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【2026年】SAF(持続可能な航空燃料)とは?仕組み・製造方法から課題までわかりやすく解説

航空機は電動化が難しく、脱炭素の実現が最も困難な分野のひとつとされています。その切り札として世界的に導入が進むのが「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」です。SAFとは、廃食油や植物などを原料とし、既存の航空機やインフラをそのまま使いながら、燃料のライフサイクル全体でCO2排出を大幅に削減できる燃料を指します。EUは2025年から給油燃料へのSAF混合を義務化し、日本も2030年に向けた供給目標を掲げるなど、いま制度整備と設備投資が一気に加速しています。本記事では、SAFの仕組みや製造方法、メリットと課題、国内外の最新動向、企業の取り組み事例までをわかりやすく解説します。

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SAF(持続可能な航空燃料)とは


まずはSAFの基本的な定義と、従来の航空燃料との違い、そしてなぜ今これほど注目されているのかを解説していきます。

SAFの定義

SAF(Sustainable Aviation Fuel)とは、廃食油や微細藻類、木くず、サトウキビ、古紙などを主な原料として製造される航空燃料です。石油から精製する従来のジェット燃料に対し、原料となるバイオマスが生育過程でCO2を吸収するため、燃料の製造から燃焼までのライフサイクル全体で見れば、大気中のCO2を増加させない燃料とみなすことができます。
削減効果も大きく、航空業界の国際団体である国際航空運送協会(IATA)によれば、SAFは原料や製造方法にもよるものの、ライフサイクル全体で最大約80%のCO2を削減できるとされています。
出典:IATA「SAF Handbook」

従来のジェット燃料との違い

SAFの大きな特徴は、既存の航空機や空港の給油インフラをそのまま使える「ドロップイン燃料」である点です。従来のジェット燃料(ケロシン)に混ぜて使用でき、エンジンや機体を改造する必要がありません。
SAFを航空機で使うには、国際的な規格標準化団体「ASTM International」の規格に適合していることが求められます。また、この国際規格により、現在は化石燃料由来のジェット燃料に混合して使うことが定められており、混合率は最大50%までとされています。この扱いやすさが、電動化や水素航空機といった他の脱炭素技術に先駆けて、SAFが実用段階に進んでいる理由のひとつです。

なぜ今注目されているのか

背景には、航空分野の脱炭素が世界的な急務になっていることがあります。飛行機で使われるジェット燃料(ケロシン)は単位重量あたりのエネルギー密度が高く、リチウムイオン電池や液体水素ですぐに代替することが難しいため、既存の機体を使いながらCO2を減らせるSAFが当面の最有力手段と位置づけられています。
国際的な枠組みも導入を後押ししています。国際民間航空機関(ICAO)は、2022年10月の総会で「2024年以降は国際航空からのCO2排出量を2019年の85%以下に抑える」という目標を採択しました。ICAOが主導する国際制度「CORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)」では、2021〜2026年までは各国が自主的に参加し、2027年以降(第2フェーズ)は免除対象国を除くすべての加盟国に参加が義務づけられます。SAFの使用は、この削減目標を達成する有効な手段とされています。
出典:環境省 炭素市場エクスプレス「国際航空セクターにおける取組(CORSIA)」

 

一方で、供給はまだごくわずかです。2022年時点の世界のSAF供給量は約30万キロリットルで、世界のジェット燃料供給量の0.1%程度にすぎません。IATAは、2050年に航空輸送分野でネットゼロを達成するには約4.5億キロリットルのSAFが必要と推計しており、需要の急拡大に供給をどう追いつかせるかが世界共通の課題となっています。
出典:資源エネルギー庁「SAF製造に向けて国内外の企業がいよいよ本格始動」

SAFの製造方法(原料と製造ルート)


SAFは「何を原料にするか」「どんな技術で製造するか」によって複数の種類に分かれます。国際的な燃料規格を定めるASTM Internationalは、SAFの製造方式を規格の中で複数の技術ルートとして承認しています。ここでは、実用化が進む代表的な3つの製造ルートを中心に解説していきます。

