、動画を繰り返し見るスタイルでした。
ベーシックは比較的すんなり合格できました。ただ、その勢いでアドバンストに進んだら、1回目は不合格で……。2回目に向けては動画を10回ほど繰り返し見ました。倍速が少し苦手なので、1.0倍速でじっくり、何日かに分けて視聴しました。繰り返し視聴することで、知識を定着させ合格することができました。
合格後の変化
―― 合格後、どのような変化がありましたか。
「GX検定 ベーシック」の学習では、これまでぼんやりしていた知識が項目ごとに整理され、他人へ説明するためのアウトプットの土台ができました。「世界の中で日本は今こういう位置にある」といったことも、改めて体系的に学べたと感じます。
「GX検定 アドバンスト」は、市民の皆様や高校生・大学生に話すうえで大いに役立ちました。実際、気候変動やソーラーシェアリングに関心を持つ学生グループと一緒に活動する場面でも、知識が支えになりました。
一方で、地元の中小企業の経営者と話すなかで、「スコープ3まで扱うGX検定 スペシャリスト(=脱炭素シニアアドバイザー)の知識があれば、もっと具体的に踏み込める」とも実感しました。「GX検定 スペシャリスト」の受験については、次の目標として考えています。
周囲からは、「協力隊としての仕事なら、アドバンストまで取れば十分に役立つ」と具体的にアドバイスをもらいました。実際、アドバンストまで学ぶと、さまざまな場面での会話に手応えがありました。
今後の展望
―― 今後の展望を教えてください。
今後は、GX検定の受験を通して得た知識とこれまでのつながりを活かして、企業や経営者の相談に応じる活動ができればと考えています。
すでに、「顧問先企業の環境報告書づくりについて、脱炭素アドバイザーの立場でサポートしてもらえないか」といった相談も受けています。
企業内でGXに関わっているビジネスパーソンであれば、資格を活かして活躍する道筋はイメージしやすいと思います。でも、私のようにフリーランス的な立場でも、資格を取ることで『こういう道もあるんだ』と示せたら。そんなふうに思っています。
このGX検定は、学生や社会人、企業内外のそれぞれの立場で活かせる基盤(軸)になるようなものだと思います。脱炭素アドバイザーとして、将来を見据ええた脱炭素社会の実現に向けて、正しい針路に導く存在として活動していきたいと思います。
これから脱炭素アドバイザーを目指す方へ
―― これから脱炭素アドバイザーを目指す方へ、メッセージをお願いします。
伝えたいのは、若い世代にこそ挑戦してほしいということです。
地球温暖化防止の活動は、どうしても年配の方が中心になりがちです。私は千葉県の地球温暖化防止活動推進員も務めましたが、匝瑳市では私が初めての登録者でした。県全体では累計300人ほどいますが、集合研修に行っても若い世代はほとんどいません。
気候変動やソーラーシェアリングに関心を持つ大学生・大学院生のグループと活動してきましたが、彼らも学校で単位として学ぶ機会は少なかったようです。GX検定のような資格が、将来世代がキャリアを考えるきっかけになれば、と強く感じます。
実際、東京都の「成長産業分野へのキャリアシフト支援事業」でも、GX分野がITやAIと並ぶ成長分野として位置づけられ、GX検定の学習が含まれるようになってきました。こうした動きが地方にも広がっていくことが大切だと思います。資格が就職やキャリアに活きると示せれば、挑戦する若い世代はきっと増えるはずです。
まとめ:地域の現場から、脱炭素アドバイザーという新しいキャリアへ
土屋さんのお話からは、脱炭素アドバイザーが企業内の実務者だけでなく、地域や個人のキャリアにも広がる存在であることが見えてきました。まず現場で行動し、GX検定で知識を体系化し、資格を裏づけに活動の幅を広げていく――そのステップは、これから脱炭素に関わりたい方の道しるべになるはずです。
企業の環境経営や国が掲げるGXについて「GX検定」では基礎から学ぶことができます。まずは入門編の「GX検定ベーシック」から、脱炭素アドバイザーへの第一歩を踏み出してみませんか。GX人材育成プログラム「スキルアップGreen」もぜひご利用ください。