HEFA(廃食油・動植物油脂由来)

HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)は、廃食油や動植物の油脂を水素化処理して航空燃料をつくる技術です。既存の石油精製技術との親和性が高く、従来のジェット燃料に近い性能を持つため、現在最も主流で確立された製造方式です。日本国内で現在計画されているSAFの多くも、この廃食油を原料とするHEFAが中心です。

ATJ(バイオエタノール由来)

ATJ(Alcohol to Jet)は、エタノールなどのアルコールから酸素を取り除き、分子を結合させてSAFに変換する技術です。米国やブラジルで豊富に生産されるバイオエタノール(コーンやサトウキビが原料)を活用できるため、廃食油に依存しない次世代の供給ルートとして期待されています。国内でも出光興産やコスモ石油がバイオエタノールを原料とするATJによるSAF製造を計画しています。
出典:経済産業省・資源エネルギー庁「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた施策の方向性について(中間取りまとめ案)」

FT・PtL(合成燃料・e-fuel)

FT(Fischer-Tropsch)合成は、ごみ(廃プラスチック等)や木質バイオマスなどをガス化し、液体燃料に変換する技術です。さらに、CO2と再生可能エネルギー由来の水素を合成してつくる燃料は「合成燃料(e-fuel)」や「PtL(Power to Liquid)」と呼ばれます。原料の制約を受けにくい燃料として注目され、資源エネルギー庁は2050年には合成燃料由来のSAFがSAF原料のおよそ半分を占めると見込んでいます。ただし製造コストが高く、本格的な実用化はこれからの段階です。
合成燃料(e-fuel)については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
>>>「カーボンニュートラル燃料とは?具体的な利用方法と企業の取り組み事例を紹介

SAF導入のメリット

SAFの導入には、主に以下の3つのメリットがあります。

 

  • 航空分野のCO2を大幅に削減できる
  • 既存の機体・インフラをそのまま活用できる
  • 新たな産業・国際競争力の創出につながる

それぞれ解説していきます。

CO2排出量を大幅に削減できる

最大のメリットは、燃料のライフサイクル全体でCO2を大幅に削減できる点です。バッテリーや水素への転換が難しい航空分野において、いま最も現実的にCO2を減らせる手段といえます。既存燃料に混合して使うだけで削減効果が得られるため、航空会社にとって導入のハードルが比較的低いことも利点です。

既存のインフラをそのまま使える

前述のとおり、SAFはドロップイン燃料であり、既存の航空機エンジンや空港の給油設備を改修せずに利用できます。水素航空機のように新たな機体や供給インフラを一から構築する必要がないため、追加投資を抑えながら段階的に導入を進められます。

新たな産業と国際競争力の創出

SAFの原料には、これまで廃棄されていた廃食油やごみなどを活用できます。国内で原料を回収しSAFを製造するサプライチェーンが確立すれば、資源循環と新産業の創出につながります。日本政府も国産SAFの供給体制構築を、エネルギー安全保障と産業競争力の観点から重視しています。
出典:経済産業省・資源エネルギー庁「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた施策の方向性について(中間取りまとめ案)」

SAFの課題・デメリット

期待の大きいSAFですが、本格普及には解決すべき課題も残っています。ここでは価格と原料の2つの観点から解説していきます。

価格が従来燃料より高い

最大の課題はコストです。SAFは製造コストが従来のジェット燃料より高く、この価格差が普及の最大の障壁となっています。市場が未成熟な段階では設備投資も大きいため、政府は利用・供給目標を法的に設定する「規制」と、設備投資や原料サプライチェーンへの「支援策」をパッケージで講じ、価格差の縮小と安定供給を図る方針を示しています。
出典:経済産業省・資源エネルギー庁「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた施策の方向性について(中間取りまとめ案)」

原料の供給不足と輸入依存

現在主流のHEFAの原料である廃食油は、世界的な需要増大により供給量が不足し、価格が高騰しています。資源エネルギー庁によると、日本国内で発生する廃食油は全体の約3割が海外に輸出され、それを原料に製造された割高なSAFを逆に輸入している状況もあります。
この課題を受け、今後は賦存量が豊富な米国・ブラジル産バイオエタノールを使うATJ技術の確立や、東南アジア・豪州を中心とした非可食原料(マメ科植物のポンガミア等)の開拓といった、原料の多角化が必要とされています。可食原料は欧州が利用を制限する動きもあり、非可食原料への転換が世界的な流れになっています。

バイオマス原料ならではの課題

SAFの材料の多くは、植物や廃棄物などの「バイオマス」です。このバイオマスを使うこと自体にも、いくつか気をつけるべき点があります。

 

  • 安定して集められるか・コスト:バイオマスは種類や品質がさまざまで、集める・運ぶ・下処理するのに手間とお金がかかります。また、食料になる作物を燃料に回すと食べ物が足りなくなるおそれがあるため、食料との奪い合いを避けることも大切です。
  • 技術のむずかしさ:バイオマスは成分が複雑で、効率よく分解して燃料に変えるのは簡単ではありません。いろいろな種類のバイオマスに対応できるよう、変換する技術を高めていく必要があります。
  • 全体で見た環境への負荷:材料を育てる・運ぶ・燃料に変えるどの段階でも、CO2などの温室効果ガス(GHG)が出ます。さらに、畑を広げることによる土地の使い方の変化、生き物の多様性(生物多様性)への悪影響、水の使いすぎといった問題もあります。そのため、本当に環境にやさしい材料かどうかを第三者が確認する「サステナビリティ認証」が欠かせません。

国内外の動向と制度

SAFの普及は各国の政策に大きく左右されます。ここでは欧州・米国・日本それぞれの動向を解説していきます。

海外の動向

EU(ReFuelEU Aviation)

欧州連合(EU)は、規制による導入を最も強力に進めています。「ReFuelEU Aviation」により、EU域内の空港で供給される航空燃料へのSAF混合を義務化しました。混合割合は2025年の2%から段階的に引き上げられ、2030年に6%、2035年に20%、2050年には70%に達する計画です。さらに、合成燃料(e-fuel)についても2030年の1.2%から2050年には35%へと引き上げる目標が設定されています。

米国(IRA・LCFS)

アメリカは、EUのように一律で義務づけるのではなく、市場のしくみを使って後押しする方針です。もともとインフレ抑制法(IRA)では、SAFに手厚い上乗せがあり、CO2の削減率に応じて1ガロン(約3.8リットル)あたり最大1.75ドルの税金の割引(税額控除)を受けられました。しかし、2025年7月に成立した歳出・減税法(One Big Beautiful Bill Act:OBBBA)によって、このSAFへの上乗せ分は廃止され、控除の上限はほかの燃料と同じ1ガロンあたり1.00ドルに引き下げられました(制度自体は2029年まで延長されています)。それでも、SAFを使うと得られる“クレジット”を売ってお金にできる制度(RFSやLCFS)などを通じて、市場のしくみでSAFを支える形は続いています。
出典:IRS「Treasury, IRS issue proposed regulations on the clean fuel production credit under the One, Big, Beautiful Bill」

日本の現状と動向

日本では、GX基本方針において「2030年までに国内の航空会社が使用する燃料の10%(171万キロリットル相当)をSAFに置き換える」という目標を設定しています。これを受け、エネルギー供給構造高度化法に基づいてSAFの供給目標量を法的に設定し、石油元売り事業者にSAFの供給を促す枠組みの整備が進められています。
支援策も拡充されています。政府はGX経済移行債を活用した設備投資支援や、原料サプライチェーンの構築支援を検討しているほか、経済産業省と国土交通省は共同で「SAF官民協議会」を設立し、原料調達や価格差といった課題を官民一体で議論しています。国際線を運航する外航エアラインには、CORSIAによるオフセット義務が2026年までは自主、2027年以降は強制で課されるため、国産SAFの需要は着実に高まると見込まれています。

将来的な展望

2030年の供給目標という政策カレンダーが明確なため、国内の石油元売り各社の設備投資は今後数年に集中する見込みです。当面は輸入と廃食油由来のHEFAが中心ですが、中長期的にはATJやPtL(合成燃料)へと製造ルートが多様化し、国産化とコスト低減が同時に進むことが期待されています。2030年の国内大規模供給に向けては、各社が基本設計(FEED)を経て最終投資決定(FID)を行う段階に入っています。

出典:European Commission「ReFuelEU Aviation」
出典:経済産業省・資源エネルギー庁「持続可能な航空燃料(SAF)に関する取組の現状(2026年4月17日)」

企業の取り組み事例

国産SAFの商用化に向け、石油元売りやエンジニアリング各社が動き出しています。ここでは資源エネルギー庁が公表する企業動向(2024年時点の計画)をもとに、代表的な4社の事例を紹介します。

コスモ石油

コスモ石油は、日揮ホールディングス、レボインターナショナルと連携し、大阪の堺製油所で国内回収の廃食油を用いたSAF製造を進めており、2024〜25年に年間3万キロリットルの製造を目指しています。さらに三井物産と連携し、バイオエタノールを原料とするSAFについて2027年時点で年間約22万キロリットルの製造を計画しています。

ENEOS

ENEOSは、フランスのTotalEnergies社と連携し、国内外で調達した廃食油などを用いて和歌山製油所跡地でSAF製造の事業化を進めており、2026年時点で年間約40万キロリットルの製造を目指しています。CO2と水素を原料とする合成燃料についても、2040年までの自立商用化を目標としています。

出光興産

出光興産は、千葉製油所でバイオエタノールを原料とするSAF製造に取り組み、2026年から年間10万キロリットルの製造を目指しています。あわせて東芝や東洋エンジニアリング、全日本空輸などと連携し、CO2と水素からつくる合成燃料由来SAFの技術開発・実証も進めています。

日揮ホールディングス

プラント建設やSAFの原料調達を手がける日揮ホールディングスは、家庭や店舗で廃棄される廃食油を回収・利用する「Fry to Fly Project」を展開しています。企業・自治体・団体など誰でも参加でき、国内での資源循環によるSAF原料の確保を目指す取り組みです。

出典:資源エネルギー庁「SAF製造に向けて国内外の企業がいよいよ本格始動」

まとめ

SAF(持続可能な航空燃料)は、電動化が難しい航空分野において、既存のインフラを使いながらライフサイクルCO2を最大約80%削減できる、脱炭素の最有力手段です。廃食油由来のHEFAを中心に商用化が進み、今後はATJやPtL(合成燃料)へと製造ルートの多様化が見込まれます。

 

一方で、従来燃料より高い製造コストや、廃食油の供給不足・輸入依存といった課題も残っています。EUの混合義務化、日本の2030年10%目標と供給義務化など、制度整備と大規模な設備投資がまさにこれから本格化する分野です。航空分野の脱炭素は、私たちの移動や物流を支えるインフラの未来に直結するテーマといえるでしょう。
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脱炭素の全体像については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
>>>「脱炭素とは?簡単に解説!カーボンニュートラルやGXとの違い、各企業の取り組みを紹介」

GXメディア編集部
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GX人材育成サービス「スキルアップGreen」が運営するオウンドメディア、「GX DiG」の編集部です。GXやカーボンニュートラルに関する基礎知識やGX推進に役立つ人材育成に関する情報を日々発信していきます。今後もコンテンツはどんどん追加していきますので、GX関連の学びを深堀り(DiG)していきましょう。